【アカデミー賞全作品】 2017.03.20 (Mon)
≪アカデミー賞全作品≫書庫もくじ
『コーダ あいのうた ('21米仏加)』
『ノマドランド ('21米)』
『パラサイト 半地下の家族 ('19韓)』
『グリーンブック ('18米)』
90 『シェイプ・オブ・ウォーター ('17米)』
『ムーンライト ('16米)』
『スポットライト 世紀のスクープ ('15米)』
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) ('14米)』
『それでも夜は明ける ('13英米)』
『アルゴ ('12米)』
『アーティスト ('11仏)』
『英国王のスピーチ ('10英豪)』
『ハート・ロッカー('08米)』
『スラムドッグ$ミリオネア ('08英印)』
80 『ノーカントリー ('07米)』 ('07-08アカデミー賞授賞式を見て)
『ディパーテッド ('06米)』
『クラッシュ (’05米)』
『ミリオンダラー・ベイビー ('04米)』
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 ('03米)』
『シカゴ ('02米)』
『ビューティフル・マインド ('01米)』
『グラディエーター ('00米)』
『アメリカン・ビューティー ('99米)』
『恋におちたシェイクスピア ('98米)』
70 『タイタニック ('97米)』
『イングリッシュ・ペイシェント ('96米)』
『ブレイブハート ('95米)』
『フォレスト・ガンプ/一期一会 ('94米)』
『シンドラーのリスト ('93米)』
『許されざる者 ('92米)』
『羊たちの沈黙 ('91米)』
『ダンス・ウィズ・ウルブス ('90米)』
『ドライビング・MISS・デイジー ('89米)』
『レインマン ('88米)』
60 『ラストエンペラー ('87伊英中)』
『プラトーン ('86米)』
『愛と哀しみの果て ('85米)』
『アマデウス ('84米)』
『愛と追憶の日々 ('83米)』
『ガンジー ('82英印)』
『炎のランナー ('81英)』
『普通の人々 ('80米)』
『クレイマー、クレイマー ('79米)』
『ディア・ハンター ('78米)』
50 『アニー・ホール ('77米)』
『ロッキー ('76米)』
『カッコーの巣の上で ('75米)』
『ゴッドファーザーPARTⅡ ('74米)』
『スティング ('73米)』
『ゴッドファーザー ('72米)』
『フレンチ・コネクション ('71米)』
『パットン大戦車軍団 ('70米)』
『真夜中のカーボーイ ('69米)』
『オリバー! ('68英)』
40 『夜の大捜査線 ('67米)』
『わが命つきるとも ('66米英)』
『サウンド・オブ・ミュージック ('65米)』
『マイ・フェア・レディ ('64米)』
『トム・ジョーンズの華麗な冒険 ('63英)』 (※未見なので後日)
『アラビアのロレンス ('62米英)』
『ウェストサイド物語 ('61米)』
『アパートの鍵貸します ('60米)』
『ベン・ハー ('59米)』
『恋の手ほどき ('58米)』
30 『戦場にかける橋 ('57英米)』
『80日間世界一周 ('56米)』
『マーティ ('55米)』
『波止場 ('54米)』
『地上より永遠に <ここよりとわに> ('53米)』
『地上最大のショウ ('52米)』
『巴里のアメリカ人 ('51米)』
『イヴの総て ('50米)』
『オール・ザ・キングスメン ('49米)』
『ハムレット ('48英)』
20 『紳士協定 ('47米)』
『我等の生涯の最良の年 ('46米)』
『失われた週末 ('45米)』
『我が道を往く ('44米)』
『カサブランカ ('42米)』
『ミニヴァー夫人 ('42米)』
『わが谷は緑なりき ('41米)』
『レベッカ ('40米)』
『風と共に去りぬ ('39米)』
『我が家の楽園 ('38米)』
10 『ゾラの生涯 ('37米)』
『巨星ジーグフェルド ('36米)』
『戦艦バウンティ号の叛乱 ('35米)』
『或る夜の出来事 ('34米)』
『カヴァルケード ('33米)』
『グランド・ホテル ('32米)』
『シマロン ('31米)』
『西部戦線異状なし ('30米)』
