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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
P・フライデーの 設計ミス
2017-03-01-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 今月は年度末にぶち当たる! = 毎月の最終金曜日は午後3時で終業――サラリーマンには嬉しいプレミアム・フライデー制度が先週24日にスタートした。テレビのニュース画面によると、いつもより賑わった飲食店もあれば、閑古鳥が鳴いたイベントもあったらしい。どうやら大都市の官公庁街に近い地域では成果が目に見えたが、地方では変化が出なかったようだ。

金曜日を早じまいにして、その時間を有効に使ってもらう。土日につなげれば、2.5連休という形にもなる。その結果、消費が増えれば景気もよくなる。政府はこう考えて、プレミアム・フライデー制度の奨励に踏み切った。だが実際に導入したのは、ごく一部の大企業と官公庁だけだった。

もちろん、制度を評価するのは早すぎる。いまでは定着した週休2日制も、1992年5月に国家公務員への適用が始まってから、じわじわと普及して行った。こんどのプレミアム・フライデーも、時間をかければ浸透して行くだろう。ただ何事も最初が肝心。初めから躓いてしまうと気合が入らない。

この点で気になることが1つ。それは今月の最終金曜日が3月31日に当たることだ。いわば年度末の大晦日。よほど余裕のある企業でないと、プレミアムを出すわけにはいかないのでは。公務員だって職場によっては、この日のうちに終わらせなければならない仕事があるだろう。焦らずに、この制度は4月の新年度からスタートさせるべきではなかったか。

      ≪28日の日経平均 = 上げ +11.52円≫

      ≪1日の日経平均は? 予想 = 上げ

             
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トランプ大統領の 施政方針 (上)
2017-03-02-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ ジョーカーは飛び出さず = トランプ大統領は28日夜(日本時間1日昼)、上下両院本会議で初めて演説し、施政方針を明らかにした。内容は安全保障問題や移民対策から経済政策まで広範囲に及んだが、これまで断片的に発表してきた施策の集大成。新しい政策や考え方は、何も飛び出さなかった。このため演説が終わった時点で、ニューヨーク市場の為替相場はほとんど反応していない。

安全保障に関しては、まず「アメリカ軍の再構築を図る」ため、国防予算をかつてないほど増額する。またトランプ大統領は「軍事的な同盟国も財政負担をする必要がある」と述べたが、日本など個別の国名は挙げなかった。移民対策については「メキシコ国境のカベは近く建設を始める」と明言。移民の受け入れに関する新しい制度を作るとも述べている。

通商問題では「NAFTA(北米自由貿易協定)は製造業の雇用を4分の1以上も奪った」と指摘、「公平な貿易が求められている」と述べるにとどまった。最も注目された経済政策では「歴史的な税制改革」を実施、法人税を大幅に引き下げると同時に「中間層に対する巨額の所得減税も行う」と約束している。

またインフラ投資は1兆ドル(約112兆円)の規模で、道路・橋・トンネル・鉄道・空港を刷新。これらの経済対策で「アメリカ経済のエンジンを再起動させる」と公約した。市民の間では、こうした積極政策への期待が高まっていることも事実。だが半面、その実現性を危ぶむ声も強い。ただ1日のニューヨーク市場で、ダウ平均株価は大幅に上昇した。

                                  (続きは明日)

      ≪1日の日経平均 = 上げ +274.55円≫

      ≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ


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トランプ大統領の 施政方針 (下)
2017-03-03-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 次の焦点は18日の予算教書 = トランプ大統領の新政策にとって、最大の難関は財源問題である。施政方針演説のなかで、トランプ大統領は支出ばかりを強調し、財源については全く触れなかった。これまでの発言をみても、国防予算を500億ドル増額するため、他の予算を削減すると明言しただけである。

総額4兆ドルといわれる減税にしても、1兆ドルのインフラ投資にしても、その財源は明確でない。成長率の上昇に伴う税の自然増収では、とても足りない。国境調整税に頼るという見方も強いが、そうなるとアメリカの輸入物価は大幅に上昇し、新しい経済問題を誘発しかねない。消費者や輸入関連業界、ひいては議会の反発も強まるに違いない。

インフラ投資についての演説では、ややひっかかる部分もあった。というのは「政府と民間が協力して」と強調している点だ。政府は3000億ドル程度の財政投資にとどめ、あとは民間の資金に頼るという意味に聞こえないこともない。日本でも景気対策の際によく使われる“事業規模”という手法である。

施政方針演説に対する国民の評価は上々だった。株価も大きく上げている。一転して“紳士的な”態度を貫き通したトランプ大統領の作戦勝ちと言えるだろう。しかし財源の問題はすべて議会が握っている。トランプ政権は18日に予算教書を議会に提出するが、そこでは財源も明らかになるはずだ。議会の評価は、そこからスタートする。

      ≪2日の日経平均 = 上げ +171.26円≫

      ≪3日の日経平均は? 予想 = 下げ


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サタデー自習室 -- マイナス金利政策の功罪 ⑨
2017-03-04-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 運用難に苦しむ各種の年金 = 年金には厚生年金や国民年金などの公的年金、企業年金などの私的年金、あるいは年金型保険のような個人年金など、数多くの種類が存在する。しかし共通しているのは保険料を集め、これを原資として運用している点。ただ年金支払いの原資という性質上、投資先はできるだけ安全な資産に限ることが大原則だ。ところがマイナス金利政策で、銀行の預金金利や国債の利回りは急降下。ほとんど利益を生まなくなってしまった。

たとえば、公的年金の保険金を一手に管理・運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の場合。運用資産は132兆円もあって、世界でも最大級の投資ファンドだ。こんなに巨額のおカネを持ちながら運用益が上がらないのは損だというので、昨年から株式にも手を出し始めている。いまのところは株価が上昇しているからいいが、株式は暴落することもある。年金としては安全性を落としたとも批判されている。

企業が従業員と一緒に作っている企業年金も、悩みは同じだ。株式などリスクのある投資に手を出したいが、失敗すると会社にも多額の負担がかかってくる。だから、なかなか踏み切れない。さらに企業は、もう1つの重圧にもさらされている。従業員の退職に備えて、企業は退職金や年金の支払いに必要なおカネを貯めておく必要がある。これを企業の年金債務と呼んでいる。

