交通

政治家とブレインの意地を見せてほしい~吾妻線を考えるその2~

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大前駅に停車中の211系、こうして見ると秘境駅だが川向こうには嬬恋村役場を中心とした人口集積が見られる

さて前回吾妻線について書いてきましたが改善案などを書いていなかったのもあるためもう少し書きたいと思います。

前回のまとめ
先人の築き上げた資産を安易に手放すのか~吾妻線と万座温泉に思う~より
現状の課題をまとめて見る
さてこれまで見てきた経緯と現状を纏めますと
・現状の長野原草津口~大前の利用者の8割が通学客
・2012年の特急減便、2016年の特急区間短縮で長野原草津口~大前の乗客減少傾向が明確となって来た。
・それに伴い沿線の嬬恋村の入れ込み観光客数は他が増加か、増減を繰り返すのに対し明確に停滞・減少傾向に入った。
・通勤・通学を見ると概ね線内の通学には対応していて、高崎・前橋市内への通勤もある程度対応されている、嬬恋村内から高崎・前橋方面への通学への対応が課題
・日中のダイヤは東京から草津温泉方面への特急は沿線の視点で見ると運行時間が偏ったり、臨時特急の影響で日中の本数が少ないなど、沿線~高崎・前橋方面との双方の行き来が不便なダイヤと言う印象を受ける
・沿線のバスを見ると吾妻線に沿った区間は一部あるものの、基本的には軽井沢~草津温泉・万座温泉の広域観光ルートの一端を担う路線が多い
・万座・鹿沢口発着のバス路線のダイヤを見ると本数が少なく接続も良くない
・自治体はコミバスと言うよりもスクールバスや福祉バス等公共交通と言うよりも特定の目的を最低限フォローする交通機関の手当てが精一杯と言った感じ

さて現状に関して上の様にまとめました。しかしこれではわかりづらいので利用者及び地域等を分類して整理したいと思います。まず利用者に関しては以下になります。
・通学客:現状の利用の8割を占める、ダイヤ上線内の通学はカバーされているものの、大前~渋川、嬬恋~前橋・高崎の通学への対応が課題
・通勤客:ダイヤ上大前~前橋・高崎市内への通勤以外はカバーされている
沿線から高崎・前橋方面:日中7時間近い空白時間の生まれる大前、万座鹿沢口以東でも臨時特急のダイヤの関係もあり、間隔があき利用しづらい
・沿線から東京方面:高崎・前橋方面と同様
・高崎・前橋から沿線:特急が東京発着の関係で時間帯が偏り、長野原草津口以降の本数も少なく利用しづらい
・東京から沿線:2012年以降特急減便や区間短縮で利用が激減していると思われる、現状定期特急に接続する普通があるが、臨時特急に接続するものはない為、使える列車が減少するのも問題
また地域等に関しては以下の様に言えます。
・バス路線は軽井沢~万座温泉・草津温泉の広域観光ルートを担っているが、その中核である万座・鹿沢口発着の路線は本数が少なく接続も良くない
・長野原草津口迄は東京島発着の高速バスも多いが以降の地域向けはない
・並行するバス、コミバスは影響は少ない
特急の本数減、区間短縮以降嬬恋村の観光客は他の地域と比べて減少・停滞している
こうして見ると複雑に感じますが、所謂赤字路線の場合、ローカル線と言う言われ方と対照的に、沿線地域、県内レベルの広域、大都市との行き来など複合的な需要を集めて成り立っていると言う前提があると私は考えています。その上で、吾妻線長野原草津口~大前について引き続き見てきましょう。

中立とはたんぱくではないか
“赤字は年間4億円超”JR吾妻線 長野原草津口~大前の今後は 沿線自治体などが初の協議@NHK2024/5/23より
群馬県 山本知事
「地域にとって最適な交通サービスを選択するために関係者で議論を行うものだ。大事なことは、地域住民の移動に便利で快適なものにすることだと認識している。その認識のもとで県としては中立的な立場で調整に努めていきたい」

しかし不思議な事に山本知事の会見には観光客も、前橋や高崎の人達の名前は出てきません。あくまで地元住民の為と言う路線と言う認識はたんぱくすぎる感じがします

特急の減便・区間短縮が導いた観光客の減少・停滞
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吾妻郡関係町村のコロナ禍からの観光客回復状況(令和4年(2022年)観光入込客統計調査報告書@群馬県より作成)

実際沿線の観光入れ込み客数を見ると嬬恋村の客数は人口に比して大きく嬬恋村の主要産業であり、前記事で書いた様に2010年代減少・停滞していてかつ、周辺の町村に比べてコロナ禍からの回復状況も良くないです。

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群馬県5大温泉の入れ込み客数推移(群馬県魅力創造課より)

県レベルで見ても嬬恋村の代表的な温泉である万座温泉は県内第4位の入れ込み客の多い温泉であるものの2010年代以降入れ込み客数で振るわず、水上温泉と共に群馬県の温泉観光が全体的に伸び悩んでいる原因となっているのが見て取れます。ちなみに水上温泉も万座温泉同様2010年代に特急の乗り入れが無くなっていて、東京に乗り入れる鉄道の状況が左右している面が決して小さくないのが見て取れます。

水上 (列車)@Wikipedia

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令和4年(2022年)観光入込客統計調査報告書@群馬県より

そして温泉で多いと言える宿泊客の観光消費額単価は日帰り客の5~10倍多く、言い方は良くないですがJRの言う通りに特急の廃止を受け入れた様に見え、結果的に水上・万座両温泉の入れ込み客減少を加速させたのは優れた観光資源に恵まれているのにもったいないと感じますし、またこの吾妻線の問題で観光客の存在を無視するのは疑問を感じます

Maas、庄内空港、地域内だけでなく外からお客を呼び込む利用者誘致策を県も含めて考えられないか
JR吾妻線(大前駅 ~ 渋川駅間)を利用 した鉄道運賃(令和6年6月1日以降の利用分から)の補助が始まりました!!@嬬恋村より
「嬬恋村JR吾妻線利用乗車券購入補助金」のご案内
  みんなの利用で未来に残そうJR吾妻線!
JR吾妻線(大前駅~渋川駅間)を利用することで利用者数が増加し、鉄道路線維持を図ることを目的として、村民が利用した際のJR吾妻線区間の鉄道運賃を補助します。
助成対象者
嬬恋村に住所を有する方
補助対象経費
JR吾妻線において、大前駅、万座・鹿沢口駅、袋倉駅を出発駅・到着駅として、片道または往復利用した時の普通乗車券の鉄道運賃の全額を補助します。
  ※JRの運賃割引が適用される場合は、割引後の鉄道運賃を全額補助します。
  ※通学及び通勤は対象となりません。
対象利用期間
令和6年6月1日(土)からの鉄道利用運賃

さて利用促進策として6月から嬬恋村によって村民が吾妻線を利用した際の運賃補助が始まりました。実際前回の記事で書いた様に嬬恋村~前橋・高崎の利用は無視できないですし、悪い施策ではないと思います。

庄内空港利用拡大助成事業【一般の方向け】@山形県より
こばえちゃ割キャッシュバックキャンペーン
庄内空港発着便を利用した方に助成を行います。
移住、就活、婚活、農業就労、関係人口創出セミナー・イベントで庄内へ来る方を応援します。庄内訪問の際に、庄内空港発着の対象便を利用した方に助成を行います。

ただ逆に嬬恋村に来る観光客向けのキャンペーンもあっても良いのではないでしょうか?上は山形県の庄内空港の利用促進キャンペーンからの引用です。この様な形で例えば特急草津四万を利用して万座温泉をはじめとする嬬恋村の観光地に来る観光客向けのキャッシュバックのキャンペーン等は考えられると思います。これは単に吾妻線の利用促進と言うだけでなく、コロナ前から減少・停滞していた嬬恋村の観光の活性化と言う面もあります。

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GunMaaS(群馬版MaaS)より

また県が運営しているMaasであるGunMaasで嬬恋村向けのものを作る事で前橋・高崎など群馬県内及びその周辺部からの観光客の掘り起こしを行って見るというのも考えられます。現状草津・伊香保・四万の各温泉の宿泊客向けにアクセスバスの2日乗車券をスマホの電子チケットでお得に購入できるのですが、万座温泉・鬼押し出し・軽井沢方面の西武観光バス、草津温泉・北軽井沢・軽井沢方面の草軽交通を巻き込んで作って見るというのは手だと思います。

政令市広島・熊本・浜松に負けない活発な鉄道利用を誇る路線上越線
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高崎~渋川の輸送密度と対応する他社区間の本数比較(2022年度、JR東日本JR西日本JR九州遠州鉄道@wikipedia参照)

続いてダイヤについて見ていきましょう。吾妻線のダイヤを書く前に、そのアプローチ区間である高崎~渋川について少し見ていきます。良く「群馬はクルマ社会」「鉄道は利用されない」と聞きますが高崎・前橋の鉄道の輸送密度を見ると札幌・仙台・新潟・岡山・広島・熊本と言った地方の政令指定都市のJR線輸送密度と比べて劣らないし、高崎~新前橋の34825人と言う数字は多分名古屋・福岡の大手私鉄の主要路線と比較してもそん色ない数値です。昼間の本数を見るとそれだけの利用者のある路線としては十分な本数が確保できているとは言い難い状況です。
しかしこれまでの見てきたとおり新前橋以北の列車が新前橋で打ち切りになったり、特急が減便・区間短縮される等年々不便となり、本来のポテンシャルを発揮できていないというのが現状であるというのは押さえておきたいところです。

北陸新幹線が群馬と関西・名古屋を結ぶ日を控えて県内で五指に入り、多くの惚れ込むリピーターを抱える優良観光地万座温泉を抱えるこの地域の観光を再び盛り上げる為の投資を
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吾妻線の普通列車を担う211系、国鉄時代からの生き残りの大ベテランである

その前提で言えば、まず行うのは
・現状万座・鹿沢口あるいは新前橋止まりの列車をそれぞれ大前・高崎への延長
・高崎着8:00前後の大前始発普通列車の増発(高崎・前橋市内への通学の対応)

と言った普通列車ダイヤの整備となると思います。

211系の弟分213系、クロスシートなので群馬名物鳥飯系のお弁当を食べながら吾妻川を見つつ草津・万座へ

続いては速達列車の整備となります。こんな感じの列車はどうでしょうか?
・臨時も含め特急を長野原草津口から万座・鹿沢口へ延長、出来れば始発を上野から品川に変更
・臨時特急の走らない平日に臨時特急の走る時間帯に有料指定席を設定した快速列車を大前まで運行
・また土日・祝日も含め、特急が走らない大前発朝・夕方、高崎発夕方~夜間に大前~高崎間に有料指定席を設定した快速を運行
・快速は上の動画の213系をJR東海あるいは西日本から購入して運行
・また羽根尾、万座・鹿沢口のバスも快速・特急に併せて接続の改善したり増発を行う

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吾妻線と寄り添う我妻川の光景@万座・鹿沢口

快速の目的は高崎乗換えで特急の補完する事と、高崎・前橋~吾妻線沿線相互の流動へのフォローです。売りは我妻川の渓流を見ながら高崎駅でも購入できるだるま弁当や群馬県で人気のある登利平のお弁当を食べて吾妻線沿線の観光地地域や観光地へ向かう事です。小さいとは言え、観光客に向けてお弁当などが売れる事は嬬恋村など沿線の自治体だけでなく高崎市など他所とこの地域を繋ぐジャンクションである地域を潤す面を意識してほしいというのもあります。また時期がいつになるかは分かりませんが北陸新幹線開業後は関西・名古屋からのお客も意識できるのではと思います。213系は現在高崎地区で走る主力車両の兄弟分と言える車両ですので、メンテナンスなどがしやすいというのが大きいです。

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1800mの高原地と言う雰囲気が味わえる万座温泉
万座温泉の口コミ・評判@ゆこゆこより
投稿者:50代男性 訪問回数:3回以上 訪問・滞在の種別:宿泊 同行者・目的:夫婦・カップル旅行
1800メーターの高原地で夏は特に涼しく、高原の爽やかな風が気持ちいいです。白濁の露天風呂の。泉質は最高です、万座高原ホテルは4種類の源泉に入ることができる。秋は紅葉を楽しみ、冬はスキー場が目の前1年中楽しめる温泉地です


大盤振る舞いとも言える投資ですが、現在停滞している県内4位の集客力を誇る万座温泉を中心とした嬬恋村、長野原町の観光地の再活性化も含めて考えると高いものではないのではと考えています。上は万座温泉の口コミを集めたサイトからの引用ですが驚くのは投稿者の大半が50代以上、高齢化が進んでいる事です。しかしその反面、流行りの温泉街は無くても良質な温泉、落ち着いた環境、夏涼しく、秋の紅葉、冬のスキーと高原の恵まれた自然を愛するリピーターが多い、一度訪れた人たちに2度・3度と訪れさせる魅力ある観光地であるのも間違いないです。「東京のターミナルに○○行きと言う列車がきて行き先案内されるのはそれだけでも広告効果がある」と言うのはよく聞く話ですが、特急水上を失った水上温泉、特急草津を失った万座温泉が2010年代に2割近い来訪者を失ったのを考えると説得力を感じます。特急・快速を中心とした大盤振る舞いは万座温泉を中心とした良質な観光地を再び東京の若い人や東京に世界中から集まるインバウンド客、また今後北陸新幹線開業で群馬に近くなる関西・名古屋の人達に万座温泉を中心とした良質な高原観光地であるこの地域をアピールし新たなリピーターを確保するための投資と言うのは決して高いものではないのではないでしょうか?

地域の為、群馬県の為政治家とブレインの意地を見せてほしい
JR京葉線 再びダイヤ改正へ 朝の上りの快速を増やすなど@NHK2024/5/30より
ことし3月に行われたJR京葉線のダイヤ改正で、朝と夕方以降の快速の運行が大幅に減ったことに対し、見直しを求める声が相次いだことを受け、JR東日本が9月にも、朝の上りの快速を増やすなど、再びダイヤを改正する方針を固めたことが分かりました。
【詳しくはこちら】JR京葉線 朝と夕方以降の快速が各駅停車に 再検討求める声も ことし3月のJR京葉線のダイヤ改正では、ラッシュ時の通勤快速が廃止されたほか、朝と夕方以降の時間帯の快速が早朝の上り2本を除いて各駅停車に変更されました。
このため、京葉線を利用して東京方面に通勤する住民が多い千葉市など各地の自治体から、利便性が低下するなどとしてダイヤの再検討を求める声が相次いでいました
こうした状況を受け、JR東日本はことし9月にも、朝の時間帯で上りの快速の運行を増やすなど、再びダイヤを改正する方針を固めたことが関係者への取材で分かりました。
停車駅が少ない通勤快速の運行は再開しないものの、快速での所要時間が従来より短くなる形でダイヤを編成し、乗客の利便性を確保する方向で検討を進めているということです。


今年3月京葉線のダイヤ変更で通勤快速廃止と言う話が出た時、千葉県知事や千葉市長を中心とする沿線・あるいは関係する自治体の首長たちは一斉に声を上げ反発しました。沿線外の人間からどう映るかは分かりませんが、沿線に住む住民たちにとっては「言うべきことを言ってくれた」と感じたのではないでしょうか?沿線に住む、特に一戸建てやマンションを買った人達から見たらこの通勤快速の廃止は東京への通勤利便性を低下させる「人生をかけた投資である家の価値を下げる許せない行為」であるわけで、もし首長たちが山本知事の様に「中立な第3者として調整する」と言ったらどうなったでしょうか?そしてこの吾妻線の事も県内で5指に入る有力な温泉である万座温泉を中心とした有力な観光地である嬬恋村・長野原町の観光に大きな影響を与えるのはこれまで特急草津や嬬恋村、万座温泉の話を見れば明らかで群馬県の大きな観光資産の価値を左右する話と言わざるを得ません。私はこのままいけば山本知事をはじめとする沿線の政治家は「地域の高校生の問題なので中立な調整者」と言うのは地域の主張としての責任を放棄していると言われてもおかしくないのではと感じます。

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左:芸備線備後落合駅の利用者数推移、右:万座・鹿沢口駅利用者数推移、どちらもWikipediaより

この問題を考える時に、〇〇線の輸送密度は××人だと良く言われます。前に取り上げた芸備線の場合備後落合~東城は20人、今回の吾妻線長野原草津口~大前は263人と言われています。しかしwikipediaで2021年までの各駅利用者数が分かる芸備線はともかく2015年以降の各駅利用者数が全く分からない吾妻線の輸送密度は何を根拠にこの数字が出ているのか私にはさっぱり分かりません。簡単にでたらめと言う気はないですが誰かがこの数字はでたらめだと言ったら否定する根拠は全くないです。

芸備線各区間の経営状況@芸備線再構築協議会の協議体制について@中国運輸局2024/3/26
ご説明資料@JR西日本2023/8/2

芸備線と吾妻線2つの赤字旅客線の問題を調べて一番感じた違いは考える上での資料の豊富さの差、この差は地域の未来を考える政治家とブレインの思い、情熱、維持の差に見えて仕方ありませんでした。当然この手の話し合いを続けている時間の差が大きいのは言うまでもないですが、よそ者とは言え少なくない時間をかけて調べた人間のわがままな感想になりますが、群馬県、長野原町、嬬恋村に関わる政治家、そして彼らを支えるブレインの皆様、この沿線地域、そして群馬県の未来の為意地を見せてほしいそう思わずにはいられませんでした。


先人の築き上げた資産を安易に手放すのか~吾妻線と万座温泉に思う~

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吾妻線の象徴特急草津(現草津・四万)号

“赤字は年間4億円超”JR吾妻線 長野原草津口~大前の今後は 沿線自治体などが初の協議@NHK2024/5/23より
群馬県の渋川と大前を結ぶJR吾妻線。草津温泉や四万温泉などへの観光輸送に加え、地域の生活も支えてきました。しかし、長野原草津口と大前の間は、年間4億円を超える赤字が課題となっています。この区間について、沿線の自治体などが将来のあり方を協議する初めての会議が23日に開かれました。
さて芸備線に続き群馬県の赤字旅客線吾妻線も将来の在り方に関する協議が始まったようです。ここでは吾妻線、特に協議の対象である長野原草津口~大前について少し見ていこうと思います。

