サクラ(山桜) ~花また花、また花花花~
- 2011/04/30(Sat) -
山桜 

山桜も満開に。
小さな一重の花が木全体を白く染める。
高さ10㍍ほどの木は枝を広げ屋根に覆い被さる。

お茶を片手に頬杖付きながら眺める。
部屋に居ながらのプライベート花見。
今日の昼食は外へ運んでその下で摂ろう。
こごみ、うるい、たらのめ、うど…庭の幸を皿に載せて。

人々はゴールデンウィーク。
私はクリエイティブな生き方のための充電ウィーク。
宮澤賢治を思いつつ。

  眺めては眺める庭の山桜  (文)

山桜  

山桜

山桜   
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ムスカリ(Muscari) ~ひだまりの四月尽~
- 2011/04/29(Fri) -
ムスカリ  

庭のいたるところにムスカリがある。
黄色い花が多いこの季節にあって、それは特異である。
濃い青の穂状に咲く姿はちょうど葡萄を逆さにしたようだ。
一つひとつの花は膨らんだ袋状になっている。
数年前に流行したバルーンスカートにも似る。
同じユリ科でもヒヤシンスに最も近い仲間だという。
それでか、英名でgrape hyacinthというから納得だ。
ムスカリは毎年のようにその仲間を増やしていく。
春の季節感を味わわせてくれるシンボルフラワーのひとつである。

今まさに、山笑う季節。
同僚が見える木々を眺めながら言った。
「いろいろな緑色がありますね」と。
私は言った。
「びゃくろくが好きです」と。

ここ数日は寒い日が続いていた。
そろそろ、空気の入れ替わりを期待したい。

   ひだまりにむすかりあふれ四月尽  (文) 

ムスカリ   

ムスカリ 

ムスカリ

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ヒトリシズカ(一人静) ~まゆはき草の独り言~
- 2011/04/28(Thu) -
ヒトリシズカ   

白い糸のような花が顔を出している。
赤みがかった若葉の中にある。
一人静…「静」、しずか。
義経が愛したその人の名、「静御前」の「静」。
歴史の中の悲恋に思いを馳せながら眺める。
まゆはき草の名もあるという。

  逢ひがたく逢ひ得し一人静かな    (後藤夜半) 

ヒトリシズカ 

ヒトリシズカ  

ヒトリシズカ
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ハナモモ(花桃・照手紅) ~ふだんの心~
- 2011/04/27(Wed) -
照手紅  

4月がもうすぐ終わろうとしている。
いつものことだが、4月ほど長く感じられる月はない。
頭と体が疲労感を訴えてくる。
この職を得てから続く毎年の事ではあるが。

  ゴッホの手紙を読みつつ   坂村眞民

  ゴッホよ
  あなたの手紙を読んでいると
  自分がかつて書いた手紙のような気がして
  びっくりすることがあります
  あなたが苦しんでいるのをきいていると
  自分がいま苦しんでいることを
  そのまま言つてくださつていて
  胸のあつくなることがあります
  あなたの怒り
  あなたの叫び
  虚偽を憎み
  真実を愛し
  正しい人間として
  一途に生きようとする
  あなたのこえがそのまま
  わたしのものとなつて
  まなこをぬらすことがあります

私が「ゴッホの手紙」(三好達治訳)を読んだのは大学一年の時だった。
眞民さんはいつ読んだのだろう。

箒樹形の紅色の花桃が咲いている。
ふんわりした八重のこの花桃の名は「照手姫」の伝説に因るという。
小さな虫も花に遊ぶ季節となった。

  ふだん着でふだんの心桃の花   (細見綾子)

照手紅

照手紅   

照手紅 

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サクラ(山桜) ~強き生命(いのち)~
- 2011/04/26(Tue) -
山桜

家の片隅に高さ4メートル、幹が15㎝ほどの山桜がある。
今、白に近い花を咲かせている。
赤みを帯びた若葉に紛れ、ちらほらとあって目立たない。
染井吉野などと違って色も地味で小さく、可愛い桜だ。