この年金債務の計算はややこしい。たとえば10年後に必要な資金は、現在の積立額に今後10年間に得られるはずの利益を足して計算する。したがって得られるはずの利益が減少すると、企業はその減少分をその時点で積立額に追加しなければならなくなる。その結果、その企業の財務内容は悪化してしまう。16年3月末時点で、企業の年金債務は91兆円。積立不足額は26兆円にのぼった。

                                  (続きは来週サタデー)

      ≪3日の日経平均 = 下げ -95.63円≫

      【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】  


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サンデー実験室 = 孫に聞かせる経済の話 (改訂版)
2017-03-05-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第13章 国際収支って、なんだろう? ⑤

◇ 金融収支は28兆9000億円の純増 = 国際収支は、経常収支と金融収支から成り立っています。このうち経常収支については、すでに説明しました。それでは金融収支とは、どんな内容のものでしょう。金融という言葉からも判るように、主としておカネを中心とした取り引きの記録です。

日本の会社や個人が外国の土地や家を買ったとき、その代金を払いますね。債券や株式を買ったときも同じです。このように日本から外国におカネが払われると、日本側の資産が増加します。反対に外国の会社や個人が日本の土地や株式を買った場合は、日本側の負債が増加したと考えます。

貿易収支やサービス収支の計算では、黒字とか赤字という言葉が使われましたね。ところが金融収支では、資産から負債を差し引いた純資産が増えたか減ったかどうかを計算しています。

また16年の実績をみてみましょう。金融収支の合計は28兆9000億円の純資産の増加でした。不動産の購入や増資などの取引では純資産が14兆6000億円の増加、株式や債券の購入部門でも30兆5000億円の増加となっています。

                                  (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2017-03-06-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ ダウ平均は2万1000ドル超え = ダウ平均株価は先週27日まで、12日間連続で史上最高値を更新。87年1月の記録に肩を並べた。そのあと一拍して、こんどはトランプ大統領の施政方針演説を好感。とうとう3月1日には2万1000ドル台に到達した。週間の上げ幅は184ドル。週の終り値でも2万1000ドル台をキープしている。ナスダックやSP500も最高値を更新中だ。

FRBによる3月中の利上げが、ほぼ確定的になった。しかし市場はほとんど動揺せず、むしろ金融株の有力な買い材料となっている。その根底にはトランプ政権による財政支出拡大への期待感、アメリカの順調な景気回復、さらには立ち直りの兆候が濃くなってきた世界経済に対する安心感が存在するようだ。世界各国の株価も、一斉に上向き始めた。

そうしたなかで、日本株は出遅れ気味。日経平均は先週186円上げたが、まだ1万9500円に届かない。トランプ政権の通商政策などに対する警戒感が強く、一種の円高過敏症になっているような気がする。今週はアメリカの利上げが決定的になりそうだから、円は下落する可能性が大きい。出遅れを挽回するチャンスだろう。

今週は8日に、10-12月期のGDP改定値、1月の国際収支、2月の景気ウォッチャー調査。10日に、1-3月期の法人企業景気予測調査と2月の企業物価。アメリカでは7日に、1月の貿易統計。10日に、2月の雇用統計。また中国が8日に、2月の貿易統計。9日に、2月の消費者物価と生産者物価を発表する。

      ≪6日の日経平均は? 予想 = 上げ


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抵抗する FRBの心情
2017-03-07-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 今月の利上げは決意の表れ = アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)は、3月14-15日に開くFOMC(公開市場委員会)で政策金利の引き上げを決定するようだ。イエレン議長は3日の講演で「今月の会合で雇用と物価が想定通りに改善していると確認できれば、金利の調整が適切になる」と、きわめて具体的に言及。相前後してフィッシャー副議長はじめ理事の数人も、利上げの可能性が高いことを示唆している。

FRBは一昨年12月と昨年12月の2回にわたって、政策金利を引き上げた。今回引き上げればは3回目。金利が上がれば、景気には抑制効果が働く。3-4%の経済成長を目指すトランプ大統領にとっては、どうも気に入らないようだ。大統領に就任してからは沈黙しているが、選挙戦のなかではFRBを批判。来年2月に任期を迎える「イエレン議長の再任はしない」と明言していた。

法制上、アメリカでも中央銀行の独立性は守られている。だがFRBの議長を含む理事の任命権は、大統領が握っている。政策の決定機関であるFOMCの定員は12人。そのうちの7人をFRBの理事が占める。ところが4月になると、理事の欠員が3人になり、トランプ大統領が新しい3人の理事を任命する。その3人が利上げ反対論者になる可能性はきわめて高い。

こうした状況から、市場はつい最近までFRBは軽々に動けないと予想していた。それが先週になって、急激に利上げ決断に変化した。FRBの内部では「反対派の理事が送り込まれる前に、利上げを決めてしまおう」という機運が強まったのではないだろうか。その証拠に、これまで利上げに消極的だった理事たちも賛成論に変わっている。要するにトランプ政権に対するFRBの抵抗である。わが日銀には、残念ながらそんな度胸はなさそうだ。

      ≪6日の日経平均 = 下げ -90.03円≫

      ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ



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6つの 新しい変化 / 中国 (上) 
2017-03-08-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ バブル解消・構造改革へ力点 = 中国では5日、全国人民代表大会が開幕した。国会に当たるこの会議では、李克強首相の施政方針演説を皮切りに、いろいろな問題が報告される。これらの情報を集約してみると、中国がこれから何を目指して変化して行くのかを読み取ることができるわけだ。問題を6つに絞って要約してみよう。

1)成長率は6.5%前後に--李克強首相の報告によると、17年の実質経済成長率は6.5%前後を目指すことになる。16年は6.5-7.0%が目標だったから、3年連続で成長のスピードが抑制される。かつては10%を超える高度成長を誇っていた中国も、完全に中成長国に変貌したと言える。ただ不思議なのは、いかに計画経済の国とはいえ、よく0.5%刻みの変更を達成できるものだ。

2)金融緩和でなく企業減税--これまでは財政支出による公共投資と金融緩和で、経済成長目標を達成してきた。それを今後は金融は引き締め気味とし、景気は企業減税などで下支えして行く。財政支出が大きすぎると、鉄鋼や石炭などの設備廃棄が進まず、構造改革が遅れるからだ。また金融は引き締め気味にし、不動産バブルの解消に努める。17年の企業減税は前年比3400億元増の9100億元を予定している。