芸備線改善策を考える
※2024年6月18日一部資料差し替えました、また続編らしきものも書きました。

政治家とブレインの意地を見せてほしい~吾妻線を考えるその2~


特急の縮小が長野原草津口~大前の衰退を招いたのか~吾妻線の経緯を見る~
吾妻線草津・四万@Wikipedia、より
1989年(昭和63年)3月11日:107系電車導入[33]。
1991年(平成3年)12月1日:川原湯駅を川原湯温泉駅に、長野原駅を長野原草津口駅に改称[18]。
日時不詳:165系電車全廃。
1992年(平成4年)3月14日:小野上温泉駅が開業[18]。
2002年(平成14年)12月1日:特急「新特急草津」を「草津」に改称[32]。
2012年(平成24年)3月17日:ダイヤ改正で下り1号(上野駅7時20分発)・上り6号(万座・鹿沢口駅16時24分発)が廃止となり、毎日運転の列車は2往復(土休日のみ3往復)となる。また、上野駅 - 新前橋駅間での「水上」との併結運行が廃止となり、全列車が、全区間7両編成での運行となる。
2014年(平成26年)
3月15日:ダイヤ改正で使用車両が651系に置き換えられる。
9月25日:八ッ場ダム建設に伴う新線切り換え工事のため中之条駅 - 大前駅間を運休し、中之条駅 - 大前駅間で30日までバス代行輸送を行う[16]。
9月26日-30日:中之条駅 - 岩島駅間の営業運転が再開[16]。新線区間での乗務員訓練のため岩島駅 - 大前駅間を運休し、同区間で試運転を実施[8]。
10月1日:岩島駅 - 大前駅間の営業運転が再開[16]。岩島駅 - 長野原草津口駅間の新線切り換えに伴い、川原湯温泉駅が新線上に移転し[9]、同時に同区間を改キロ (-0.3 km)[14]。全線が東京近郊区間に指定され、中之条駅、長野原草津口駅、万座・鹿沢口駅の3駅でSuica等のICカード乗車券が使用可能になる
2016年(平成28年)3月26日:ダイヤ改正により区間短縮が行われ、長野原草津口駅 - 万座・鹿沢口駅間の定期運行が廃止となる[5]。なお、ダイヤ改正当日の3月26日は下り「草津83号」が、翌日の3月27日は上り「草津84号」が上野駅 - 万座・鹿沢口駅間で臨時運転された。以後は多客期の特定日のみ延長運転される。
8月22日:211系電車を導入[34]。初日はA28編成を充当して、高崎駅を夜に出発する549Mから[35]。
2017年(平成29年)3月4日:一部列車における上越線内直通区間が高崎駅までから新前橋駅までに短縮。
2019年(令和元年)10月13日:令和元年東日本台風(台風19号)の影響で長野原草津口駅 - 大前駅間で長期間運休となる[36]。
2020年(令和2年)2月21日:長野原草津口駅 - 大前駅間が運転再開[37][38]。
2023年(令和5年)3月18日:特急「草津」を651系からE257系に置き換え、「草津・四万」に改称
2024年(令和6年)3月22日:JR東日本高崎支社が、旅客減少により「鉄道の特性である大量輸送のメリットを発揮できていない」とされる末端区間の長野原草津口駅 - 大前駅間について、群馬県、長野原町および嬬恋村に対し同区間の「沿線地域の総合的な交通体系に関する議論」を申し入れた事を発表した。
さて平成期からの吾妻線の状況を見ていきます。主なものを抜粋すると下記になります。
2012年:特急草津の本数減少3往復→2往復(土休日3往復)
2014年:特急草津をE651系に置き換え、八ッ場ダム建設により新線切り替え
2016年:特急草津区間短縮(長野原草津口~万座・鹿沢口廃止)
2017年:一部列車が高崎発着から新前橋発着に区間短縮
2023年:特急草津をE257系に置き換え草津・四万に改称
特急用車両変更、八ッ場ダム建設をきっかけとした新線切り替えがあるものの特急草津(2023年から草津・四万に改称)の本数削減、区間短縮、一部普通列車の新前橋止まりへの変更等消極策が目立ちます。

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吾妻線利用者数推移(路線別ご利用状況@JR東日本より作成)

続いてJRの公表資料から吾妻線の輸送密度の推移を見ていきます。協議の対象となっている長野原草津口~大前に関しては2012年まではむしろ渋川~長野原草津口よりも利用に関しては健闘していたものの、2012年の特急の減便、2016年の特急の区間短縮で利用者の減少傾向に拍車がかかって逆転し現状に至っていることが分かります。
“赤字は年間4億円超”JR吾妻線 長野原草津口~大前の今後は 沿線自治体などが初の協議@NHK2024/5/23より
きょう(5月23日)は、2つの自治体とJR東日本の担当者などが出席して、初めての会合が、冒頭以外およそ1時間、非公開で行われました。この中では、現在の利用状況などを共有したうえで、今後、この区間の利用客のおよそ8割を占める高校生とその家族などに、利用実態についてアンケートを行う方針などが話し合われたということです。次の会議の日程は未定ですが、今後も協議を続けるとしています。
そしてこの区間の利用客の8割を高校生が占めると言うのは長野原草津口~大前の区間で観光客を失う事で利用客を減らしてきたことを端的に示していると思われます。

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吾妻線沿線自治体の観光入れ込み客数@観光入込客統計調査報告書@群馬県観光魅力創出課 平成30年令和3年度版より作成

観光客に関しても特急の区間短縮の影響が大きい嬬恋村の観光客は2010年代中盤他の地域が増減を繰り返したり増加傾向にあったのに対し低迷し、2010年代草津町に次ぐ観光客を誇っていたのが2021年には5町村の中で4位となりました。特急の本数減、区間短縮の影響だけではないとはいえ、吾妻線沿線では草津町に次ぐ観光集客力を誇る嬬恋村の観光業停滞は単なる鉄道の赤字と言うよりも地域経済をどう活性化するかの問題にも結びついているとも言えます。

高校と通学ダイヤを見る
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大前駅周辺、謎の終着駅扱いされる大前駅だが川向こうの高台には嬬恋村役場や、市街地(?)が広がる agatuma5
沿線の高校・役場と朝時間帯ダイヤ(JTB時刻表2024年3月号参照)

また沿線の高校の立地を見ると渋川市に4校、他の町村に3校となっています。また役場の立地を見ると大前、長野原草津口、群馬原町、中之条に町村役場があり渋川には渋川市役所があり、高校所在地を含めて市街地が広がっています。その上でダイヤを見ると芸備線とは違い大前から渋川方面への通学が難しいものの沿線内の高校への通学、役場への通勤自体は比較的無理なくできそうです。ただ贅沢を言えば嬬恋村から屈指の進学校高崎高校(前橋高校は立地的に難しい)、群馬高専のある高崎・前橋市内への通学と大前駅から高崎・前橋市内に通勤が出来ないというのが改善点として挙がるかもしれません。

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参考:吾妻地域の通学流動(15歳以上、単位:人) @群馬県吾妻地域の高校生の通学交通特性からみた課題 西尾 敏和(群馬県立高崎工業高等学校) 森田 哲夫(前橋工科大学)より引用

ちなみに少し古い2015年のデータですが、地元の高校・大学の共同研究の結果を見ると大学生等も含む数値ですが嬬恋村から高崎市への通学が25人、前橋市への通学が21人と決して小さい人数ではない事が示されています。

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現特急「草津・四万」用E257系@上野駅

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吾妻線長野原草津口~大前日中~夜ダイヤ(括弧がついているものは乗換え、赤字は特急、斜め字は臨時列車、〇は土・休日運転、△は特定日運転)※2024年6月18日差し替えました

さて朝の時間帯以外のダイヤも見ていきますと以下の特徴があります。
・大前~万座・鹿沢口は日中最大7時間空くくらい本数が少ないが万座・鹿沢口泊まりの列車は1本を除き20分以上あり、何故万座・鹿沢口折り返しになっているか分からない
・臨時特急が走る関係で万座・鹿沢口折り返しも日中は2~3時間空く
・定期の特急は長野原草津口で普通に接続し万座・鹿沢口迄アクセス可能だが、臨時特急には接続する普通がない
・万座・鹿沢口~高崎は普通は100~119分、特急乗換えは78~83分と時間差が意外に大きい。
・特急の運行時間帯は定期列車で下り高崎発11:19~13:33、長野原草津口発13:07~15:43と偏りがある。
万座・鹿沢口基準で考えれば最小限に食い止められているとはいえ、感じるのは線内の通学、草津温泉への観光輸送の優先度が高く、この地域から群馬県の高崎・前橋を中心とした都市部へのアクセスが後回しになっている感がぬぐえないダイヤと感じられます。例えばこの地域から前橋市の群大病院等の大規模医療施設へ通う高齢者や県庁へ出張する役場の職員、また平日だと数は減るかもしれませんが、沿線の温泉などの観光地へ新幹線から乗り継いで来る観光客など掘り起こせそうな気がしますが果たしてどうでしょうか?

現状のバス路線を見ていく
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西武観光バスの万座温泉行@万座・鹿沢口駅
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群馬大津駅~大前間各駅発着の主な路線バス

さて続いて周辺の交通を見ていきましょう。まず並行区間を走るバスとしては草軽交通の北軽井沢~草津温泉間の長野原草津口~応桑堂バス停間とJRバス関東の長野原草津口~堂西バス停がそれぞれ長野原草津口~羽根尾、群馬大津と並行していますが、長野原草津口から嬬恋村の中心である万座・鹿沢口、大前方面へ向かうバスは無い様です。
沿線の主な路線バスを見ると軽井沢~草津温泉、万座温泉と言う広域な観光ルートの中間点にこの吾妻線が位置しているのが分かります。軽井沢周辺の鬼押し出しや北軽井沢地区は、群馬県であり、かつて特急草津が万座・鹿沢口まで乗り入れていたのはこの観光ルートの一端を担う事で草津温泉だけでない多彩な観光客を取り込んでいたことを意味しているのでしょう。そして現状通学客が8割と言うのはこの観光ルートが衰退してしまったという事、そして既存のバス会社が長野原草津口~大前の代替バスを走らせる可能性は低いという事を意味します。

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西武観光バス万座バスターミナル行き、軽井沢駅行バス時刻表@万座・鹿沢口(斜め字は土・休日運休、(赤字)は特急に接続する普通列車)※2024年6月18日差し替えました

またかつて特急草津のお客さんを運んだであろう万座・鹿沢口のバスを見ると接続は決して良くいです。特に鬼押し出し→高崎・東京方面の乗り継ぎは実質的に14:45発の1本だけ(鬼押し出し発10:45は鬼押し出し迄の始発でかつ土休日運休)となります。 西武観光バス 草津・軽井沢エリア
草軽交通株式会社
JRバス関東
上田バス

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嬬恋村のスクールバス

また退出したバスの代替交通として走る事の多いコミュニティバスではなく長野原町、嬬恋村のHPを調べるとコミュニティバスは無く行政が走らせるのは福祉バスや小中学校のスクールバス等公共交通と言うよりも目的を絞り込んだ交通機関のようです。

嬬恋村スクールバス
嬬恋村福祉バスについて@嬬恋村
買い物支援バス運行中です@嬬恋村社会福祉協議会
外出支援バスについて@長野原町
福祉バスについて@長野原町
八ッ場地区を巡る周遊バス「八ッ場ぐるりん」の運行が始まります@やんば天明泥流ミュージアム(長野原草津口以東)

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高速バスだけでなく水陸両用バスも走らせる地元企業DTS
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草津温泉発着高速バス一覧

つづいてローカル線との競合がよく言われる高速バスなのですが長野原草津口~大前に関しては草津温泉行ばかり見つかりました。最近では地元企業DTSや2022年に東急バスが横浜発着の路線を走らせている様に、増発傾向にあるようです。一番本数の多いJRの湯めぐり号ですが、経由地に渋川・中之条・群馬原町・河原湯温泉・長野原草津口と渋川~長野原草津口間の主要駅も多く競合の影響が懸念されそうですが2012年~2019年の渋川~長野原草津口の輸送密度は横ばいに近く棲み分けがなされていると言うかともに盛り上がっている様な感じがします。逆に万座温泉を中心とした嬬恋方面への高速バスは無い様です。

上州湯めぐり号時刻表
横浜駅西口・新横浜・たまプラーザ-軽井沢・北軽井沢・草津温泉@東急バス
渋谷・中野坂上-軽井沢・北軽井沢・草津温泉(※二子玉川は休止中)@東急バス
DTS HP
吉祥寺~草津温泉線@関越バス

現状の課題をまとめて見る
さてこれまで見てきた経緯と現状を纏めますと
・現状の長野原草津口~大前の利用者の8割が通学客
・2012年の特急減便、2016年の特急区間短縮で長野原草津口~大前の乗客減少傾向が明確となって来た。
・それに伴い沿線の嬬恋村の入れ込み観光客数は他が増加か、増減を繰り返すのに対し明確に停滞・減少傾向に入った。
・通勤・通学を見ると概ね線内の通学には対応していて、高崎・前橋市内への通勤もある程度対応されている、嬬恋村内から高崎・前橋方面への通学への対応が課題
・日中のダイヤは東京から草津温泉方面への特急は沿線の視点で見ると運行時間が偏ったり、臨時特急の影響で日中の本数が少ないなど、沿線~高崎・前橋方面との双方の行き来が不便なダイヤと言う印象を受ける
・沿線のバスを見ると吾妻線に沿った区間は一部あるものの、基本的には軽井沢~草津温泉・万座温泉の広域観光ルートの一端を担う路線が多い
・万座・鹿沢口発着のバス路線のダイヤを見ると本数が少なく接続も良くない
・自治体はコミバスと言うよりもスクールバスや福祉バス等公共交通と言うよりも特定の目的を最低限フォローする交通機関の手当てが精一杯と言った感じ

と言った感じになります。芸備線が通学客の利用すらないのに比べると通学利用への対応が比較的出来ている反面、特急の減便・区間短縮の影響でJRの観光ルートから外れて長野原草津口~大前の観光利用が減少し、長野原草津口迄の特急により日中のダイヤも便利ではなく高崎や前橋と言った県内の主要都市への移動も抑えきれないと言った所です。また地域としては草津と対照的に嬬恋村の観光客数が停滞・減少傾向にあり、その対策も課題と言えます。

鍵を握る場所、万座温泉を少し歩く
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万座温泉の一番宿プリンスホテル

さて個人的には長野原草津口~大前の活性化を考える際に一番大きなポイントだと思う場所万座温泉に行ってきました。この温泉へのアクセスの為に特急が3往復万座・鹿沢口まで乗り入れた2007年の長野原草津口~大前の輸送密度は657人、2022年が263人ですからおよそ2.5倍、2022年との差分である394人の多くはこの万座温泉へのお客さんだったはずです。

万座温泉@Wikipediaより
草津白根山山麓に位置し、冬はスキーのメッカとして春から秋にかけてはかつては湯治場としてにぎわった。源泉温度が高いことからもうもうと湯けむりを上げ、源泉地は地獄的な様相を見せ、硫黄の匂いが充満している。川床には至る所に源泉が湧出している[1]。中心部の外れにある「空吹」(からぶき)と呼ばれる水蒸気を含んだ硫化水素煙の噴出口は万座温泉の名物となっている(2012年頃から噴出量が減少し以前ほどの迫力はなくなっている)。なだらかな山の斜面に旅館・ホテルが点在し、後背には万座温泉スキー場がある。~中略~
万座温泉が本格的に開けてくるのは、戦後になって西武グループによるリゾート開発が行われ、交通の便が改善されてからである。


この温泉は単なる温泉と言うよりもスキーリゾートも併設されたものであり、アクセスのバスが西武観光バスである事から分かるように西武グループにより開発が行われました。万座・鹿沢口から万座に向かうバスでは嬬恋と万座と言う2つのプリンスホテルがあり、嬬恋の方にはゴルフ場、万座にはスキー場が併設されています。

万座温泉観光協会
嬬恋プリンスホテル
万座プリンスホテル

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万座バスターミナルと硫化水素に関する注意書き

バスに40分ほど乗ると万座バスターミナルにつきます。興味深かったのはターミナルにつくと温泉の各旅館の送迎車が現れ私以外のバスの乗客がみな送迎車に乗り込みホテルに向かった事です。万座温泉は下の注意書きにある様に硫化水素の濃度が濃く、歩くのに注意が必要な個所もあるため最近流行っている温泉街にある様な歩き回る様な温泉街と呼べる場所が少ないのが特徴です。

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万座BTから少し歩くと行ける豊国館、安く外湯が楽しめます。

という事で早速外湯に行ってきました。バスセンターからも近い豊国館です。外湯は500円、近所の銭湯感覚の嬉しいお値段できちんと露天風呂もありました。
久しぶりの温泉を満喫しながら子供連れで来ていたお客さんに聞くと結構常連との事でタオルを買う際に従業員に尋ねてみたところやはり常連さんが多いとの事でした。これまで見てきたようにコロナ禍前に確かに減少はしていても10%以内の減少にとどまって来たと言うのが良く理解できました。実際バスターミナルの光景も私以外の宿泊客はなかなか手馴れていました。

豊国館

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万座温泉の雄大な自然

そして自然は雄大でなかなかの絶景であり、高原と言う自然条件も含めて夏の避暑、冬場のスキー、あるいは温泉につかってのんびり過ごしたい人など、この温泉を魅力に思える人は決して少なくはないのかなと思います。

【ご紹介】温泉むすめ 万座千斗星@万座ホテルジュラク

また常連さん頼みではなく新しい顧客を意識した取り組みも見られます。

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万座・鹿沢駅前にある観光案内書、外にはシェアバイクも用意され、中はアイスクリームやコーヒーなどが飲めるちょっとしたカフェや地域の情報コーナーとなっています。また周りにはコンビニや飲食店、また川向うには高校や銀行、郵便局などもあるちょっとした市街地になっています。嬬恋村の観光は西武と言う大資本に絡む観光開発で発展した面が大きいですが、地域の小さな観光資源も発掘してまた違った魅力も開拓してほしいと思います。

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帰りは211系普通電車で

そして万座・鹿沢口で17:36発の高崎方面への普通電車に乗り長野原草津口方面へ向かったのですが興味深かったのは羽根尾駅で行き違った大前方面への電車、大体4両で20人くらいの乗車、そう書くと少なく感じまる方もいますが、万座・鹿沢口行きだったらもう残り2駅ほど、この駅までには長野原草津口、群馬原町、中之条と利用者の多い駅も通り過ぎた後で、渋川出発時だとそこそこ混んでいたのかなと感じました。良く東京から大前方面へ向かって電車に乗って用事が終わって戻っていく際にガラガラだったという話が出ますが、良く考えれば沿線の人達は電車に乗って高崎や前橋に向かい用事が終わったら帰って来る、旅行者とは逆の動きをするわけです。それを考えると簡単にガラガラと言うのも違うのかなと感じました。 さてここまで見てきました。万座温泉はイメージとしては確かに公共交通よりもクルマ向きであり、また最近の流行とは外れているのも確かです。ただコロナ前の2019年の観光客数は日本でも有数の温泉草津温泉を抱える草津町328万人に対して嬬恋村は200万人、負けてはいても今でも無視はできない規模を誇っているのではと感じます。

