短い期間ながらも猟期と有害鳥獣捕獲活動を経験して、それまで見えてこなかったことについて書いてみます。
日本では、狩猟のできる期間(猟期)は原則として冬場に設定されています。
親父がハンターである家庭で生まれ育った私は、教えられるともなく「猟期=冬」という図式がインプットされていました。
なぜ猟期は冬なのか?
1点目は「野生鳥獣の保護」ですね。
野生鳥獣は原則的に春に子供を産み育てるものが多く、秋には巣立っています。一年の冬季を猟期として定めることは、狩猟鳥獣の保護に繋がります。
2点目は「安全面」でしょうね。
茂みや藪が深くて誤射などの事故の可能性も高くなる。
また、暑くて山歩きが辛く、体力を消耗して判断力が鈍る。
スズメバチやマムシ、毛虫などの危険な生物が多い。
などの理由が挙げられます。
蚊やブヨなども多く鬱陶しいですしね。
3点目に「猟期以外の獲物の味」です。
ハンターになる前は「猟期以外の獲物は不味い」ということを誰からともなく聞いていました。
それは確かに事実でもあり、事実でない部分もありました。
イノシシやアナグマ、鴨やヒヨドリの場合「不味い個体=痩せて脂身の無い個体」と言えると思います。
一般的にお肉は脂身が美味しいですからね。
イノシシの場合、ドングリなどの木の実がある秋からタケノコや木の芽がある春は比較的山の中にエサが多くて太っているけれど、夏場はエサが少ないために痩せている個体が多いです。
しかし針葉樹林に住んでいるイノシシは、もともとエサとなる木の実などが少なく秋にも痩せている個体が多いし、田畑や果樹園を荒らす個体について言えば、季節に関係なく年間を通じて丸々と太っていました。
アナグマなどは授乳期や冬眠から醒めたばかりのもの以外は年中太っていましたね。
(これもいただいたアナグマ)
「猟期以外の獲物は不味い」と言われる最大の理由は野生鳥獣の太り方が原因ではなく、気温のせいだと思います。
私は「獲った獲物は食べる!」という食い意地の張った性格なので、夏場でも獲物を獲ったら血抜きをし、すぐに腹出しをして速やかに冷却し体温を下げるようにしています。
そうしないと血が回った上に、自分の体温と気温ですぐに肉が煮えたような状態になり、時には精肉する前に腐敗が始まってしまいます。
これではとても美味しく食べることなんてできませんね。
実際に夏場に獲ったイノシシの内臓を触ると、とても温かく使い捨てカイロ以上の温度がありそうです。
即座に温度を落とす処置をしないと自分の体温で肉がダメになってしまう感じです。
しかし実際問題として山の中から引き出すのにもかなりの時間がかかるし、近くに谷川などの水場があるとも限りません。
そうやって適切な処理がされていない(したくとも出来ない)お肉を食べるため、「夏場の野生鳥獣は不味い」という事に繋がっているのだと思います。
私は夏場の有害鳥獣捕獲や罠にかかった獲物をもらいに行く時に、いつも氷とクーラーボックスを持参してきているので、最初の頃はかなり皆さん驚かれていました(笑)。
猟友会でもちょっと噂になったくらいです(爆)!
(カラスを食べたり、お風呂場で解体をしているせいかも。笑)
他の理由としては「毛皮の状態が良くない」なども挙げられますが、毛皮の需要がほとんど無くなった現在ではあまり関係ない事項ですね。
私は命を奪う以上は美味しくいただきたいと思いますし、それが戴いた命に対しての礼儀だと思うのです。
などと思いつくままにつらつらと書き連ねてみましたが、食い意地の張った自分の行動を正当化するための単なる言い訳です(笑)。
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