3)RCEPからFTAAPへ--李首相はRCEP(東アジア地域包括的経済連携)について触れ「早く妥結させて、次のFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の建設を推進したい」と強調した。トランプ米大統領がTPP(環太平洋経済連携協定)をご破算にしてしまったので、中国にとっては願ってもないチャンス到来。RCEPはまだ揉めているが、日本も長期的な通商ビジョンを早く確立しないと、中国のカサに覆われてしまう危険性がある。

                                (続きは明日)

      ≪7日の日経平均 = 下げ -34.99円≫

      ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫ 


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6つの 新しい変化 / 中国 (下)
2017-03-09-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 環境対策と人件費抑制に注力 = 注目点の残り3つは次の通り。

4)汚染の度合いに応じて企業に課税--北京をはじめ大都市の大気汚染は、世界でも有名になってしまった。観光客も寄り付かない。住民の不満も沸騰寸前だ。そこで政府も自動車の排ガス規制を、前倒しして実行する。また地方では土壌や河川の汚れがひどい。このため18年からは、企業に対し汚染度に応じて環境保護税を課税することになった。逆に成績のいい企業には、法人税の一部を還付する。年間の税収見積もりは500億元。

5)最低賃金を3年間は凍結-ー中国の16年の輸出額は、前年比で7.7%減少した。その最大の原因は、土地代や人件費の高騰で輸出コストが上がってしまったことにある。製造業が集結している広東省の場合、92年には月額245元だった平均賃金が、15年には2030元に上昇している。“世界の工場”であるための条件が失われてきたわけだ。このため広東省は、今後3年間の賃上げをストップ。他の地域にも、同様の措置が広がっている。

6)国防予算は1兆元に--17年の国防予算は1兆0443億元。前年比7.0%の増加で、初めて1兆元を突破した。アメリカに次ぐ世界第2の規模だが、まだアメリカの国防費に比べれば4分の1にすぎない。しかしロシアの2.5倍、日本の3.5倍に近い。トランプ大統領は国防費の大幅な増額を宣言しており、米中の軍拡競争はとどまりそうにない。

中国政府が打ち出した新しい方針は、日本にも大きな影響がある。成長率を下げて構造改革を進め、バブルを抑制すること。また環境の浄化に努めることは、日本にとっても望ましい。ただ人件費の抑制とRCEPについては、軽々に判断できない側面を持っている。国防費の増額については、言うまでもない。

      ≪8日の日経平均 = 下げ -90.12円≫   

      ≪9日の日経平均は? 予想 = 上げ


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寿命は120年で 2倍近くに延びた
2017-03-10-Fri  CATEGORY: 政治・経済
平均寿命は女性86.99歳、男性80.75歳 = 厚生労働省が発表した15年の完全生命表によると、日本人の平均寿命は女性が86.99歳、男性が80.75歳だった。10年の平均寿命に比べると、女性は0.69歳、男性は1.20歳それぞれ延びている。完全生命表というのは、5年ごとに実施される国勢調査などの結果を精査して作成したもの。寿命に関する統計の確定版と言っていい。

完全生命表の作成は古くから行われており、第1回は1881-1898年(明治24-31年)だった。当時の平均寿命は女性が44.3歳、男性が42.8歳となっている。それから120年の間に、日本人の平均寿命は男女ともに2倍近くに延びたことになる。この間、女性の平均寿命が60歳に達したのは1950-52年(昭和25-27年)、男性は1955年(昭和30年)だった。

一般に平均寿命は「日本人の平均的な寿命」と考えられているが、正確に言えばこれは誤り。平均寿命は「その年に生まれた0歳児の平均的な寿命」を指す。別に1歳以上の人の平均的な寿命も計算されており、これを平均余命と呼んでいる。たとえば15年の場合、40歳の女性の平均余命は47.67年。65歳の男性は19.41年などとなっている。

最近、関心が高まっているのは、健康寿命という考え方。これは他人の助けを借りずに、日常生活を過ごせる年齢だ。寿命が長くなっても、寝た切りでは仕方がない。健康寿命を延ばせば、本人は幸せだし人手不足の解消にも役立つ。また医療費や介護費も少なくなり、財政再建にも貢献する。ただ厚労省は3年に1度しか健康寿命を算出しておらず、15年の平均寿命と比較できる数値はまだない。

      ≪9日の日経平均 = 上げ +64.55円≫

      ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ


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サタデー自習室 -- マイナス金利政策の功罪 ⑩
2017-03-11-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 個人は全体として大損害 = 大手銀行に1000万円の預金をする。その利子は定期預金でも、わずか年1000円。普通預金では100円しか付かない。銀行はこんなに安い金利でおカネを預かっても借り手が見付からず、本業では儲けが出なくなった。そこで苦し紛れに、各種の手数料を引き上げている。たとえばATMの手数料も引き上げられたから、振り込みなどをすると預金の金利分などはすぐ吹き飛んでしまうようになった。

日銀の調査によると、昨年9月末時点で個人の預金額はおよそ830兆円。仮に平均1%の利子が付けば、個人の資産は年に8兆円以上増える計算だ。それが微々たる金額に減少してしまった。日銀のマイナス金利政策で、一部の個人は超低金利の住宅ローンを借りることができた。しかしゼロに近い預金利子の影響を考えれば、個人全体として大損害を被ったと言える。

国債や超一流の社債も、その利回りがゼロに近づいた。このため個人にとっては、資産を安全に運用する手段が見付からなくなっている。そこで株式などのリスク資産に手を出した人もいるが、大多数の個人はそんな冒険は犯したくない。そこでやむなく銀行預金を継続する。あるいは現金化して、手元で保有する人も増加している。家庭用の金庫が売れているというニュースは、笑って済まされれる話ではない。

特に老後の資金計画を重要視している人は、将来に不安を抱いている。年金のほかに貯金の元利合計を計算して老後の生活を設計していたが、どうも設計通りには行かなくなった。保険料の値上げなどで年金は減る一方だし、貯金の利子はほとんどアテにできなくなってしまった。対応策は節約しかない。その結果、消費が伸びず景気は上昇しない。この一点だけをみても、マイナス金利政策は景気にマイナスだったと言えるだろう。