そこまではごく普通の話なのだが…。

盛岡をはじめとし、全国各地に“石割桜”がある。
まさしく、大きな岩を裂くように咲いている桜だ。
それを見ると、木の生命力に驚かされる。

話は戻る。
この山桜も実は石ならぬ、“コンクリート割り桜”なのだ。
道路沿いの側溝の基礎の部分を割って伸びている。
固いコンクリートの上だ。
土らしい土はないのにどうやって養分を取っているのだろう。

家にはシンボルツリーとなる高さ10メートルを越す大きな山桜がある。
どうやら色形そして葉などを見るとその子である。
鳥が落とした種が、コンクリートの裂け目に転がり入ってそこから育ったのだろう。
その偶然性やそして木の力に驚く。
しかし、感心ばかりしてはいられない。
成長につれて幹も根も太さを増せば、その基礎部分が崩壊してしまう。
いずれ伐らなくはならない。
あまり大きくならない方がいい。
時期を思案するところだ。

    青天に日はゆるぎなし山ざくら  (相馬遷子)

山桜 

山桜  

山桜   
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ナシ(梨・pear) ~青天に白き五弁満つ~
- 2011/04/25(Mon) -
ナシ

  ♪段丘に梨の花咲き
  ♪桑畑に歌声漏れる
  ♪……………………

当地で子ども達に長く歌い継がれてきた曲の歌詞の一節である。
今まさに、この地方は梨の白い花が見渡す限り広がる。
棚作りをしているため、高さが揃いまるで白い絨毯が敷き詰められたように美しい。

私の三本の梨“幸水”、“新水”“二十世紀”も今が花盛りである。

花の向こうに見える山の雪も少しずつ小さくなってきた。

   青天や白き五弁の梨の花   (原石鼎)

梨

ナシ   

ナシ  
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ハナニラ(花韮・spring starflower) ~異動の便り届く~
- 2011/04/24(Sun) -
ハナニラ・ウィズレーブルー

花化粧の季節。
草張りの季節。

 にょきにょき、にょきにょき。
 つちのなかからいろいろがかおをだす。
 いろいろがひごとにふえていく。
 いろいろをみていろいろとたのしむ。

 はるっていいね。
 いいね、はるって。

 ぐんぐんぐんぐん。
 つちのなかではあしがふかくのびていく。
 くさもとなりどうしでせいくらべ。
 くさもたのしそうにわらっている。

 はるっていいね。
 いいね、はるって。

山茱萸の木の下に3種類のハナニラがある。
英名ではspring starflower。
たしかに2㎝ほどの6弁花は地上にこぼれ落ちた小さな星。
それぞれにピンクスター、ロルフフィドラ、ウィズレー・ブルーの名。
ちょこちょこっと花びらの上で花粉が遊んでいる。
ハナニラは長く咲き続けてくれるのが嬉しい。

  花時に挨拶状の届き来て  (文)

ハナニラ・ピンクスター 

ハナニラ・ロルフフィドラ

ハナニラ
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オキナグサ(翁草) ~土の香のなにかたのしく~
- 2011/04/23(Sat) -
オキナグサ

白い毛に覆われて咲くのは赤い翁草。
蕾は上を向いているが、花を開くにつれてうつむいていく。
花の内側は色を濃くし赤紫色になる。
中には黄色い蕊が紡錘状に集まる。
花の後はその果が白くやわらかな毛の集りとなり、まるで老人の白髪を思わせる。
山野草も少しずつそれぞれの時期を迎え、いろいろ顔を出してきた。

    土の香のなにかたのしく翁草   (飯田蛇笏)  

オキナグサ 
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ユキヤナギ(桃花雪柳) ~「春ですね」と谺する昼下がり~
- 2011/04/22(Fri) -
ユキヤナギ 

桃花雪柳です。
薄い桃色です。
五弁の小さな花です。
枝に沿ってびっしりです。
伸びて垂れる姿は柳のようです。
“桃花雪柳”、文字そのものが絵のようですね。
あるいは“桃花さん”、“雪柳さん”と妙齢なお方…。
いずれにしてもいいお名前です。