嬬恋村観光協会について

熱海を盛り上げた新しいお客さんは鉄道が連れてきた…のか
衰退から一転、「熱海の奇跡」が実現した舞台裏を、再生キーパーソンに聞いてきた ―街づくりと観光の連動から「関係人口」の創出まで@トラベルボイス2020/11/8
静岡県・熱海が最近変わってきたと聞いて、何十年ぶりかに訪れてみた。かつては会社の慰安旅行などの団体が多かったが、今では熱海銀座を歩いているのは女子旅のグループ、カップル、ファミリーが目立つ。「コロナ禍で高齢者が少ないこともありますが、若い個人観光客は確実に増えています」。そう話すのは、熱海で街づくりを手掛けている「machimori」の代表取締役・市来広一郎さん。元気な街には人が訪れ、消費し、さらに街が活性化される。街づくりは観光の素地と言えるが、観光誘致を目的に行うものでもない。街づくりと観光の関係とは。「熱海の奇跡」と言われるV字回復の背景にあるものは。熱海再生に取り組んでいる市来さんに聞いてみた。
さて話が変わりますが、令和の今、成功した温泉と言うと熱海を思い浮かべる方も多いと思います。かつて首都圏に近く、社内旅行等でにぎわっていたもののバブル崩壊以降衰退していたものの積極的なまちづくりで若い世代の個人観光客を掘り起こした事で有名です。

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熱海市の観光客数、熱海駅利用者数、市営駐車場利用状況(令和5年版熱海市の観光より作成、駐車場利用状況は2013~2015年一部駐車場の値が未計上)

当然熱海市の成功は熱海市の人達の努力の賜物ですが、熱海市の努力による新しいお客さんを運んできたのは鉄道だったというのは言い過ぎなのでしょうか?実際駅の利用者数、駐車場の稼働台数の推移は同じような感じです。ただ新しいお客さんを若い世代や外国人観光客と考えると既存のお客さんより鉄道・公共交通への指向は高いと思われます。熱海程ではないですが群馬で成功している草津温泉で新しい高速バス路線が増えているのも見てきたとおりです。

まずは本当に巻き込むべき人たちを巻き込むべきでは
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万座温泉行きの際に使った群馬県のMaasGunMaas
“赤字は年間4億円超”JR吾妻線 長野原草津口~大前の今後は 沿線自治体などが初の協議@NHK2024/5/23より
きょう(5月23日)は、2つの自治体とJR東日本の担当者などが出席して、初めての会合が、冒頭以外およそ1時間、非公開で行われました。この中では、現在の利用状況などを共有したうえで、今後、この区間の利用客のおよそ8割を占める高校生とその家族などに、利用実態についてアンケートを行う方針などが話し合われたということです。次の会議の日程は未定ですが、 今後も協議を続けるとしています。
さてこうして見て見るとJRと群馬県のやっている事がどうしてもずれて見えてきます。例えばこの話し合いの場に西武観光バスや草軽交通はいてしかるべきでしょうし、また高校生だけでなく嬬恋村、長野原町など関係する自治体の観光業に関わる人達、またこの地域から高崎・前橋などと行き来する働く人たちの意見も聞いてしかるべきです。草津温泉が繁栄しているから万座温泉は別にいいと考えていないかもしれませんが、もしそうだとすれば大きな間違いと言う他ありません。どんなに素晴らしい観光地でもいつも繁栄している訳ではなく衰退したり、再生したりを繰り返すのは熱海を見れば明らかで、その最悪い影響を最小限に食い止めるのには他の場所がきちんとしている必要があります。それ以前に過去の人達が投資を行い育て上げた資産を安易に手放すのはもったいないと言うのはこの吾妻線と万座温泉を調べて感じた事です。はたしてこの路線がどんな結論を辿るのか、今後とも注目していきたいと思います。


芸備線改善策を考える


若者も盛り上げます。

JR西日本、ローカル線「芸備線」の存廃協議開始 事なかれ主義は捨てた@日経ビジネス2024/3/26より
国土交通省中国運輸局が設置した「芸備線再構築協議会」の第1回協議会が、3月26日に広島市内で開かれる。2023年10月1日に施行された改正地域公共交通活性化再生法に基づき、同月3日にJR西日本が設置を要請。関係する沿線自治体への聴取を踏まえて、24年1月12日に設置が決定された。広島市と岡山県新見市を結ぶ全長159.1キロメートルの芸備線のうち、特に利用客数が少ない備後庄原(広島県庄原市)~備中神代(岡山県新見市)間の68.5キロメートルが対象だ。


さてJRの赤字旅客線問題の西の横綱とも言われている芸備線の備後庄原~備中神代に関して国土交通省が設置した再構築協議会の第一回協議会が行われたようです。ここではその際の資料を参考に芸備線の乗客増加策について考えていきたいと思います。また赤字旅客線問題に関しては下記もどうぞ。

令和の大きな宿題その15 バス転換と言う贅沢が許されない時代に~赤字鉄道路線廃止問題に思う
令和の大きな宿題その12 JR西日本が投げかけたもの

いるべき通学の高校生がいない路線~芸備線概要~
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芸備線各区間の経営状況@芸備線再構築協議会の協議体制について@中国運輸局2024/3/26より

さて、まず芸備線の経営状況を見ていきます。今回協議会で対象となり営業係数の悪い路線として有名になった備後庄原~備中神代ですが、実は赤字額は各区間3.1億円以下とそう大きくないのが分かります。むしろ下深川~三次の赤字額が17.1億円と路線全体の赤字額の過半を占めています。言うなれば備後庄原~備中神代は運行経費を抑える事で赤字を最小限にとどめていると言えます。

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芸備線各区間の輸送人員@芸備線再構築協議会の協議体制について@中国運輸局2024/3/26より

そしてこの区間の利用者を見ると、おかしな事に気付きます。輸送密度11人と非常に利用の少ない備後落合~東城間を含む備後西城~東城間の通学定期利用者が殆どいない事です。俗に人口の少ない地域での旅客鉄道利用者で大きな割合を示すのは高校生の通学と言われ、周辺の備後庄原~備後西城、野馳~備中神代に関しては通学定期利用者が利用の大半を占めている事を考えるとそのおかしさに気付かれる方もいると思います。

高校はあるが通学用の列車もバスも足りない~庄原市の交通事情~
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芸備線各駅半径2㎞の人口@芸備線再構築協議会の協議体制について@中国運輸局2024/3/26より
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備後庄原~新見間に立地する高校・大学

いや、この地域は人口もほとんどいなくて高校もない地域だからではないかと考えた方もいると思いますが、沿線人口は決して多くはないものの東城地域は備後西城の3倍近い人口を抱え、広島県立東城高等学校も立地しています。また備後西城、備後庄原を合わせると庄原市内に公立高校4校、大学1校、新見市内には高校2校、大学1校と一定の学校があります。そう考えると備後西城~東城に関しては高校生・大学生の通学需要はあり得るし、ここまでないというのは不自然に感じます。

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芸備線並行バス路線@芸備線再構築協議会の協議体制について@中国運輸局2024/3/26より
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東城⇔庄原線時刻表@備北交通より

並行して便利なバス路線があるのではと感じる方もいるかもしれません。実際資料でも並行のバス路線に関する記載もあります。ただ庄原市内で言えば実際に通学に使える路線は資料に時刻が掲載されている庄原~西城間の路線と、高速バスのうち東城→庄原の片道位です。他は調べて見た限りでは通学に適した時間帯の運行は確認できませんでした。また並行バス路線のある庄原~西城に関しては鉄道利用も一定数いるのも確かです。

参考
生活交通バス・タクシー@庄原市
路線バス@備北交通

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備後庄原・備後西城・東城・新見各区間の通学時間帯時刻@JTB時刻表2024年3月号調べ

高校があり、人口も多い備後庄原・備後西城・東城・新見各駅間の通学時間帯の時刻を調べると、備後庄原~備後西城、東城~新見間は比較的良い時間帯に列車があるのですが、新見・東城→備後西城・備後庄原は5時台発と時間が早すぎ、備後庄原・備後西城→東城・新見は通学に適切な列車がない事が見て取れます。纏めると備後庄原、備後西城地区から東城高校及び新見市内への学校へは現状通学に使える公共交通が確保できていないと言えます。

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高速バス学割定期券@備北交通より

また東城→備後庄原の通学の足を芸備線と共に担う高速バスなのですが1月の学割定期券33600円と芸備線が11,970円なのに比べて値段が高いのも頭に置いておく必要があります。月3万円と言うのはお金持ちの家はともかく、家計にとっては大きな負担になると思います。

路線バス廃止457・19キロ 中国地方2023年度 運転手不足も要因@中国新聞2024/4/22より
中国地方で2023年度に廃止となった路線バスが457・19キロに上ることが中国運輸局のまとめで分かった。広島市から愛知県豊橋市の直線距離に相当する。3月末での廃止は282・69キロと6割を占めた。


2024年問題で言われるように、バスの運転手不足が深刻で、バス路線を新しく増やすよりどんどん廃止の方向に向かっています。高校の通学時間と言う人の集まりづらい時間帯に運転手を集めてバスでフォローするのは難しいと思われます。現状備後庄原→東城の高速バスが運行されていないのはそれが理由でしょう。

つながりの薄い地域内で孤立し学生が集まらない地方の高校と寄宿舎を備える都会の進学校
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西城紫水高校 荻野寮の紹介より
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広島県立庄原実業高等学校2024年一次選抜の志願状況より
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広島県立庄原格致高等学校2024年度一次選抜志願状況より

実際この状況は各高校にも影響を与えているように思います。上は庄原市の4つの公立高校のうち東城高校を除く各校のHPから引用したものです。庄原実業高校・庄原格致高校では志願者募集に苦戦し、西城紫水高校では全国から学生を募集するための寮の案内がなされています。東城高校に関してはHP上にそういった案内がないですが、他の学校の状況を見ると苦戦していると推察できます。

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広島県立広島中学校高等学校寄宿舎凌雲塾HPより

その一方で都市部の高校では寮を設置して公共交通でのアクセスが悪い地域からの学生の募集も行っています。上は広島市の郊外である東広島市に立地する県立広島中学校高等学校の寄宿舎のHPからの引用です。進学実績を見ると広島大学に40名、九州大学に12名、東京大学・京都大学5名と有力な進学校である事が読み取れます。庄原市からどれだけ進学しているかまでは分かりませんが、地域の公共交通が良くない事で高校の段階で地域から若い人が都市部に流出し、地元の高校・大学が厳しい状況に置かれている面もあるというのは頭にとめておいても良いと思います。

改善策を考える
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芸備線ダイヤ@芸備線再構築協議会の協議体制について@中国運輸局2024/3/26より

という事で改善策を考えていきます。まずは増発となります。上の図で赤丸がついている部分、現状備後落合発6:41の新見行きの列車を備後庄原発にすれば現状備後庄原・備後西城から東城・新見地区の高校への通学が可能となり、かつ新見着8:08、東城7:31着と時間帯も悪くないです。また現状備後西城7:01、備後庄原7:29着となっている列車は三次市内の高校への通学を意識した為か庄原市内への到着が早くなっていますがこの列車の3~40分後に到着する列車があるとより通学利用を促進する事が可能となると思われます。

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ご説明資料@JR西日本2023/8/2より

また現状落石への対応で25㎞/h徐行となっている区間も予算を立てて対策すれば徐行解除できるかもしれません。そうすれば特に備後庄原~東城でスピードアップが可能になります。

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芸備線徐行解除後の所要時間想定(姫新線津山~新見間の評定速度を参照)

仮に同じ山間部のローカル線姫新線の津山~新見間の評定速度を参考に徐行解除後の所要時間を想定すると東城~備後庄原の所要時間は30分以上短縮されます。そうすれば単純な所要時間短縮だけでなく、東城・新見、備後西城・備後庄原への通学需要を1本の列車でフォローする芸備線庄原市内の通学輸送にとってより良い時間帯での列車設定は可能になると思われます。

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改善時のダイヤと効果

実際改善を想定したダイヤを見ると大きく改善されることが見て取れます。しかしこの改善策にはコストがかかるのも事実です。
徐行解除:落石対策費用、三次あるいは備後庄原~備後落合間増発の運行費用(運転手・燃料費等) 増発:備後落合~東城間の行き違い設備増設、増発列車の運行費用(運転手・燃料費等)
現状を見ると、これらのコストを負担しないから赤字額が抑えられ曲がりなりにも鉄道を維持できたとも言えます。

地方鉄道の活性化に向けて@国土交通省資料より
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JR只見線(只見~会津川口)の鉄道事業許可~豪雨被害からの運転再開に向けて、運行と施設保有を分離します~@国土交通省2021/11/29より
 この区間は、「平成23 年7月新潟・福島豪雨」で橋りょう流失等の甚大な被害を受けましたが、 沿線自治体の強い意思を踏まえ、平成29 年6月、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)と福島県は、運行と鉄道施設等の保有を分離する上下分離方式を導入し、鉄道により復旧することで合意し、 現在、令和4年中の運転再開を目指して復旧工事が進められています。
 今回の許可は、上下分離方式の導入に必要な鉄道事業法上の手続として行われたJR東日本からの 第二種鉄道事業(運行)の許可申請、福島県からの第三種鉄道事業(鉄道施設等の保有)の許可申請 に対して、それぞれ行うものです。
 なお、許可書の交付については、下記のとおり行います。 〔参考〕 この区間の復旧工事については、平成3 0 年6月成立の改正鉄道軌道整備法により新たに対象となった黒字事業者の赤字路線の事例として、国の災害復旧補助制度が適用されており、上下分離方式の導入などの事業構造の変更等の要件を満たすことによる補助率の嵩上げ(通常4分の1→3 分の1)が行われている最初の事例になります。


多分この改善を行うのには福島県の只見線の様な上下分離でインフラコストを福島県がある程度引き受けたような形が必要となるのではないかと思います。実際備後庄原~備中神代間の線路保存費3.5億円、電路保存費1.2億円、保守管理費0.3億円にプラス落石対策等を広島県、岡山県、庄原市、新見市を纏め国の補助制度などを活用し、実現していくのは非常に難しい道です。

新見・庄原・三次の3市を結び付けて生き残れる地域となれるか

岡山県福山市で働きたいという剛の者はいなかった…

しかしそれをやる理由もあるのではないでしょうか?芸備線の走る広島県は近年人口流出が全国1位で問題となっています。その問題を報じる報道では「電車が5分毎に走るなら」と言う女子大生の話が印象に残りました。何故かと言えば県庁所在地の広島市では文字通り広島電鉄の「5分毎に走る電車」は簡単に見れるからです。言うなれば彼女の言葉は広島市の様な都会以外で鉄道が不便で市内の通学手段すらままならなかったり、三江線や可部線末端部の様に廃止される路線すらあるような状況に対する懸念の言葉なのではないでしょうか?

日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」@源田新書編集部2022/12/6より
しかし、地方移住にも希望はあると河合氏は言う。
現状の移住政策では一極集中を是正できていないが、「地方集住」という形であれば可能性があるのではないか、と。
人が住む地域と住まない地域を明確に分けることができれば、そこには民間事業を残すことができるという。最低10万人の商圏を維持できれば、そのエリアは持続可能と言われている


近年消滅可能性自治体と言った言葉が飛び交い、地方都市は存続の不安に悩まされています。その際に人口10万人と言うラインが注目されています。庄原市も新見市も人口は3万人前後と程遠い水準です。ただ三次市も合わせた3つの市が1つの圏として機能したらどうでしょうか?
三次市 47676人 高校3校
庄原市 30975人 高校4校、大学1校
新見市 25787人 高校2校、大学1校
合計  104438人 高校9校、大学2校 
人口は10万人を超え、高校9校、大学2校と学校の選択肢も決して少なくはないです。ただ今の芸備線ではこの3市を繋ぐ路線としての機能は弱いです。廃線となれば猶更でしょう。この3つの市がそれぞれ単独で人口減少による地方衰退の激しい波に立ち向かっていけるとは思えないです。ただ3つの市の結びつきを深めて疑似的な10万都市であればやれることは増えるはずで、それだけ生き残れる可能性は高まるはずです。その為に芸備線と言う通学を担う公共交通の軸を維持、投資を行う意味は大きいと思います。

聖地巡礼で都会の観光客を取り込もう
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3.これまでの利用促進と実績@芸備線再構築協議会の協議体制について@中国運輸局2024/3/26より

さてここまで高校生・大学生の通学をメインに考えていきましたが、多分芸備線の様なJR地方路線で通勤・通学の様なローカル輸送だけで成り立つのでなく複合的な需要によって成り立っています。その為芸備線でも様々な努力をしています。例えば備後庄原~広島の直通列車の運行や三次~新見間の増便実験など、バス&レールどっちも乗り放題パス等の企画乗車券など特にバスとの連携が目立ちます。

「ちょこっとパス+」「ちょこっとパス」@備北交通
バス&レール どっちも乗り放題パス 2デイ@JR西日本
ひろしま1デイきっぷ@JR西日本
setowa広島ワイドパス
setowa岡山ワイドパス
芸備線通学支援・モニタリング事業@庄原市

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現状の庄原市内から各地へのアクセス@JTB時刻表2024年3月号調べ

ただし、どうしても広島県、岡山県と2つの県にまたがっているので県を跨ぐアプローチが弱い事、多分大阪・東京などの大都市からの顧客誘致が弱い印象があります。上は現状ダイヤでの庄原市内から広島・岡山へのアクセスをまとめたものです。これを見ると東城からだと岡山、備後庄原からは広島へのアクセスが良い反面、備後落合~東城の本数が少ない為この地区で分断しているのが分かります。極端に言えば東城からだと新見~岡山経由で広島に行った方が便利ですらあるのです。とは言え、落石対策を行って普通の速度で走ると、東京や大阪からであれば新見経由でも実は広島経由とそれほど所要時間は変わらなくなります。



朝霧の巫女×広島県 三次市@アニメ聖地88

東京や大阪など大都市からの需要掘り起こしを考えて見ましょう。例えば芸備線沿線の三次市はアニメ聖地88にも選ばれているアニメ朝霧の巫女の舞台、庄原市はアニメ君のいる町の舞台であると共に原作者瀬尾公治の出身地でもあります。どちらも10年以上前の作品ですが、それでも朝霧の巫女はアニメ聖地88に選ばれている事、瀬尾公治氏は昨年女神のカフェテラスがアニメ化されている事等を考えるとラッピング車両の導入など盛り上げる手はあるのではないかと思います。

君のいる町x庄原市
三次市観光PRポスター完成発表会及び 「訪れてみたい日本のアニメ聖地88(2018-19年度版)」認定プレート贈呈式 開催について@三次市
君のいる町の聖地巡礼・ロケ地!アニメロケツーリズム巡りの場所や方法を徹底紹介!【君町】@旅する亜人ちゃん

災害多発路線山陽本線のバイパスと位置付けられないか
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JR貨物グループ中期経営計画2026@JR貨物より

また2024年問題でモーダルシフトが課題になる中、災害の多い山陽本線のBCP対策が課題になっています。それを考えると伯備線や姫新線と接続している芸備線を災害時のバイパス路線として整備するという発想があっても良いかもしれません。また旅客列車を使っての小口の貨物輸送での増収策の試行錯誤も考えてみても良いと思います。

如何だったでしょうか?芸備線再構築協議会はこれから進んで行くのですが、書いていて思うのは所謂ローカル線問題と言われる問題は営業係数が独り歩きしがちですが、その背景にある地域をじっくり見ていく必要があるのかなと感じました。願わくは庄原・新見・三次と言った沿線の市町村、路線を抱える広島県・岡山県、そして日本全体にとって納得いく良い結論が出る事を祈ります。