                                 (続きは来週サタデー)

      ≪10日の日経平均 = 上げ +286.03円≫

      【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】    


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サンデー実験室 = 孫に聞かせる経済の話 (改訂版)
2017-03-12-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第13章 国際収支って、なんだろう? ⑥

◇ 外貨準備の働き = 国際収支というのは、外国との間でおカネをやりとりした国の家計簿でしたね。家計簿の場合、収入が支出より多いと貯金が増えるでしょう。逆に支出が収入より多ければ、貯金は減ってしまいます。国の場合も同様で、たとえば輸出が大幅に伸びて国際収支が黒字になると、外国の通貨がたまって貯金が増えます。

この貯金のことを、外貨準備(がいかじゅんび)と呼んでいます。いろいろ例外もあるのですが、一般に国際収支が黒字なら外貨準備は増加します。逆に赤字なら減少します。外貨準備は、政府と日本銀行が管理しています。

外国の通貨を売買する市場でドルやユーロなどの外貨が不足した場合に、ここから外貨を供給します。もし外貨準備がなくなって市場への供給ができなくなると、どういうことになるでしょうか。日本の会社や個人が円を外貨に替えて外国から品物を輸入しようとしても、できなくなってしまいます。

そんなときには、IMF(国際通貨基金)や世界銀行、あるいは外国から借金しなくてはなりません。また輸入を減らして外貨の流出を防ぐために、国内を不況にする政策をとる必要も出てきます。ですから、どこの国にとっても、ある程度の外貨準備を持っていることは、とても大切だと言えるでしょう。  

                               (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2017-03-13-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 東京市場に新しい動き = ダウ平均株価は先週、小刻みな動きを繰り返し、週間では103ドル値下がりした。FRBによる利上げが決定的になり、トランプ政権の予算教書が間もなく出る。原油価格も下落。こうした材料を理由に、様子見の姿勢が強まった。急ピッチで2万1000ドルまで上げてきたあとの一休みといったところだ。

日経平均は先週135円の値上がりだった。前半は“円高過敏症”が出て下げたが、後半は円安になったために上昇した。アメリカの雇用状況が予想をはるかに上回る好成績となり、今週15日には利上げの決定が確定的に。これで円相場は下落した。相変わらず円相場に振り回されているが、そんな東京市場にも新しい動きが現れてきた。

円相場によって業績があまり左右されないのが、中堅・中小企業に多い内需型の企業。その小型内需株で構成されるのが、ジャスダック市場である。このジャスダック平均株価が、このところ快進撃を続けている。先週末までに、なんと21日間の連騰を記録した。買っているのは、ほとんどが国内の個人投資家だという。この勢いが市場全体に広がるかどうか。

今週は13日に、2月の企業物価と1月の機械受注、第3次産業活動指数。15日に、2月の訪日外国人客数。アメリカでは15日に、2月の消費者物価と小売り売上高、3月のNAHB住宅市場価格。17日に、2月の工業生産とカンファレンス・ボード景気先行指数、3月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が14日に、2月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。なお15日はオランダの総選挙、アメリカでは予算教書が提出される。

      ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ


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快進撃続ける ジャスダック市場
2017-03-14-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 21日間の連騰を記録 = 日経平均株価のもたつきを尻目に、ジャスダック市場の株価が急騰している。先週末10日の日経ジャスダック平均株価は3064.23。これで21日間の続伸を記録した。この間の上げ率は6.3%に達している。株価は昨年2月から上げ基調で推移しており、そこからの上げ率は4割に近い。なぜ、この市場に資金が集まっているのだろうか。

ジャスダックというのは、東京証券取引所が運営する株式市場の一つ。もともとは店頭市場から発展したもので、現在の形の市場は10年に発足した。成長企業の上場が多く、現在の上場銘柄は756銘柄となっている。この銘柄数は東証第1部の2009銘柄よりは少ないが、第2部の533よりは多い。

東証第1部の225銘柄で構成される日経平均株価は、このところ円相場の動きに大きく左右されている。輸出に関連する大企業が中核をなしており、円高になると利益が減少しやすい。これに対してジャスダックを構成する銘柄は、内需に関連する中堅・中小企業が多い。このため円相場の影響が、比較的に小さいと考えられる。

外国人投資家の売買は、ほぼ東証第1部に集中している。ジャスダック市場での売買は2割に満たない。つまりジャスダック市場は8割が国内の個人投資家であり、これらの投資家が円相場に左右されにくいこの市場に関心を持った。この結果が、21日間の連騰にもつながったのではないだろうか。したがって円安が進み日経平均が上昇すると、資金はジャスダック市場から第1部市場へと流れ出す可能性は大きい。

      ≪13日の日経平均 = 上げ +29.14円≫

      ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ


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国際原油価格が 急落 (上)
2017-03-15-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ シェールの反撃が始まった = ニューヨーク商品取引所のWTI(テキサス産軽質油)先物価格は先週、大きく下げて1バレル=48ドル台にまで落ち込んだ。一時は55ドル台に上昇していたから、この数日の間に1割も下落したことになる。下落の発端は、EIA(米エネルギー情報局)によるアメリカの原油に関する生産と在庫状況の発表だった。

EIAの発表によると、3月3日時点でアメリカの原油生産量は日量909万バレル。昨年7月の840万バレルより1割近く増えている。また在庫量は5億2800万バレルで、1982年以来の最高になった。この在庫量は市場の予想を大きく上回るものだったため、投機筋が一斉に売りに向かったようだ。在庫の増加は暖冬のせいもあったが、アメリカのシェール生産がかなり回復してきた結果とみられている。

原油の国際価格は、OPEC(石油輸出国機構)が昨年11月に減産で合意してから上昇基調を保ってきた。実際の減産はことし1月から始まり、その目標は加盟13か国で日量120万バレルの削減。その1月の実績は、OPECの集計によると89万バレルの削減だった。まずまずの成績と評価され、価格も55ドル台まで上昇していた。

