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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
雇用統計が左右する? 米大統領選挙 (下)
2012-11-01-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ あす朝8時30分に注目 = アメリカの失業率は41か月にわたって8%を上回った。オバマ大統領にとっては“落第点”だったわけである。ところが12年9月になって、ようやく7.8%にまで低下した。“落第点”から“及第点”に向かって、一歩を踏み出したことになる。これを有権者が、どのように判断するのか。

続いて10月の失業率がさらに低下すれば、オバマ大統領の評価は上がるだろう。しかし仮に再び8%台に上昇したら、評価は下がらざるをえない。その10月の失業率はあす2日朝8時30分(ワシントン時間)に、労働省から発表される。投票日の4日前だけに、心理的な影響は予想以上に大きくなるかもしれない。

12月6日には大統領選挙と同時に、上下両院の議員選挙も実施される。アメリカの議員定数は上院が100、下院が435で、日本よりずっと少ない。現在は民主党が上院、共和党が下院の過半数を握っており、日本と同じ“ねじれ”議会の状態。オバマ政権の後半2年間は、この“ねじれ”によって法案をなかなか通せないというハンデを負った。

今回は上院の33議席と下院の全435議席が改選される。ところが現在の見通しでは、共和党が上院でも過半数を占める可能性は否定できない。一方、下院は共和党が優勢だ。するとオバマ大統領が再選された場合、“ねじれ”が続くか、最悪のケースでは両院とも野党が支配することになる。日本をはじめ世界経済にとっては、こちらの方が悪影響を被るかもしれない。


    ≪31日の日経平均 = 上げ +86.31円≫

    ≪1日の日経平均は? 予想 = 下げ

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参議院は 要らない
2012-11-02-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 「政争の府」に成り下がる = 第181臨時国会が29日、召集された。しかし野田首相の所信表明演説は衆院本会議だけ。参院では行われなかった。野党が問責決議を受けた野田首相の演説を拒否したためである。わが国の長い憲政史上でも初めての出来事だ。

この出来事から、国民はなにを感じ取っただろう。首相の演説はテレビ中継されており、新聞にも出ている。だから実際には、何の支障もない。要するに施政方針演説にしても所信表明演説にしても、総理大臣が衆院と参院で同じ原稿を読む方が非効率なのではないのか。多くの人は、そう考えたに違いない。

そもそも参議院の役割は、なんなのか。衆院での議論に不足していた点を補い修正する。場合によっては否決してもいい。党利党略に流れず、高い見地から政策決定を行う。だから「良識の府」と言われた。ところが最近は党利党略に走って、国民にとって重要な法案さえも否決する。たとえば特例国債発行法案を廃案にしたのが、その好例だ。

国民はいま「決められない政治」に愛想を尽かしている。その根源は“ねじれ”国会にあると考える人も多い。だが“ねじれ”そのものが、悪いわけではない。参院が本当に「良識の府」なら、国民も理解する。しかし現状のように自らも必要と考えている法案を、党略のために否定する参院なら存在する価値はない。今回の出来事で、くすぶっていた参院の不要論に火がつくだろう。


    ≪1日の日経平均 = 上げ +18.58円≫

    ≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2012-11-04-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第11章 国債って、なんだろう? ①

◇ 国債は国の借金 = サトシくんは、近ごろ嬉しくてたまりません。お父さんが「2階にサトシくんの部屋を作ってやる」と約束してくれたからです。でも少し心配なこともあります。新しい部屋を作るためには500万円かかりますが、家には300万円しか貯金がありません。そこで親せきの人に200万円を借りることにしたのです。そんなに借金して大丈夫なのかしら。

このように一般の家庭では、おカネが不足したときに借金をすることがあります。会社もよく借金をします。そして国もおカネが足りなくなると、借金をするのです。その方法は国債を発行して、これを銀行や個人や外国人に買ってもらいます。だから国債は、国の借用証だと考えてもいいでしょう。

借金は決められた時点で返済しなければなりませんね。またおカネを借りたお礼として、利息(りそく)を支払う必要があります。国債にはいろいろな種類がありますが、それはみな返済する時点と支払う利息が違っているからなのです。たとえば10年後に返済、利息は年に1%というように。

いま日本では、国債の発行が多すぎて問題になっています。いま実行されている12年度(12年4月ー13年3月)の予算では、国債の発行額は44兆2400億円。13年3月末の国債発行高は、過去に発行した分を含めて709兆円にも達する見込みです。この借金はいずれ国民が納める税金で返すことになりますが、この709兆円を国民1人当たりにすると、なんと556万円にもなるのです。
 
                    
                                  (続きは来週日曜日)

    ≪2日の日経平均 = 上げ +104.35円≫

    【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】

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今週のポイント
2012-11-05-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 米大統領選に集中 = ニューヨークは大型ハリケーン「サンディ」の直撃を受け、先週は取引所も月曜日と火曜日が休場となった。天候が原因で取引所が休場したのは、124年ぶりのことだという。再開した水曜日は11ドルの小幅安。木曜日に大きく上げたが、金曜日には大きく下げた。10月の雇用統計が予想以上の好成績だったのに下げたのは、6日に迫った大統領選挙の様子見で利益確定の売りが出たためだと解説されている。ダウ平均は週間14ドルの値下がり。