『ブロードウェイ・メロディ ('29米)』
1『つばさ ('27米)』
【アカデミー賞全作品】 2017.03.14 (Tue)
『ディパーテッド (2006米)』
≪感想≫
ただの荒唐無稽な商業娯楽アクション。脚本はお子様向け(脚色賞だって!?)。娯楽作でもかまわないが、香港のオリジナルのように自分たちの「今」を切り取ったわけでもない。無冠の人気監督への同情だけで、その年の最高賞を取った。アカデミー会員のいい加減な投票は、ハリウッドの低迷と比例して今後も続くだろう。
受賞の瞬間、下品に指笛を鳴らす若い関係者の醜態が、すべてを象徴していた。
オスカー度/★☆☆
満足度/★☆☆
『ディパーテッド (2006米)』
監督/マーティン・スコセッシ
主演/レオナルド・ディカプリオ (ビリー・コスティガン刑事)
マット・デイモン (コリン・サリヴァン)
ジャック・ニコルソン (コステロ)
ベラ・ファミーガ (マドリン)
マーク・ウォールバーグ (ディグナム刑事)
マーティン・シーン (クイーナン警部)
≪あらすじ≫
犯罪者一家に生まれた過去を振り払うように優秀な刑事となったビリー。かたやマフィアのボス・コステロに育てられ、その忠実な片腕となったコリン。
ふたりは警察とマフィア、それぞれ互いの組織に潜入して重きを成すが、やがて対決の時を迎える。
≪解説≫
香港のサスペンス・アクション 『インファナル・アフェア('02)』 をリメイクした娯楽作。香港返還の時代性をからめ、逃れられぬ宿命を大仰に描いたオリジナル版に比べ、これはティーン向けのギャングものに終わっている。製作に人気俳優B・ピッドやJ・アニストンが名を連ねている。
≪受賞≫
アカデミー作品、監督、脚色賞の計3部門受賞。
(他の作品賞候補 『バベル』 『硫黄島からの手紙』 『リトル・ミス・サンシャイン』 『クィーン』)
またも本命不在の中、過去5度候補で無冠そして『ギャング・オブ・ニューヨーク('02)』では10部門全敗など不運だったスコセッシ監督に同情のオスカー。大手ワーナー社による後押しがあり、彼らには身近で理解しやすい内容だったせいもあるが、リメイクの商業娯楽作品の受賞はきわめて異例 (『ベン・ハー』などは時代が離れていた)。新企画を創造できないハリウッドの低落が、あらためて明白になった。
なお、これまでスコセッシと組んでオスカー獲りに励んできた主演のL・ディカプリオは、同年 『ブラッド・ダイヤモンド』 のほうで主演賞候補になったが、またも残念(3度目)。
『THE DEPARTED』
製作/マーティン・スコセッシ、ジェニファー・アニストン、ブラッド・グレイ、グレアム・キング、ブラッド・ピット
(候補者登録は1部門2名までのため、G・キングのみが受賞。)
監督/マーティン・スコセッシ
脚本/ウィリアム・モナハン
原作/アラン・マック、フェリックス・チョン
撮影/マイケル・バウハウス
音楽/ハワード・ショア
プランB、イニシャル・エンタ、バーティゴ・エンタ=ワーナー/152分
【アカデミー賞全作品】 2017.02.16 (Thu)
『クラッシュ (2005米)』
≪感想≫
驚くほど心に残らなかった。
過激で扇情的なセリフの応酬、ラストに答えを明示せず「深い余韻」があるように見せる作り。近年のハリウッドではこの手の作劇がもてはやされているようだが、ただ無責任にもったいぶった悲観づらをしているだけ。 個々の人間描写は浅く断片的なので、誰ひとり同情も嫌悪も起こさせない。
エピソードの切り張りに腐心しただけのような、「コピペ」時代ならではの構成。シナリオ学校のマニュアルを出ていないP・ハギスという男の仕事を、ハリウッドが本当にありがたがっているなら不幸だ。
オスカー度/★☆☆
満足度/★☆☆
『クラッシュ (2005米)』
監督/ポール・ハギス
主演/ドン・チードル (グラハム刑事)
マット・ディロン (ライアン巡査) (・・・「デイモン」じゃなくて「ディロン」の方でした。訂正)
クリス・“リュダクリス”・ブリッジス (自動車強盗アンソニー)
ブレンダン・フレイザー (検事リック)
サンドラ・ブロック (検事の妻ジーン)
≪あらすじ≫
被害妄想に取りつかれた黒人青年と、彼に車を盗まれた地方検事夫妻。人種差別主義の白人警官と、彼に辱められた裕福な黒人女性。悪質ないやがらせに憤るペルシャ人店主・・・。善良な市民が人を殺め、心優しい家族思いが無神経に人の尊厳を傷つけている悲劇。