だが価格が上がると、アメリカ産シェールの生産も増えてしまう。アメリカ国内のリグ(石油掘削設備)稼働数は2月に入ると591基、15年10月の水準に回復。生産量もしだいに増加しつつある。EIAの予測では、17年の原油生産量は898万バレル、18年は953万バレルに達するという。OPECをはじめとする産油国連合の減産戦略に対抗する形で、アメリカ・シェール産業の反撃が始まったわけである。

                                  (続きは明日)

      ≪14日の日経平均 = 下げ -24.25円≫

      ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ


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国際原油価格が 急落 (下)
2017-03-16-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ トランプ大統領も後押し = 原油価格は今後どう動くのだろうか。まず価格を引き上げる要因は、やはり産油国の減産。1月の実績でみる限り、OPEC加盟13か国の削減ぶりはまずまずだった。ところがロシアなどOPECに加盟していない11か国の成績は、目標の6割にも達していない。もう1つの引き上げ要因は、世界経済の回復に伴う需要増加。IEA(国際エネルギー機関)は、17年の石油需要が日量130万バレル増加すると予測している。

一方、価格を引き下げる要因はアメリカのシェール生産がどれだけ増えるか。価格の上昇でシェール産業も息を吹き返した形だが、最近になってメジャーもシェール生産に手を広げ始めた。従来型の油田だと実際の産出までに数年かかるが、シェールだと数か月で稼働してしまう。この点は見過ごせない。

トランプ大統領の政策も、価格の引き下げを後押ししそうだ。連邦政府の保有地では禁止されていたエネルギー生産を認可。カナダ産オイルサンドを輸入するためのパイプライン建設。北極海やメキシコ湾での石油掘削を解禁。シェール開発に対する規制の緩和など。いずれも実現すれば、原油供給の増加に直結する。

こうみてくると、世界経済が予想外の活況を呈さない限り、原油価格には引き下げ圧力の方が強く働きそうだ。ただ価格が40ドルを下回ると、シェールの生産にブレーキがかかる。逆に60ドルを上回ると、産油国側は減産協定を維持できなくなるだろう。原油価格は日本経済にも大きな影響を及ぼすが、40-60ドルの間に収まっていれば影響は比較的小さくて済む。

      ≪15日の日経平均 = 下げ -32.12円≫

      ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ


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米利上げでも なぜか円高
2017-03-17-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 上昇しないアメリカの長期金利 = FRBは15日、政策金利の0.25%引き上げを決定した。一昨年12月と昨年12月に続く3回目の引き上げで、政策金利の水準は0.75-1.00%になる。雇用の伸びが引き続き堅調なこと、エネルギーと食品を除く消費者物価が2%をやや下回る程度であることを、利上げの主な理由として挙げている。FOMC(公開市場委員会)での採決は、9人が賛成、1人が反対だった。

この決定を受けて、15日のダウ平均株価は113ドルの上昇となった。終り値は2万0950ドル、再び2万1000ドルに迫る勢いをみせている。ニューヨーク株式市場は今回の利上げを早くから織り込んでおり、利上げはむしろアメリカ経済の強さを示す証拠だと受け取った。一方、16日の東京市場では1円以上も円高が進行している。

本来ならば、アメリカの金利が上がれば日米間の金利差が拡大して、為替市場ではドル高・円安になるはずである。このためFRBの利上げが発表されれば円安が進み、東京市場の株価は上昇するという期待も高まっていた。しかし当面、この期待は裏切られたようである。なぜなのだろう。

答えは、3月の利上げは確定的だと早くから予想されていたことにあるらしい。このためニューヨークの債券市場では、国債の先物が大量に売られてきた。それが利上げの実現で、買い戻しに転じている。だから国債の価格が上がり、長期金利も下げ圧力にさらされた。たとえば10年もの国債の利回りは、昨年末の2.6%から現在は2.57%へと下がり気味だ。こうして日米間の金利差は広がらず、逆に円高になっている。

      ≪16日の日経平均 = 上げ +12.76円≫

      ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ


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サタデー自習室 -- マイナス金利政策の功罪 ⑪
2017-03-18-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ ヨーロッパでは預金金利もマイナスに = 日銀はリーマン・ショックで不況に陥った景気を立て直そうと政策金利をどんどん引き下げ、最後はとうとうゼロ金利になってしまった。銀行の預金金利も追随して、ゼロ近辺にまで低下して行く。そんな状況のなかで、日銀は16年1月「マイナス金利政策」を導入した。すると銀行預金の金利もマイナスになるのではないか? 多くの人たちが、こう考えたのも無理はない。

じっさい、ヨーロッパの一部の銀行は預金金利をマイナスにしている。つまり銀行におカネを預けると、手数料を取られることになるわけだ。たとえばドイツ南部のバイエルン州にあるライファイゼン銀行。昨年9月から、10万ユーロ(約1200万円)以上の大口預金に対して、10万ユーロを超える部分に年0.4%のマイナス金利を適用した。

またスイスの郵便貯金会社ポストフィナンスも、ことし2月から100万スイス・フランを超える部分の貯金に年1%のマイナス金利を付けている。スイスでは多くの銀行が法人預金についてはマイナス金利を適用しているが、個人預金にも適用したのはこれが初めて。ただドイツやスイスでは年金制度に不安がないこともあって、住民に大きな混乱は起きていない。

日銀のマイナス金利政策は、市中の金融機関が日銀に預けている当座預金の一部を対象に手数料を取るという形だった。だが金融機関で、法人や個人の預金にマイナス金利を適用したところは皆無だった。日本の場合は年金制度に不安もあって、そんなことをしたら大混乱に陥ると予想されたためである。しかし万が一の事態に備えて、現金を手元に置いた人もいたことは間違いない。

                                  (続きは来週サタデー)

      ≪17日の日経平均 = 下げ -68.55円≫

      【今週の日経平均予想 = 2勝3敗」】  


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サンデー実験室 = 孫に聞かせる経済の話 (改訂版)
2017-03-19-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第13章 国際収支って、なんだろう? ⑦

◇ 日本の保有高は世界第2位 = 国際収支というのは、国の対外的な家計簿。黒字が続いてたまった貯金が、外貨準備でしたね。では日本は、どのくらい外貨準備を持っているのでしょうか。政府の発表によると、ことし2月末の外貨準備保有高は1兆2300億ドルでした。円に直すと130兆円を超えています。ずいぶん多いですね。