令和の大きな宿題外伝その6~ドライバー不足の時代令和のバス転換を考える~

小樽市で開催の並行在来線廃止「問題提起」セミナー 小樽市長や地元代議士らおよそ40名が参加@Yahoo!ニュース2023/7/12より
 小樽市倫理法人会は、2023年7月8日(土)の経営者モーニングセミナーで、交通コンサルタントの阿部等氏らを講師に招き、長万部―小樽間で廃止の方針が決定された北海道新幹線の並行在来線問題を提起するセミナーを開催。
 セミナーには、小樽市の迫俊哉市長のほか、中村裕之衆議院議員とおおつき紅葉衆議院議員も出席。地元トップが勢揃いし、小樽市のほか余市町や倶知安町などからもおよそ40名が出席した。
 冒頭に登壇した経済ジャーナリストの櫛田泉氏は、並行在来線の廃止の方針が決定されたプロセスについて、密室協議の場で同程度の鉄道路線のおよそ7倍の経費で赤字額が見積もられ廃止の結論が導かれたことを指摘。
 特に、輸送密度が2000人を超えている小樽―余市間については、朝ラッシュ時の乗客をさばくためには10台以上のバスが必要になること。沿線にバス路線網を展開する北海道中央バスがドライバー不足を理由に、鉄道代替バスの引き受けを断り続けていることにも触れられた。
北海道新幹線「並行在来線」代替バス案の理不尽地元バス会社は「話を聞いていない」と憤る@東洋経済2023/3/21
バス転換の留萌本線、「鉄道代替交通」は前途多難@東洋経済2023/7/11より
2023年3月31日の運行をもって、JR北海道の留萌本線留萌―石狩沼田間35.7kmが部分廃止となった。留萌本線の廃止は、2016年12月の増毛―留萌間16.7kmに続くもので、2026年3月末には残る石狩沼田―深川間14.4kmが廃止となり、留萌本線の全線が廃止となる予定だ。
しかし、留萌本線の代替交通を担う沿岸バスは早くも4月28日になり、深川経由で留萌と旭川を結ぶ留萌旭川線について、関係自治体と今後の存廃協議を進めていることを公表。鉄道代替交通の持続可能性については、すでに暗雲が立ち込めている。
留萌旭川線 時刻表@沿岸バスより
■重要なお知らせ  留萌旭川線(留萌十字街~碧水~秩父別役場前~深川十字街~神居古潭~旭川駅前)は、地域間幹線系統として国・北海道から多額の補助を受けていますが、これら補助金をもっても欠損を賄いきれず、著しい赤字が続いています。現在、関係市町と今後の存続について協議を進めています
留萌線(石狩沼田・留萌間)バス転換後の 新しい交通体系について@JR北海道


さていきなり長々と引用しましたが本州のJR旅客線に先行して、赤字旅客線の存続について話し合われ、路線の廃止が決定したり実際廃止になった北海道で鉄道廃止後の交通を担うバスに関する話題が出てきました。前者は北海道新幹線開業を機に並行在来線として鉄道廃止の方針が決まったとされる長万部~小樽間で特に利用者の多い小樽~余市間でこの問題に対し提起する会合に小樽市長や与党自民党の中村裕之衆議院議員を含む複数の衆議院議員が参加した事、そこで「北海道中央バスがドライバー不足を理由に、鉄道代替バスの引き受けを断り続けている」事衝撃的な事実が共有された話、後者は3月に廃線になった留萌本線留萌―石狩沼田間でJR北海道で代替バスとしてプレスリリースが出された留萌と旭川を結ぶ留萌旭川線に関して鉄道廃止から2か月足らずでバスの方も存続に関する協議を進めているという記事です。
どちらもかつて見られなかった光景の様な気がします。廃線代替バスの早期の廃止と言っても2~3年程度は最低でも経っていましたし、そもそも鉄道廃線からわずかな期間でバスの廃線も出るのは沿線自治体及びJRの計画がきちんとしていなかったという事でもないかと思われます。
それ故に小樽市長及び地域の有力政治家たちが情報収集に走ったのでしょう。そして浮かび上がったのはドライバー不足と言う点ではないかと思います。

ドライバーがいない~平成と令和のバス転換事情~
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グラフ:平成2年(1990年)、令和2年(2020年)の現役世代の5歳刻み人口(平成2年、令和2年の国勢調査より作成e-statより作成)

さて平成期にはなかなか見られなかった光景が令和になって見られるようになった背景、それは少子化による労働人口、特に若い世代の人口の減少が挙げられます。上は平成2(1990年)と令和2(2020)年の15~69歳の5歳刻みの人口を並べたものです。平成2年を見るとこれから社会に出るであろう学生を含む15~24歳の人口が25歳以降の人口より多く、バス転換を図るとしてバス会社が新たにドライバーを雇用するのに地域に若い人がいないという事は無かったのではと感じます。その一方令和2年を見ると世代が若くなるほど人数が減っていき、地域の若い人がどんどん減っていて新しくバス転換をするにしても若いドライバーの確保が難しくなっているであろうことが見て取れます

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表:バス運転者不足問題とその改善の方向性について 近畿大学経営学部 後藤 孝夫@2018年3月6日(火)開催地域バス交通活性化セミナー 「路線バス運転手確保とバス交通の活性化」報告資料 より
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年齢別大型2種免許保有者 運転免許統計令和4年度版より作成
※グラフ作成時の計算ミスがあったため差し替えました。失礼しました。(2023/8/4)

それだけではありません。バスの運転手に必要な大型2種免許保有者を見ると更に絶望的になります。比較的若い30代以下はわずか5.1%、企業で言えば定年退職者にあたる60代以上で約60%を占めています。現役世代でも50代が24%で40代以下が16.7%と50代が過半数を占め、普通に考えればこの50代のドライバーの引退をどう補っていくかと言うのが大きな課題で、このドライバーが5年後10年後完全にドライバーを引退しているとは思えませんが、それでも一般的には第一線を引いている年齢と言えます。。

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表:バス運転者の有効求人倍率@統計からみるバス運転者の仕事@厚生労働省より

その為他の業種に比べても倍近い有効求人倍率となり、ドライバー不足が顕在化しています。このドライバー不足の中で新しく鉄道を廃止してそれをバスで補おうにも現状の路線を維持するので手一杯となるのではないでしょうか?

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表:タクシー運転者(男性)の年齢別構成比率の推移@タクシー事業の現状について 国土交通省より

またバスがダメなら乗り合いタクシーと言うのはよく聞きますが、そちらもも厳しいです。10年近く前の統計ですが2014年段階でもタクシー運転手の60歳以上の比率は50%以上となっています。2001年14.1%だった事を考えると急激に高齢化しています。実際コミバスで運営しているタクシー会社の倒産によって運行停止(ただし現時点では別会社で復活)したケースもあります。

Choose or Loose~ポストコロナ時代の統一地方選挙~その3あるコミバスの運行停止が語る令和の新しい常識

こうして見るとこれから労働市場に入ってくる若い人の多かった平成期に比べて若い労働力が少子化で激減した現在は相当厳しくなっている、赤字鉄道路線のバス転換に関してはこの事を意識せざるを得ないと言えるのではないかと思います。

2010年と言う転換点~若者のクルマ離れと免許返上が導く緩やかな脱クルマ社会~
9割以上の人が「今後さらにクルマ離れは加速する」@DIME2023/5/13より
まずは、自分自身や、自分自身より若い世代などを見て「車離れ」を感じたことがあるか聞いてみた。
60代以上の半数以上である63%の方が、自分自身や、自分自身より若い世代などを見て車離れを感じたことが「ある」と回答した。50代の方は57%、40代の方は52%と、年代が下がるにつれて車離れを感じたことが「ある」比率が減っているのが印象的。~中略~
「維持費の問題」や「物価は上がったが賃金は上がらないため」といった理由が多く挙げられていた。ほかにも「車を持たずとも生活に困らないくらいには交通の便が発達しているから」といった意見もあった。~中略~
続いて、今後車離れはさらに加速していくと思うかを聞いてみた。60代では98.4%と、ほとんどの方が今後「車離れ」はさらに加速していくと「思う」と回答した


ただ赤字鉄道路線の問題に関して、「自動車が便利だから」と思われる方が多いかもしれません。しかし2023年の今それが当てはまらなくなりつつあるのではと感じます。上の引用は若者のクルマ離れに関して30代以上にアンケートしたものなのですが興味深いのは就職氷河期以前の世代が特に「若者がクルマ離れしている」と感じている事、そして就職氷河期以降の世代も含めて過半数が「若者がクルマ離れ」していて90%以上の人が「維持費の負担」など経済的理由から今後その傾向が加速すると認識している事です。ある意味団塊の世代~所謂バブル世代と言う「クルマ社会を推進してきた」世代が就職氷河期以降の世代全体で「クルマ離れ」の定着を感じ、そして全世代で今後「クルマ離れ」が進むと思っているというのが現状ではないかと思います。

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運転免許の申請取消(自主返納)件数と運転経歴証明書交付件数の推移@警察庁

そしてクルマ社会を推進してきた世代がいつまでも車に乗り続けるかと言われたらこれも潮目が変わって来ています。何かといえば免許返納が定着してきたのです。平成中期の2002年には1万人未満だったのが2017年以降6年連続で返納者が年40万人を超えています。コロナ禍で減少はしていますがこれが2002年の1万人未満に戻ることは無いと思われます。言って見れば「クルマに最も熱心だった世代」も高齢化で「クルマを手放す」時期に入ってきたわけです。 大型2種
表:乗り合いバスの輸送人員@統計からみるバス運転者の仕事@厚生労働省より

その結果平成期2010年くらいまで減り続けてきたバスの利用者は2010年代コロナ禍に入る前まで人口減少下に関わらずわずかながら増加トレンドに入った訳です。言って見れば平成時代に進んだクルマ社会化が2010年前後を機にその拡大を止め、むしろ令和は緩やかな脱クルマ社会になってきているとすらいえるのかもしれません。確かに「地方の人はクルマを手放さない」と言う見方もできるのですが、単純に地方とだけ言えないのは赤字旅客線で問題になっている路線には県庁市クラスの都市への乗り入れ路線もあり、また5万人クラスの都市が沿線にない路線はさすがに少数と考えると単純にそうも言えなくなります。そうなってくるとバス運営者にとっては50代が主力となっているドライバーの世代交代の為にドライバーを確保する必要があり、廃線となった鉄道の代替バスの為にドライバーが確保できる保証はどこにもないわけです

転換バスの運転手をどこから連れて来るか
市自ら選んだ「攻めの鉄道廃止」 JR石勝線夕張支線、代替バスはどう「進化」したのか@のりものニュース2019/4/21より 2019年3月31日(土)をもって127年の歴史に幕を閉じたJR石勝線の夕張支線(新夕張~夕張間16.1km)。この鉄路に代わり運行を開始したのが、夕張市に本社を置く夕張鉄道(夕鉄バス)が運行する路線バス「夕張市内線」です。鈴木直道前夕張市長(現北海道知事)による「攻めの廃線提案」から3年弱かけて運行実現に至ったこのバスには、これまでの鉄道代替バスの事例にとらわれない、持続可能な交通体系への実現を成しとげようとする夕張市の姿勢が見えてきます。~中略~ その後、JR北海道は社内に夕張市内の交通体系見直しなどに協力するプロジェクトチームを設置し、課長級の社員1名を夕張市へ派遣します。さらに、2018年3月23日、夕張市とJR北海道は、新夕張~夕張間の鉄道事業廃止について、次のような条件で最終合意に至ります。 ・鉄道事業廃止日を2019年4月1日とすること。 ・JR北海道は、夕張市に対して、持続可能な交通体系を再構築するための費用として7億5000万円を拠出すること。 ・JR北海道は、夕張市が南清水沢地区に整備を進めている拠点複合施設に必要となる用地を一部譲渡すること。


そう言った厳しい環境の中ある程度長く続く転換バスを走らせるとしたらどうしたらよいのでしょうか?それを考えるのに面白そうな例があります。鈴木北海道知事が夕張市長だった時期に行った石勝線夕張支線の「攻めの廃線」です。このバス転換の特徴として
・JR北海道との協力による綿密な計画
・JR北海道による用地一部譲渡や7.5億円もの経済的負担

夕鉄バス 夕張営業所時刻表より
新夕張駅~新札幌 普通 3 158分
リスタ~新札幌 急行 3~4 103分
新夕張駅~夕張市石炭博物館 7~8 47~8分
新夕張駅~リスタ 0~1 14分
夕張本社ターミナル~夕張市石炭博物館 2~4 13分


そして廃線から4年経った現在でも夕張支線の代替区間と言える新夕張駅~夕張市石炭博物館で7~8往復、新札幌方面への路線と接続する区間便を合わせれば10往復以上、夕張支線廃線1年前の本数が9往復でしたからその時期以上の利便性を確保できています。

夕鉄バス、札幌~夕張間など3路線を廃止。JR夕張支線廃止から4年で@タビリス2023/3/14より
夕鉄バスを運行する夕張鉄道は、新札幌駅前を発着する3路線について、2023年10月1日に廃止することを明らかにしました。
廃止となるのは、以下の3路線です。
・新夕張駅前~栗山駅前~新札幌駅前(3往復)
・りすた~由仁駅前~新札幌駅前(急行、5往復)
・栗山駅前~南幌ビューロー~新札幌駅前(4往復)
夕鉄バスは、夕張市、栗山町、由仁町、長沼町、南幌町から北広島市、江別市を経由し札幌市までの地域をまたぐ路線を4路線運行していて、そのうちの3路線を廃止することになります。南幌東町~新札幌駅前の路線については、運行を継続します。
夕鉄バスは、廃止の理由として、運転士不足の慢性化や、新型コロナウイルス感染症の影響による利用者の減少、原油価格の高騰を挙げ、「さまざまな要因が重なり、大変厳しい経営状況が続いており、バス路線の運行を維持することが困難な状況」と説明しています。
バス路線の廃止について@夕張鉄道2023/3/13


そしてそんな夕張鉄道にも新型コロナをはじめ運転手不足、燃料価格高騰などの苦境が訪れました。そしてその中夕張鉄道が選んだのは夕張~札幌市内の長距離バス路線の廃止でした。高速バスを中心とした長距離バスは一般的にバス会社のドル箱と言うイメージですが一方で夕張鉄道夕張営業所のバス路線では夕張市内完結の路線は急行便で103分、普通便に至っては158分と所要時間が長く、運転手の負担が高く、また人繰りも難しくなっているのが大きいです。
逆に市内バス路線は最大50分弱、区間便なら20分以内と短距離で運転手の負担が小さく、また高齢の運転手が増えていく中でもその活用をしやすいメリットは現状大きいのではないかと思います。

高速はこだて号の乗客ら5人死亡、正面衝突のトラックが対向車線にはみ出したか@読売新聞2023/6/19より
 18日正午頃、北海道八雲町の国道5号で、札幌と函館を結ぶ長距離バス「高速はこだて号」とトラックが正面衝突した。道警によると、双方の男性運転手と、バスの乗客の男女3人の計5人が死亡。乗客12人がけがをした。
 発表によると、亡くなったのはバスを運転していた札幌市清田区、興膳孝幸さん(64)、トラック運転手の北海道森町港町、梶谷誠さん(65)、乗客の函館市旭町、地方公務員若崎友哉さん(33)、鹿部町本別、パート従業員高清水忍さん(57)、札幌市清田区、高橋裕美さん(55)。


現状の高速バスでは札幌~函館と言う長距離の幹線でも60代の運転手が運転しています。当然安全面での配慮があり、単純に高齢の運転手が危険とは言いませんが、ただ5年後70を過ぎた運転手が可能かと言われたら相当難しいと思います。そう考えると経済的なバックアップがされていて運転手の負担の少ない短距離便の設定も可能な代替バスと高速バスどちらをとるかと言われたら高齢ドライバーが増える今代替バスを取り高速バスを廃止するバス会社は少なくないと思われます

まとめ~もし赤字旅客鉄道線をバス転換するなら~ さて鉄道好きとしてあまり考えたくない話ですが、赤字旅客鉄道線をバス転換するなら以下が必要なのではないかと考えます。
1,一定期間のバス路線を維持するための経済的な計画
2、団塊ジュニアが70代に入り、間違いなく一線からは引く時期までの20年程度のドライバー確保の見通し
3、2に伴いドライバー確保の為廃止が出るであろう高速バスの影響をフォローするための鉄道路線の計画とその為の設備投資の為の負担の分担


そしてそれは濃淡はあるとはいえ、鉄道を廃止しないにしても少なからず地方の交通、その受益者と言える大都市(交通機関が地方から人を運んできてくれるという意味で)にも言える事ではなかろうかと思います。

Choose or Loose~ポストコロナ時代の統一地方選挙~その3あるコミバスの運行停止が語る令和の新しい常識

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写真:コミバスは路線バス撤退地域の貴重な交通機関@足利市

選挙概要
さて私の地元横須賀では4月9日に神奈川県知事・県議会議員選挙、4月23日には横須賀市議会議員選挙が行われる等統一地方選挙が行われます。当日投票できないという方も横須賀の場合だと以下で期日前投票及び不在者投票について情報がありますので参照ください。
令和5年4月9日執行神奈川県知事選挙及び神奈川県議会議員選挙のご案内
令和5年4月23日執行横須賀市議会議員選挙のご案内
また神奈川県知事選挙、県議会議員選挙、横須賀市議会議員選挙の期日前投票に関しては下記で実施可能です。
~4月8日まで実施中(県議会議員選挙は4月1日より、市議会議員選挙は4月17日~22日)
横須賀市選挙管理委員会(ヴェルク横須賀、京急横須賀中央駅、JR横須賀駅より横須賀中央方面バス横須賀中央バス停より徒歩)
4月1日~8日(市議会議員選挙は4月17日~22日)
横須賀市内各行政センター(追浜、田浦、逸見、衣笠、大津、浦賀、久里浜、北下浦、西)
4月2日~8日(市議会議員選挙は4月17日~22日)
横須賀モアーズシティ8階(京急横須賀中央駅、JR横須賀駅より横須賀中央方面バス横須賀中央バス停より徒歩)

神奈川県議会議員・県知事選挙 候補者情報
県知事選挙選挙公報
県議会議員選挙横須賀市選挙区選挙公報
県知事選挙各候補者HP
岸 牧子
加藤 健一郎(HP不明)
黒岩 祐治
おおつ あやか
県議会議員選挙横須賀市選挙区候補者HP
永井 まさと
内川 まさき(HP不明)
田中 洋次郎
亀井 たかつぐ
なまい 洋子
竹内 英明
井坂 しんや

Choose or Loose~ポストコロナ時代の統一地方選挙~その1植松聖の置き土産
Choose or Loose~ポストコロナ時代の統一地方選挙~その2 PTA外注化が問うもの