≪解説≫
ひとつの交通事故を軸に、ひたすら人間の 「悪意」 を交錯させて、人種差別や社会の不寛容を浮き彫りにする群像劇。
イラクやアフガンで暴虐の限りを尽くし、世界の敬意と信頼を失ったアメリカ。ハリウッドも秀作ヒット作を出せず低迷し、アカデミー賞どころではない世相の中、内向きで深刻な内容の作品に落ち着いた。
≪受賞≫
アカデミー作品、オリジナル脚本、編集賞の計3部門受賞。
(他の作品賞候補 『ブロークバック・マウンテン』 『ミュンヘン』 『カポーティ』 『グッドナイト&グッドラック』)
またも本命不在の中、ヴェネチア最高賞『ブローク…』が優勢とされたが同性愛テーマが敬遠されたのか、ほとんど無印の本作が作品賞。全編カナダロケで外様スタッフばかりの 『ブローク…』 に対し、本作は全編L.A.ロケでスタッフも地元の身内。そのへんもアカデミーの票を集めやすかったらしい。
S・スピルバーグ監督の 『ミュンヘン』 はミュンヘン五輪テロとその報復合戦を描いた力作だったが、ユダヤ側の非道も見つめる突き放した視点は政治的な支持が得られなかった(無冠)。
『CRASH』
製作/ポール・ハギス、キャシー・シュルマン
監督/ポール・ハギス
脚本/ポール・ハギス、ボビー・モレスコ
撮影/J・マイケル・ミューロー
音楽/マーク・アイシャム
編集/ヒューズ・ウィンボーン
ライオンズゲート/112分
【アカデミー賞全作品】 2017.01.20 (Fri)
『ミリオンダラー・ベイビー (2004米)』
≪感想 (※ラストに少し言及)≫
ボクシングものとしては語りつくされた題材にやりつくされたキャラクター。悲劇的な結末は予想できたのだが、転換点となるアクシデント以降は意外な展開の連続。
ただしほとんど心に響かなかった。74歳監督の老人目線ばかりで、「30女」 の焦燥感や諦念が伝わらない。ヒロインに感情移入させる内面の掘り下げが足りないので、ただ「かわいそうにねぇ」で終わった。どこかの誰かが「不幸の押し売り」と評していたが、なるほどその通りだ。
(だからラストの決断も、主人公の勝手な思い込みでおセンチに「逃げた」だけに見える。政治・宗教は関係ない。)
人望のあるビッグネームが作ったシリアス極まる物語なので、こういう賞獲りには強いのだろう。
オスカー度/★☆☆
満足度/★☆☆
『ミリオンダラー・ベイビー (2004米)』
監督/クリント・イーストウッド
主演/クリント・イーストウッド (フランキー)
ヒラリー・スワンク (マギー・フィッツジェラルド)
モーガン・フリーマン (“スクラップ”エディ)
≪あらすじ≫
昔かたぎの老ボクシング・トレーナー、フランキーのもとに、三十路を過ぎたマギーという女が弟子入りを志願してくる。はじめは「女ボクサーなど」と門前払いにするフランキーだったが、劣悪な境遇から脱するため、ボクシングに人生最後の望みを賭けるマギーの熱意に折れる。
こうしてフランキーの指導の下で才能を開花させ、連勝街道を走るマギーだったが・・・。
≪解説≫
女性ボクサーと老トレーナーの絆とその悲劇。
作中で扱われる「尊厳死」は、その賛否をめぐって大きな物議をかもした。(政治・宗教面からの反発はもちろん、それ以前に思想そのものがない描き方にも。)
≪受賞≫
アカデミー作品、監督、主演女優(H・スワンク)、助演男優賞(M・フリーマン)の計4部門受賞。(候補7部門中)
(他の作品賞候補 『アビエイター』 『ネバーランド』 『Ray/レイ』 『サイドウェイ』)
この年も本命不在、芸術面でも娯楽・興行面でもインパクトに欠けた。
イーストウッドは 『許されざる者('92)』 に続く作品・監督W受賞。74歳の監督賞は史上最高齢記録。スワンクも 『ボーイズ・ドント・クライ('99)』 に続く2度目の主演女優賞。
『MILLION DOLLAR BABY』
製作/クリント・イーストウッド、ポール・ハギス、トム・ローゼンバーグ、アルバート・S・ルディ
監督/クリント・イーストウッド
脚本/ポール・ハギス
原作/F・X・トゥール
撮影/トム・シュテルン
音楽/クリント・イーストウッド
マルパソ、ルディ、モーガン/132分
【アカデミー賞全作品】 2016.12.19 (Mon)
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 (2003米)』