1年前の16年2月に比べると、8億ドルの増加でした。この1年間では、あまり変化していません。ただ10年前に比べると、日本の外貨準備は4600億ドルほど増加しました。そして、つい最近までは世界でいちばん多くの外貨準備を保有していたのです。

いま世界でいちばん多くの外貨準備を持っている国は、中国です。その金額は15年末で3兆4000億ドルに達しました。ただ最近は為替介入でドルを使ったため、減り気味になっています。第2位は日本、3位はサウジアラビア、あとはスイス、アメリカ、ロシアと続きます。

一般の家庭にとっては、たくさん貯金があることはいいことでしょう。しかし一国の外貨準備は、多ければいいというわけでもありません。通貨の価値を維持して、輸入代金の支払いに困るようなことがなければ、それ以上は必要ないという考え方がふつうです。

                                (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2017-03-20-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 次の材料が見付からない = 株式市場は先週、2つの大きなイベントを乗り越えた。1つはFRBによる政策金利の引き上げ。もう1つはオランダの総選挙である。しかし株価の反応は予想外に小さかった。ダウ平均が利上げ発表の当日に100ドルを超えて値上がりしたほかは、ダウも日経平均も連日2ケタの値動きにとどまっている。なにか次の材料を探して、足踏みしている風情のようだ。

FRBは3回目の利上げに踏み切ったが、市場は早くから織り込み済み。そのせいもあって、市場の反応は穏やかだった。年内の利上げは「あと2回か3回か」といった議論も聞かれるが、そんなに切実な問題ではなくなってきている。オランダでは反移民・反EUの自由党が議席を伸ばせず、ルッテ現首相の続投がほぼ確実となった。したがって市場は無反応。

ダウ平均は先週12ドルの値上がり。今週は2万1000ドルに再挑戦することになる。一方、日経平均は週間83円の値下がり。スキャンダラスな政治の話にはコト欠かないが、どうも日本経済が元気になるような材料が出てこない。市場ではまだ2万円への期待も萎んでいないが「もう待ちくたびれた」という感じも強まっている。

今週は22日に、2月の貿易統計と1月の全産業活動指数。アメリカでは22日に、1月のFHFA住宅価格と2月の中古住宅販売。23日に、2月の新築住宅販売が発表される。

      ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ


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取り残される日本 : デフレ脱却 (上)
2017-03-22-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ ユーロ圏も利上げの方向 = ECB(ヨーロッパ中央銀行)のドラギ総裁は先週の記者会見で「デフレのリスクはおおむね消え去った」と発言した。このニュースは、なぜか日本ではあまり報道されていない。しかし欧米の市場では「そう遠くないうちに、ECBが金融政策の舵を利上げに切り替えるための布石」だとみて関心を寄せている。

ユーロ圏も長らく経済の不振に悩まされ、ECBは政策金利を下げ続けてきた。市中銀行がECBに置く当座預金については、12年7月にゼロ金利。14年6月にはマイナス金利、現在はマイナス0.4%の金利が適用されている。それを遠からずプラス金利に修正して行こうというのが、ドラギ発言の真意だろうと考えられているわけだ。

周知のようにアメリカのFRBは、すでに政策金利の引き上げに着手。一昨年12月と昨年12月、さらに先週も3回目の利上げに踏み切っている。ここでECBも利上げの方向に政策の舵を切り替えると、主要な先進国で取り残される形になるのは日本だ。黒田日銀総裁は利上げどころか、いまだに「マイナス金利の深掘りも辞さない」と言っている。

こうした中央銀行の姿勢の違いは、それぞれの景気状況の差異によって生じている。たとえばIMF(国際通貨基金)が発表した成長率予測をみても、アメリカは17年が2.30%、18年が2.50%となっている。またユーロ圏は17年も18年も1.60%だ。これに対して、日本は17年が0.80%、18年が0.50%と際立って低い。しかも17年より18年の方が低くなると予測されているのは、日本だけである。

                                (続きは明日)

      ≪21日の日経平均 = 下げ -65.71円≫

      ≪22日の日経平均は? = 下げ


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取り残される日本 : デフレ脱却 (下)
2017-03-23-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 外国人投資家も待ち疲れ? = 市場関係者によると、最近は資金を東京市場から新興国市場へ移す外国人投資家が増えているという。長い間、東京市場は「出遅れ感が強く、そのうちに買われる」と期待されてきた。しかし日本の景気は一向に好転せず、株価の戻りも鈍い。そこで待ちくたびれた外国人投資家が、東京を見限って新興国に向かうというわけだ。

政府の公式見解である月例経済報告は、もう長いこと「景気は回復基調を続けている」と書いている。日銀も「デフレ脱却までもう一息」と言い続けてきた。もしそうなら、景気はもう少しよくなっていなければおかしい。たしかに成長率はなんとかプラスを維持しているが、1%前後での足踏み状態がずっと続いているだけだ。

そんななかでも、企業の業績は絶好調である。その利益が賃金に回れば、景気の好循環が生まれる。政府はこう考えており、安倍首相は何度も経営者団体に大幅な賃上げを要請した。だが経済に好循環が起きるほどの賃上げは、いまだに実現していない。その理由は何なのか。政府はこの点をもっと真剣に究明すべきである。

たとえば法人税が高いからなのか。消費税の再引き上げを警戒しているのか。日本経済の行く手が不明瞭だからなのか。あるいは日銀のマイナス金利政策が、心理的には景気の浮揚よりも景気の抑制に働いているのかもしれない。政府は法人企業を対象に、よく投資計画や人員計画について調査している。今後は「投資や賃上げに消極的な理由」についても、アンケート調査を実施すべきだと思う。

      ≪22日の日経平均 = 下げ -414.50円≫

      ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ


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家計も企業も 現金・預金ファースト
2017-03-24-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ おカネを手元に置きたがる謎 = 日銀が発表した資金循環統計によると、家計の金融資産残高は16年末時点で1800兆円になった。過去最高の水準で、前年比では0.9%の増加。このうち現金と預金の合計額は936兆6000億円で、全体の半分以上を占めた。前年比では1.8%増加しており、家計が現金・預金の蓄積に力を入れていることが判る。