燕を見ました。
紋白蝶を見ました。
一日が春を深めていきます。

春と呟く唇を湿らせて (林なつを)

ユキヤナギ  

ユキヤナギ   

ユキヤナギ
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クリスマスローズ(八重) ~窓いつぱいの春~
- 2011/04/21(Thu) -
クリスマスローズ八重 

  悲しみの
  極みといふも
  なほ足りぬ
  いのちの果てに
  みほとけに逢う     (不尽) 

そこにある春。
春の形。
春の侘。
春の佇み。

向こうにある春。
静かな春。
悲しみの春。
怒りの春。
祈りの春。

桜の木の下の八重クリスマスローズ。
重なり合った花びらは少女のスカートのようだ。

  窓あけて窓いつぱいの春  (種田山頭火) 

クリスマスローズ八重

クリスマスローズ八重  


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スモモ(李・plum) ~雪の如く溺れ咲く~
- 2011/04/20(Wed) -
すもも 

木全体を真っ白に染めるのは李。
まるで雪が枝に積もっているよう。
満ちる勢い、漲る気迫。
見事、見事、爽快だ。
花の中には黄色い蕊がチョンチョンチョン。
さてさて。
この花のどれだけが夏の実りとなるのだろうか。

   放縦に背戸の李の花盛り (相馬遷子)

すもも   

すもも

すもも  
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サクラ(染井吉野) ~さまざまのこと思ひ出しつつ~
- 2011/04/19(Tue) -
そめいよしの

4月も四週目に入りましたが、いかがお過ごしですか。
こちらでは毎日のように鶯の声が聞こえます。
近くの里山から響き渡って家まで届きます。
でも、いつもより三週間ほど遅い気がします。
春先が寒かったせいか、鳥たちも季節を図りかねたところがあるのでしょうか。
燕が飛来したとのニュースも流れていましたが、そちらではどうですか。
花も順序よくというわけにもいかず、一気一斉にといった感もあります。

庭の三本の染井吉野も満開を迎えました。
朝夕にプライベートお花見を楽しんでいます。
河津桜と彼岸桜と桜桃はもう花びらを散らしました。
大阪冬桜は二度目の開花です。
このあと、鬱金桜、八重桜、霞桜と咲いていきます。
5月まではこうして家は桜に囲まれます。
またそれぞれの桜の写真を撮って送りますね。
では、お元気で。

  さまざまのこと思ひ出す桜かな  (芭蕉)

そめいよしの  

そめいよしの   

そめいよしの 
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コブシ(辛夷) ~天に祈るかな~
- 2011/04/18(Mon) -
コブシ  

辛夷には別に田打ち桜の名があり、農家にとっては農事暦となる花だ。
昔からこの白い花が咲くのを、農作業を始める目安にしたという。
そういえば昨日は近くでも、田んぼに入って仕事をしていた人たちがいた。
田畑の土が「鍬を持て」と呼びかける。
私も麦藁帽子を被って何種類かの野菜を植えた。

辛夷は真っ白である。
空の青がその白をいっそう際立たせる。
花びらの基はほんのり桜色に染まる。
そのすぐ下には、それぞれに瑞々しいやわらか色の葉が一枚添えられる。

光太郎風に言えば「きっぱりと春が来た」。
ああ、春だ。たしかに春だ。
見るものすべてが春だ。

 白樺 青空 南風
 辛夷咲くあの丘 北国の
 北国の春

この歌が空しく響く故郷を持つ人々がいる。
長閑な里山の春を目にできず、耐え忍びつつ暮らす人々がいる。
北国にも一日でも早く本当の意味での春が来ることを祈ろう。

   辛夷満開こぞりて天に祈るかな  (成瀬桜桃子)

コブシ

コブシ 

コブシ   
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サクランボ(桜桃・桜坊) ~純白を通しけり~
- 2011/04/17(Sun) -
サクランボ

