出生数2年連続100万人割れ、2005年に110万人を割り2015年まで100万人を維持してきた出生数ですが100万人割れ2年目で94万人と言うのは急激な減少に見えます。昨年40歳を迎えたのは1977年生まれの世代と考えると、日本最後の人口ボリュームゾーンである団塊ジュニア世代の女性が完全に出生率に関係のない状態になったのが主原因と言え、今後もこの勢いは止まらないものと思われます。そしてそれは、その多くの人口を抱える団塊ジュニア世代の独身女性が婚活に代表されるような少子化対策のターゲットから外れた事も意味します。出生数、2年連続の100万人割れ 自然減は過去最多@朝日新聞2017/12/22より
2017年に国内で生まれた日本人の子どもは、前年より約3万6千人少ない94万1千人の見込みとなった。厚生労働省が22日に公表した人口動態統計の年間推計で分かった。100万人割れは2年連続で、統計を始めた1899年以降で最少となりそうだ。一方で死亡者は増え、出生数を引いた自然減は過去最多の40万3千人になる見通しだ。~中略~
出生数は、1970年代前半の年200万人台から減少傾向が続き、16年に約97万7千人と初めて100万人を割った。これまでの少子化の影響で20~30歳代の女性の数が減り続けているのが主な要因で、今後も出生数は減る見通しだ。女性が一生で産むと見込まれる子どもの数を示す合計特殊出生率も、回復傾向にあるものの16年は1・44で人口を維持できる2・07を大きく下回る。
「婚活」時代【電子書籍】[ 山田昌弘 ]P109よりさてもう10年も前になってしまいましたが少子化対策のある意味代名詞となった「婚活」と言う言葉ですがその言葉の発信源となった「婚活」時代が発売されて10年たちます。この本で著者の山田中央大学教授が伝えたかったことは今にして思えば「女性達よ、外(=市場)に出て(自分たちを思ったほど高く買ってくれない)評価に触れてこい、そしてその評価と向き合っていかに生き残っていくかを考えよ」という事なのではないかと思います。
つまり、男性に必要なのは、もっともっと自分を磨いて、経済力とコミュニケーション力をつけること、女性に必要なのは、自分磨きはもう十分ですから、積極的に外に出ていく事です。
自分の年齢を考えず理想が高いのは40女か40男か@はてこはときどき外に出るよりさてそんな山田教授の切なる願いに対し日本の独身女性は変われたのでしょうか?個人的には変われた人もいたけどかわれなかった人も多かったのではと感じます。
そうか。おまえはそう読んだんだな。わたしは20代も40代も結婚相手として同世代を対象にしているから年齢が上がるに連れて希望する年収も上がるんだと思ったよ。
「逆に40代女性が若年層より理想を下げている分野に何があるか」と聞かれてわたしは容姿をあげたんだけど、そこはスルーされたよね。なんで?ここすごく大事なとこだよ?
上の引用は20代女性と結婚したいアラフォー男性とのツイッターでのやり取りをアラフォー既婚女性がblog記事にまとめたもの、個人的には40代男性には年齢に応じた高い年収を当たり前に求めながら、40代女性がその分妥協できる物として「容姿に妥協できる」事をさもすごい事のように書いているのでものすごくびっくりした印象があります。
この記事が書かれたのは2015年、確かに女性が男性に求める容姿に関して妥協するのは大変なことかもしれませんが、2008年のリーマンショックに始まり、2009年の民主党政権、2011年の東日本大震災と天災・人災が続く中で仕事を続け、かつ給料を上げていくのがどれだけ大変だったのかに想像力が向かわないのは、どうだろうかと思います。だったら20代女性の方がこの時期に就職活動を行い今の経済の厳しさが身にしみてわかっているのではとさえ感じてしまいます。
自分の年齢を考えず理想が高いのは40女か40男か@はてこはときどき外に出るよりそれでいて40代は夫婦2人で暮らしたいと考える人も多いと来るのなら、「じゃあお金のかかる子供がいらないのなら何故高い年収を望むの?」ともいえますし。
40代で出産すると子供が成人することには何事もなければ還暦を迎えていることになる。大学進学や就職など見届けるまでには70歳近い。その年からの育児や就労は困難も多いので、40代女性は恋愛や結婚を出産と結び付けない人も少なくない。夫婦二人で仲良く暮らしたいと考える人も多い。
自分の年齢を考えず理想が高いのは40女か40男か@はてこはときどき外に出るよりそして20代、30代の女性と同様に出産に伴うリスクを相手のフローの収入で補おうとすると言うのには「20年も働いてきて貯蓄は?」という事と「相手も同じくらい働いてきたなら年収と言うフローだけでなく資産と言うストックに目が向かないの?」と言う疑問がわきます。
