「すると結局どういふ人間が一番これからも欲しいといふのです。」
光太郎は答えていう。
「一番要求されるのは、よろこんで椽の下の力持ちになれる人間です。隱忍ではいけません」
「當然の事として、ほがらかな心を以て、此の役目を盡くす人間です」
「石のやうにがっしりして、そして微妙で、小うるさい言い譯無しに靜に黙って…」
「常に自然と根を通じ、常に人間以上のものと交渉してゐる人間です」
「至極平凡のやうな英雄です」
(高村光太郎「岩石のやうな性格」から)
ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授は、あらゆる場所のスピーチで周りの人の名を挙げ讃えていた。
研究に携わったすべての人によってなしえた受賞だと。
そして補佐した研究者を授賞式へ参加させた。
その謙虚さ、心配り。
その品格、人間性。
もう一度鏡で自分を見る。
新しき蘭の名を知る成人の日 (文)