オバマ大統領とロムニー候補のどちらが勝っても、株価に大きな影響はない。市場関係者の多くは、こう考えている。にもかかわらず様子見の売りが出たのは、全体の株価に影響はなくても、個別銘柄には影響があるとみられるからだろう。たとえばロムニー勝利なら、国防・航空・原子力・金融などは買い。オバマ再選なら、IC・自動車・医療などに日が差すと考えられている。

日経平均は先週118円の値上がりだった。日銀が追加の量的緩和政策を発表した火曜日は下げたが、その後は上昇した。週の終り値は6日ぶりに9000円台を回復している。企業の通期決算が下方修正されるなかで上昇したのは、円相場の下落傾向が大きな原因。今週は上げすぎ訂正の力と円相場の動きによって、株価は左右されそうだ。

今週は6日に、9月の景気動向指数。8日に、9月の国際収支と機械受注、10月の景気ウォッチャー調査が発表になる。アメリカでは5日に、10月のISM非製造業景況指数。8日に、9月の貿易統計。9日に、ミシガン大学の11月・消費者信頼感指数。6日は大統領選挙。また中国が9日に、10月の消費者物価、生産者物価、鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資を発表する予定。 


    ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ

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効き目なし : 日銀の金融緩和政策 (上)
2012-11-06-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 円は上昇、株価は下落 = 日銀は10月30日の政策決定会合で、新たな金融緩和策を決めた。9月にも資産買い入れ基金の10兆円増額を決めており、2か月連続の金融緩和はきわめて異例。その内容は①資産買い入れ基金の11兆円増額②貸し出し増加支援基金の新設③デフレ脱却を強調した政府との共同文書-―の3本立てとなっている。

資産買い入れ基金の増額を11兆円としたのは、9月の10兆円を上回る規模にしてインパクトを強めようと考えたため。国債10兆円のほか、ETF(上場投資信託)や社債も購入する。これで買い入れ基金の総額は91兆円に。また新設する貸し出し増加支援基金は、金融機関が企業や個人に新たな貸し出しをした場合、日銀がその貸出額と同額の資金を0.1%の低金利で無制限に貸し出すという仕組み。

日銀としては“清水の舞台”から飛び降りたつもりだったろう。ところが効果は全くなかった。30日の東京市場は朝方から為替は円安の方向に、株価は大幅に上昇していた。しかし日銀が午後2時45分に新政策を発表すると、円相場は大きく上昇、株価は市場が閉まるまでの15分間に急落してしまった。市場関係者は「予想の範囲内で失望したため」と解説している。

日銀が実施する金融緩和政策は、金利の引き下げと量的拡大の2つに大別される。このうち政策金利は、すでに0-0.1%に引き下げられており、もう引き下げの余地はない。このため最近の金融緩和は、すべて量的な緩和手段で実行されている。だが今回の緩和が実効をあげられなかったことで、量的緩和の手法も行き詰まったように思われる。


                                      (続きは明日)

    ≪5日の日経平均 = 下げ -43.78円≫

    ≪6日の日経平均は? 予想 = 上げ

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効き目なし : 日銀の金融緩和政策 (下)
2012-11-07-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 残る手段は外債の買い入れ = なぜ金融緩和政策の効果がなくなったのか。もう少し考えてみよう。日銀が国債などを大量に購入すると、それだけ大量の資金が市中に放出される。これによって市中の金利が下がり、企業や個人の借り入れが進む。これが最も期待される金融緩和の効果だが、ゼロ金利政策で金利が十分に下がっているからほとんど効果はない。

次に国債の相場が上昇して、利回りは下がる。だが、ここでも国債の利回りは十分に下がっているから、その効果は薄い。結局は余った資金が株式市場に向かい、相場を押し上げる。株価が上がれば、その利益が消費に回りやすい。最近の量的緩和では、この点が最も重視されてきた。しかし今回は市場関係者が言うように「予想の範囲内」で、インパクトが足りなかった。

今回は、金融機関に対する貸し出し増加支援基金も追加した。その効果は不明だが、あまり期待できそうにない。優良企業の資金需要は弱く、追加融資の必要性は低い。さりとて問題企業に貸し出せば、不良債権を増やしてしまう危険性がある。日銀は不良債権の面倒までみてはくれない。

残る方策は、日銀の買い入れ基金による外債の購入だろう。海外の国債や安全度の高い社債を購入すれば、市場ではドルやユーロの需要が増える。その結果、円相場が下がれば景気にとってはプラスになるだろう。ただ、この方法は為替介入と同じ仕組み。日銀内部だけでなく、政府にも反対論が根強い。だが、もうそんなことを言っている場合ではなくなったのかもしれない。


