NadegataPapaのクラシック音楽試聴記

クラシック音楽の試聴記です。オーケストラ、オペラ、室内楽、音楽史から現代音楽まで何でも聴きます。 カテゴリーに作曲家を年代順に並べていますが、外国の現代作曲家は五十音順にして、日本人作曲家は一番下に年代順に並べています。

フランスの風

「フランスの風」レ・ヴァン・フランセ CD-2

フランスの風
レ・ヴァン・フランセ
EMIミュージックジャパン
2012-04-11


フランスの名だたる木管楽器奏者たちが集まって作ったレ・ヴァン・フランセのCD。その2枚目。
 
1曲目は、ジョルジュ・リゲティ。リゲティは1923年ハンガリ一生まれの作曲家。ここ に納められている「木管楽器のための6つのバガテル」は、リゲティがブタペスト音楽院を卒業して母校で教鞭を執っていた1953年に作曲されている。当時共産政権下のハンガリーでは西側の音楽が激しく弾圧されていて、1956年のハンガリー動乱後、リゲティはウィーンに亡命した。

第1楽章は、急速な動きでユーモラスな響きがある。その後の前衛的なリゲティを考えると理解しやすい音楽だ。第2楽章はゆったりした不気味な音楽。第3楽章は優雅なメロディが印象的で、ここは不気味な感じはなく、むしろカワイイくらい。第5楽章は引きずるように重たく、第6楽章は奇妙なおもしろさがあった。全体的に奇妙で不気味だけど、旋律線は明確で取っつきやすかった。
 
ツェムリンスキーは、1871年、ウィーン生まれの作曲家。木管五重奏のためのフモレスケ(ロンド)は1939年に作曲されており、第2次世界大戦を避けてアメリカに亡命していた時の作品だ。ツェムリンスキーは当初ブラームスの後ろ立てて世に出たこともあり、ブラームスの影響が認められるが、後期の作品はマーラーやR・シュトラウスのような大規模な調性音楽に特徴がある。「フモレスケ」も伝統的な和声でロマン派的な特徴を持ちながらも、濃厚な情緒のようなものが感じられる曲だった。

「弦楽のためのアダージョ」がやたらと有名なバーバーは、1910年生まれのアメリカの作曲家。「夏の音楽」は1956年に作曲されている。戦後の作品にしてはロマン派風の作風が強く、前衛的な所はあまり感じられない。やはりアメリカを思わせる甘く抒情的な雰囲気が濃厚で、「夏」と言うより「夜」のイメージだった。
 
ヴァレシュ・シャンドールは、1907年、ハンガリ一生まれの作曲家、民族音楽家。「オーボ工、クラリネット、ファゴットのためのソネチネ」は1931年の作曲なので、ヴァレシュのハンガリ一時代の作品だ(後年スイスに亡命)。音が線的に重なり合って、隙聞が多い音楽を作っている。冒頭から鋭い響きが昨裂し、明確なメロディ・ラインも出てきて現代的な割に聴きやすかった。
 
パウル・ヒンデミットは1895年生まれのドイツ人作曲家。ナチスに非協力的だったので睨らまれて、「退廃音楽」の烙印を押されていた。その後スイス、アメリカに亡命。「5つの管楽器のための小室内楽」は1922年に作曲されているので、ドイツで活躍していた時代の作品だ。ヒンデミットの作品はどれもそうだが、現代的な響きの中に抒情味が感じられ、メロディに哀愁がこもっている。フレーズも明確で分かりやすく、それが独特の魅力になっている。
 
演奏は各楽器のトップ・クラスの奏者が集まっているので、悪かろうはずがない。これらの作品の最高位に位置づけられる演奏になっている。録音ももちろん素晴らしく、買って絶対に損のないCDだ。
 
CD-2 
1.リゲティ(Gyorgy Ligeti)「木管楽器のための6つのパガテル(6 Bagatellen)」 
2.ツェムリンスキー(Alexander Zemlinsky)「フモレスケ(ロンド) (Humoreske)」 
3.バーバ一(Samuel Barber)「夏の音楽(Summer music, op.31) 」
4.ヴェレシュ(Veress)「オーボエ、クラリネット、ファゴットのためのソネチネ (Sonatine voor hobo, klarinet en fagot)」
5.ヒンデミット(Hindemith)「5つの管楽器のための小室内楽」
レ・ヴァン・フランセ(Les Vents Franyais)
フルート:エマニュエル・パユ(Emmanuel Pahud)
オーボエ:フランソワ・ルルー (Francois Leleux)
クラリネット:ポール・メイエ (Paul Meyer)
ホルン:ラドヴァン・ヴラトコヴィチ (Radovan Vlatkovic)
バソン:ジルベール・オダン(Girbert Audin)