さくらんぼの花は一見すれば桜である。
幹も枝振りもまったく同じなので普通に見れば間違えてしまうかも知れない。
近い仲間であるので当然といえばそうなのだが。
違うのは蕊が目立つことくらいか。
桜同様、木を花で覆う姿はなかなか見応えがある。
今年の花付きもいいので、たくさんの実りが期待できる。
もっとも、9割以上はヒヨドリに持って行かれてしまう。
パックにすれば何百という数になるだろう。
まあ、鳥たちも楽しみにして待っていると思えばいい。

   桜桃の花純白を通しけり (福田甲子雄)

サクランボ 

さくらんぼ

さくらんぼ 
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ミツマタ(三椏・赤花三椏) ~光陰流れだす~
- 2011/04/16(Sat) -
三椏 

お母さん、三椏が咲きましたよ。
一枝をお土産に持って行ったことがありましたよね。
「結香とか黄瑞香の名を持つ良い香りがする花ですよ」って。
この木の枝は必ず3本に分かれ伸びていきます。
その通りに三叉、三又なんです。
万葉の頃はサキクサとも呼ばれたとも言います。
三枝(さえぐさ)の名もそこに由来するようです。

筒状の花が枝先にかたまって咲いてます。
白い絹のような毛に覆われていますね。
30以上はあるでしょう。
花冠は4つに分かれていますが、これも三つだと面白いですね。
実際はこれは萼で、ミツマタは花弁のない花です。

今ちょうど黄色いのと赤いのの2種類が揃って仲良く咲いています。
時々、鼻を近づけてはみるんですよ。
お母さんの写真の前にも挿しておきますね。
お線香に乗ってきっと空まで届くと思います。
お父さんと一緒にその良い香りを楽しんで下さい。

   三椏の花に光陰流れだす   (森澄雄)

赤三椏

三椏

赤三椏 
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レンギョウ(連翹・golden‐bell (tree))  ~軽やかに~
- 2011/04/15(Fri) -
連翹

連翹の黄色い花が今盛りである。
一つひとつの花はやや下向きに4枚の深い切れ込みを持つ。
枝に沿って木全体を一色に染める。
その鮮やかな色は遠くからも眼を惹く。

いろいろな春が目に飛び込んでくる。
風も暖かい。
花とともに体も軽やかに春仕様にしてだ。

   連翹に挨拶ほどの軽き風 (遠藤梧逸)

連翹  

連翹 
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ジンチョウゲ(薄紅沈丁花・白花沈丁花)  ~花無心~
- 2011/04/14(Thu) -
薄紅沈丁花

  濁りなき身に
  濁りなきものの寄り来る
  濁りなき心に
  濁りなきものの映り来る
  濁りなきものを恋い
  路傍の花に向う
  花無心にして
  蝶来り
  蝶無心にして
  花開くとや
  噫々
        (『自選 坂村眞民詩集』より)

庭に甘い香りがいっぱいに広がっています。
沈丁花の強い香りです。
赤い沈丁花と白い沈丁花です。
花の香りは心の深くまで入り込んで、浄めてくれます。
大きく吸い込んで、体の匂い袋に閉じ込めます。
朝の明るさが嬉しくなります。
ため込んだ香りと共に仕事に出かけます。

  沈丁の香をのせて風素直なる   (嶋田一歩)

シロバナ沈丁花

シロバナ沈丁花 

薄紅沈丁花 

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アセビ(アシビ・馬酔木)  ~ほとけの微笑み~
- 2011/04/13(Wed) -
アセビ

小さなつぼを並べたように咲くのは馬酔木。
先端を濃いピンクにした花は階調となって徐々に色を淡くする。
開いた花冠は鯉や金魚が餌をとる時に開く口のようにも見えて可愛い。
花言葉には「清純な愛・清純な心・犠牲・献身」とある。

今を盛りと連なるこの花は、寄り添い手を携えあう人の姿にも思える。

私の『いっぽ』が歌になった。
子どもから大人まで口ずさめる優しいメロディーとなった。
澄んだアルトがピアノの弾き語りに乗る。
編曲してバイオリンでも演奏してくれた。
私にできること。
少しでも。