    ≪6日の日経平均 = 下げ -32.29円≫

    ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ

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意外に深い落ち込み / 7-9月の景気
2012-11-08-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 4%を超えるマイナス成長? = 内閣府は来週12日、7-9月期のGDP統計を発表する。輸出や生産の減少で、成長率がマイナスに落ち込むことは間違いない。問題はどの程度の落ち込みになるかだ。民間の調査会社が発表した事前の予測値をみると、年率換算で4%前後のマイナス成長を見込むところが多い。

四半期ごとのGDP統計をみると、昨年7-9月期から本年4-6月期まではプラス成長が続いた。したがってマイナス成長は5四半期ぶりということになる。また仮に4%のマイナス成長になれば、その深さは東日本大地震の被害を受けた昨年1-3月期のマイナス7.9%以来のものとなる。深度は災害時の約半分であり、かなり大きい。

成長率が落ち込んだ主因は輸出の減退。7-9月期の輸出額は、前年同期比で8.3%も減少している。加えて内需も、エコカー補助金打ち切りの反動で伸び悩み。工業生産高は前期比で4.2%低下した。上場企業の経常利益も、前年比で8%程度の減少になる見込み。

こうした経済の停滞は、10-12月期も続きそうだ。つまり日本経済は、ことしの7-9月期から景気後退期に突入した可能性がきわめて大きい。しかも特例公債発行法案が成立しないため地方交付税交付金の支払いが遅れ、景気に悪影響を及ぼしつつある。このため来年1-3月期に、景気後退から脱出できる保証もない。残念ながら、今回の景気後退の深さと長さを心配しなければならない状況になってきた。


    ≪9日の日経平均 = 下げ -2.26円≫

    ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ

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野田首相の逆襲 = 議員定数の削減
2012-11-09-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 自民・公明の対応は? = 野田首相が「近いうちに」衆院を解散すると言ってから、もう3か月たった。野党側は「年内解散」を求めて詰め寄るが、首相はドジョウの本領を発揮してのらりくらり。そのうちに3つの条件が整えば、解散してもいいと言い始めた。その条件とは、①特例公債発行法案②選挙制度改革法案の成立と③社会保障改革に関する国民会議の発足である。

これら3条件は、もともと自民・公明両党も賛成していた。特例公債発行法案は成立が遅れて、景気にも悪影響を及ぼし始めている。選挙制度改革は、最高裁が「違憲状態」の判断を下したこともあって疎かにはできない。国民会議は消費税引き上げを実施するための要件でもある。いずれも反対すれば、国民の批判を受けるだろう。そこで自民党の安倍総裁は「3条件の実現に協力するから、年内解散を」という戦術に切り替えた。

ところが野田首相は、ごく最近になってから「選挙制度改革は衆院の0増5減だけでなく、国会議員の定数削減も」という考えを打ち出した。議員定数の削減は、大震災の復興負担を国民だけでなく政治家も負担する、いわゆる“身を切る”改革で、国民への公約だ。だから、これも実行しなければならないというわけだ。

たいへん結構な考え方である。野党側も賛成していたので、表立って反対はできない。だが野田首相のこの新提案に自民も公明も大弱り。というのも衆参両院の議員たちは、内心では定数削減に大反対。削減案の作成は大激論を巻き起こし、長い時間を必要とする。そうなれば年内解散どころか、野田内閣は任期いっぱい継続してしまう。さりとて反対すれば、国民の怒りを買うことに。さて野党は、どう対応するのか。


    ≪8日の日経平均 = 下げ -135.74円≫

    ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ

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サタデー自習室 -- 金融緩和政策の限界 ①
2012-11-10-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 悲鳴あげる中央銀行 = 近ごろの新聞には「金融緩和政策」に関する記事がよく載っている。たとえば10月30日付けの各紙は「日銀が追加の金融緩和を決定」と報道。また9月14日には「アメリカのFRBが3回目の量的緩和」というニュースを大々的に伝えている。いずれも景気の浮揚を目的とした、中央銀行による金融緩和政策の発動である。

日銀が決定した緩和策の主軸は、資産買い入れ基金の総額を11兆円増やすという内容。これで来年末までに、市場から国債や証券を購入する。つまり来年末までに、購入代金として11兆円のおカネが市中に放出されるわけだ。それだけ世の中に出回るおカネが潤沢になり、企業や個人がおカネを借りやすくなる。その結果として、景気がよくなることを期待した政策である。

アメリカの中央銀行はFRB(連邦準備理事会)と呼ばれる組織。このFRBが決定した政策は、住宅ローン担保証券を毎月400億ドル(約3兆2000億円)ずつ購入するという内容。日銀の場合と同様、これだけの購入資金が市中に放出されることになる。アメリカの場合は、特に住宅市場におカネが流入しやすいように住宅ローン担保証券を買い入れることになった。

景気の浮揚を目的とする政策は、財政政策と金融政策に分けられる。財政政策は政府がおカネを出して仕事を造れば、雇用が増えて景気もよくなるはず。景気対策としては即効性もあり、金融政策より力は強い。ところが日本もアメリカも財政は大赤字で、余力に乏しい。そこで金融政策の出番となるわけだ。だが、このところ出番が多すぎて、中央銀行は悲鳴をあげているのが実情だ。