「男女平等なのにいまどき男が妻子を養うなんておかしい」と思うかもしれないけれど、妻が妊娠、出産、また育児期間中に五体満足でいられる保障はない。若くても妊娠、出産は命がけだ。20代も30代もそういうときに経済的、体力的に頼れる伴侶を望む。つまり子供を望む女性にとって40代男性は20代、30代男性と比較して生理学的に、また就労年数的にハードルが高い。
特に資産に関しては結婚と言う視点で見ると結構重要なのではと思います。例えば子育てのためにマンションや一戸建てなどの不動産を買うのにどれだけ頭金を準備できるか、あるいは既に活用できる不動産が有る等、それ以前に夫婦の新居に引っ越すのにその費用をどう準備するのか、そういった視点は不可欠ではあると思いますが、結局若い女性同様年収しか見ないのはどうだろうかと思います。
2007/1/1 | 2012/1/1 | 2017/1/1 | |
25~29 | 96.6% | 99.6% | 94.2% |
30~34 | 91.6% | 95.2% | 95.6% |
35~39 | 94.6% | 93.4% | 93.5% |
40~44 | 105.3% | 94.1% | 91.7% |
45~49 | 105.8% | 103.1% | 91.2% |
50~54 | 97.8% | 103.7% | 99.9% |
55~59 | 96.4% | 96.2% | 103.0% |
図・表:横浜市青葉区の年齢別人口性比推移(横浜市統計ポータルサイト参照)
そしてかわれなかった女性たちはどうなっていくのでしょうか?それを考える上で面白い場所があります。横浜市青葉区、大手私鉄の東急電鉄が郊外型高級住宅街として開発した場所です。
面白いと書いた理由はその人口性比(ここでは女性の人口100%あたりの男性の人口のパーセンテージ)にあります。と言うのは一般的に現役世代の人口性比は概ね105%前後となり横浜市全体でみると多少の誤差はあるものの概ねその傾向にあるのですがこの青葉区はある一定の世代より下の世代でそれが100%を割り、世代によっては90%近くになっているのです。上の図・表は2017年1月1日の値をベースにそれぞれ5年前・10年前の数値と比較したものです。これを見ると1967年生まれ以降の世代で人口性比が100%を割り、それ以降の世代も同様になっている事、そして年を経るごとにその状況が強化され、2017年には35~49歳の性比が95%を割り込んでいます。
全体 | グロス増減 | ||||
2017 | 2012 | 全体 | 男性 | 女性 | |
20~24 | 19,561 | 18,624 | |||
25~29 | 14,930 | 16,883 | -19.8% | -26.9% | -11.8% |
30~34 | 16,966 | 19,602 | 0.5% | -1.6% | 2.6% |
35~39 | 19,555 | 24,951 | -0.2% | -1.1% | 0.6% |
40~44 | 24,952 | 29,299 | 0.0% | -1.0% | 0.9% |
45~49 | 28,971 | 25,759 | -1.1% | -2.7% | 0.4% |
50~54 | 25,067 | 20,180 | -2.7% | -4.2% | -1.2% |
55~59 | 19,530 | 17,003 | -3.2% | -3.6% | -2.9% |
男性 | 女性 | ||||
2017 | 2012 | 2017 | 2012 | ||
20~24 | 10,198 | 9,908 | 9,363 | 8,716 | |
25~29 | 7,242 | 8,424 | 7,688 | 8,459 | |
30~34 | 8,290 | 9,560 | 8,676 | 10,042 | |
35~39 | 9,451 | 12,052 | 10,104 | 12,899 | |
40~44 | 11,936 | 14,207 | 13,016 | 15,092 | |
45~49 | 13,820 | 13,073 | 15,151 | 12,686 | |
50~54 | 12,529 | 10,275 | 12,538 | 9,905 | |
55~59 | 9,908 | 8,338 | 9,622 | 8,665 |
何故青葉区はこのような状況になったのか見ていきましょう。上の表は青葉区のグロス人口増減率、グロス人口増加率とはこの表で言えば2017年の25~29歳世代の人口と2012年の20~24歳世代の人口を比較して世代毎の人口増減を算出したものです。2017年と2012年の比較を見て印象的なのは、25~59歳の全世代で男性の人口が1%以上減少している事に対し女性の人口は30・40代で増加している事です。
