【めざせ東大 !?】 2022.04.02 (Sat)
『三国志』より「豆を煮るに豆がらを燃く」
『三国志』 にある 「七歩の詩」 の故事。
煮豆燃豆萁 豆を煮るに豆萁(がら)を燃(た)く
豆在釜中泣 豆は釜の中に在(あ)りて泣く
本是同根生 本(もと)是(こ)れ、同根より生ずるを
相煎何太急 相(あい)煎(に)るは何ぞ太(はなは)だ急なる
3世紀中国、『三国志』 最大の英雄・曹操(そうそう)のあとを継いで、正式に魏王朝を建国した子の曹丕(そうひ)。
彼は最後まで跡継ぎの座を争った弟の曹植(そうち・そうしょく)を憎み、「七歩あるくあいだに詩を作らなければ処刑する」と無理難題をふっかける。曹操、曹丕、曹植の父子“三曹”は中国文学史に名を残すほどの詩の名手で、中でも曹植の詩才は父・兄をも凌ぐものがあったのだ――。
「もとは同じ根から生まれた兄弟なのに、なぜ互いに傷つけ合わなければならないのか」
――しかし、兄弟の不和を豆に例えた曹植の即興詩に、曹丕は思わず涙し、これを許したという。
・・・という、『三国志』 ファンには有名なエピソード、じつはすべて小説版(『三国志演義』)の中のフィクション。 ただ、曹丕・曹植兄弟の対立は事実で、それが高じて魏を滅ぼす遠因にもなってしまった。
彼ら曹氏が滅ぼした後漢王朝が、皇室周辺(外戚と宦官*)の権力争いから自壊したことから、魏は近しい皇族への監視と圧力を強化する。曹丕の弟への態度は時代の流れが求めたものでもあり、じっさい外戚や宦官の封じ込めには成功したのだが、本来頼るべき皇族の骨抜きはいざという時の皇帝自身の弱体化にもつながり、重臣の司馬懿(しばい)一族による“晋”に国を奪われる結果に。
(*「外戚」は皇后の一族。「宦官」は後宮で働く去勢された男子のこと。先に国教化された「儒学(儒教)」が深く浸透して中国に父系社会が定着するまでは、より古代的な「母系」を尊ぶ力も大きく、当時はその古代から中世への大変革期であった。この「儒」に対する「道」と「法」家、三国志さながらの思想三ツどもえは別の機会に譲るとして・・・)
ちなみに、このあと三国を滅ぼして中国を再統一した晋王朝は、曹家の失敗を反面教師に自身の皇族を重用したが、今度はその皇族の権力争いによって滅びてしまう(“八王の乱”)。先人の失敗を鏡にした改革が、自らの首を絞める大因になるという歴史の皮肉とむずかしさを物語っている。
・・・と、先日 中華風あんこ を作ったときに思い出した 『三国志』 のお話。
『三国志』 なつかしいなあ。高校受験そっちのけで、夢中で吉川英治版の小説を読みふけったものです。
後漢時代(キリスト誕生とほぼ重なる)を襲った地球規模の気候変動、仏教伝来と道教成立、力を蓄えた地方豪族たちの入り乱れる利権、曹操の実力主義導入、北方異民族の南下と中国化・・・。小説版もおもしろいけど 「正史」 の流れも目からウロコなので、興味がある人はぜひ。
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