                               (続きは来週サタデー)

    ≪9日の日経平均 = 下げ -79.55円≫

    【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2012-11-11-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第11章 国債って、なんだろう? ②

◇ 税金より多い国債収入 = みなさんの家でも、ことしは貯金をいくら増やそうとか、新しいテレビを買おうとか、いろいろ計画を立てますね。その場合に、おカネがいくら入ってきて、いくら出て行くのか。そうしたおカネの出し入れを、あらかじめ計画的に作っておく。それが予算です。政府も毎年4月から翌年3月までの1年間について、予算を作ります。これが国の予算です。

それでは2012年度(ことし4月-来年3月)の予算を、ざっと見てみましょう。国がこの1年間に支出するおカネの総額を歳出(さいしゅつ)と言いますが、その金額はは90兆3000億円です。政府はこのおカネを使っていろいろ仕事をするわけですが、この歳出のなかに「国債費」という項目があって、21兆9000億円もの支出を予定していることを覚えておいてください。

また、この1年間に入ってくるおカネの合計を歳入(さいにゅう)と言います。歳入額は歳出額と同じ90兆3000億円です。その中身をみると、税金による収入が42兆3000億円。ほかに「国債」という項目があって、その金額は44兆2000億円にものぼっています。ここでは、税金よりも国債による収入の方が大きいことを頭に入れておいてください。

「国債=国の借金」ということは、すでに勉強しました。つまり税金による収入よりも、借金の方が多くなってしまったのです。たとえば野田くんの家にたとえると、1年間にどうしても903万円の支出が必要です。ところが、お父さんとお兄さんの収入では423万円しか見込めません。あと貯金などを使っても足りない分が442万円。それを借金するという計画です。日本はいま、こんなにひどい状況になってしまいました。


                                  (続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2012-11-12-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日米”ねじれ”の競演 = 大統領選挙の開票結果が明らかになると、ダウ平均株価は急落した。水曜日と木曜日の2日間だけで434ドルの下落。週間では278ドルの値下がりとなった。オバマ大統領の再選を嫌気したわけでは全くない。同時に行われた両院議員選挙の結果、現在の”ねじれ議会”が解消されず、”財政の崖”に対する不安が一気に高まったためである。

大幅減税の延長や強制的な財政支出削減の緩和が実現しないと、アメリカ経済が来年から急坂を転げ落ちることは避けられない。しかし”ねじれ議会”が続くことになり、与野党の歩み寄りは困難になったという見方が強い。仮にそうなら、アメリカ経済の景気後退入りは免れない。こうした観測から、株価は大きく売り込まれた。

アメリカ経済の先行き不安は当然、日本経済にも悪影響を及ぼす。そのうえ日本でも、特例公債発行法案が宙に浮いたまま。このままだと予算の執行ができなくなる。これも”ねじれ国会”のなせる業だ。日経平均は先週5日間の続落。週間では294円の値下がりだった。当面は2つの”ねじれ”に注目が集まる。

今週は12日に、7-9月期のGDP速報、9月の第3次産業活動指数、10月の企業物価。アメリカでは14日に、10月の小売り売上高と生産者物価。15日に、10月の消費者物価。16日に、10月の工業生産が発表になる。また15日には、EUが7-9月期のGDP速報と10月の消費者物価を発表する予定。このほか14日には、スペインとポルトガルで緊縮政策に抗議するゼネストが計画されている。16日は中国共産党の総会。


    ≪12日の日経平均は? 予想 = 下げ

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すでに景気後退入り : 7-9月期のGDP
2012-11-13-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 大震災以来の落ち込み = 内閣府が12日発表した7-9月期のGDP成長率は、年率換算の実質値でマイナス3.5%という結果となった。このマイナス幅は大震災に見舞われた11年1-3月期のマイナス8%に次ぐもので、平時としてはかなり大きい。さらに10-12月期もマイナス成長が続くことは確実の情勢だ。

マイナス成長に落ち込んだ最大の原因は、輸出の大幅な減退。輸出は18.7%も減少した。このため企業の設備投資も12.1%減少。またエコカー減税の終了などで、個人消費も1.9%減った。その半面、住宅投資は3.8%増加。政府による公共投資も災害復興を中心に16.8%伸びたが、内需全体の縮小を食い止められなかった。

輸出の低迷はまだ続くと考えられる。また個人消費も上向きそうにない。さらに公共投資には鈍化の傾向がみられるから、10-12月期もマイナス成長になることは避けられそうにない。その結果、2四半期にわたってマイナス成長が続けば、日本経済は景気後退と正式に断定される。

ところが生活実感に近い名目成長率をみると、こちらは一足早く4-6月期にマイナス1.3%になっている。続いて7-9月期もマイナス3.6%だったから、2四半期続けてのマイナス成長。つまり景気後退に突入したことになる。しかし政府はこの間、なにもしなかった。景気動向に対する判断が遅すぎる。前原経済財政相は、まだ「景気後退入りの可能性も」などと呑気なことを言っている。