金融機関を除く民間企業の金融資産残高は、前年比3.9%増の1100兆円だった。このうち現金・預金は244兆円で、前年より7.5%も増加している。家計だけではなく、企業も現金・預金の積み上げに努力しているわけだ。さらに注目されるのは、預金のなかでも普通預金が急増していること。日銀によると、16年末時点では定期預金が前年比3.9%減少したのに対して、普通預金は11%も増えている。

普通預金はいつでも引き出せるから、ある意味では現金を持っているのに等しい。したがって最近は、家計も企業もせっせとおカネを手元に置こうとしているわけだ。常識的に考えれば、定期預金の金利はゼロに近い。最も安全な国債の利回りもマイナスになりやすい。それなら現金や普通預金でも同じこと。だから・・・という解釈になる。

だが、そんな単純な理屈では割り切れない、何か別の理由もあるのではないか。家計も企業も、手元に置いたおカネを一向に使いたがらない。その理由は何なのだろう。将来に対する不透明感、将来への不安感。それを吹き飛ばすような政策がないと、現在の不思議な無力感はなくならないかもしれない。みなさんのご感想は。

      ≪23日の日経平均 = 上げ +43.93円≫

      ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ


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サタデー自習室 -- マイナス金利政策の功罪 ⑫
2017-03-25-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 行き詰まった日銀の緩和政策 = 日本経済が高度成長を続けていた1973年(昭和48年)、日銀の政策金利(当時は公定歩合)は年9%だった。その後は成長率の低下とともに、政策金利も下がる一方。08年9月のリーマン・ショック直前には0.5%となっていた。その後も不況対策で、ついに政策金利は0.1-0%へ。これ以上は下げられないところに行き着いてしまった。

金利がダメなら、あとはおカネの量を増やすしかない。そこで日銀が13年4月に始めたのが、国債や株式を市場から年に60-70兆円買い入れる“異次元緩和”だった。さらに14年10月には、買い入れ額を80兆円に増やしている。だが、その結果は日銀の国債保有額が激増。最近では国債発行残高の4割を超えてしまった。この調子では、買うべき国債が間もなく市場から姿を消してしまう。量的緩和も限界が見えてきた。

そこで日銀は、再び金利政策に立ち戻る。それが16年1月のマイナス金利政策である。黒田日銀総裁はしばしば「マイナス金利政策はまだ深掘りできる」と豪語しているが、実際問題としては難しい。日米間の金利差を広げればドル高・円安になりやすく、トランプ大統領を吠えさせることにもなりかねない。

だから、これ以上の金利引き下げは難しい。しかもマイナス金利政策の副作用は、広範な分野に広がっている。一部にプラス効果をもたらしたものの、マイナス効果の方がはるかに大きいことは明らかだ。日銀はいさぎよくマイナス金利政策の失敗を認め、金融政策の方向転換を真剣に考えるべきだろう。

      ≪24日の日経平均 = 上げ +177.22円≫

      【今週の日経平均予想 = 3勝1敗】   


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サンデー実験室 = 孫に聞かせる経済の話 (改訂版)
2017-03-26-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第13章 国際収支って、なんだろう? ⑧

◇ 所得収支は大幅な黒字 = 16年の場合、貿易・サービス収支は、ようやく黒字を回復しました。そのうえ所得収支は大幅な黒字を出しています。このため、貿易・サービス収支と所得収支を合計した経常収支も大幅な黒字でした。

日本の企業は海外の会社に資金を出して経営に参加したり、海外に子会社を作って営業しています。また個人も含めて、海外の株式や債券を購入しています。こうした投資先から得られる配当や利子、これが所得収支に計上される収入です。この収入が最近は、とても多くなっているのです。

16年の実績でみると、所得収支は16兆円の黒字でした。貿易・サービス収支も4兆6000億円の黒字でしたが、この所得収支の黒字によって、その両方を合わせた経常収支は20兆6000億円もの黒字となっています。それだけ海外への投資が増え、そこから得られる配当や利子が多額になったわけですね。

前年と比べてみると、その変化がよく判ります。15年の貿易・サービス収支は2兆3000億円の赤字。所得収支は18兆7000億円の黒字でした。ですから貿易・サービス収支は大きく改善。ところが所得収支は黒字でしたが、やや減少したことになります。

                                  (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2017-03-27-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ トランプ相場の巻き戻し = ダウ平均株価は、先週末まで7日間の続落。前半はFRBによる利下げの見通し、後半はトランプ経済政策の実現性に対する疑問が大きな売り材料になった。特に後半の問題はトランプ大統領の統率力に対する疑問でもあり、今後に尾を引く可能性が大きい。ダウ平均は先週318ドルの値下がりだった。

FRBは先々週、3度目の利上げに踏み切った。だが同時に、今後の利上げはゆっくりしたペースになるという姿勢を明らかにしている。このため金融機関の業績回復もゆっくりになるという思惑から金融株が売られ、これが全体の市況を悪化させた。続いてトランプ政府が提出したオバマ・ケアの代替法案が、議会でストップ。他の景気対策法案の実現性にも疑問が生じて、株価の足を引っ張ることになってしまった。

日経平均は先週259円の値下がり。アメリカの利上げテンポがゆっくりになるという見方から、ドルが売られ円高が進んだ。それにニューヨーク市場の株安が重なったためである。トランプ政策の実現性にに対する疑問が、今後どこまで膨らむのかはまだ予見できない。しかしアメリカの景気動向や企業収益は堅調なので、株価を下支えする力はしっかりしていると思われる。

今週は27日に、2月の企業向けサービス価格。29日に、2月の商業動態統計。31日に、2月の労働力調査、家計調査、鉱工業生産、消費者物価、住宅着工。アメリカでは28日に、3月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。29日に、中古住宅販売。30日に、10-12月期のGDP確定値。また中国が31日に、3月の製造業と非製造業のPMIを発表する。なおイギリスは29日に、EUに離脱を正式に通告する予定。

      ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ



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トランプ大統領 初戦KO負け (上)
2017-03-28-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 与党の造反を抑え切れず = アメリカの有力経済紙ウォールストリート・ジャーナルは22日「トランプ氏が『偽大統領』になる日」と題する社説を掲載した。その書き出しは「北朝鮮のICBMがハワイの近海に着弾したと、トランプ大統領が発表しても誰も信じないだろう」と、きわめて強烈だ。財界を代表する新聞だけに、ウォール街のいまの心境を代弁したのかもしれない。