あるコミバスの運行停止が語るタクシー・バスのおかれた苦しい状況
コミュニティバス「ハマちゃんバス」@横須賀市より
ハマちゃんバスの運行停止について
ハマちゃんバスは、運行事業者の廃業により、やむを得ず令和5年1月5日に運行を停止することになりました。
現在、横須賀市では、早期にバスが再開できるよう、新たな事業者や関係機関と鋭意調整を進めているところです。
運行再開が決まり次第、市のホームページ等でご案内させていただきます。
ご迷惑をお掛けしており大変申し訳ございませんが、運行の再開まで今しばらくお待ちいただきますようお願い申し上げます。 (株)日の出タクシー/破産手続き開始決定 <神奈川>@JCNETより
(株)日の出タクシー(所在地:神奈川県横須賀市吉井2 丁目*** )は1月25日付、横浜地裁横須賀支部において破産手続きの開始決定を受けました。


2017年の横須賀市長選挙にて横須賀市現市長上地克明氏の公約で取り上げられ、当blogでも何度か取り上げた横須賀市のコミバスはまちゃんバスが運行事業者日の出タクシーの廃業により運行を停止したというニュースが入ってきました。

Choose or Loose 横須賀市長選挙2017~アーティスト村とコミュニティバス~
「はまちゃんバス」Go!!~横須賀のバスを考える~

タクシー業の倒産が過去10年で最多、コロナ禍が促す業界変革@東京商工リサーチ2023/2/4より
“景気を映す鏡”と言われるタクシー業界。
 東京商工リサーチ(TSR)の調査では、2022年に倒産したタクシー事業者(ハイヤー含む)は過去10年間で最多を記録した。
 全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)によると、2022年12月の会員の営業収入は全国平均でコロナ禍前の2019年に比べ18%減少した。まだコロナ禍の影響が色濃く残る。
それでも、行動制限の解除やインバウンド需要の復調で、回復ピッチは早まっている。
 大手タクシー会社がけん引する配車アプリの普及も、より手軽な交通手段にしている。 だが、コロナ禍で多くのドライバーが業界を去り、人手不足は深刻だ。


はまちゃんバスの様なコミバスの担い手でもあるタクシー事業者、多くの人にとっては終電に乗り遅れた際だったり、飲み会の際に利用する機会が多いと思います。それ故に双方が激減したコロナ禍での影響が大きく、2022年には過去10年間で最大の倒産件数を記録しています。

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タクシー運転者(男性)の年齢別構成比率の推移@タクシー事業の現状について 国土交通省
10年後にはドライバーの仕事は消滅する@President2018/5/9より
10年後あるいは20年後という将来、人工知能(AI)やロボットが台頭し労働環境が大きく変わる。
10年後までに、タクシーや長距離トラックのドライバーの仕事は、完全自動運転の車の登場で消滅している。これにより、123万人の雇用が消失する。銀行員や弁護士、数学者といった、専門的な頭脳労働の領域もAIに代わってしまう。人間の脳を上回る計算が可能なスーパーコンピュータが、急速に普及するからだ。世論や社会規範などを鑑みて総合的な判断を下す裁判官も然り。人の感情をくみ取り、人間的で正しい法解釈をAIは可能にする。スポーツのジャッジもAIが行う。これらはすでに実用化に近づきつつある。


またコロナ以前から深刻な状況になっている事としてドライバーの高齢化もあります。上は少し古いデータですが、2001年から2014年までで60歳以上のドライバーの比率が14.1%→53.3%と2014年段階で急増し、過半数を占めています。また近年の自動運転技術の発達からタクシーに限らずですがドライバー自体「10年後無くなる職業」等の話題で筆頭に近い形で取り上げられることが多く、この事が若い人が敬遠する「底辺職」扱いをされるようになっています。そう言った意味で仮に運営企業が破綻しなくても「はまちゃんバス」に関してはドライバー不足で段々厳しくなったと思われます。

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表:バス運転者不足問題とその改善の方向性について 近畿大学経営学部 後藤 孝夫@2018年3月6日(火)開催地域バス交通活性化セミナー 「路線バス運転手確保とバス交通の活性化」報告資料より

またタクシーだけでなくバスに関しても運転手不足が問題化しています。コロナ禍においていきなりバスが減便されて驚かれたことがある人も多いと思います。これはドライバーがコロナ感染で1週間休むことになった際代理のドライバーの確保が出来なかったことによるものです。実際路線バスの運転手に必要な大型2種免許の保有者数が激減していて、タクシー同様ドライバーの確保にバス会社も苦しんでいる状況がこの背景にあると思われます。

北海道の廃止予定鉄道代行バスの現状が語る「鉄道からバスへ」と言う平成の常識の終焉
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鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会について@国土交通省
地元バス会社は「話を聞いていない」と憤る 北海道新幹線「並行在来線」代替バス案の理不尽@東洋経済2023/3/22より
 その後も中央バスは神恵内線の減便や赤井川線の廃止を実施、2022~2023年の年末年始にかけて、小樽市内のほか余市―小樽間での路線バスの終日運休や大幅な間引き運転に踏み切った。さらに、2023年9月末には積丹半島の美国―余別間の路線バスも廃止される。
 北海道中央バス運輸部運行計画課の駒拓次課長は、「並行在来線のバス転換の内容については事前に話を聞いておらず報道発表で初めて知った」「中央バスのドライバー高齢化も年々深刻化しており、新規のバス路線で鉄道と同程度の輸送力を確保するのは難しい」という。実際、中央バスのドライバー年齢比率は67.0%が50代以上。この傾向は警察庁が公開する運転免許統計とも一致しており、中央バスのドライバー定年は65歳となる。


しかし、昨年出た赤字JR旅客線の問題では「赤字の鉄道路線はBRTを含むバスに転換する」と言う話が当たり前に出てきます。しかし赤字鉄道路線の前に出てきた北海道新幹線並行在来線の小樽~余市間では地元のバス会社が動画出したダイヤ案に対し「バスのドライバー高齢化も年々深刻化しており、新規のバス路線で鉄道と同程度の輸送力を確保するのは難しい」と恐るべきコメントを出しています。言って見れば平成時代の常識であった「赤字の大きな公共交通を廃止してバス、コミバスなどの小さな交通機関に転換する事で支出を減らす」と言うのが運転手不足で成り立たなくなりつつあるという事ではないでしょうか?

夕張のバス路線廃止から見る「バスから鉄道へ」と言う令和の新しい常識
夕鉄バス、札幌~夕張間など3路線を廃止。JR夕張支線廃止から4年で@タビリス2023/3/14より
夕鉄バスが、札幌~夕張間など3路線を廃止する方針を発表しました。廃止により、夕鉄バスは夕張市内から江別、札幌方面を結ぶ路線がなくなります。
夕鉄バスを運行する夕張鉄道は、新札幌駅前を発着する3路線について、2023年10月1日に廃止することを明らかにしました。
廃止となるのは、以下の3路線です。
・新夕張駅前~栗山駅前~新札幌駅前(3往復)
・りすた~由仁駅前~新札幌駅前(急行、5往復)
・栗山駅前~南幌ビューロー~新札幌駅前(4往復)
夕鉄バスは、夕張市、栗山町、由仁町、長沼町、南幌町から北広島市、江別市を経由し札幌市までの地域をまたぐ路線を4路線運行していて、そのうちの3路線を廃止することになります。南幌東町~新札幌駅前の路線については、運行を継続します。
夕鉄バスは、廃止の理由として、運転士不足の慢性化や、新型コロナウイルス感染症の影響による利用者の減少、原油価格の高騰を挙げ、「さまざまな要因が重なり、大変厳しい経営状況が続いており、バス路線の運行を維持することが困難な状況」と説明しています。
市自ら選んだ「攻めの鉄道廃止」 JR石勝線夕張支線、代替バスはどう「進化」したのか@のりものニュース2019/4/21より
2019年3月31日(土)をもって127年の歴史に幕を閉じたJR石勝線の夕張支線(新夕張~夕張間16.1km)。この鉄路に代わり運行を開始したのが、夕張市に本社を置く夕張鉄道(夕鉄バス)が運行する路線バス「夕張市内線」です。鈴木直道前夕張市長(現北海道知事)による「攻めの廃線提案」から3年弱かけて運行実現に至ったこのバスには、これまでの鉄道代替バスの事例にとらわれない、持続可能な交通体系への実現を成しとげようとする夕張市の姿勢が見えてきます。~中略~
その後、JR北海道は社内に夕張市内の交通体系見直しなどに協力するプロジェクトチームを設置し、課長級の社員1名を夕張市へ派遣します。さらに、2018年3月23日、夕張市とJR北海道は、新夕張~夕張間の鉄道事業廃止について、次のような条件で最終合意に至ります。
・鉄道事業廃止日を2019年4月1日とすること。
・JR北海道は、夕張市に対して、持続可能な交通体系を再構築するための費用として7億5000万円を拠出すること。
・JR北海道は、夕張市が南清水沢地区に整備を進めている拠点複合施設に必要となる用地を一部譲渡すること。


さてそんな状況下でどう対応して行ったらよいのでしょうか?それを考えるのに参考になりそうな例があります。少し話題になった夕張市の夕鉄バス札幌方面路線の廃止です。
何故話題になったかと言うともともとJR北海道の閑散路線であった新夕張駅~夕張駅に関して地元が主導して「攻めの廃線」と言う事で鉄道路線を廃止する代わりにJR北海道が資金や人材を供出して代替バスを走らせていた地域だったからです。個人的にこの件を注目するのは以下の理由からです。
・鉄道が廃止され鉄道でフォロー出来ない路線はJRの費用供出の関係で残す
・運転手不足の慢性化も理由として他社の高速バスやJRでフォローできる札幌方面の路線は廃止する

言って見ればJRからの資金援助があるとはいえ鉄道と競合する路線を廃止し、競合しない路線に運転手などのリソースを集中した事になります。相対的な話ですが、鉄道とバスであればやはり鉄道の方が運転手1人当たりの輸送力も大きく、大手私鉄やJRを中心に若い人も集めやすい事等を考えると新駅設置なども含め鉄道に出来るだけ働いてもらい、バスやタクシーはその補完と言う形に再編する言うなれば平成の常識である「鉄道を廃止してバス転換」から「鉄道と競合するバスは廃止してバスは鉄道でフォロー出来ない箇所にリソースを集中する」と言うのを令和の新しい常識にしていく、運営するタクシー会社の廃業で運行を停止したコミバス路線が問いかけるものはこんな平成の常識からの転換なのかもしれません。

赤字鉄道路線旅客輸送活性化策らしきもの その2:高崎商科大学前駅に見る大学と鉄道

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写真:通学輸送にも活躍します。上信電鉄250形@根小屋駅

さて本題の前にコロナに関する役立つ情報を
新型コロナ 対策支援制度まとめ@Yahoo
・Yahooによる支援制度の情報です。
新型コロナお役立ちコーナー@首相官邸
・首相官邸での各省庁の対策のまとめサイトです。
新型コロナウイルス感染症について@神奈川県
・神奈川県庁でのコロナウィルスに関するまとめサイトです。
新型コロナウイルス感染症に関する情報(2020年4月3日更新)@横須賀市
・横須賀市役所でのコロナウィルスに関するまとめサイトです。
横須賀市・横浜市公共交通各社の新型コロナウイルスに関する対応について
・横須賀・横浜地区の公共交通各企業のコロナ対策のリンク集です。利用者の協力をもとに3密を恐れず公共交通を利用しましょう。
横須賀公共交通バリアフリーマップの様なもの
・横須賀公共交通バリアフリーマップの様なものです。横須賀に車椅子で来られる際などにどうぞ
新型コロナウイルスワクチン接種の概要@横須賀市
・横須賀市のコロナウィルスワクチン接種に関する情報です。

さて赤字の鉄道路線の赤字を改善していく方法を考えていくシリーズ第2弾です。これまでの話は以下に
赤字鉄道路線旅客輸送活性化策らしきもの その1:イオンバスから学ぶもの
赤字鉄道路線旅客輸送活性化策らしきもの 外伝その1~ふかや花園駅を行く~

小さな大学近くにできたローカル私鉄の小さな駅
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写真:今回の舞台

さて今回は群馬県の高崎市と富岡市・下仁田町を結ぶローカル私鉄上信電鉄の比較的新しい駅である高崎商科大学前駅を取り上げてみます。

高崎商科大学前駅@Wikipediaより
高崎商科大学前駅(たかさきしょうかだいがくまええき)は、群馬県高崎市根小屋町にある上信電鉄上信線の駅である。
高崎商科短期大学が高崎商科大学(4年制大学)になり学生数が増加したことなどに伴い、新駅設置の機運が高まったことにより設置された駅であり、高崎商科大学に近い位置にある。


さて今回取り上げる高崎商科大学前駅はもともと短期大学だった高崎商科短期大学が2001年に4年生の高崎商科大学を設置した事による通学需要の増大の為に2002年に設置された比較的新しい駅です。

平成23年度事 業 報 告 書@高崎商科大学

また駅名の由来となった高崎商科大学自身も定期券に対する補助を行うなど利用促進に協力しています。

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高崎商科大学駅乗車人員推移(高崎商科大学前駅@Wikipedia高崎市統計季報より作成)

駅開業の実質的初年度である2002年度からの乗車人員推移を見ると開業から2010年まで一貫して増え続けて2010年度以降は1日当たり200~250人の間で推移しているのが見て取れます。

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写真:駅から高崎商科大学方面を見下ろす

そして高崎商科大学方面を見ると駅が丘の中腹にある形の為見下ろす形となります。ここから駅名の由来になった高崎商科大学はすぐそばではなく丘を下り、幹線道路を渡り5~10分ほど歩く感じです。

小さな駅の生みの親高崎商科大学を見る
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写真:高崎商科大学

続いてこの駅にとって生みの親である高崎商科大学に向かいます。

高崎商科大学@Wikipediaより
高崎商科大学は、2001年に設置された単科大学である。教育理念は、前身の高崎商科短期大学が掲げていた、実学教育と人間性の養成、地域社会への貢献を継承している。学部の課程では、商学に関する広い知識と深く専門研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させ、実社会で活かせる能力と専門性を養うことを目的としている。大学院の課程では、学部課程の知識を基盤として広い視野に立って精深な学識を授け、流通業をはじめ広く産業界において活躍が期待される高度職業人の育成を目指している。キャンパス内には高崎商科大学短期大学部が併設され、単位互換制度により、相互の講義が履修可能となっている。


さて高崎商科大学の概要を見ると短大や大学院も併設しているとはいえ、基本的には商学部のみの規模の小さな単科大学です。

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写真:住宅と田畑が混在する周辺

大学周辺を歩くと、高崎市の桜の名所としても知られる烏川に近く住宅もあるのですが、田畑も多い郊外と言うか里と言った地域です。人口自体は多くないので、大学がなければ駅の設置は無かったかなと感じてしまうような感じです。

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写真:大学前には高崎市の循環バスぐるりんも乗り入れます。

また駅への公共交通は電車だけでなくバスもあります。高崎市の循環バスぐるりんが大学側のバス停に高崎駅やJR倉賀野駅から乗り入れています。

ぐるりん時刻表・路線図@高崎市

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写真:学生用駐車場

しかしながら土地がない地域ではない為学生用も含め大規模なものはないですが中規模な駐車場が多く、学生・教職員のクルマでの通学にも対応しています。

道路事情と学生街~小さな大学がローカル私鉄新駅を求めた訳~
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写真:大学周辺の主要道路県道30号線

さてそんな一見郊外で土地にも余裕ある郊外であり、学生は免許取得可能な世代である高崎商科大学は駅設置を求め定期補助を行うなど利用促進にも協力しているのでしょうか?その理由の一つは周辺の道路事情にあります。上の写真は大学周辺の主要道路県道30号線、歩道も無い狭い道を積極的に車が行きかっていました。この周辺を訪れたのは休日でしたが学生の通学のクルマが来たら渋滞するのは容易に想像がつきます。また烏川を渡って高崎方面へ向かうもう1つの道路も似たり寄ったりと言った感じでした。更に住宅のある程度ある地域でもあるので、近隣住民への影響も決して小さなものではないと思われます。

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写真:多分高崎商科大学から一番近い飲食店

あともう1つこちらは邪推の領域ですが、大学と言うと周辺や最寄り駅周辺に所謂学生街的な飲食店や物販が集積して学生たちの交流の場やアルバイトの場として機能するのですが高崎商科大学の場合、大学自体の規模の小ささ、周辺人口の少なさ、道路事情の劣悪さから周辺に商業集積が全くなく、コンビニすら隣駅である山名・根小屋駅周辺まで行かなくてはならない状況にあります。その為この付近で最大の都市的集積のある高崎駅周辺を経由して通学する学生を増やすことで学校自体の周辺に作れなかった学生街の機能を高崎駅周辺に肩代わりしてもらうと言う目的もあったのかなと思います。

クルマ社会の群馬で大学の通学にどれだけ電車は使われたのか?~高崎商科大学前駅利用者数を深堀する~
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表:高崎商科大学前駅の2019年度各月の乗車人員(高崎市統計季報より作成)

さてそんな高崎商科大学駅ですがどれくらい効果があったのでしょうか?最初のグラフでの最新年度2019年度の利用者数を少し細かく見ていきます。高崎市の統計季報での1日当たりの乗車人員は全体で224人、定期客で194人となっていますが定期客だけで見ると4~6月が通期の1.5倍以上である300人を超えている反面、8,2,3各月が50%を割り込んでいます。言って見れば新入生が入学した4月をピークに夏休みなどで学生の免許取得で少しずつ下がる傾向はあるものの夏休み・春休み等の長期休暇では大きく利用が落ちると言った感じでしょうか?