≪感想≫
何より、これだけの大作を一気に撮って、1年ごとに公開して大ヒットさせて、最終的にオスカーを総なめにした、P・ジャクソンのプロデュース力に舌を巻きました。その点はスタンディング・オベーションものです。また、原作を忠実に守って古参ファンの要求を満たし、新規の観客にはまず圧倒的な映像世界で黙らせる。ネット時代のうるさい大衆にアラ探しされないよう、注意深く練って肉付けする今風の作り。
ただ、非常に完成度の高いりっぱな出来ではあるのですが、専門用語だったりひとつひとつの表情やカットの意図が分からずじまいで、面白いかと聞かれれば面白くなかった。(例のひとつが、アラゴルンが緑色の亡霊?の説得に赴く場面。これを王位継承への試練とするのは分かったのですが、呪文みたいな問答ばかりでドラマに欠けた。)
それを抜きにしても、演出家・脚本家としてのP・ジャクソンは「こんなものかな」ってところです。CGはすごいけど、基本のアクション演出はそんなに上手いとは思わない。 スピルバーグではなく「ジョージ・ルーカス2世」??
オスカー度/★★★★
満足度/★★☆
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 (2003米)』
監督/ピータージャクソン
主演/イライジャ・ウッド (フロド)
ヴィゴ・モーテンセン (アラゴルン)
イアン・マッケラン (ガンダルフ)
ショーン・アスティン (サム)
オーランド・ブルーム (レゴラス)
アンディ・サーキス (ゴラム/スメアゴル)
≪あらすじ≫
世界を滅ぼす力を秘めた“指輪”を葬り去るため、“滅びの山”への旅を続ける少年フロド。しかし邪悪な指輪の魔力にとらわれ、忠臣サムにまで疑いの目を向けてしまう。一方、“中つ国”の人々は王位継承者アラゴルンのもとに結集し、冥王サウロン軍との最終決戦にのぞむ。
≪解説≫
超巨編ファンタジー3部作の完結編。母国ニュージーランドで3部作を一気に撮りあげていたジャクソン監督は、本作の公開にあたって新たにVFX特撮シーンを追加、その完結編にふさわしい迫力ある戦闘シーンを作りあげた。
≪受賞≫
アカデミー作品、監督、脚色、音楽、歌曲、美術、編集、衣装、メイク、視覚効果、音響効果賞の計11部門受賞。(候補11部門中)
(他の作品賞候補 『ミスティック・リバー』 『マスター・アンド・コマンダー』 『ロスト・イン・トランスレーション』 『シービスケット』)
11部門受賞は 『ベン・ハー('59)』 『タイタニック('97)』 に並ぶ最多タイ。ノミネート全受賞は『恋の手ほどき('58)』 『ラストエンペラー('87)』の全9部門をしのぐ快挙。
「映像化不可能」とまで言われていた超巨編、3部作まとめての功をねぎらうのは異議ないが、まさかここまで何でもかんでもとは思わなかった。この年、K・ヘプバーン、G・ペック、E・カザン、B・ホープといった大御所が世を去り、アカデミーの低年齢化が顕著に。会社が仕掛ける賞レースの工作が巧妙になる一方で、彼らのいい加減な投票が目立つようになった。
『THE LOAD OF THE RINGS : THE RETURN OF THE KING』
製作/バリー・M・オズボーン、ピーター・ジャクソン、フラン・ウォルシュ
監督/ピーター・ジャクソン
脚本/ピーター・ジャクソン
原作/J・R・R・トールキン
撮影/アンドリュー・レスニー
音楽/ハワード・ショア
主題歌/アニー・レノックス 『Into the West』 (歌手はオスカーの対象外。レノックスは作り手として受賞。)
詞・曲/フラン・ウォルシュ、ハワード・ショア、アニー・レノックス
美術/グラント・メジャー、装置/ダン・ヘナー、アラン・リー
編集/ジェイミー・セルカーク
衣装/ナイラ・ディクソン、リチャード・テイラー
メイク/リチャード・テイラー、ピーター・キング
視覚効果/ジム・ライゲル、ジョー・レッテリ、ランドール・ウィリアム・クック、アレックス・フンケ
音響/クリストファー・ボイエス、マイケル・セマニック、マイケル・ヘッジス、ハモンド・ピーク
ウイングナット=ニューライン/201分
【アカデミー賞全作品】 2016.12.03 (Sat)
『シカゴ (2002米)』
≪感想≫
痛快きわまるヴァンプ<悪女>・ミュージカル、とても刺激的で楽しかった!