    ≪12日の日経平均 = 下げ -81.16円≫

    ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ

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“崖”っぷちの 世界経済 (上)
2012-11-14-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 一蓮托生の危機 = アメリカは“財政の崖”まで、あと1か月半のところへ来てしまった。この崖はかなり深く、もし落ち込めば経済に与えるダメージは相当に大きい。アメリカだけではなく、ヨーロッパや日本、さらには中国をはじめとする新興国にも強い悪影響を及ぼすだろう。世界経済全体が、いま“崖”の直前に立たされていると言っていい。

“財政の崖”というのは、このまま放っておくと来年からアメリカで超緊縮財政が始まってしまう問題。まずブッシュ前政権が始めた所得税と不動産関連税の大型減税が、今年末で失効してしまう。その総額は2210億ドル。失効すれば、来年からその分だけ実質的な増税になるわけだ。その他の税制優遇措置も打ち切りとなり、その総額は650億ドル。

加えて財政再建のために議会が決定した歳出の強制的なカットが、来年から実行される。その総額は650億ドル。さらに利得税の減免措置や緊急失業保険給付の期限切れなども含めると、来年の財政支出減少は合計6070億ドル(約48兆円)に達する。予算局の試算だと、その結果はGDP成長率がマイナス3%に、失業率は9%を超えるという。

この“崖”を埋めるためには、税法や予算管理法など数多くの法律改正が必要だ。ところが6日に行われた両院議員選挙の結果は、与党の民主党が上院、野党の共和党が下院の過半数を占めることになった。要するに“ねじれ議会”の継続である。与野党の意見がまったく違うなかで、多くの法律改正が可能かどうか。この点に不安が集中し、選挙後のニューヨーク株式は大幅な下げを演じた。


                                      (続きは明日)

    ≪13日の日経平均 = 下げ -15.39円≫

    ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ

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“崖”っぷちの 世界経済 (中)
2012-11-15-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 見えない妥協の糸口 = オバマ大統領や民主党幹部はもちろん、共和党首脳部も“崖”を埋めることの必要性は認識している。選挙直後から始まった両党間のやりとりをみても、お互いに譲歩しても妥協点を見つけたいと言っている。だが、この交渉は決して容易ではない。ほとんどの問題が、両党の基本的な政治思想と深い関わりを持っているからだ。

たとえば大幅減税の延長問題。民主党は年収25万ドル以上の富裕層に対しては延長せず、実質的に増税する方針。共和党は富裕層も含めて減税を延長。民主党は中間所得層を、共和党は富裕層を重視する政治哲学の相違と言っていい。大統領選挙戦でも論争の中心となっただけに、両者とも簡単には譲れない。

選挙のあくる日から、オバマ大統領は共和党の有力な下院議員に電話をかけまくっている。民主党も多少の譲歩はするから、共和党も“崖”の回避に協力してもらいたいと説得。これに対して、共和党のベイナー下院議長は「協力の意向はある」と答えたという。しかしベイナー議長は「富裕層への増税は認められない」と発言。オバマ大統領も「富裕層への減税継続法案が出てきたら拒否権を発動する」と言明する始末だ。

また歳出削減では、共和党は国防費の減額には強く反対。民主党は国防費も削ろうとしている。この点は、両党の国際戦略の相違を反映しているわけだ。したがって両党とも話し合いには応ずる姿勢だが、具体的な譲歩には触れようとしないのが現状。妥協の糸口も全く見えていない。


                                    (続きは明日)

    ≪14日の日経平均 = 上げ +3.68円≫

    ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ

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“崖”っぷちの 世界経済 (下)
2012-11-16-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 解決は年末ぎりぎり? = “財政の崖”に隠れた形だが、アメリカはもう1つ国債が発行できないという大きな問題を抱えている。アメリカの債務は債務上限法という法律で増えすぎないように規制されており、現在の上限は16兆3940億ドル。年末までにはこの上限に達して、新しい国債を発行できなくなる。この上限の引き上げにも、議会の承認が必要だ。

昨年8月にも同じ問題が発生。議会はギリギリで上限の引き上げを承認したが、同時に財政再建計画も策定した。ところが、この再建計画が甘いという理由からアメリカ国債が初めて格下げされている。このように上限法の修正は財政削減と裏腹の関係にあるため、“崖”の問題にからんでしまう。

選挙によって選ばれた議員が登場する新議会は、来年1月21日に招集される。それまでは落選議員をも含めた旧議員たちが、この複雑な“崖”をめぐって議論を戦わすことになる。どの議員も崖に落ちたら大変なことになると知ってはいるが、はたして妥協点を見出せるのかどうか。

政界や経済界で、11月中に妥協が実現すると考える人はまずいない。12月に入って、それもタイム・リミットの年末に近づかないとムリだという見方が圧倒的に多い。それまでは株価も冴えないだろう。ただ“崖”が埋まったときは、アメリカ経済は力強く上向く。こういう予測ができることも確かだ。