そして“その日”は、2日後にやってきた。トランプ大統領が、選挙中から最大の公約としてきたオバマ・ケア代替法案の議会提出を断念したのである。民主党だけではなく共和党の一部が反対に回り、議会に提出しても成立の見込みがなくなったからだ。これによって大統領の統率力には大きな疑問符が。減税インフラ投資などの実現性が危ぶまれ、株価は急落した。ウォール街には、裏切られたという感触が流れている。

オバマ・ケアはオバマ前大統領が実現した、国民健康保険の普及制度。10年に法案が成立し、これまで2000万人が新たに健康保険に加入している。ただ政府の補助金が巨額にのぼるためトランプ氏は大反対、内容を修正した代替法案を準備してきた。ところが共和党の一部がこれに賛同せず、トランプ大統領やライアン下院議長の説得にも最後まで応じなかった。

共和党のなかには、財政支出の増額を極端に嫌う超保守派の議員が少なくない。全く逆に、健康保険の加入が抑制されることを心配する議員もいた。トランプ大統領は結局、その双方を満足させるような代替案を見い出せなかったことになる。このため大統領の議会に対する工作力、特に与党議員に対する統率力の欠如が際立ってしまった。

                                  (続きは明日)

      ≪27日の日経平均 = 下げ -276.94円≫

      ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ


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トランプ大統領 初戦KO負け (下)
2017-03-29-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 経済政策は成立するのか = アメリカの成長率を3-4%に引き上げるため、今後10年間で4兆ドルの減税と1兆ドルのインフラ投資を実行する。これがトランプ氏の選挙公約だった。ウォール街はこの政策を好感、ダウ平均株価は昨年11月からことし3月にかけて2700ドルも上昇した。いわゆる“トランプ相場”と呼ばれる現象である。

だがトランプ大統領はオバマ・ケア代替法案で、共和党の超保守議員を説得できなかった。なれば巨額の財政支出を伴う減税やインフラ投資は、どうなるのか。オバマ・ケア代替策の実施で見込んでいた3360億ドルの支出削減も、吹っ飛んでしまった。ライアン下院議長も「税制改革は困難になった」と発言している。ウォール街の落胆は大きい。

しかし健康保険問題と景気対策は違う、という見方もないではない。財政支出の増大に大反対の共和党超保守派を賛成に導くことは難しいが、その数は約30人。民主党のうち30人以上が賛成票を投じれば、成立は可能だという意見である。そのためにはトランプ大統領が野党の主張もよく聞いて、ある程度は妥協することが必要になるだろう。

オバマ・ケア代替法案の提出を断念した直後の記者会見で、トランプ大統領は「いろいろなことを学んだ」と述べている。この言葉通り、本当に議会対策の拙さを反省したのかどうか。お山の大将みたいな態度を改められるのかどうか。景気対策については、トランプ大統領の学習能力が問われることになる。

      ≪28日の日経平均 = 上げ +217.28円≫

      ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ
 

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上がる 上がる 電気料金 (上)
2017-03-30-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 4か月連続の値上げ = 電気料金がじわじわと上がっている。大手電力10社は5月も値上げすると発表、これで全社が4か月続けて料金を引き上げることになった。東京電力の場合、毎月260㌔㍗時を使用する標準家庭で、この間の値上げ幅は448円にのぼる。5月の月額料金は6605円になる見込み。関西電力や中部電力なども、ほぼ同様。家計の負担は、じわっと重くなってきた。

工場や事務所向けの電力も値上げされる。だから電力をたくさん使用する製造業や小売業は、コストが上がってしまう。それが製品に転嫁されると、その面からも家計は圧迫されることになる。また競争が激しく販売価格に転嫁するのが難しい中小企業は、経営が苦しくなって行く。

電力料金の決まり方は、なかなか複雑だ。まず電力会社の設備費や人件費をもとに、基本料金が決められる。この基本料金はインフレでもない限り、そう大きくは変動しない。ところが、これにいくつかの付随料金が加算される。その最大のものが、原燃料費調整制度による上乗せ金額だ。

これは電力会社が輸入する原油やLNG(液化天然ガス)などの価格変動を、料金に反映させる仕組み。ことしに入ってからの電気料金引き上げは、原油の国際価格が上昇したことと円安が主な理由となっている。したがって仮に原油価格が下落すれば、電気料金は下がるはず。しかし他の付随料金もあって、料金の引き下げはそう簡単ではない。

                                      (続きは明日)  

      ≪29日の日経平均 = 上げ +14.61円≫

      ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫ 
                
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上がる 上がる 電気料金 (下)
2017-03-31-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 政府の大失敗も料金に上乗せ = 政府は太陽光発電の普及を促すため、12年度に電力会社による強制買い取り制度を導入した。これによる電力会社の支出増加分は、そのまま電気料金に加算される。ところが経済産業省は当初の買い取り価格を、たとえば大規模業者の場合は1㌔㍗時40円という法外に高い値段に設定してしまった。しかも、この買い取り価格を20年間も保証したのである。

ちなみにドイツの買い取り価格は約10円だ。この失敗に気付いた政府は、買い取り価格を24円にまで引き下げた。しかし買い取り費用は累増し、17年度は2兆7000億円に達している。標準家庭でみると、上乗せ額は12年度には年間790円だったものが、17年度は8200円を超えた。この上乗せ額は32年度まで増え続け、減少することはない。

さらに20年からは、電気料金の上昇要因が加わる。福島第1原発の事故に必要な対策費用は21兆5000億円に達する見込み。政府はこのうち賠償に必要な費用7兆9000億円のうちの4兆円を、沖縄電力を除く大手9電力と新電力会社に分担させることを決めた。この分は20年から40年間にわたって、電気料金に加算される。

こんな状況だから原油価格が少々下がったとしても、電気料金はなかなか下がりにくい。家計や中小企業の負担が増える一方で、早い段階で太陽光発電に参入した業者は“濡れ手に粟”の収入を享受している。経済産業省は、大失敗にはもちろん口を拭っている。国会でも野党は森友問題に忙しく、こんな大事な問題を取り上げようとはしない。

      ≪30日の日経平均 = 下げ -154.26円≫

      ≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ


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