これは25~29歳の世代で男性が26.9%減少している事からも分かる様に男性は基本的に仕事の関係で人口の流出入が盛んな事、その一方で郊外住宅地と言う立地特性から流入は夫婦で男女1:1で入ってくる事から起こっているのではと推測します。
表:青葉区の世帯(参照:なるほどあおば データで見る青葉区)
世帯数の統計を見ると核家族世帯の割合は68.4%(横浜市60.2%)と市内平均より10%近く高く、一方単独世帯は26.8%(横浜市33.8%)と7%低い事がわかります。これらから考えると、言うなれば青葉区は日本でも最もパラサイトシングル女性の多い地域と言えるのではないでしょうか?言うなれば青葉区は取り残された中高年女性のまちと言えるのかもしれません、
焦点:「パラサイト」世帯の高年齢化、日本社会のリスク要因に@ロイター2017/4/19より前に出た「婚活」時代の山田教授が「パラサイトシングル」と言う言葉を世に出してからもう20年にもなりますが、その言葉に込められた懸念がそろそろ目に見える形で顕在化しつつあります。この言葉が出た頃は、「生活は親がかりでぜいたくをしている若者」、10年前は「非正規などで収入が減った若い世代が生活防衛のために行っている事」と言ったイメージがあったのですが、それも親、特に父親が死に、その年金が収入からなくなるとその生活の維持が経済的に難しくなってくるのです。
<まさかこうなるとは このままでは共倒れ>
「なんとかやっていけると思っていたが、このままだと(母と)共倒れになる」──田中博美氏(54)は、大学で声楽を勉強した後、コンサートやレコーディングのバックコーラスの仕事をした。ボイストレーナーとして、音楽教室の仕事もしていたが、10年ほど前から急に仕事が減った。都内の一戸建てで両親と暮らし、結婚はしなかった。半年前に父が亡くなり、年金は半分くらいになってしまった。
仕事が激減したためハローワークにも行ったが、音楽関係の求人はほとんどなく、あっても決まらない。国民年金も途中で払うのをやめてしまい、受給資格がない。自分の老後は「全くの未知。音楽を教える仕事は一生できると考え、まさかなくなるとは思わなかった」。
年収 | 2014 | 累計 | シェア |
0 | 8537 | 8537 | 30.40% |
0~100 | 3262 | 11799 | 42.10% |
100~200 | 5116 | 16915 | 60.30% |
200~300 | 4315 | 21230 | 75.70% |
合計 | 19513 | ||
男性労働者 | 28050 |
この記事の女性は音楽教室関係の仕事という事で当初のもくろみが外れた形と言うエクスキューズが有りますが、所得が低く、仮に父親が死にその厚生年金が入ってこなくなった時には生活が行き詰るパラサイトシングル女性は多いのではないかと思います。
パラサイトシングル女性の陥った落とし穴~豊中餓死事件に思う~よりそして記事では触れていなかった大きな要因として、パラサイトシングルの中核とも言える家の問題もあります。家に代表される不動産資産の特徴としては固定資産税に代表される税金、水回りや庭の手入れに代表されるメンテナンス経費など「保有するだけで様々なコストがかかる」事があります。また夫婦子供の住む家であれば、評価額で言えば安くても数百万円以上の大きな資産でもあります。それを維持していくのか、それとも売却して引っ越すのか、あるいはシェアハウスのような形で運用していくのか様々な選択肢の中から選択が迫られる訳です。言うなれば父親の死をきっかけに本当の意味で自立と選択を迫られるという事なのでしょう。
それでは不動産と言う資産はどうでしょう。個人的には不動産と言う資産は株に比べて以下の特徴があると考えています。
・固定資産税等保有するだけでかかる税金がある
・マンション・一戸建て等の住居や店舗、駐車場等多かれ少なかれ加工しないとお金の取れる状態にならない為、短期的にはメンテナンス経費、中長期的には回収・修繕・立替等の費用がかかる
簡単に言えば株が最悪0になる事を考慮すれば良いのに対し、不動産はマイナスが最悪ありうる訳です。
表:青葉区民の平均寿命(参照:なるほどあおば データで見る青葉区)
神奈川県の年収1000万円比率、世帯年収、1位は横浜市青葉区@ゆかしメディア2014/8/27