空想チックに見せるミュージカル演出や、アイディアとバラエティに富んだ歌は洗練されていて飽きさせない。悪徳弁護士役R・ギアのヘタクソな歌も、図々しくてかえっていい味。なにより、女が男の力を借りずのし上がっていく様は、時代の進歩を感じてスカッとする(R・ギア演じる弁護士は、別に男でなくてもいい)。
・・・が、「地味な普通の女の子代表」のはずのゼルウィガーの、演技を超えて「私、キレイでしょ?」と言わんばかりにはウ~ン、ひいた。でもそういう時代なのね。
オスカー度/★☆☆
満足度/★★★
『シカゴ (2002米)』
監督/ロブ・マーシャル
主演/レネー・ゼルウィガー (ロキシー・ハート) (※「レニー」表記から改められたそうです)
キャサリン・ゼタ・ジョーンズ (ヴェルマ・ケリー)
リチャード・ギア (弁護士ビリー・フリン)
クイーン・ラティファ (看守長ママ・モートン)
ジョン・C・ライリー (ロキシーの夫エイモス)
≪あらすじ≫
1920年代のシカゴ。女優を夢見る平凡な主婦ロキシーは、その夢をもてあそんだペテン師の愛人を殺してしまう。収監された刑務所には、同じく殺人を犯してしまったスター女優ヴェルマの姿が・・・。
すご腕弁護士フリンの宣伝工作で、獄中のヒロインとして世を賑わすヴェルマ。そんな彼女にあこがれるロキシーはフリンを引き込み、ヴェルマを蹴落として一躍時の人になる。
≪解説≫
「ブロードウェイの神様」故ボブ・フォッシーが手がけたミュージカル劇を、現代ブロードウェイの気鋭マーシャルが映画初監督。
刑務所や裁判所といった修羅場を舞台に、名声欲にとりつかれた女たちの鞘当てを、華麗で洗練された演出で魅せる。俳優たちが吹き替えなしで歌い踊ったことも話題になった。(※ぼくは、CGで体のラインを美しく見せたり、ダンスをブチブチ細かい編集でつなぐくらいなら、堂々と吹き替えを使ったほうがいいと思う。)
≪受賞≫
アカデミー作品、助演女優(K・Z・ジョーンズ)、美術、音響、編集、衣裳賞の計6部門受賞。(候補12部門中)
(他の作品賞候補 『ギャング・オブ・ニューヨーク』 『戦場のピアニスト』 『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』 『めぐりあう時間たち』)
ミュージカル映画は 『オリバー!('68)』 以来35年ぶりの受賞。ただし監督や脚本など主要部門を逃したとおり作品賞としては弱く、またも「本命不在の年」を印象づけた。
この年の授賞式は、米軍によるイラク侵攻に揺れる中、黒装束のスターたちが相次いで平和を訴える神妙な雰囲気。特に 『ボウリング・フォー・コロンバイン』 で長編ドキュメンタリー賞のマイケル・ムーア監督が、ブッシュ大統領を「インチキ」と罵倒した場面がハイライト、喝采と怒号が交錯した。
また日本の 『千と千尋の神隠し』 が長編アニメ賞を受賞した年だったが、彼ら海外勢の多くはテロを警戒して、あるいは米政府に抗議して(A・カウリスマキ監督)欠席、総じてさびしい授賞式だった。
『CHICAGO』
製作/マーティン・リチャーズ
監督/ロブ・マーシャル
脚本/ビル・コンドン
原作/モーリン・ダラス・ワトキンス
撮影/ディオン・ビーブ
音楽監督/ダニー・エルフマン (オリジナル作曲/ジョン・カンダー、作詞/フレッド・エッブ)
美術/ジョン・マイヤー、装置/ゴードン・シム
編集/マーティン・ウォルシュ
音響/デヴィッド・リー、マイケル・ミンクラー、ドミニク・タヴェラ
