この方はグループの長老勢子、殿山さん(仮名)。
御年86歳!!86歳で自分の猟犬2頭を引き連れ、山から獲物を追い出してくれています。
温和な性格の方で殿山さん(仮名)のことを悪く言う人を聞いたことがありません。
色々なことがある狩猟界においてかなりレアなパターンと言って良いのではないでしょうか。
私が殿山さん(仮名)と知り合った時は80代になるかならないかの年齢でしたが、髪の毛こそホワイトヘアーですが毛量たっぷり、長身でシャッキリと背筋も伸びて年齢を聞いた時は本当に驚きました。
「え!?80歳って寝たきりとか要介護というイメージなんだけど、人間ってこんなに若々しくいられるものなのか?」
正直にそう思いました。
「全部自分の歯で、入れ歯なんて1本もない」
と笑っておられたのが印象的でした。
(今でも変わらず入れ歯は1本もない)
そして何よりも驚いたのがその健脚ぶりです。
私と一緒に山入りして別々のルートから山を競っても先に頂上部で待っていたり、勢子役のサポートとして殿山さん(仮名)に付いて行った時なんかは私が置いてけぼりを食らう始末(笑)。
待ち役に付く時は「一番高い場所に獲物がドカドカ通る通し(けもの道)があるから、ワシはそこで待つよ」と言って、シャカシャカと切り立った山の斜面を誰よりも早く登って行きます。
たくさん山の中を歩いているので獲物が通る場所をよく知りよく仕留めてくれます。
ある時殿山さん(仮名)は山頂近くで鹿を2頭倒し、「ヒモで前足と頭部を縛ると抵抗が少なくなるから楽だよ」と言って2頭を一緒に引き出してきました。
長年狩猟をやって来た経験値もあるのでしょうが、まだまだ体力に満ち溢れています。
これには山の下の方で1頭の鹿を引き出すのにヒーヒー苦戦していた若手連中は「本当にたまげました」とビックリ!!
殿山さん(仮名)に「なぜその歳でそんなに足が強いんですか」と聞いたことがありました。
「ワシは相当山奥の田舎で産まれ育って、その当時はまだ家に水道が通っていなかった。学校から帰ると川から水瓶とお風呂に水を汲んでくるのが子供たちの毎日の仕事だったんだよ。あれで足腰が鍛えられたんだと思う。
そして野山で遊ぶために急いで水汲みを終わらせてから小鳥やウサギを追いかけて育った。ヒマを見つけてはそんな事をして遊んでいたよ。
物もなく遊ぶこと自体が不自由な時代だったから、狩猟が田舎の娯楽でもあったしね。
それと健康の秘訣はずっと猟犬を飼っていたことだよ。
日々の散歩でかなりの距離を歩くし、猟期は犬を連れて山歩きをしてきたからこの年でもなんとか山を歩けるんだよ。ずいぶんと衰えて足腰も弱くなったけどね」
「いやいやいやいや。殿山さん(仮名)の場合、足腰が弱くなったとか何とか歩けるなんていうレベルじゃないんですけど…」
(逆に全盛期の健脚ぶりを見てみたい気がします)
そして殿山さん(仮名)が連れている猟犬を見ると、如何に頻繁に山入りして犬に経験を積ませているのかがよく分かる名犬です。
この日も70㎏のよく脂がのったメスイノシシを殿山さん(仮名)が立て撃ちしてゲット!!
イノシシを追い出すのも撃つのも暴れていた半矢のイノシシにナイフで止め刺しをしたのもすべて殿山さん(仮名)とその猟犬で、完全に殿山さん(仮名)の独り舞台でした。
「いやはや超人だ!!」古代中国の歴史読み物『三国志演義』には黄忠(こうちゅう)という勇猛な老将軍が出て来るのですが、殿山さん(仮名)を見ると「あながちフィクションとばかりは言えないだろうなぁ」と思います。
「好きこそものの上手なれ」なんていう言葉がありますが、本当に狩猟が大好きなんでしょうねぇ。
このぶんなら90歳くらいまでは充分に現役ハンターが務まりそう。
殿山さん(仮名)、いつまでも元気でオレ達に色々と教えてくださいね!
今日も自然の恵みと長老勢子の活躍に感謝です。
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