    仏にはほとけの微笑あしび咲く   (飯野定子)

アセビ  

あせび
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アンズ(杏・apricot)  ~花の深情~
- 2011/04/12(Tue) -
杏  

   花になりたい

   えんぜるになりたい
   花になりたい
            (『定本 八木重吉詩集』より)

杏は優しい色。
和みます。
癒やされます。

昔、多くの病を治したお医者さんがいました。
ただ人の病を治すことに一生を捧げました。
治療代は一切受け取りません。
苦しむ人々への「無償の愛」です。
報酬の代わりに彼はただ一つだけ言いました。
「杏を植えてください」と。
その地には次第に杏の林ができたそうです。
古代中国の董奉(とうほう)のことです。

私は杏が好きです。
黄橙色の実は独特の甘みと食感があります。
果肉は核からすぐ離れてくれます。
木からもぎ取って食べたりします。
今年もたくさんの花が咲きました。
そのままたくさんの実になるのでしょう。

杏は心の優しさを伝える花です。
杏は人の情の深さを繋ぐ花です。

    花寄せて杏の花の深情(ふかなさけ) (大野林火)  

杏 

アンズ

杏
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モクレン(ハクモクレン・白木蓮)  ~清浄五智如来~
- 2011/04/11(Mon) -
白木蓮    

   よし とうべなうとき
   そこにたちまちひかりがうまれる
   ぜつぼうとすくいの
   はかないまでのかすかなひとすじ
                  (『定本 八木重吉詩集』より)

白い花が木にいっぱいだ。
手のひらほどの木蓮の花である。
スカイブルーをバックにその白がいっそう輝く。
それを仏様の御心にたとえる俳人がいた。
見ているとそう思える。
中の蕊までが慈悲深さを湛えている。

朝は、まだ両手を合わせたようだったのに。
午後になって受け止める形になった。

百花百彩、恩寵の季。

   白木蓮のひらく清浄五智如来    (田村一翠)

白木蓮 

白木蓮


白木蓮   

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ボケ(木瓜・Japanese quince)  ~しずかな壺(かめ)~
- 2011/04/10(Sun) -
木瓜

   このかなしみを
   ささげもつべき
   ひとつのしずかな壺(かめ)はないか
   おおらかな
   はるのひのもとをあゆもうとする
                  (『定本 八木重吉詩集』より)


雨が地を潤す。
雨は花を促す。
蕾は結びをほどく。

芽時、花時、根張時。
葉が動き、枝が動く。

木瓜の花も咲く。
開いた花びらに丸い雫。

春のキャンバスにさまざまな色が置かれていく。

   土近くまでひしひしと木瓜の花   (高浜虚子)

木瓜 

木瓜  

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ヒメコブシ(姫辛夷・シデコブシ・四手辛夷)  ~幼い私~
- 2011/04/09(Sat) -
ヒメコブシ 


   幼い私    八木重吉

   幼い私が
   まだわたしのまわりに生きていて
   美しく力づけてくれるようなきがする
                    (『定本 八木重吉詩集』より)


薄桃色の姫辛夷が咲き出した。
今年は花付きがいい。
それは特徴のある花びらを持つ。
たとえば畳まれたようであったり、縮むようであったりと定まらない形である。
そして垂れさがるようであったり、上に伸びるようであったりと向きもさまざまに咲く。
姫の名が付いているからと言うわけではないが、私には思春期の女の子を連想させる。
デリケートでいて複雑。
自由でいて嫋やか。
気難しいかたちをしている。

   姫辛夷うす紅ふふむ六時かな     (山内美津男) 

ヒメコブシ  

ヒメコブシ

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コウバイ(紅梅)  ~両手の世界~
- 2011/04/08(Fri) -
紅梅

   両手の世界

   両手を合せる 
   両手でにぎる
   両手で支える
   両手で受ける
   両手の愛
   両手の情
   両手合したら 喧嘩もできまい
   両手に持ったら 壊れもしまい
   一切衆生を
   両手に抱け
           (『自選 坂村眞民詩集』より)