「フランスの風」レ・ヴァン・フランセ CD-1

フランスの風
レ・ヴァン・フランセ
EMIミュージックジャパン
2012-04-11


フランス人木管楽器奏者たちで結成されたレ・ヴァン・フランセのCD。以前からNHKのクラシック倶楽部でライブが放送されたり、アクロス福岡シンフォニーホールでライブがあったりして、何度かその演奏を聴いてきたが、今回はPlaatpaalでCDを聴いた。ライブは聴いていたけど肝心のリリースされたCDは今まで聴いたことがなかったのだ。CDは2枚組で、今回の記事はそのCD1。主にフランス人作曲家の作品が取り上げられている。
 
ジャック・イベールは1890年パリ生まれの作曲家で、交響組曲「寄港地」や「パリ」、「フルート協奏曲」が有名。「木管楽器のための3つの小品」は1960年に作曲されている。軽妙洒脱な作風を旨とし、前衛的なところは殆ど感じられない。第1楽章はちょこまかと動き回るカワイイ曲、第2楽章はちょっと憂欝で優しい曲、第3楽章は明るくユーモラスでしゃれた味わいを感じさせる曲だった。
 
「クープランの墓」は、ラヴェルが1914年から17年にかけて作曲した最後のピアノ独奏曲だが、ここではメイソン・ジョーンズが木管五重奏曲に編曲したものが演奏されている。ラヴェルはこの曲を自身で管弦楽版に編曲しているが、ジョーンズの編曲とは「プレリュード」「フーガ」「メヌエット」「リゴードン」の4曲編成となっていて、管弦楽曲版では「フーガ」ではなく「フォルレーヌ」が入っている。
 
ピアノ曲が木管五重奏曲になると、メロディが浮き立って曲が持っている抒情性が増している。その一方で木管楽器特有のとぼけた味わいが感じられた。「フーガ」が優しい曲で、木管楽器の音色が微妙に変化していく様が味わい深くて、なんだか癒やされる気分。メヌエットは有名なメロディで、オーボエが吹くと哀愁感たっぷりに聴こえた。「リゴードン」は速めのテンポで力ワイさを演出。
 
アンドレ・ジョリヴェは1905年生まれのフランスの作曲家。生まれが20世紀になると、かなり曲想が現代的になってくる。響きが奇妙で前衛的な印象を受けるが、断片的にはメロディがあったりして結構楽しめる。第2楽章は2人(オーボエとバソン)が暗闇の中で奇妙なダンスを踊っているようなイメージだった。
 
ダウリス・ミヨーは、1892年、エクス=アン=プロヴァンス生まれの作曲家。「ルネ王の暖炉」は「愛の騎馬行列」という映画のために作った曲を7曲の木管五重奏組曲に編曲したもの。「ルネ王」とは、15世紀にプロヴァンス伯としてプロヴァンス地方を治めていたヴァロワ家傍系(ヴァロワ=アンジュ一家)のフランス貴族ルネ・ダンジューのことで、一時ナポリ王位に就いていたため「ルネ王」(roi Rene)と呼ばれ、また「善良王」 (Le bon)の異名を持つ。
 
ミヨーの故郷エクス=アン=プロヴァンスには、冬の間もよく日が当たって風が当たらず暖かい場所があって、ルネ王はそこへ毎日のように出かけたという逸話があり、エクスの人々はその場所を「ルネ王の暖炉」と呼んでいたことからこうした題名がついたらしい(ウィキペディア)。
 
曲はとても色彩感豊かで、カワイイメロディがふんだんに出てくる。お伽噺の伴奏のような曲でとても聴きやすかった。7曲がそれぞれ特徴的で、動きがあっておどけた曲や、穏やかで抒情的な曲など、聴いていて飽きさせない楽しさがある。

ポール・タファネルは1844年、ボルド一生まれの作曲家。ちょっと時代が遡るので、曲調がロマンチックに感じる。CD1の中で一番「普通」な曲だ。それ故一番特徴がないように感じる。他の曲に比べて響きが伝統的だから。所々抒情的で瑞々しいメロディが聴かれるが、曲全体としての求心力に欠けるような気がした。
 
レ・ヴァン・フランセ
「フランスの風、20世紀の木管五重奏曲」CD-1 
1.イベール「3つの小品」 
2.ラヴェル「クープランの墓」
3.ジョリヴェ「オーボエとファファゴットのためのソネチネ」
4.ミヨー「組曲"ルネ王の暖炉"」 
「行列」「朝の歌」「軽業師」「ラ・マウザングラード」「アルク川での馬上試合」「ヴァラブルでの狩り」「マドリガル・ノクチュルヌ」
5.タファネル「木管五重奏曲」
レ・ヴァン・フランセ
フルート:エマニュエル・パユ(Emmanuel Pahud)
オーボエ:フランソワ・ルルー (Francois Leleux)
クラリネット:ポール・メイエ (Paul Meyer)
ホルン:ラドヴァン・ヴラトコヴィチ (Radovan Vlatkovic)
バソン:ジルベール・オダン(Girbert Audin)
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