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表:高崎商科大学前駅の上信電鉄での利用者数順位(高崎商科大学前駅@Wikipedia高崎市統計季報より作成斜め字は2018年度)

実際高崎商科大学前駅の上信電鉄内での乗車人員の順位は8位ですが、ピークの4月の乗車人員である355人だと高崎、上州富岡、馬庭に次ぐ4位となります

入学者数、収容定員、在学者数 令和元年5月1日現在@高崎商科大学より
学部計 :742人
研究科計:4人
短大計 :180人
合計  :926人


そして4月の定期客318人、周辺人口の少なさを考えると学生の利用者数を300人とすれば
300/926=32.3%
概ね3割以上の学生が高崎商科大学前駅を利用して通学していると考えられます。実際残りの7割弱の中でも周辺に住んでいて自転車や徒歩、あるいは数は少ないとは言えバスでの通学も0でない事を考えると実は自動車と拮抗するあるいはそれ以上の通学手段として定着していると考えると考えられます

大学進学率向上がもたらした緩やかな脱クルマ~何故高崎商科大学の電車通学は定着したのか~
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表:2000年代の高崎商科大学駅乗車人員と大学進学率(高崎商科大学前駅@Wikipedia9.大学入学者数等の推移@文部科学省資料より作成)

さて何故ここまでクルマ社会の群馬でここまで「大学生の電車通学」が定着したのでしょうか?与太に近いですが1つの仮説を立てると「若い世代の大学進学率の向上」があるのではと考えます。上の表は高崎商科大学前駅の乗車人員が大きく伸びた2002~2010年の乗車人員と大学進学率をプロットしたものです。この時期高崎商科大学前駅の乗車人員は114人→245人と2倍以上に大きく伸びたのに対し、4年制大学の進学率も40.5%→50.9%と大きく伸びている事が見て取れます。もともとの資料では98年までの数値しか分かりませんが90年代はこれが30%台であり、団塊ジュニア以上の中高年世代では「地方で地元の大学に行った人は東京での下宿代の代わりに車を親に買ってもらう」みたいな話を聞いたことがある人がいるのではないかと思います。その前提条件としては大学進学率が低く、当然新聞奨学生のような自分で学費を稼ぎ出す様な親世代の所得が低い人もいましたが多分今以上に親世代の所得により大学進学率は左右されていたと思います。それは逆に言えば大学進学率が向上した事により相対的に所得の低い世帯の子息も大学に進学をするようになったことを意味します。そうすると「東京での下宿代の代わりに車を親に買ってもらう」様な人が少数派になり、「車を持たない大学生」が多数派になっていった故に高崎商科大学前駅の乗車人員はこの時期激増したのではないかと思います。当然のことながら大学進学率が向上する事により高卒で働く人も減りますからそういった意味でも20代前半までの世代でクルマ離れが起こったと考えられます。言って見れば大学進学率の向上が車社会群馬においても若い世代への緩やかな脱クルマをもたらしたと言えるのではないかと思います。



与太に近い話はともかくとして地方の私立大学の活性化と言う話の文脈でも当たり前の様に郊外の大学の都心回帰、もう少し加えるとJRなど鉄道の便の良い場所への移転が語られています。上の動画は全国すべての大学を巡ったという触れ込みで中小私立大学のコンサルタントを行っている山内太地氏の金沢市の私大に関する動画、郊外に立地している私立大学の活性化に関して「駐車場を増やしクルマ通学の利便性向上」等と言う話は全く出ず、能登半島・福井・富山など広域からの学生確保の為に都心あるいはJRの線路近く(新駅開設前提?)への移転を説いています今の時代は車社会の地方においても大学生の通学の為に鉄道の便が重要な時代になっているというのは頭の片隅に置いておく必要はあると思います。

コロナ後の高崎商科大学前駅を考える
高崎市統計季報より
2020 38
2021 82
2022/4 310


さてそんな高崎商科大学前駅ですがコロナ禍に翻弄された2020年以降の状況を見ていきましょう。上は高崎市統計季報のデータですが2020,21年度はコロナによって利用が激減した半面、2022年度に入って、2019年比で9割弱まで一気に利用が戻りました。コロナ禍でネットでの授業も出て来ているので今後どこまで戻るのかは分かりませんが、それでもコロナ前に近い水準までは戻って来たというのは大きいです。

入学者数、収容定員、在学者数 令和3年5月1日現在@高崎商科大学より
令和3年5月1日現在
学部計 :842(742)人
研究科計:3(4)人
短大計 :202(180)人
合計  :1047(926)人


続いて駅のパートナーでもある高崎商科大学について見ていきましょう。少し古い2021年のデータですが興味深いのは2年前の2019年に比べて100人以上在籍者が増えている事です。本来なら2022年以降のデータがないと何とも言えないですが、コロナを期に地元志向がより深まったという可能性が高いのではないかと思います。現状少子化で大学自体厳しい状況にあると思いますが、地方の私大に関してはこれまで東京などの大都市に出て行った若い人が地元の大学に回帰する事で却って大都市の私大よりも粘り強く生き残っていくのかもしれません

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写真:上信電鉄沿線の上州新屋駅近くに開業し話題になっためんたいパーク、通学に使う大学生たちにいかに通学以外でも使ってもらえるかと言うのは大きな課題

そうなってくると課題となってくるのはコロナ前でも見られた夏休みなど長期休暇を中心とした鉄道離れが起こりやすい時期の利用促進、高崎商科大学は上信電鉄沿線の富岡市や下仁田町と連携しているのを考えると定期保有者や学生向けに廉価で使える往復切符や1日乗車券を使えるようにするなどは考えられるかもしれません。実際コロナ以降の学生はネット授業も増えている事もあり、コロナ前よりも家に閉じこもる傾向が強くなっていると考えられることからも、外出のきっかけと言う意味でもやってみる価値はあるのではと感じます。

まとめ~クルマ社会でも大学生は電車で通学する時代~
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写真:高崎商科大学~根小屋間を走る上信電車

如何だったでしょうか?高崎商科大学前駅の現状が示すのは群馬の様なクルマ社会の地方においても大学生の多くは通学に電車を利用する事、そしてそれは逆に大学の立場からしても電車の便が発展・存続のカギを握る重要な要因になりうる事なのではないかと思います。いま政治的な意思決定の場にいる中高年層にとっては免許をとれる世代の大学生は一時的に電車は使うかもしれないが車を確保して電車から離れると思われるかもしれませんがそれは21世紀に入って終わってしまった事だという事をご理解いただけたら幸いです。

赤字鉄道路線旅客輸送活性化策らしきもの 外伝その1~ふかや花園駅を行く~

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写真:日本一豪華なバスターミナル待合所?

さて本題の前にコロナに関する役立つ情報を
新型コロナ 対策支援制度まとめ@Yahoo
・Yahooによる支援制度の情報です。
新型コロナお役立ちコーナー@首相官邸
・首相官邸での各省庁の対策のまとめサイトです。
新型コロナウイルス感染症について@神奈川県
・神奈川県庁でのコロナウィルスに関するまとめサイトです。
新型コロナウイルス感染症に関する情報(2020年4月3日更新)@横須賀市
・横須賀市役所でのコロナウィルスに関するまとめサイトです。
秩父鉄道「大増発」ダイヤ改正 ふかや花園プレミアム・アウトレットのアクセス路線に変身…だけじゃない!@乗りものニュース2022/9/13より
秩父鉄道は2022年9月13日(火)、ダイヤ改正を10月1日(土)に実施すると発表しました。10月20日に控えた「ふかや花園プレミアム・アウトレット」開業にともなうものです。
同アウトレットは秩父鉄道で最も新しい駅「ふかや花園」(永田~小前田間)に直結しています。これにともない、熊谷~寄居間で平日は92本、土休日94本を運転。現行はそれぞれ60本、58本なので、大幅な増発になります。なお、アウトレットのオープン日(10/20)やバーゲン期間などは、さらに臨時列車を運転するということです。~中略~
 なお、ふかや花園駅には「SLパレオエクスプレス」も停車しますが、アウトレットのオープンに伴い10月22日(日)から11月6日(日)のあいだは、下りが寄居→三峰口(始発駅を寄居に変更)、上りが三峰口→熊谷の運転になるとのこと。この期間はアウトレットのオープン記念として、下りの寄居→三峰口はSL指定席料金不要、乗車券のみでOKということです。ただし全車指定席のため、ウェブサイトからの予約は必要です。


さて旧聞になりますがダイヤ改正と言うと減便の話ばかりの昨今、2022年10月秩父鉄道が沿線に大規模アウトレットモールが開業するのを機に熊谷~寄居間で日中の列車本数を1.5倍近くに増発する大規模なダイヤ改正を行ったと言うので少し見てきました。

プロローグ熊谷駅に見る秩父鉄道の積極策

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さて、秩父鉄道へJR高崎線熊谷駅から乗り換えます。熊谷駅は昔来たことがありますが、その頃に比べてエキナカの商業施設が増え活気があるように思います。写真ではわかりづらいですが通路の反対側にも店舗が多く、人の往来も多かったです。

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写真:秩父鉄道熊谷駅改札

さて秩父鉄道の熊谷駅にたどり着きます。小さいながらも自動改札が並び、真新しい企画乗車券の案内看板が印象的です。

【デジタルチケット】MaaSアプリ「EMot」、ウェブ版「EMot Online Tickets」にて紙券よりお得なフリーきっぷを毎日発売@秩父鉄道より
秩父鉄道では、小田急電鉄と連携し2021年11月4日(木)から、秩父鉄道全線が何度でも乗り降り自由で、飲食店舗や温浴施設等約50店舗の優待を受けられるお得な乗車券「秩父路遊々フリーきっぷ デジタル版」と、宝登山ロープウェイで使える「宝登山ロープウェイフリーきっぷ」を販売開始します。 なお、両きっぷは2022年5月中旬よりウェブブラウザ版「EMot Online Tickets」に対応しております。(2022/5/23(月)16:00)
おトクなきっぷ@秩父鉄道
秩父路遊々フリーきっぷ@Emot
【2022年3月12日(土)よりサービス開始】交通系ICカード「PASMO」を導入 について@秩父鉄道


この広告は一日乗車券の「秩父路遊々フリーきっぷ デジタル版」の宣伝ですが現状小田急系のMaas、Emotでの購入が可能なようです。個人的に興味深いと思ったのは
・紙の乗車券もあるがデジタル版が毎日可能なのに対して紙は基本的に土・休日のみ
・紙とデジタルの料金差は大人100円に対して、子供300円と大きい
・ICカードPASMO導入が2022年3月なのに対して、2021年11月と先行している
と言った所です。導入時期を考えると、コロナ禍の厳しい中で2022年下半期に向けて「紙からデジタル(スマホ)」への思い切った転換を目指したように思います。そしてターゲットは若い世代、家族連れを中心としてスマホを使いこなして沿線外から事前に切符を購入して乗車する層と言った所でしょうか?

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写真:ホームではラッピングトレインがお出迎え

ホームではラッピング電車がお出迎えです。
【4/3(土)運行開始!】秩父鉄道フルラッピングトレイン第4弾★「超平和バスターズトレイン」デビュー!@秩父鉄道より
 秩父鉄道では、フルラッピングトレイン第4弾となる『超平和バスターズトレイン』の運行を開始いたします!秩父市が舞台設定のモデルとなったアニメ3部作「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」「空の青さを知る人よ」のキャラクターや劇中画を全車両へラッピング。それぞれの作品の魅力を車両にぎゅっと詰め込み、外装・内装ともにアニメの世界観をお楽しみいただけます。
このラッピング事業は秩父市からの製作費負担のもと、コロナ禍で落ち込んだ観光客を回復させるための新しいコンテンツとしての役割を担うとともに、「あの花」が初めてテレビ放送されてから今年で10 周年を迎えることを記念して実施されるものです。


このラッピングトレインは沿線秩父市を舞台としたアニメ、映画などのキャラクターが描かれています。秩父市とのコラボレーションとは言え、ポストコロナ時代を見据えた観光客誘引の為積極的に手を打っている事が見て取れます。

ターミナル化と感じさせたふかや花園駅の活況
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写真:ふかや花園駅
そんな熊谷駅から秩父鉄道の電車に乗り込みます。今回の目的地は今回のダイヤ改正のきっかけとなったアウトレットの最寄り駅ふかや花園駅です。

ふかや花園駅@Wikipediaより
深谷市は、関越自動車道花園インターチェンジに程近いこの地区に、『ふかや花園プレミアム・アウトレット』を中核とする産業拠点を開く事を計画しており(花園IC拠点整備プロジェクト)、2015年に三菱地所・サイモンがモールの事業者として選定され、2022年10月20日に開業した[1]。2017年6月に深谷市と秩父鉄道は共同で、地元住民の利便性向上と、このアウトレットモールへの交通手段の一つとする事を目的として、当駅を新設することを発表した[2]。請願駅として、深谷市が総事業費の約4億円全額を負担した[3][4]。
駅名の由来は、歴史や伝統のある深谷市の「ふかや」と、当駅周辺の地名「花園」(旧大里郡花園町)を組み合わせたものであり、駅新設発表の場で開業日と共に公表された[2]。
当駅の設置に当たっては、アウトレットモール予定地が優良農地となっており、本来は商業施設を建設できないため、それを解除する手段として、新駅建設を前提としており(つまり当駅が開業しない限り、モール建設の申請・建設が始められない)、更にモール用地も深谷市が取得する形になっているとして、税金負担に反対する一部の市民が駅・モールの建設の是非を問う住民投票を行うべく署名を集め、市議会に提出したが否決されている[5][6]。


ふかや花園駅はふかや花園プレミアム・アウトレットと言う今回の目的地となるアウトレットの為に作られ、費用も地元の深谷市が全額負担を行っています。ただアクセスの為の駅と言うよりも、優良農地だった地域を開発する為と言うあまり聞かない理由で開設された駅です。ただこの事によって秩父鉄道はピカピカの新駅と駅前に大規模なアウトレットモールと言う2つのものを手に入れることになりました

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写真:ふかや花園駅で下車する乗客

熊谷駅での乗車時では席がさらっと埋まるくらいの乗客数だったのが大半の乗客がこの駅で下車していてターミナルのラッシュ時並みの混雑となっていました。訪れたのがアウトレット開業から間もない時期である事を差っ引いても地方私鉄では破格の1日1778人の利用者の見込みも決して無理な数字ではないと感じさせました。そしてその乗客の多くはアウトレットモールに向かっています。これから先どうなるかは分かりませんが現段階では電車で行くイメージのないアウトレットモールへのアクセス手段としての誘客に成功したと言えます。

アウトレットモールに乗り入れるバス
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写真:アウトレットモールのバスターミナル

さてふかや花園駅近くにできたアウトレットですが、公共交通は秩父鉄道だけでなくバスも乗り入れています。このアウトレットは関越道花園ICに近いのがウリであり、車でのアクセスもそうですが都内からの高速バスも乗り入れることになりました。

佐野新都市バスターミナル@佐野市より
佐野新都市バスターミナル発高速バス一覧
バスタ新宿・東京駅方面 ジェイアールバス関東
羽田空港(東京国際空港) 関東自動車(羽田空港行き)
成田空港(成田国際空港) 関東自動車(成田空港行き)
名古屋方面 関東自動車(名古屋行き)
京都・大阪方面 日本中央バス(シルクライナー)
仙台方面 日本中央バス(仙台ライナー)
新越谷・郡山方面 福島交通(あだたら号)・東武バス(あだたら号)
佐野新都市バスターミナル発路線バス一覧
佐野新都市線(浅沼町、佐野駅、佐野厄よけ大師方面)
植下高萩線(高萩町、植下町、佐野駅方面)
犬伏線(米山市営住宅、久保町、佐野駅方面)


同じよう都内からの高速道路のICに作られた栃木県佐野市の佐野新都市ではバスターミナルが整備され、都内、羽田・成田の両空港をはじめ、名古屋・京都・大阪・仙台・郡山など各方面への高速バスが乗り入れる高速バスの一大拠点となり、また地域のバス路線も乗り入れる事で地域の公共交通の状況を大きく変える事となりました。

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写真:アウトレットモールに乗り入れるバス

実際ふかや花園のアウトレットモールでも規模は小さいとは言え東京・新宿、大宮・川越発着の高速バス、ふかや駅・森林公園駅からのシャトルバスが乗り入れスタートしていて、結果的に電車、高速バス、中距離(シャトル)バス等が乗り入れる大きなターミナルとなっています。強いて言えば地元のローカル輸送を担うバス路線がないというのが違いと言えます。
⼤宮駅‧川越駅発着@ふかや花園プレミアムアウトレットモール
東京駅‧新宿駅発着@ふかや花園プレミアムアウトレットモール
深谷駅発(土日祝日)@ふかや花園プレミアムアウトレットモール
森林公園駅発@ふかや花園プレミアムアウトレットモール

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写真:帰りはシャトルバスで深谷駅へ

その中で帰りは深谷駅へのシャトルバスで深谷駅まで向かって帰りました。そのまち時間に森林公園雪のシャトルバスの発車時の利用者も見れたのですが、どちらも10人前後と少なくはないものの秩父鉄道の様な活況を呈しているとは言い切れない状況でした。

ふかや花園駅活況の理由と示すもの IMG_3498
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写真:秩父鉄道の誘客策

シャトルバスに比べて秩父鉄道が活況を呈している理由としては当然新幹線・高崎線・湘南新宿ラインと繋がる熊谷駅、東武伊勢崎線と繋がる羽生駅、東武東上線と八高線と繋がる寄居駅に乗り入れている鉄道と言うのが当然大きいですが、実際秩父鉄道が貪欲に努力しているのも見逃せません。実際駅前には縁日の様にキッチンカーが並び、訪れた当日には電車利用の買い物客へのプレゼントもありました。また東武鉄道と共同で出している東武鉄道×秩父鉄道SAITAMAプラチナルート乗車券と言う乗車券もアウトレット開業を機にふかや花園迄範囲を拡大しています。言って見ればふかや花園のアウトレットモールに来たお客さんを秩父・長瀞方面等回遊してもらおうという事なのでしょう。

【10/20(木)フリー区間を拡大】「東武鉄道×秩父鉄道SAITAMAプラチナルート乗車券」☆東武鉄道東上線・越生線全線と秩父鉄道のふかや花園駅~三峰口駅間が1日乗り降り自由@秩父鉄道
【おすすめ情報】ふかや花園駅前で「ちちてつはなぞのマルシェ」☆11/26(土)、27(日)開催@秩父鉄道

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写真:アウトレットモールの駐車場

当然最大の努力として10月1日に増発のダイヤ改正があったのは言うまでもないですが、その貪欲さが多くの乗客の利用を掘り起こすのに成功したと言えます。ふかや花園駅のアウトレットモールはICが近いのが最大の売りであり当然車で来る人が多いですが、それでも努力すれば鉄道やバス等で訪れる人は地方鉄道にとっては準ターミナル級の利用者を掘り起こせるというのが現状のふかや花園駅の示しているものではないかと思います。

赤字鉄道路線旅客輸送活性化策らしきもの その1:イオンバスから学ぶもの

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写真:今回の主役?