そして自立と選択なら学生時分ならいざ知らず、基本的には若いうちであれば若いうちの方がやりやすい、30代なら結婚の可能性も高いですし、収入増加の道も多いでしょう。また部屋探しも引越しも未経験であっても若い方がやりやすいのは言うまでもありません。しかし、皮肉な事に青葉区のパラサイトシングル女性を支えるお父さんたちは長生きでリッチです。仮に娘が27歳で生まれたなら平均寿命通りなら父が死ぬとき娘は55歳、もしそれなりの遺産があれば、それ以上にパラサイトシングルの延長戦が可能になります。そうして長くパラサイトシングルを続け60,70になった時に長い間住み慣れた家を出ると言う選択ができるかと言えば難しいですし、それが出来なければ、生活保護など父親の代わりを行政が担う事も、「高級住宅街の豪邸もちのお金持ち」である以上難しくなってきます。そして国民年金までは何とかもらえてもそれでリッチだった父の年金があって初めて維持できていた豪邸を維持して生活するのは難しいとしか言えません。
一度も働いたことない40〜50代大卒娘」を抱えた高齢親が増加中@gendai.net2017/6/6よりそして行政の現場では既に15年近く前からこういった話は出てきていたのですが、それはマスメディアも行政の広報や統計でも大きく報じられず、そしてこの証言で出て来た女性達は青葉区で言えば性比が95%を割り込んだ1967年以降の世代の5歳以上上の世代で、これから先市役所で話題になったのとは比べ物にならない数のパラサイトシングル女性が出てくるのは間違いありません。そして何とかするのには非常に困難な状況にあるのも間違いありません。高級住宅街に居を構えられるくらい稼いだ人は行政をはじめとする外部からの介入を嫌うでしょうし、あくまで父親が死ぬまでは高い年金をもらう裕福なリタイア世代の家庭であり、何かしらの介入の名分もないからです。筆者がかつて勤めていた横浜市役所では、2000年代当初から、話題になりだしていたことがある。
それは、「この子は一度も働いたことがないのですが、親が亡くなった後、どうすればいいですか」と、40〜50代の娘を連れて、高齢の親が区役所の窓口にくるというのだ。~中略~
10年か20年後には、50〜60代の就業経験のない未婚女性の生活保護受給者が増えるのは避けられないだろう、とも予測していた。
「郊外住宅地の再生型まちづくり」の取組に着手します
~環境未来都市 超高齢化社会に対応する取組スタート!~
横浜市と東急電鉄が「次世代郊外まちづくり」の推進に関する協定を締結@横浜市建設局より
直接介入がほぼ不可能な中、行政としては「次世代郊外まちづくり」に関わる協定と言う形で開発事業者である東急を巻き込んで不動産ビジネスの枠組みを取り入れてこの状況を緩和しようと努力しています。とは言え協定を結んだのが2012年でその後の人口推移をみると状況を変えるに至っていない事も分かります。
とは言え
・高齢者世代を相対的な安価な駅近くの定期借地権付きマンションへの移住促進
・(若い世代の移住促進の為)空き家をシェアハウスや賃貸化する事で比較的安価に住み続けられる環境を作る
と言うのはパラサイトシングル女性に関してどこまで意識したかは分かりませんが理にかなった施策ではあります。高齢化した親世代の移住はパラサイトシングル女性の自立のきっかけになり得ますし、安価な住宅があれば勝手知ったる地元で自立すると言う自立に関するハードルを下げることも可能です。
何より民間企業がビジネスとして行う形をとる事で父親世代を巻き込みやすくなる事も重要でしょう。
東急ウェルネス株式会社
もう1つ、この協定とは関係ないですが、首都圏大手民鉄グループ8社の中で介護事業を最も積極的にやっているのが東急グループだったりします。保育所は比較的どこもやっているのですが、介護事業となると京王電鉄が有料ホームをやっているくらいの中、東急はデイサービスまで行い沿線外の小田急沿線の柿生、京王沿線の明大前まで進出しています。介護事業は女性の比率が高く人手の確保が大変が多い業界と考えると、もしかしたら東急がパラサイトシングル女性への対応として最も積極的・効果的に行っているのは、協定よりもこちらなのかもしれません。
だらだらと書いてきましたが如何だったでしょうか?個人的なまとめとしては以下になってくると思います。
・団塊Jr世代女性が出産適齢年齢を過ぎた結果、独身女性向けの施策が少子化対策から、パラサイトシングルを中心とした彼女たちをいかに経済的に自立させるかに移ってくる
・横浜市青葉区はイメージの良い高級住宅街の為結婚せず実家に留まり続ける女性が非常に多くその為現役世代の人口性比が不自然なほど女性が多いパラサイトシングル=取り残された女性たちのまちになっている
・そしてパラサイトシングル女性の大きな塊の先頭世代はもう50歳に到達していて彼女たちの経済的自立と言うより破たん回避が大きな問題となりつつある
・そしてその青葉区の大家ともいえる東急の介護事業の積極展開がある意味での回答なのではと感じる
皆さんはどうお考えでしょうか?