    ≪15日の日経平均 = 上げ +164.99円≫

    ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ

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サタデー自習室 -- 金融緩和政策の限界 ②
2012-11-17-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 頼みの綱は量的緩和 = 金融緩和政策の目的は、景気を浮揚することにある。いま日米両国の経済は、ともに停滞気味だ。日本は輸出の低迷から、景気後退に陥りつつある。アメリカも低成長で、失業率がなかなか下がらない。日米の中央銀行がたびたび金融を緩和したのも、こうした状態からの脱却を目指したものである。

一般に景気対策は、財政政策と金融政策に大別される。おカネの循環をよくして景気を刺激する点では、同じだと言えるだろう。財政面からの手法は2つ。まず公共事業などを増やして、政府が仕事を積極的に造り出すやり方。もう1つは、減税で国民の所得を増やすやり方だ。

金融政策の方法も2つある。まず金利を引き下げるやり方。金利が下がれば、企業や個人はおカネを借りやすくなる。そのおカネで事業を広げたり、消費を増やしたりすれば、景気は押し上げられるだろう。もう1つは量的な金融の緩和。中央銀行がおカネをたくさん放出すれば、世の中のカネ回りがよくなって、景気は好転する。

ところが日本もアメリカも、現状はきびしい財政難。国債を目いっぱい発行して何とか予算を組んでいる状態だから、景気対策のために財政支出を増やす余地がない。減税すれば、財政状態はもっと悪くなってしまう。そこで金融政策の出番になるが、すでに金利はゼロ近くにまで下げてしまった。残るは金融の量的な緩和だけ。日米の金融緩和も、最近は量的緩和の連発となっている。


                                (続きは来週サタデー)

    ≪16日の日経平均 = 上げ +194.44円≫

    【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2012-11-18-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第11章 国債って、なんだろう? ③

◇ 古い国債の歴史 = いまのような国債は、オランダで16世紀に誕生しました。それまでヨーロッパの各国では、国王が勝手に債券を発行して戦争の費用などに充てていました。それを議会が承認して、政府が発行する形に変えたのです。この方式がイギリスに伝わって、さらに改善されました。多くの国々がその制度を取り入れ、今日にいたっています。

日本がはじめての国債を発行したのは1869年(明治3年)のことです。東京ー横浜間に鉄道を作る資金にするためでした。ところが、この最初の国債は国内ではなく、イギリスのロンドンで販売されたのです。国内では売れる見込みがなかったため、当時は金融がいちばん発達していたロンドンで売り出されたのでした。国内では1877年(明治11年)になって、はじめて国債が売り出されています。

戦後は1947年(昭和22年)に、経済を復興するための国債が発行されました。経済が立ち直ると、景気のいい状態が続いたので、国債はそれほど発行されませんでした。税金による国家の収入が伸びたために、国も借金する必要がなかったのです。しかし1990年代に入ると、バブル経済の崩壊で景気が悪くなり、政府は94年から本格的な国債の発行を再開しています。

それでも1999年(平成11年)末の発行残高、つまりそれまでに発行した国債の総額はまだ320兆円でした。それが5年後には489兆円に。さらにことし3月末には676兆円。このまま行くと来年3月末には709兆円にふくれ上がる見通しになっているわけです。最近になって国債の発行が急増しているのは、景気を良くするための対策と高齢化による福祉関係の費用が増えているからだと言えるでしょう。


                                 (続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2012-11-19-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日米の株価が逆転 = 年初来の上昇率で、日米の株価が逆転した。ダウ平均は先週も227ドルの値下がり。4週連続の下落で、この間の値下がり幅は755ドルに達している。企業収益の鈍化やヨーロッパの信用不安など原因はさまざまだが、最大の要因は“財政の崖”に対する警戒感。ダウ平均の年初来上昇率は3.0%にまで縮小した。

日経平均は先週267円の値上がり。特に衆院の解散が決まると、大幅に上昇した。日銀に徹底的な金融緩和を求める自民党の安倍総裁の登場に期待した買い物だという。海外からの買い注文が圧倒的に多かったから、外国人投資家は自民党政権の誕生を確信しているように見受けられる。これで日経平均の年初来上昇率は6.7%となり、ことしになってから初めてダウ平均の上昇率を上回った。

オバマ大統領は議会首脳部との間で、年内に“崖”問題を解決するという合意に達したと伝えられる。しかし具体的な与野党間の交渉には、かなりの時間を要するだろう。ダウ平均も当分の間、重荷を降ろせない。日本でも総選挙に向かって、各党間の合従連衡が始まる。それが株価にどう影響するかは未知数だ。唯一の拠りどころは、円相場ということになるかもしれない。

今週は20日に、9月の全産業活動指数。21日に、10月の貿易統計。アメリカでは19日に、10月の中古住宅販売。20日に、10月の新築住宅着工。21日に、ミシガン大学の11月・消費者信頼感指数とコンファレンスボードによる10月の景気先行指数が発表になる。また22-23日に、EUが首脳会議を開く。ギリシャとスペインへの支援で進展があるかどうか。


    ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ

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「解散」で考えた 4つのこと (上)
2012-11-20-Tue  CATEGORY: 政治・経済
(1)結果オーライ = 野田首相が思い詰めた挙句に衆議院を解散したことで、久しぶりに政治が動いた。懸案だった特例公債法案が成立し、資金繰りに奔走した地方自治体は一安心。景気への悪影響も、最小限にとどめることができた。最高裁に“違憲状態”と判定された一票の格差も、衆議院の“0増5減”が実現。なんとか格好をつけることができた。

わずか2日間の審議で、計10本の法案が成立。さらに議員定数の削減と社会保障に関する国民会議の設置についても、与野党間の合意が整った。総理大臣の首と引き換えに、あっという間の出来事である。与野党が賛成していたからこその早業だが、それならなぜもっと早くにできなかったのか。政争の具に使われていたため、と言わざるをえない。結果オーライだが、なんとなく後味はよくない。

(2)政党とは何なのか? = 民主党からは離党者が続出した。離党議員は2種類に分けられるだろう。第1種は政策の相違を理由とした人たち。消費税やTPP(環太平洋経済連携協定)に反対して飛び出した。もともと、こうした重要な政策について意見の分かれる議員たちが集まって出来上がった民主党。その“ごった煮”的な弱点が一気に露呈した。政党とはいったい何なのか、と考えてしまう。

第2種は、民主党にいては選挙で勝てないと判断した議員たち。政治家は落選すれば存在価値がなくなる。だから沈む船から逃げ出そうという心境は、理解できないこともない。ただ比例区で当選した議員の離脱は問題だ。有権者はその人に投票したのではなく、その政党に一票を投じたのだ。したがって比例区議員の離脱は、有権者を裏切る行為だと言えるだろう。比例区議員の政党離脱を禁じる法律を作るべきだ。


                                      (続きは明日)

    ≪19日の日経平均 = 上げ +129.04円≫

    ≪20日の日経平均は? 予想 = 上げ≫ 

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「解散」で考えた 4つのこと (下)
2012-11-21-Wed  CATEGORY: 政治・経済
(3)第3極政党の論理 = 第3極と呼ばれる政党の乱立で、現在の政党数は14になった。これら第3極政党はさらに合併を重ねて、当選議員の数を増やすことを最大の目的としている。相当の議席数を持たなければ、政党としての発言力がない。だから「小異を捨てて大同に就く」というのが、その論理だ。

この論理も、理解できないことはない。だが消費税引き上げや原発の再稼動、景気対策と財政再建の手法、またはTPP加盟問題、さらには憲法改正・再軍備などの最重要問題で、意見の違う政党が議席の獲得だけをねらって合併するのは危険だろう。最初から“ごった煮”政党の誕生を目指すわけで、いずれは分裂せざるをえない。また有権者も、何に期待して投票するのか見当がつかなくなってしまう。

(4)新聞は各候補者の信条調査を = 立候補した人が、個人的にどんな信条を持っているのか。いま最重要な問題になっている税金・景気対策・原発・TPP・憲法について質問し、賛成か反対か、あるいは「回答なし」の一覧表を作ってもらいたい。この表があれば、有権者は政党のマニフェストと見比べながら投票することができる。

この調査は、新聞でなければ出来ないだろう。テレビでは画面に収め切れない。ネットでも、これだけの調査結果を流すことはムリだ。そのうえ新聞の記録性が、大いに活用されることになる。どの新聞でもいいし、何紙かが共同で調査しても結構だ。日本の政治をよくする原動力になると思うのだが。


    ≪20日の日経平均 = 下げ -10.56円≫

    ≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ

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安倍総裁の金融論は 超危険!
2012-11-22-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 金融緩和とは異質の考え方 = 自民党の安倍総裁が日銀に対して強力な金融緩和を求め、大きな話題になっている。その発言は「日銀に無制限の金融緩和を進めさせる」から「日銀に建設国債をすべて買い入れさせる」と発展。さらには「輪転機をぐるぐる回して無制限にお札を刷る」とまで先鋭化した。

こうした発言に刺激されて、市場では円相場が急落、株価は急上昇した。さすがに批判の声も多く、各方面から「日銀の独立性を損なう」とか「財政規律がなくなる」といった反対論が出ている。だが安倍総裁の頭のなかでも、反対論の論旨にも、重大な混乱が生じているのではないか。それは、こうした方策をすべて“金融緩和”と位置づけている点である。

日銀は現在でも、大量の国債を買い入れている。ことし6月末の保有残高は96兆円。前年より18兆円も増えた。国債の購入によって、その代金が市中に放出される。これが日銀の量的金融緩和策だ。この国債買い入れをもっと増やし「さらに大量の資金を放出せよ」という議論なら、金融緩和の促進と言えるだろう。

