※ネタバレは、文章の後半に集約しています。ここからがネタバレですよ、と注意書きをいれますので、そこまではネタバレを気にせずにお読みください。

20141110-01
 

 池袋の映画館で、「超能力研究部の3人」を見てきた。サービスデーで安く見ることができたが、平日とはいえ、客入りはなんとも寂しい。客層は若い人が中心で、ひとりで見ている方が多かった。余談だが、通路を挟んで隣に座ったおじさんは、上映中、何度も舌打ち。なんだ、この人……。

 券を買うときに、前に並んでいた老夫婦も、この映画のチケットを買っていた。乃木坂の知名度恐るべし、と楽観的には考えられない。おそらくサービスデーなので、とりあえず見てみよう、ということなのだろう。この夫婦に、少しでも乃木坂が刺さればいいな、と思いながら、その背中を見ていた。




 さて、ここからは内容についての感想。記述の前半部分は、褒めまくり、上げまくり、宣伝しまくり、しかもネタバレなしの安心仕様です。しかし後半部分は酷評します、落としまくります、急降下ニードロップです。

 あげて落とす。まさしく雪崩式。ふ、我ながら見事なハンドルネームをつけたもんだぜ(吸えないタバコをくわえてむせながら

 なお管理人は映画評論家ではありません。見たまま、感じたまま、感情の赴くままに感想を書きます。この映画が好きな方は、まゆをひそめる内容になるかもしれませんが、一意見として耳を傾けていただくか、あるいはスルーしていただくと幸いです。

  

 さあ、褒めるか。

 この映画は、2つの軸で成り立っている。ドラマパートとドキュメンタリーパートだ。ドラマのあいだあいだに、それを撮影する裏側、いわばメイキングがはさまれ、物語が進行していく。虚構(ドラマ)と現実(ドキュメンタリー)が交錯し、不思議な感覚に陥りながらも、物語は結末に向かい、虚実入り乱れた映画の本質が最後に現れる。


 乃木坂ファンなら見ておいて損はなし。とりわけ、主演の3人が推しならば、映画館の画面で彼女たちを見れるだけで、じゅうぶん元はとれるはずだ。3人それぞれフォーカスがあてられるので不公平さは感じられない。まんべんなく魅力を伝えられていると思う。


 いくちゃん。お嬢様キャラも良いけど、こういう「飛んでいる」キャラも似合っている。乃木坂で輝くいくちゃんは、まさにお姫様。奴隷のような我々には決して手の届かない存在。それが、この映画のいくちゃんは、どこにでもいそうな、でも、どこにもいない不思議な女の子。こんな同級生がいたら惚れる、というより、持ち帰る、夜は一緒にUFOタイム。 

 真夏さん。彼女のキャラが一番好きだった。料理上手というポイントをさらりと出したのもポイント高し。あなたが働く店なら毎日通える。ゴーゴー破産。でも、真夏さんファンは注意。映画の煽りにもあった禁断のキス。これは覚悟して見にいったほうがいい。心、えぐられますよ? あと、ヤンキー風の女性とのバトルシーンがあるが、これもなかなか胸に迫るものがある。真夏さん推し、というより、アイドルファンには辛い場面だった。

 ななみん。さすが女優。というと、本人は嫌がるかもしれないが、一番自然体だった。それがドラマパートになると、ぱっと役に見えてくる。さすがだなぁの一言。髪型のせいもあるだろうが、雰囲気まで変えられるのは、本質的に演じる素養ができているからだろう。海辺の涙。きれいだった。拭ってあげたい。というか、拭えよ、カメラマン! じゃなければ抱きしめろ! あれはそういうシーンだ! 夕暮れカモン!


 あと乃木坂ファンにはたまらないシーンはクライマックス。

 映画のエンディングは「君の名は希望」。これが映画館の大音量で聞ける。これだけでも感動ものなのに、その中で一瞬だけ希望のMV(オリジナルver)が流れる。この瞬間、涙がこみ上げた。この曲に思い入れがひとしおなだけに、大音量で聞けるだけで感涙もの。やはり希望は名曲。
 


 続いてネタバレ&酷評の後半戦。え、もう? と思われるかもしれないが、いかんせん、持ち上げるぺきポイントが3人のかわいさと、最後の「君の名は希望」しか思い浮かばない。なので乃木坂ファンなら見ておいて損はない、と先に述べたが、乃木坂に興味のない一般層に、これは果たして響くのだろうか。






(ここからは大いにネタバレを含みます。最後の注意です。これより先は自己責任でお読みください)







 twitterで一部の評論家や映画関係者が絶賛しているのを見た。映画の公式サイトのプロダクションノートにも、「超アイドル映画」と、見るものをひきつける文言が踊っている。