衣装/ロブ・マーシャル、コリーン・エイトウッド
サークルCo.、ゼイダン&メロン・プロ=ミラマックス/113分
【アカデミー賞全作品】 2016.11.13 (Sun)
『ビューティフル・マインド(2001米)』
≪感想≫
数学者の話なので知のスパイスが効いた専門的な切り口を期待したのだが、数学の魅力や作り手の数学的センスが伝わってこなかった。上っ面のフンイキだけの日本語訳だからなおさら(例の戸田さんっすよ)。単なる闘病もの、夫婦愛に感動して泣きたい、という人にはいいかもしれない。
(※以下ネタバレ)アンフェアな「夢オチ」を使われて、本作との信頼関係を失いました。「もしかしてこれも幻?」などと乗ってあげるほど優しい客ばかりじゃない。結局「あっ、そう」で終わりました。
オスカー度/★☆☆(DW社の熱心な賞獲り運動あっての勝利)
満足度/★☆☆
『ビューティフル・マインド(2001米)』
監督/ロン・ハワード
主演/ラッセル・クロウ (ジョン・ナッシュ)
ジェニファー・コネリー (アリシア・ナッシュ)
エド・ハリス (諜報員パーチャー)
クリストファー・プラマー (口ーゼン医師)
ポール・ベタニー (学友チャールズ)
≪あらすじ≫
周りから変人あつかいされながら、全米屈指の数学者として成功を収めた天才ジョン・ナッシュ。しかし時代は東西冷戦下。その才能に目をつけた諜報員バーチャーから、ソ連の暗号の解読を依頼される。これがもとで何者かに命を狙われるようになったナッシュは、ついに精神に異常をきたしてしまう。彼は妻アリシアの献身的な愛に支えられ、病と闘いながら研究を続ける。
≪解説≫
病を乗り越え、“ゲーム理論”を確立してノーベル賞を受賞した数学者ジョン・F・ナッシュの半生を描く(物語はかなり美化されているらしい。少なくとも本作によって、彼のことをもっと知りたいと思わせなかった)。前年の『グラディエーター』に続く主演賞連覇はならなかったが、当時人気絶頂のクロウがこの難役を力演。
≪受賞≫
アカデミー作品、監督、助演女優(J・コネリー)、脚色賞の計4部門受賞。
(他の作品賞候補 『ロード・オブ・ザ・リング』 『ムーラン・ルージュ』 『イン・ザ・ベッド・ルーム』 『ゴスフォード・パーク』)
『アメリカン・ビューティー』 『グラディエーター』に続く作品賞3連覇を狙うドリームワークス社。本命不在の中、彼らの旺盛なオスカー獲り運動が快挙に導いた。商業作品でありながら賞も狙った戦略は、'88年作品賞 『レインマン』に似ているかも。
子役俳優から出発し、アメリカの骨太な世界を描いてヒットを飛ばすハワード監督への褒賞の意味も込められていた。また、かつてアイドル女優として人気を博したJ・コネリーは、このオスカーで再起を果たした。
最大の対抗馬であった最多13部門候補の 『ロード・オブ・ザ・リング』 は、三部作の1とあって「今はおあずけ」な扱いだった。技術系部門での4勝にとどまる。
9.11同時多発テロが明けたこの年の授賞式には、オスカー常連でありながら反ハリウッドの代表格ウディ・アレンがサプライズ・ゲストとして初登場、愛するニューヨークの復興を訴えた。この場面と黒人俳優のW受賞(後述)がハイライトシーンだったか。
『A BEAUTIFUL MIND』
製作/ブライアン・グレイザー、ロン・ハワード
監督/ロン・ハワード
脚本/アキヴァ・ゴールズマン
原作/シルヴィア・ネイサー
撮影/ロジャー・ディキンス
音楽/ジェームズ・ホーナー
ドリームワークス/134分