「おはようございます。」と声を掛けた。
「おはようございます。」と彼から返ってきた。
「おはようございます。」と声を掛けた。
「おはようございます。」と彼女から返ってきた。
それぞれに細く小さな声ではあるが。
先の見えない生活の中、新しい学校へ通う不安。
そう簡単には『明るく、元気』とはいかないだろう。

彼は浪江町からやってきた。
彼女は南相馬市からやってきた。
ともに中学3年生。

遠く離れた見知らぬ地、信州。
だんだんにやっていこう。
みんなで応援しているよ。
君は一人じゃない。
みんな仲間だ。

   紅梅の紅の通へる幹ならん (高浜虚子)

紅梅 

紅梅  
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クリスマスローズ(Christmas rose)  ~話せば暖かし~
- 2011/04/07(Thu) -
クリスマスローズ

  念ずる心 坂村眞民

  善根熟するまで
  念々怠らず精進して
  自己を作っておこう
  そしたら
  春風吹き来つた時
  花ひらくことができ
  春雨降り来つた時
  眼を出すこともできよう
              (『自選 坂村眞民詩集』より)


一輪だけ咲いているのは澄んだ透明感のある美しい黄色のクリスマスローズ。
和名で言う刈安色に近い少し黄緑を含んだ色だ。
奈良の人々はこんな絹衣を身に纏っていたのかもしれない。

当地の桜も開花したとラジオは告げる。
例年よりも二日遅れだという。
春らしい陽射しが感じられるようになった。
庭にも花の種類が増えてきた。

     肩に手をかけて話せば暖かし (大場白水郎)

クリスマスローズ  

クリスマスローズ 
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ネコヤナギ(猫柳) ~尾のきらめきて~
- 2011/04/06(Wed) -
ネコヤナギ   

ふんわりふわふわねこやなぎ
やわらかふわふわねこやなぎ
ひかってゆれて
じゃれあって
ふわふわにこにこねこやなぎ

はるかぜゆらゆらねこやなぎ
せせらぎゆらゆらねこやなぎ
ゆれてひかって
ささやいて
ゆらゆらやさしいねこやなぎ

あのね なあに
そうね そうよ

はなしをしましょうねこやなぎ
あそびましょうよねこやなぎ
みみをよせて
めをあわせ
なかよくほほえむねこやなぎ


   ねこやなぎ音楽の尾のきらめきて   (正木ゆう子) 

ネコヤナギ

ネコヤナギ  

ネコヤナギ 
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フクジュソウ(福寿草・Amur adonis) ~一所懸命~
- 2011/04/05(Tue) -
フクジュソウ

福寿草が落ち葉をかき分けるように顔を出したのは2月の中頃だった。
枯色の中のその黄色い花は私に春の訪れの喜びを分け与えてくれた。
それは一月半の時を経て、今は青々と葉を茂らせている。
そんな中に一つ、二つの花があった。
少し小振りとなってはいるが、温かな色と整った花びらの形は一緒である。
周りにはすでに金平糖のような凹凸状の実がいくつも大きくなっている。
中にはきっと次の世代への種が育まれていることだろう。
その遅れたやってきた花に、景色の違った中で咲く花に、愛おしさを感じる。

自分のペースで、自分のエネルギーを蓄え、咲く時を知る。
同じでなくていい。
ゆっくりでいい。
君の歩幅で歩めばいい。
君はかけがえのない君なんだから。
そんなことを語ってくれているように思えた。

一所懸命。
いっしょけんめい。

   頼もしき二十七顆の福寿草    (後藤夜半)  

フクジュソウの花と実 

フクジュソウの実 
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クリスマスローズ(Christmas rose) ~春作りと馬鈴薯~
- 2011/04/04(Mon) -
クリスマスローズ・・・