 この映画を見るにあたって、前情報は一切いれなかった。スペシャル番組も見ていない。まっさらな状態で見たかった。はじめて見たときと、流れを知って見るのでは、抱く感想が違ってくる。あくまで初見の感想を書きたかったので、ネタバレ要素はすべて排除して鑑賞にのぞんだ。


 結論。つまらなかった。

 
 物語には、見るものを引きつける要素が不可欠。それはキャラクターの個性だったり、ストーリーのおもしろさだったり、とにかく、先が見たい!と思わせなければ、途中で放り出されても文句は言えない。

 この映画の引き。それはなんだったのか。キャラクターの魅力? それはあくまで乃木坂46というフィルターを通して見るから感じるのであって、普通の物語としてみたときに、物語を引っ張るだけの力をあの3人のキャラは持っていない。乃木坂ファンなら楽しめる、というのはそういうことだ。乃木坂ファンならば、彼女たちが演じているというだけで、物語の引きになる。しかしそれは乃木坂を知らない人には通用しない。

 キャラの魅力を半減させているのは、ドラマパートとドキュメンタリーパートを入り乱れさせているのも要因のひとつ。虚実入り乱れた世界観は確かに発想としてはおもしろいが、それはあくまで発想の話。いざ目の前に出されると、どちらに集中していいか分からない。そして結局、どちらもおざなりな印象を受けてしまう。


 物語にも魅力はまるでない。むしろ、手を抜きすぎだろ、と怒りたくもなる。


 ドラマパート。陳腐すぎる。とても見る者を引きつけるストーリーではない。宇宙人でした、宇宙人を帰らせてあげます、さようなら。最後の別れのシーンを感動的に演出していたが、その去り行くキャラに愛着を感じられない構成にしながら、最後だけそんなふうにされても白けるだ。感動的な場面は、そこだけで生まれるものではない。それまでの道程を経て、はじめて感動できる。あのシーンに感動できるだけの伏線が張られていたか。まるでなかったように思う。

 地球の父親の奇抜なキャラ設定も余計の一言。ただやりたかっただけだろ、とこれまた白ける。その父親が、UFOを呼ぶために爆発を起こすが、そこだけ違う映画を見ているかのような演出に大音量。あまりのつまらなさに、うとうとしている客を起こすための演出なんじゃないかとすら感じてしまった。


 ドキュメンタリーパートも、芝居であることを隠したいのか、見せたいのか、非常に中途半端。最後の落ちとして、ドラマパートとドキュメンタリーパート。虚実入り乱れた世界すべてが実はお芝居でした、というのがスタッフロールで明らかにされる。
 
 ここで驚く人がどれだけいるかは分からない。すべてが芝居!そうだったのか!と膝を打つ人がいたとしたら、それは大成功だろう。だが、大部分は途中で分かってしまう。というより、分かるような構成にしている。ならば、この映画を見て、どこにカタルシスを求めればいいのだろうか。

 平々凡々と話が流れ、度肝を抜くはずの落ちも消化不足。パート毎に違う顔を見せた3人の演技以外、残るものがなにもない。

 そもそも発想を物語に転換できていない。製作者のひとりよがりだ。これならドキュメンタリパートをまるまるカットして、ドラマパートのみ、普通の物語として見たほうがよっぽど増しだったように思う。あるいはドキュメンタリーパートを、徹底してリアリティ重視で描き、最後まで芝居と見抜かれないような作りにして、最後の最後に芝居だったと明かす。これならいくらかカタルシスを感じることができた。


 とにかく中途半端だった。物語にしても、設定にしても、落ちにしても。普通のアイドル映画を撮っても意味がなかったのかもしれない。新しいものを生み出したかったのかもしれない。もしかしたら、もっとシビアな話、主演の3人で普通の映画を撮るには、世間へのアプローチが弱かったのかもしれない。

 奇をてらった表現で勝負をした気概は受け止めることができる。しかし今回、その勝負は、対自分としては敗北だったと言わざるを得ない。対世間でも、芳しくない成果が出てしまっている。

 普通のアイドル映画を越えた超アイドル映画。そんな言葉をうたうならば、もっと物語で勝負できなかったのか。3人の知名度とかを抜きにして、本当におもしろいアイドル映画をつくれなかったのか。そもそも普通のアイドル映画ってなんだ? 普通ってなんだ? 普通を拒否するオレたちかっこいい、なんて子どもじみた発想にとらわれてはいないだろうか。



 普通を越えようとした結果、普通以下になってしまった作品。その言葉で締めさせていただく。




 監督、出演者、製作に携わったすべての方には酷評で申し訳ないが、最後までしっかりと見たうえでの感想なので許してほしい。一乃木坂ファンとしては十分に楽しめた。それはなんのフォローにもなっていないかもしれないが真実。マイナス面だけでなく、そのことも受け止めてもらいたい。



 映画製作、おつかれさまでした。監督、次作を期待します。




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