フランスの名だたる木管楽器奏者たちが集まって作ったレ・ヴァン・フランセのCD。その2枚目。
1曲目は、ジョルジュ・リゲティ。リゲティは1923年ハンガリ一生まれの作曲家。ここ に納められている「木管楽器のための6つのバガテル」は、リゲティがブタペスト音楽院を卒業して母校で教鞭を執っていた1953年に作曲されている。当時共産政権下のハンガリーでは西側の音楽が激しく弾圧されていて、1956年のハンガリー動乱後、リゲティはウィーンに亡命した。
第1楽章は、急速な動きでユーモラスな響きがある。その後の前衛的なリゲティを考えると理解しやすい音楽だ。第2楽章はゆったりした不気味な音楽。第3楽章は優雅なメロディが印象的で、ここは不気味な感じはなく、むしろカワイイくらい。第5楽章は引きずるように重たく、第6楽章は奇妙なおもしろさがあった。全体的に奇妙で不気味だけど、旋律線は明確で取っつきやすかった。
ツェムリンスキーは、1871年、ウィーン生まれの作曲家。木管五重奏のためのフモレスケ(ロンド)は1939年に作曲されており、第2次世界大戦を避けてアメリカに亡命していた時の作品だ。ツェムリンスキーは当初ブラームスの後ろ立てて世に出たこともあり、ブラームスの影響が認められるが、後期の作品はマーラーやR・シュトラウスのような大規模な調性音楽に特徴がある。「フモレスケ」も伝統的な和声でロマン派的な特徴を持ちながらも、濃厚な情緒のようなものが感じられる曲だった。
「弦楽のためのアダージョ」がやたらと有名なバーバーは、1910年生まれのアメリカの作曲家。「夏の音楽」は1956年に作曲されている。戦後の作品にしてはロマン派風の作風が強く、前衛的な所はあまり感じられない。やはりアメリカを思わせる甘く抒情的な雰囲気が濃厚で、「夏」と言うより「夜」のイメージだった。
ヴァレシュ・シャンドールは、1907年、ハンガリ一生まれの作曲家、民族音楽家。「オーボ工、クラリネット、ファゴットのためのソネチネ」は1931年の作曲なので、ヴァレシュのハンガリ一時代の作品だ(後年スイスに亡命)。音が線的に重なり合って、隙聞が多い音楽を作っている。冒頭から鋭い響きが昨裂し、明確なメロディ・ラインも出てきて現代的な割に聴きやすかった。
パウル・ヒンデミットは1895年生まれのドイツ人作曲家。ナチスに非協力的だったので睨らまれて、「退廃音楽」の烙印を押されていた。その後スイス、アメリカに亡命。「5つの管楽器のための小室内楽」は1922年に作曲されているので、ドイツで活躍していた時代の作品だ。ヒンデミットの作品はどれもそうだが、現代的な響きの中に抒情味が感じられ、メロディに哀愁がこもっている。フレーズも明確で分かりやすく、それが独特の魅力になっている。
演奏は各楽器のトップ・クラスの奏者が集まっているので、悪かろうはずがない。これらの作品の最高位に位置づけられる演奏になっている。録音ももちろん素晴らしく、買って絶対に損のないCDだ。
CD-2
CD-2
1.リゲティ(Gyorgy Ligeti)「木管楽器のための6つのパガテル(6 Bagatellen)」
2.ツェムリンスキー(Alexander Zemlinsky)「フモレスケ(ロンド) (Humoreske)」
3.バーバ一(Samuel Barber)「夏の音楽(Summer music, op.31) 」
3.バーバ一(Samuel Barber)「夏の音楽(Summer music, op.31) 」
4.ヴェレシュ(Veress)「オーボエ、クラリネット、ファゴットのためのソネチネ (Sonatine voor hobo, klarinet en fagot)」
5.ヒンデミット(Hindemith)「5つの管楽器のための小室内楽」
レ・ヴァン・フランセ(Les Vents Franyais)
フルート:エマニュエル・パユ(Emmanuel Pahud)
オーボエ:フランソワ・ルルー (Francois Leleux)
クラリネット:ポール・メイエ (Paul Meyer)
オーボエ:フランソワ・ルルー (Francois Leleux)
クラリネット:ポール・メイエ (Paul Meyer)
ホルン:ラドヴァン・ヴラトコヴィチ (Radovan Vlatkovic)
バソン:ジルベール・オダン(Girbert Audin)
バソン:ジルベール・オダン(Girbert Audin)