気温の上がらない一日だった。
予定しておいた馬鈴薯の植えつけをした。
最近は多くの種類が店には並ぶ。
黄や赤の色に加え、形や大きさもさまざまである。
しかし私はオーソドックスな男爵とメークインにした。
久しぶりに握る鍬の柄に懐かしい感覚が戻る。
二つの畝を作り、等間隔で植え付け終える。
ツナギの下は汗ばんでいた。

ツッ、ツッ、ツッと合歓の木で尉鶲が鳴く。
私の仕事ぶりを見ていたのか。
いつもなら3月下旬に大陸へ帰るのだが、今年は長い逗留だ。
彼の北帰行はいつになるのだろう。

イチイの下にはたくさんのクリスマスローズがある。
このはにかみ屋の花はその中の顔を拝ませてくれない。
まるで「鉢かつぎ姫」のようである。
下から覗くとなかなかの美形だ。

      鍬を寄せ掘る日を思う春作り  (文) 

クリスマスローズ・

クリスマスローズ・・
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ウメ(豊後桃園) ~悲喜頒(わか)ち共に生きん~
- 2011/04/03(Sun) -
桃園

   花咲けば
   共に眺めん   

   実熟せば
   共に食(くら)はん

   悲喜頒(わか)ち
   共に生きん
            (『自選 坂村眞民詩集』より)


いつも最後に咲く梅の名は“桃園”という豊後。
一重のやわらかな5弁の花びらは薄い桃色で美しい。
多くの黄色い蕊がぐんと伸びる。
青空を背景にくっきりと映える。

ここへ来ての開花は、いつもの年より10日ほど遅い。
今年は春がゆっくりである。
朝もまだ寒い日が続く。


   みなみなに咲きそろはねど梅の花     (野坡)

桃園 

桃園  
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スイセン(水仙・daffodil) ~春の黄色~
- 2011/04/02(Sat) -
水仙 

おやおや、水仙が咲いていますね。
小さくて可愛いでしょう。
ほかの水仙もだいぶ葉が伸びてきましたね。
そうなんですね。これからいろんな種類の水仙が咲いてくれますよ。
ところで、春にはなぜ黄色い花が多いんでしょう。
昆虫の眼に映りやすいと聞いたことがあります。
なるほど、集めて受粉を媒介させるというわけですね。
それに、たくさんある色の中でもいちばん遠くから目立つ色だそうです。
つまり人も含めいろいろなものを惹きつける色ということですか。
黄色は視認距離が一番遠いので、どこからでもぱっと目立つわけです。
そういえば注意を喚起するマークや標識には黄色が多いですね。
それに黄色は温か感とか、幸せ感とかの感情を湧き起こさせる不思議な力もありますね。
そういえば昔「幸福の黄色いハンカチ」という映画もありました。
また、黄色は黄金色と比喩され、金色に昇華して豊かさをイメージさせたりもします。
ともあれ、春には黄色い花が似合いますね。
ああ、忘れていました。
突然に何でしょう。
いやいや、あの困ったのも黄色でした。
えっ?
杉の花粉ですよ。
ああ、それであなたはマスクをしているんですか?
今年はことのほか多い気がします。
大変ですね。
大変なんです。
お大事に。
では行きましょうか。
さあ仕事、仕事。

  水仙のひとかたまりの香とおもふ  (黒田杏子)

水仙    

水仙
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サンシュユ(山茱萸・春黄金花) ~目に映るもの新しや~
- 2011/04/01(Fri) -
さんしゅゆ 

4月1日
4月1日
4月1日
4月1日
4月1日
…………
4月1日

4月1日を九十回ほど繰り返した母。
エイプリルフールと重なった誕生日。
「覚えやすくていいでしょ」。
「忘れないでよ」。
そんな声が空から聞こえてくる。

雲の上にも携帯電話が繋がるといいね。お母さん。
「誕生日おめでとう」。
そしたら、「もっと、大きな声で言ってよ。聞こえないんだから」って、また怒られるかな。

こちらでは山茱萸が今満開ですよ。
黄金色の花がそちらからも見えますか。

    枯色に山朱萸の黄の新しや ( 高木晴子)

さんしゅゆ

さんしゅゆ  
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