さて本題の前にコロナに関する役立つ情報を
新型コロナ 対策支援制度まとめ@Yahoo
・Yahooによる支援制度の情報です。
新型コロナお役立ちコーナー@首相官邸
・首相官邸での各省庁の対策のまとめサイトです。
新型コロナウイルス感染症について@神奈川県
・神奈川県庁でのコロナウィルスに関するまとめサイトです。
新型コロナウイルス感染症に関する情報(2020年4月3日更新)@横須賀市
・横須賀市役所でのコロナウィルスに関するまとめサイトです。
新型コロナウイルスワクチン接種の概要@横須賀市
・横須賀市のコロナウィルスワクチン接種に関する情報です。
横須賀公共交通弱小ポータルサイト
・横須賀の公共交通弱小ポータルサイトです。各企業のコロナ対策のリンク集や各駅情報等弱小の名に恥じない情報発信を行っています。利用者の協力をもとに3密を恐れず公共交通を利用しましょう。

令和の大きな宿題その15 バス転換と言う贅沢が許されない時代に~赤字鉄道路線廃止問題に思う
Choose or Loose課題多き参院選2022その2~ローカル線問題が民主主義に投げかけるもの~
令和の大きな宿題その12 JR西日本が投げかけたもの
令和の大きな宿題外伝~電車を失った街が語る事~

さて上の記事等を中心に最近特に問題になっている赤字鉄道路線に関して書いてきましたが、少子化による人手不足の問題、貨物の問題、高校生の通学の問題と様々な切り口で書いているにもかかわらず、赤字鉄道路線の旅客輸送の活性化についてあまり書いていませんでした。「とにかく残せ」と言う意識が先にあったからですが、ただ活性化策について書かないのも無責任だろうとbrother-t流の赤字鉄道路線旅客輸送活性化策について少し書いていこうと思います。

イオンバス利用者数から見る赤字鉄道路線旅客輸送活性化の可能性
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写真:群馬県高崎市のイオンモール高崎と高崎駅などを結ぶバス路線

さて今回はタイトルにもある様に地方都市にあるイオンモールとターミナル駅などを結ぶ通称イオンバスから学んでいこうと思います。イオンモールと言うと地方にある車でアクセスを前提として郊外に巨大な店舗と駐車場を抱えるショッピングセンターの象徴みたいなもので、ある意味で赤字鉄道路線の旅客輸送を衰退させた元凶に様にとらえる方もいるかもしれません。

イオンモール土岐、駐車場90分待ち国道渋滞 生活道路通り抜け多発、住民「しばらくは…」諦め@岐阜新聞2022/10/12より
 イオンモール土岐(岐阜県土岐市土岐津町土岐口)がオープンしてから初の休日を迎えた。3連休中の9日の日曜日は、最多の約1万5千台の車が来店し、駐車場に入ろうとする車列が国道19号まで延びて一時的に渋滞が発生。イオンモールは早めに満車の表示を出すなどして敷地内への流入抑制を図った。客足は想定の範囲内で大きな混乱はなかったとする一方で、周辺の地元住民の生活に影響が出た


私自身それを100%否定まではしませんが、しかしよく考えてみましょう。あれだけ大きな駐車場が埋まるくらい沢山の車を引き寄せるという事は逆に言えばそれだけ多くのお客さんが来ているという事です。そのおこぼれをもらうだけでも利用者の少ない赤字鉄道路線の活性化に繋がるのではないでしょうか?

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表:イオンへのアクセス路線の輸送者数@高崎市統計季報No239(2021/10/11/12)

いやいや駐車場完備のSCは車で行ってなんぼで鉄道やバスなどの公共交通で行く人なんていないと思われる方もいると思います。と言う事で数字を出してきました。高崎市統計季報からJR高崎駅とイオンモール高崎を結ぶバス路線の利用者数のデータを引っ張ってきました。月当たりの利用者数を見ると最小1246人(7月@群馬バス榛東村役場行き)~14444人(12月@群馬バスイオン高崎行き)とばらつきがあるのが見て取れます。注目したいのは群馬バスのイオン高崎行きの数字は他の路線を上回り1番多くなっている事です。引用はしていない他の路線に対しても同様で群馬バスのイオン高崎行きは高崎市で最も利用者の多い路線となっています。

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表:イオンへのアクセス路線の輸送者数1日当たり@高崎市統計季報No239(2021/10/11/12)

イオンバスが高崎市で最も利用される路線である事は分かりましたが、月当たりでは一体どれくらい利用されているかは分かりづらいので1日当たり、そして複数の路線の合計を出したのが上の表です。サンプルとしては長期休みがなく祝日の影響を受けづらい10月のものを選びました。高崎とイオンモール高崎を結ぶ4路線の合計の1日の利用者数は771人となります。ただしあくまで路線の利用者数ですので、7割の乗客がイオンモールを発着すると考えて0.7をかけた数字も出しました。こちらは540人となります。

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表:前橋と桐生を結ぶ上毛電鉄線の乗降人員TOP5とイオンバス利用者数比較(上毛電鉄は2018年度Wiki参照)

そしてこの540人と言う数字が赤字鉄道路線旅客輸送にとってどれくらいインパクトがあるのかを見ていきましょう。比較対象としては高崎市のお隣の前橋市から群馬県東部の10万都市桐生を結ぶ上毛電鉄としました。理由としては以下になります。
・輸送密度が2000人弱と赤字で問題となっている路線を想定するのにちょうどよい
・同様に盲腸線でなく都市間を結ぶ路線である事
そして比較してみると上毛電鉄23駅中5位の新里駅を大きく上回り、沿線唯一、かつ都内の北千住・東京スカイツリー・浅草への直通特急の発駅である赤城駅に迫る主要駅クラスの利用者数である事が見て取れます。

緩やかな脱クルマ社会と直接利益を生み出さない駐車場のコストがSCが公共交通に投資する合理性を引き出すIMG_1791
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イオンバス@高崎駅バスターミナル(上)イオンモール高崎のバスターミナル(下)

確かにイオンモールバスは利用者はローカル線を盛り上げられる程度に入るかもしれない、しかし肝心のイオンモール側にとってメリットがあるのかと思われた方がいるかもしれません。そこに関しても考えてみます。さてイオンバスらしい光景を2つ、駅ターミナルに乗り入れるバスとイオンモールのバスターミナルです。

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イオンバスを走らせている群馬バスのラッピング料金@群馬バスHPより

さりげなく見ていると気づきませんがイオンバスにはイオンモールの全面広告がなされています。そしてその全面広告の料金を調べると掲出料金年80万円、制作料金65万円となっています。当然のことながら高崎イオンモールの場合極力イオン行きのバスはラッピングバスとなっている形となっているので複数のバスでラッピングしていて下手をすれば1000万円かかっているとみてよいでしょう。そしてイオンモールには複数台のバスが停車でき、かつ上屋やベンチも備えたバスターミナルが整備されています。これだけ見てもイオンモール側が少なくない費用を負担してバスを走らせている事が見て取れます

運転免許証自主返納奨励事業について@高崎市
運転免許のある若者、650万人も減少! 未来の「物流人材」に大ダメージ、もはや普通免許を無償化すべきか@YahooNews2022/9/4より
激減する若者の運転免許保有者数
 この20年間で10代、20代の若者の運転免許保有者数(当該年度時点)は650万人以上減っている。改めて衝撃的な数字だ。もうMTだ、AT限定だの話ですらなく、運転免許を取得する若者そのものが減っている。


その背景には何があるでしょう?1つには緩やかな脱クルマとも言える現象が起こっていると考えられます。1つは高齢者の免許返上、10年前、20年前だったら元気に運転してショッピングセンターに来てくれていた世代が高齢化して免許返上と言う形でクルマから卒業しています。もう1つは若い世代のクルマ離れ、当然少子化の影響が1番大きいとは言え、経済的な負担感から車と距離を置く若い世代は割合としても増えつつあります。そうなって来た時に「クルマで来店するお客さん」の数は相変わらずマジョリティではあっても右肩下がりに減っていく訳です。だとすれば「クルマ以外で来店するお客さん」も掘り起こすために公共交通に小さくはない投資をしていると言えるのではないでしょうか?

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写真:高崎イオンのお隣(?)群馬県吉岡町のBeisia系SCでの一幕

そして何より根本的な面として駐車場と言うのは自動車保有者の来客を促すツールではあっても、そのものは売り上げも利益ももたらさず、むしろ賃料や固定資産税、メンテ費などの費用を生み出すコストセクターであり地価の安い郊外はあくまでその負担が相対的に低いだけ代物と言うのが挙げられます。上の写真は高崎イオンから少し離れた群馬県吉岡町の地元資本Beisiaが中心となったSCの駐車場での一コマ、もし「駐車場を半減させても来客数が減らない」のであれば郊外型のSCであっても駐車場を減らして店舗を増やすというのが合理的な商売と言うものでしょう。そしてこの駐車場の駐車スペースを削って作られたであろうフィットネスクラブの光景はそれを裏付けていると言って良いでしょう。逆に言えばSDGsの様な部分を除いて純粋な商売としても公共交通への投資は駐車場のコストがクロスで減らせるなら合理性がある訳です。

駅とSCが一体化する事で鉄道・バス・車・自転車なんでもあれの最恐交通ハブが出来る
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イオンモールに乗り入れるバス路線@イオンモール高崎HPより

これまでイオンモールの様なSCのアクセス需要を取り込むことでの鉄道旅客輸送の活性化について見てきました。ただ当然それだけがこの施策の効果ではありません。副次的な効果としてはSCアクセスの為に整備されたバス路線をフィーダー路線として取り込めるというのがあります。これまでイオンモール高崎に関して対高崎駅の路線を中心に見てきたせいで高崎方面行きのみと考えた方もいるかもしれませんが、当然イオンに乗り入れるバス路線はそれだけではないです。県庁市前橋のターミナル前橋駅をはじめ渋川駅・群馬温泉・榛東村役場方面への幹線ルート、地元のコミュニティバスぐるりんや箕郷方面へのバス等多彩なバスが乗り入れています。そして当然駐車場や駐輪場はもとより整備されている為駅+SCと言う組み合わせで巨大な交通のハブが作れるというのが巨大な副次効果ではないかと思います。

如何だったでしょうか?地方の鉄道とSC、確かに反目する部分があるかもしれません。ただ地域の鉄道・公共交通を生き残らせるために手を取りあう時期に来ているのではないかと思います。そしてその仲立ちを出来る存在には今こそ頑張りを見せて頂きたいという無責任な期待で締めたいと思います。

令和の大きな宿題その15 バス転換と言う贅沢が許されない時代に~赤字鉄道路線廃止問題に思う

さて本題の前にコロナに関する役立つ情報を
新型コロナ 対策支援制度まとめ@Yahoo
・Yahooによる支援制度の情報です。
新型コロナお役立ちコーナー@首相官邸
・首相官邸での各省庁の対策のまとめサイトです。
新型コロナウイルス感染症について@神奈川県
・神奈川県庁でのコロナウィルスに関するまとめサイトです。
新型コロナウイルス感染症に関する情報(2020年4月3日更新)@横須賀市
・横須賀市役所でのコロナウィルスに関するまとめサイトです。
横須賀市・横浜市公共交通各社の新型コロナウイルスに関する対応について
・横須賀・横浜地区の公共交通各企業のコロナ対策のリンク集です。利用者の協力をもとに3密を恐れず公共交通を利用しましょう。
横須賀公共交通バリアフリーマップの様なもの
・横須賀公共交通バリアフリーマップの様なものです。横須賀に車椅子で来られる際などにどうぞ
新型コロナウイルスワクチン接種の概要@横須賀市
・横須賀市のコロナウィルスワクチン接種に関する情報です。

プロローグ~太平洋戦争末期何故多くの人達が松の根っこを掘り起こしたのか~
松根油@Wikipediaより
松根油(しょうこんゆ)は、マツの伐根(切り株)を乾溜することで得られる油状液体である。広義にはテレビン油の一種であるため、松根テレビン油と呼ばれることもある。太平洋戦争中の日本では航空用ガソリン(航空揮発油)の代替物としての利用が試みられたが、非常に労力が掛かり収率も悪いため実用化には至らなかった[1]。
最初に全く関係ないですが、終戦記念日に近い時期の記事らしくそれらしいネタを書いて始めます。日中・太平洋戦争末期、南方からの原油還送が困難となって燃料事情が極度に逼迫していたためマツの伐根(切り株)を乾溜することで得られる油を航空ガソリンの代用品として使おうとして結果的にうまく行かず一説には戦後対戦国であるアメリカに「日本に残ったリソースを浪費した大愚策」と称されたという話がありました。「松の根からとれる油(以下松根油)で飛行機を飛ばす」と言うぱっと見のイメージでバカバカしいと感じてしまう面がありますがそれでは芸がないので何故松根油が失敗したのか少し真面目に考えてみましょう。ポイントは以下であると感じます。
・石油が無くなるのが1年以内なのに対し松根油の品質を航空燃料に適したものに変換する技術開発にかかる時間は不明確
言い換えれば必要な時期は明確なものの実現時期・可能性が明確でない技術で何とかしようとしたことがこの松根油の失敗の本質ではないかと思います。

独り歩きする輸送密度1000人~鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会に思う~
輸送密度1000人/日の線区、協議開始から3年以内に決着を…国交省のローカル線検討会が提言@Response2022/7/26より
国土交通省は7月25日、「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」における提言案を公表した。
三大都市圏を除く人口減や少子高齢化、高速道路の進展、コロナ禍における鉄道を取り巻く環境の激変などで、いわゆる「ローカル線」と呼ばれる地域の鉄道は危機的な状況を迎えていると言われている。
とくにJR北海道、JR西日本、JR四国、JR九州の4社は、輸送密度が2000人/日以下となっている線区の収支状況を公表。地域交通の再構築へ向けた議論を提案しており、動揺が広がっている地域も多い。~中略~
それらの点を踏まえ、平常時の輸送密度が1000人/日未満で、自治体と比較的連携しやすい第三セクター鉄道を除いた線区を対象に仮称「特定線区再構築協議会」(特定線区協議会)を設け、「廃止ありき」「存続ありき」ではなく協議を進めることが適当とされた


さて脱線した話を本題に戻します。最近JR東西日本が赤字地方路線の経営状況に関する資料公開を行った事から、注目されていた地方閑散路線問題に関して、国土交通省の鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会が提言を出し、輸送密度が1000人/日未満の路線に関して国が特定線区再構築協議会(仮称)を設置し、廃止ありき、存続ありきという前提を置かずに協議する事を提言した事が7月末に報道されました。

鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会について@国土交通省
令和の大きな宿題その12 JR西日本が投げかけたもの
ご利用の少ない線区の経営情報を開示します。@JR東日本
ローカル線に関する課題認識と情報開示について@JR西日本
線区別収支@JR九州
線区別収支と営業係数の公表について@JR四国
地域交通を持続的に維持するために@JR北海道

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鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会について@国土交通省

ただ輸送密度1000人未満の路線を自動的に国が設置した協議会で存廃を協議するという単純なものでなく
・我が国の基幹的な鉄道ネットワークを形成する線区(特急列車、貨物列車が走行等)については、引き続きJR各社による維持を強く期待
危機的な状況のローカル線区については、沿線自治体(特に都道府県)が中心となり、法定協議会等を設け、利用者や地域戦略の視点に立ち、将来に向けた地域モビリティのあり方について関係者と検討を進めていくことが基本原則
単純に言えば
・特急や貨物列車の走る幹線
→JRさん努力してください
都道府県範囲で納まるローカル線は
→JRと都道府県で協議して決めてください
そしてそれ以外の路線
→国=国土交通省が協議会を設置するのでそこで存廃を話し合いましょう
と言った形となっています。

JRも都道府県も守るといいづらい特急の走る閑散線区
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表:JR東日本、西日本の輸送密度2000人未満として発表しているかつ特急運行区間(参考:JTB時刻表2022年4月号)

さて「基幹的な鉄道ネットワークを形成する線区(特急列車、貨物列車が走行等)については、引き続きJR各社による維持を強く期待」と書かれていますが、そう簡単に行くでしょうか、上の表はご利用の少ない線区の経営情報を開示します。@JR東日本ローカル線に関する課題認識と情報開示について@JR西日本でJRの東・西日本が輸送密度が低く自治体への協力を期待している路線の中で定期的に特急列車が走っている区間を挙げたものです。共に7区間、JR西日本が挙げた30区間の1/4近く、東日本も66区間の1割を超えます。これらの区間に関してJR東日本/西日本は「はい、そうですか」と言えない区間と言えます。国土交通省の「期待する」と言う言葉は発表した段階で既に破綻していると言えるのではないでしょうか?更に言えば大糸線、外房線を除くと県境を越える路線であり、都道府県にとっても積極的に存続への負担をしづらい路線と言えます。

貨物の走る路線とはどこまでを指すのか~災害時の代替路線が示すもの~
令和の大きな宿題その12 JR西日本が投げかけたものより
特に山陰線・加古川線・播但線の3路線では実際に阪神大震災の際、旅客・貨物双方で代替ルートとして活用され、加古川線全線、播但線の一部(ただし今回公開された区間は該当せず)がその経験もあって電化されています。 地震・豪雨災害後に重要、鉄道「迂回ルート」の役割@東洋経済2022/4/7より
主要幹線が長期間不通になった近年の事例としては、2018年7月の西日本豪雨がある。この際は山陽本線の線路への土砂流入や盛土の崩壊が起こり、三原―白市間の再開は9月30日、柳井―下松間は10月13日(9月9日に一度再開したが9月29日に台風被害で再び不通となった)となり、全線復旧まで約3カ月を要した。この間、地域の旅客輸送では代行バスが運行されたほか、山陽新幹線による代行も行われた。
問題は貨物である。人間のように自分で動くことはできない。まずはトラック輸送や船舶で対応したが、鉄道での代替ルート確保は必須だ。そこで、倉敷―新山口間を伯備線・山陰本線・山口線経由で迂回するルートにより、九州と名古屋を結ぶ貨物列車が運転された
3.11 被災地に石油を輸送せよ 11年前 緊迫の挑戦 真貝康一・JR貨物社長に聞く@東京新聞2022/3/11
東日本大震災では、JR東北線などが寸断された。物資の主要な輸送路を断たれ、暖をとり車を走らせる燃料も底をついて、首都圏から緊急石油輸送が繰り広げられた。横浜を起点に日本海側をぐるりと鉄路で回る究極の迂回(うかい)ルート。当時、東北支社長として陣頭に立った真貝康一(しんがいこういち)・JR貨物社長(66)に、被災体験を踏まえた新たな災害対策を聞いた。  「(東北唯一の)仙台の製油所が津波でやられ、ガソリンスタンドに長蛇の列ができて…。地震発生から二、三日後のことですが、緊急輸送について国からも強い要請がありました」と真貝さんは振り返る。~中略~
盛岡行きとは別に、新津から郡山へ磐越西線経由で運ぶルートも設定したが、ここには電化されていない区間がある。「ディーゼル機関車と、その運転士の確保が大変でした」と真貝さん。DD51形ディーゼル機関車を門司(北九州市)などから集める一方、郡山から運転士四人を稲沢(愛知県)へ派遣して訓練させた。
【東日本大震災から10年】被災地へ走った“前例なき”緊急石油貨物列車。その原動力になった「鉄道マン魂」(後編)@NHK2021/3/8
野月さん: 今回の場合、盛岡への最短ルートは新潟・酒田・秋田まで日本海側を北上して、秋田から奥羽(おうう)本線を南下して大曲、そして田沢湖線で盛岡というルートになるのですが、いわゆる秋田新幹線も走っている在来線区間の秋田~盛岡間も含まれます。しかし新幹線と貨物列車では線路の幅が異なり、特に大曲~盛岡の間では線路幅を新幹線に合わせてしまったので、貨物列車は走ることができません。 次に短い距離のルートは、秋田から奥羽本線を大曲・横手と南下し、横手から北上(きたかみ)線で奥羽山脈を越えて岩手県の北上駅へ。そこから東北線で盛岡へ行くルート。 もうひとつ考えられるのは、秋田からそのまま奥羽本線を弘前・青森まで北上して、青森から八戸を通って盛岡に南下するルートです


続いて貨物に関して考えていくと一見今貨物列車が走っている路線を考えがちですが災害時の代替輸送を考えると簡単にはいきません。西日本では震災時の播但・加古川・山陰、そして2018年の西日本豪雨時には山陰・山口線が活躍しましたし、東日本震災時には上越・羽越・奥羽・磐越西の各線が活躍した上に、目的地が盛岡だったために北上線の名前も浮かび上がりました。この中には当時単線非電化のローカル線だった播但・加古川・磐越西(喜多方以北)・北上線がある事は注目したいところです。東日本では東北・常磐・上越・羽越・奥羽、貨物の幹線、東北北部の太平洋岸の港を連絡する各線、西日本では山陽・北陸の貨物幹線をバイパスできるルートは潜在的な代替ルートですが、多分それをすべて含むなら大半とは言わないまでも2/3程度の赤字路線は含まれます。そしてJR旅客各社は貨物の線路使用料がアボイダブルコストである為、こんなことは決して飲めないのは言うまでもないです。

2024年問題に揺れる物流業界にトラックを出す余裕はあるのか
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<<ヒヤリング資料>>ヤマト運輸(株)@今後の鉄道物流のあり方に関する検討会国土交通省より
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就活情報サイト「底辺の職業ランキング」に批判殺到 12の職を羅列...運営会社は削除し「事実関係を確認する」@J-CAST NEWS2022/6/29より
第118回 トラックドライバーが10年後に27.8万人不足する?@日本生命2019/12/2より  国土交通省「自動車輸送統計年報」によれば、国内の貨物輸送に占める自動車輸送の割合はトンベースでは9割、トンキロベース(※1)では約5割と大きな割合を占めています。近年、EC市場(電子商取引市場)の急激な発展等に伴い自動車輸送の需要が高まったことで、これらを担うトラックドライバーの不足が深刻な問題となっています。~中略~  トラック運送業は、中高年層の男性に労働力を大きく依存するなか、ドライバーの高齢化が進んでいます。総務省「労働力調査」によれば、道路貨物運送業の就業者(トラックドライバー)において20~30代の占める割合は減少傾向にあり、2018年時点では3割未満である一方、50代以上は4割を超えています(図表2)。今後は高齢ドライバーの退職等が加わり、ドライバーの不足はさらに深刻化する可能性が高いと考えられます。公益社団法人鉄道貨物協会の試算によれば、2028年度にはドライバーが27.8万人不足すると予測されています(図表3)。


そしてもう1つ忘れてはならないのは仮に鉄道貨物をトラック輸送で代替と言うのは令和の時代では通用しづらい概念であるという事です。ドライバーの高齢化が進みかつ若い世代には底辺職として嫌われている状況で2020年代中盤には幹線の自動運転化を盛り込んでなお24万人ものドライバーが不足する見込みであり、災害時簡単に道路輸送に切り替えるのは難しいという事です。女性の活用や自動運転の大きな発展により解決する可能性は無しとは言えないですが、言うなれば戦争末期の松根油と言えるでしょう。

人材を常に募集しているバスに赤字路線廃止のフォローをする負担はあるのだろうか?
「バス代替輸送やむを得ない」 秋田知事、JR東・赤字路線公表に理解示す@河北新報2022/8/9より
秋田県の佐竹敬久知事は8日の定例記者会見で、JR東日本が公表した利用者が少ない路線の区間別収支に県内6路線11区間が含まれ、全て赤字だったことについて「人口が縮小し、持ちこたえていくのは無理。バスの代替輸送はやむを得ず、それもできないところをどうするか個別の検討が必要だ」と述べ、路線の存廃検討やバス転換に理解を示した。  6路線11区間のうち、最も赤字幅が大きいのは奥羽線東能代-大館間で32億4200万円(2019年度)。花輪線荒屋新町-鹿角花輪間は100円の収入を得るために必要な費用「営業係数」が1万196円と東北で最も高かった。


そして早くも秋田県佐竹知事がバス転換への理解を示すという新聞報道がなされました。秋田県には先に出した貨物の重要幹線である奥羽本線、羽越本線が走っていて県内の赤字額TOP3がこの2路線かつでかつ両方とも県境区間を抱えているのでバス転換の有力候補となりえます。それが実現すれば困るのは言うまでもないですが秋田から東京・仙台に行くには秋田新幹線があればよく、秋田県民に奉仕するサーバントである秋田県知事に「日本の為に奥羽・羽越本線を守るべく財政負担しろ」と言うのは筋違いの批判と言う他ないでしょう。そしてJRも地元自治体も諦めた中では特定線区再構築協議会(仮称)も設置できるでしょうか?

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上越国境近くを走るバス会社は夏休み前後でも積極的に運転手を募集する 鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会について@国土交通省より
JR各社のローカル線区については輸送密度が1000人未満、かつピーク時の1時間当たり輸送人員500人未満を一つの目安
出生数資料@内閣府


さて赤字旅客鉄道線の廃線と言うとすぐバス転換が言われます。ある意味でローカル線の雛形とも言える国鉄分割民営化に伴う廃線の際にも多くの旅客輸送がバスに切り替えられました。しかし1980年代と2020年代で同じようにバス転換できるのでしょうか?上は30万都市である前橋市・高崎市にも乗り入れる群馬県のバス会社関越交通の運転手募集のHPです。夏休みを挟む8月であっても積極的に運転手を募集している様子を見て取れます。1980年代~2000年代初頭の20代は1歳辺り160~210万人程度(1966年除く)いましたが2020年代の20代は1歳辺り100~120万人程度で3~4割減っている事となります。確かにバス運転手はトラック運転手よりは条件がマシですがそれでも少子化で担い手の確保に苦戦している様子を見て取れます
その中で仮にピーク時片道300人を運ぶと考えるとどれくらい運転手が必要かと言えば
バス:6人(1便50人x6便)
電車(2両):1人(電車定員1両120人x2=240人、混雑率125%で算出)
300人と言えば仮に1学年の定員が300人の高校で学生の1/3が利用すれば満たしてしまう数字です。赤字路線とは言え青森・盛岡・鳥取と言った県庁市に乗り入れる路線も珍しくない事を考えるとこういった区間は決して珍しくなく、その中でJRの協力があるとはいえ、電車の6倍近い運転手の頭数を確保できるのでしょうか

高速バス・長距離バスの運行状況について@岩手県交通
【高速バス】運行状況について@弘南バス
高速バスのご案内@庄内交通
新型コロナウイルスの影響による運行情報@西鉄バス

各地のバスを見ているとコロナの乗客減がきっかけではありますが高速バスの撤退・運休・減便と言ったケースが多かれ少なかれ見受けられます。特に東京・大阪向けを中心とした長距離・夜行バスの撤退が目立ちます。こういった路線は交代要員を含め多くの運転手が必要な路線であり、人的リソースの負担が大きな路線です

高速 湯沢・秋田線の運行について@羽後交通2022/7/14より
 現在弊社は、慢性的な乗務員不足となっております。
 乗務員不足解消の一環として、一部ダイヤを土・日・祝日のみ運行とさせていただきますのでお知らせいたします
高速バス「大館・秋田線」の廃止について@秋北バス2021/12/6


そして今回JR東日本で提起されている路線に並行したいわゆる競合する高速バス路線でも乗務員不足で減便する路線が出て来ています。秋田中央交通/羽後交通の秋田~湯沢線です。この路線はJR東日本が赤字路線として挙げている湯沢~大曲間に並行した路線です。また秋北バスの大舘~秋田線も乗務員不足とは書かれていませんがこちらは路線ごと廃線となっています。こちらもJR東日本が赤字路線として挙げている東能代~大舘の並行バス路線となります。言って見ればバスには赤字鉄道線廃止の負担を引き受ける余裕は少なくなっていてむしろ路線整理による公共交通空白のフォローを鉄道にしてもらう時期に入りつつあると言えます。

福井の負の社会実験が掘り起こした問題と令和の家庭
【中古】ロ-カル線ガ-ルズ /メディアファクトリ-/嶋田郁美(単行本(ソフトカバー))P39より
代行バスに不満を抱く人々は、次々にマイカーへと切り替えました。ただし高校生は自分では運転できませんから、ご家族が送り迎えすることになります。国道416号線では、これらの車と代行バスで大渋滞が発生し、従来のマイカー通勤者まで遅刻するはめになってしまいました。~中略~
 勝山周辺から福井市内に進学する中学生も多かったのですが、通学手段を失ってしまったために、希望校の受験を泣くなく諦めたという話も耳にしました。
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中小企業のための女性活躍推進ハンドブック -@日本商工会議所P18より
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高年齢者雇用安定法改正の概要@厚生労働省より


また人材不足が問題になりそうなのは多分トラックやバスの業界だけでなく何よりも家庭もその1つとなると思われます。かつて京福電鉄に絡み「鉄道が無くなる負の社会実験」と言う状況が出来た福井市ではマイカー送迎による渋滞が問題になりましたが、それすらも今から見ればぜいたくな悩みとなりつつあります。中小企業のための女性活躍推進ハンドブックによると育児との両立で困る事として「子供の保育園への送迎」が上がっています。実際送迎による時短勤務が問題になっている事が見て取れます。そう考えると、両親にこれ以上送迎負担をしてもらうのは難しいですし、じいじ・ばあばも定年延長等で、やはり孫の世話に割ける時間は減ると考えられます。言って見れば家庭にも赤字路線廃止による負担を引き受ける余地は無くなりつつあり、むしろバスや鉄道などの公共交通にうまく「子供の送迎」の負担を引き受けてほしいというニーズすらある状態と言えます。

まとめ~赤字鉄道路線をバス転換するという贅沢が出来なくなりつつある時代に~ IMG_0046
写真:秋田ではないですが佐竹知事には縁がありそうな路線

こうして見ると確かに赤字鉄道路線をどうするかと言う問題自体は昭和末期の国鉄民営化、平成期の赤字ローカル線問題の頃と変わらないかもしれませんが、ただ令和のローカル線問題では「赤字鉄道路線を廃止してバス・トラック・マイカーなどの道路交通に移行する」のにはバスもトラックも家庭も人的余裕がなく難しくなっている、言って見れば赤字鉄道路線を廃止しバス転換するという贅沢が許されなくなりつつあることを意識する必要があると思われます。
むしろ逆に鉄道にその人的負担の軽減に貢献が求められているとすらいえると思います。昭和期に考えられた「赤字鉄道路線を廃止してバス・トラック・マイカーなどの道路交通に移行する」と言う贅沢が許される余地が激減したそれ故に限られた人材を上手く活用し、鉄道を中心としたインフラへ投資を促すことで少子化の影響が無視できなくなった令和の人と物の移動の仕組みを考えていくのがJR各社が打ち出した赤字路線問題への回答だと考えますが皆さまはいかがでしょうか


Choose or Loose課題多き参院選2022その2~ローカル線問題が民主主義に投げかけるもの~

さて本題の前にコロナに関する役立つ情報を
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横須賀で不在者投票、期日前投票を考えている方はこちらをご参考にしてください。
令和4年7月10日執行第26回参議院議員通常選挙のご案内@横須賀市選挙管理委員会
期日前投票と不在者投票について(投票日に投票所へ行けない場合)@横須賀市選挙管理委員会
選挙公報@神奈川選挙区
選挙公報@比例代表

各候補者はこちらからどうぞ
てらさき 雄 介
重黒木優平
あさか由香
水野もとこ
ハシモトヒロユキ
三浦のぶひろ
うつみ洋
三原じゅん子
グリスタン エズズ
萩山あゆみ
あさお慶一郎
小野塚きよと
松沢しげふみ
深作ヘスス
くぼた京
藤沢あゆみ
いき愛子
飯田とわこ
すとう信彦
針谷だいすけ
藤村晃子
秋田めぐみ

各政党の政策は以下からどうぞ

自民党
立憲民主党
公明党
日本共産党
日本維新の会
国民民主党
れいわ新選組
NHK党
社民党
参政党
幸福実現党
ごぼうの党
日本第一党
新党くにもり
維新政党・新風

今回のテーマに関係あるサイトのリンクです。
参議院選挙・各政党に公共交通政策アンケート@NPO法人 公共の交通ラクダ(RACDA)
令和の大きな宿題その12 JR西日本が投げかけたもの
今後の鉄道物流のあり方に関する検討会

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写真:上越国境を超える昭和生まれの国鉄形電車211系
JR東日本も赤字路線の収支公表へ…「赤字大きくなり議論しないと」@読売新聞2022/7/5より
 JR東日本の深沢祐二社長は5日の定例記者会見で、乗客が極めて少ない地方在来線の区間別の収支状況を、今月下旬頃に公表すると表明した。ローカル線を巡っては、JR西日本が4月に17路線の収支を明らかにしたほか、JR北海道やJR九州もすでに公表している。
令和の大きな宿題その12 JR西日本が投げかけたもの
ローカル線に関する課題認識と情報開示について@JR西日本
線区別収支@JR九州
線区別収支と営業係数の公表について@JR四国
地域交通を持続的に維持するために@JR北海道


さて選挙戦最中JR東日本が乗客が少ない一般的にはローカル線と呼ばれる線区の収支状況を公表すると表明しました。これまで北海道・九州・四国の所謂3島会社、そして当blogでも取り上げましたJR西日本も同様に発表し大きな反響がありました。

JR赤字路線公表で波紋 沿線から存続への願い強く「廃線なら通学できない」 参院選でも議論を@神戸新聞2022/7/1より
 西脇市北部の本黒田駅から乗車する藤本彩花さん(18)は、朝夕のわずかな本数に合わせて時間をやりくりして通学している。「赤字のニュースはショック。廃線になってしまうと通えないかも」と不安そうな表情を浮かべる。
 野球に打ち込む伊地知大翔さん(17)は毎朝、伊丹市の伊丹駅から福知山線で谷川駅に向かい、加古川線に乗り換えて2時間がかりで登校する。西脇市の船町口駅から乗り込む松田果梨菜さん(17)も「本数は増やせなくても、なくさないで」と訴える。


実際JRの赤字路線の問題は所謂ローカル線、地域の通勤・通学輸送の問題、言ってみれば地域の問題として扱われ、所謂地方ローカル線のメインユーザーと言われている高校生の通学問題の観点から様々な事が言われています

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路線別ご利用状況(2016~2020年度)@JR東日本より

さてJR東日本のローカル線問題は本当にそれだけの問題なのでしょうか?JR東日本では収支はともかく路線・線区別の輸送状況は公開しています。そして他のJR各社の基準で出て来る所謂輸送密度2000人未満の路線を調べた時に上の路線線区も出てきます。これらの線区の特徴は貨物の有力幹線ルートであるという事です。
上越線:東京~日本海側各地域
羽越・奥羽本線:大阪・西日本~新潟・日本海側東北地方・北海道
しかし水上~越後湯沢(群馬・新潟)、村上~鶴岡(新潟・山形)、酒田~羽後本荘(山形・秋田)大舘~弘前(秋田・青森)等県境を跨ぐ区間を中心に2019年段階で輸送密度2000人を下回る区間を抱え、県境であるがゆえに県以下の自治体も動きづらく、廃線の俎上に挙げられる可能性が低くない地域となっています

アボイダブルコストルール@日本通運より
アボイダブルコストルールとは、「回避可能経費」のことで、JR貨物がJR旅客会社に支払う線路使用料のうち、貨物列車が走行しなければ回避できる経費(例えば摩耗によるレール交換費用など)のみJR貨物が負担するというルールです


いやいや、貨物列車が通るという事は貨物の収入で黒字化するんではないかと思われる方、ことJRに関してはその論理は通用しません。確かにJR貨物は貨物列車の運行で儲かるかもしれませんが、それが線路を所有し旅客列車を走らせるJR東日本をはじめとする旅客会社を潤すことは今のところはないです。と言うのはアボイダブルコストルールと言うJR旅客会社と貨物列車が出来た際の取り決めにより貨物会社は増加コストを賄う費用のみ支払うので旅客会社の収益に繋がらないのです

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<<ヒヤリング資料>>ヤマト運輸(株)@今後の鉄道物流のあり方に関する検討会国土交通省より

だったらトラックで代替すればよいじゃないという意見も出そうですが、そうは問屋が卸しません。上の資料は今後の鉄道物流のあり方に関する検討会と言う国土交通省の検討会でのヤマト運輸からのプレゼン資料、少子高齢化の影響が薄かった平成期はともかく、少子化で現役世代が減り、働き方改革で労働環境改善が必要で、EC普及で宅配個数が増加した令和の物流業界ではドライバ不足が深刻でとても貨物の有力幹線を廃線してトラックで代替する余力はないと思われます

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<<ヒヤリング資料>>ヤマト運輸(株)@今後の鉄道物流のあり方に関する検討会国土交通省より

今後の鉄道物流のあり方に関する検討会でのヤマト運輸のプレゼン資料では現状のJR貨物の取り組みの悪さからモーダルシフトが進まないという忌憚ない意見も出て来ています。上の資料がそれで、宅配便関連の需要が多い時間帯で有効な列車が少ない事、災害などでの遅延の多さや代替輸送のお粗末さが挙げられています。実際JR貨物の運営の不味さもありますがその一因としては間違いなくJR貨物が鉄道インフラを持たず、かと言ってインフラを所有するJR旅客各社にとってはJR貨物の為に投資をしても収益に繋がらないという現状があるのは間違いないです。そしてその結果貨物で活性化できる可能性があっても旅客の輸送密度で切り捨てられる路線が出てきかねないというのがこれからJR東日本が出す赤字路線の収支公表と言えるのではないでしょうか

2021年10月から郵便物(手紙・はがき)・ゆうメールのサービスを一部変更しました。@日本郵便より
土曜日配達の休止(2021年10月2日(土)~)
お届け日数の繰り下げ(2021年10月以降段階的に実施)


そして様々な問題に関して待てる時間が減っているとも言えます。昨年10月に日本郵便が土曜配達を中止し、お届け日数の繰り下げも発表しています。今回の参院選でもこれが影響して不在者投票の死票が現れる可能性が高いです

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写真:彼らの活躍の場を守るために

さてその為にしないといけない事は何でしょうか?個人的には以下になるのではないかと思います。
1,バイパス路線を含む物流の幹線を担う鉄道路線に関して物流各社を含めた協議会で協議のうえで輸送密度に関わりなく路線継続する事とし、その為には公費負担も行う
2,JR各社が貨物輸送を収益に結びつけられる様にJR各社の線路使用料の仕組みを変更する
3,有力物流各社、商社、IT企業等物流有力プレイヤーがJR貨物と資本提携を行う

1はともかく廃線問題がとやかく言われる中でまず必要な路線の継続を確保するため、2は現状ネックとなっているアボイダブルコストは1度解消する必要があるという考え、3は厳しい時代故投資よりコスト削減に走るのを避けるのと投資を適切に行う為です。当然もっと良い案があるかもしれませんが私だったらこの辺になります。

如何だったでしょうか?ローカル線問題から物流ときて混乱してしまった方も多いと思いますが、ただ物流は仕事などで一時的に生活基盤を移した方の投票手段である不在者投票にも関わる言ってみれば民主主義を支える基盤でもあります。そういった意味でトラックの運転手や貨物列車もローカル線と呼ばれる鉄道も我々の生活だけでなく民主主義を支える基盤であると考えて頂ければ幸いです

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