だが「建設国債のすべて買い入れ」や「無制限に日銀券を刷る」話は、金融緩和ではない。それは税収などで賄えない国家財政のすべてを、裏づけのない日銀券で処理することを意味する。昭和の初期に、軍部が戦費を調達するために実行した方法と全く同じだ。これを金融緩和の延長線と考えることは、きわめて危険である。


    ≪21日の日経平均 = 上げ +79.88円≫

    ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ

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サタデー自習室 -- 金融緩和政策の限界 ③
2012-11-24-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 金利はもう下げられない = 日銀はどのようにして金利を動かすのだろう。かつて日本経済が活況を呈していたときは資金不足だったために、日銀が市中の銀行におカネを貸し出していた。その金利を公定歩合と言い、この金利を上下することで銀行の貸し出し・預金金利や住宅ローン金利までがいっせいに変動した。効力は絶大で、景気に対する影響力もきわめて大きかった。

ところが低成長期に入ると資金需要が減って、公定歩合操作は有効に機能しなくなった。このため日銀は、金融機関同士が貸し借りする短期金融市場への資金供給を調節する手段に切り替えている。この市場金利を無担保コール翌日物金利と言い、08年12月以降はほぼ0.1%に。これ以上は下げる余地がないので「ゼロ金利政策」と呼ばれている。

また日銀は、その他の金融市場にも積極的に介入している。たとえば国債や手形を売買する市場で、日銀が国債や手形を買えば相場は上がって金利は下がる。これを公開市場操作と言う。一種の量的な調節だが、その目標は市中の金利を操作することにある。最近の傾向は、買って金利を下げる操作の連続だ。

いまは世界的に景気が悪い。したがって先進国の金利は、どこでも最低水準に下がっている。たとえばアメリカは0.25%、ユーロ圏は0.75%だ。新興国も経済成長の鈍化に直面して金利を下げているが、まだその水準は高い。たとえばブラジルは7.25%である。


                               (続きは来週サタデー)

    ≪22日の日経平均 = 上げ +144.28円≫

    【今週の日経平均予想 = 3勝1敗】

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2012-11-25-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第11章 国債って、なんだろう? ④

◇ たくさんの種類 = 国債には、いろいろな種類があります。その種類の分け方も、なかなか複雑です。たとえばチューリップを分類するとき、赤や白や黄色といった色で分けたり、花の大きさや形で分けたり、くきの高さで分けたりできますね。これと同じように、国債もいくつかの面から分類することができます。

きょうは国債の利子と返済されるまでの期限によって、分類してみましょう。国債の利子は半年に1回支払われます。その利子の金額がずっと変わらない国債を固定利付き債、毎回支払われる利子が変わる国債を変動利付き債と言っています。このうち固定利付き債の返済期限は、2年、5年、10年、20年、30年、40年と6種類もあります。40年とは、ずいぶん長い期間ですね。

この国債の返済期限のことを、正しくは償還(しょうかん)期限と呼ぶことも覚えておいてください。たとえば償還期限10年の固定利付き債を100万円買ったとしましょう。仮に利子が年2%だとすると、1年間の利子は2万円ですね。それを半年に1回支払ってくれますから、半年ごとに1万円の利子を受け取ることができるわけです。そして10年後には元金の100万円も返ってくることになります。

一方、変動利付き債の償還期限は、10年と15年の2種類だけ。こちらの金利は、そのときの金融状況によって変わりますから、半年に1回受け取る利子は1万円より多いこともあれば少ないこともあるわけです。ただ元金が10年あるいは15年たつと返ってくるのは、固定利付き債の場合と同じです。
                    

                                  (続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2012-11-26-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日米の株価が大幅に上昇 = 日米の株式市場は祝日が入って先週はともに4営業日しかなかったが、株価はそろって大幅に上昇した。ダウ平均は週間421ドルの値上がり。この上げ幅は6月上旬以来の大きさだった。終り値で1万3000ドル台を回復している。クリスマス商戦に明るい見通しが出たことに加えて、“財政の崖”問題で与野党の妥協が期待できるという見方が強まったことが買い材料になった。

日経平均も343円の値上がり。終り値は9367円で、5月2日の水準にまで戻している。こちらの買い材料は、円安の進行。対ドルは82円台、対ユーロは106円台まで下落した。安倍自民党総裁の超金融緩和論にも刺激されたが、基本的には貿易赤字の定着がはっきりしてきたことに原因がありそうだ。とすれば円安の進行は、もうしばらく続くとみていいかもしれない。

アメリカでは今週、住宅関連の経済指標がいくつか発表される。好ましい結果が出る可能性が高いから、株価は続伸するという見方が強い。日経平均の場合は年初来の上昇率が1割を超えてきたために、利益確定の売りが増えるかもしれない。ただ円相場の下落が続けば、海外投資家を中心に買いが増えるだろう。

今週は27日に、10月の企業向けサービス価格。29日に、10月の商業販売統計。30日には、10月の鉱工業生産、労働力調査、消費者物価、家計調査、住宅着工戸数が発表になる。アメリカでは27日に、9月のSPケースシラー住宅価格とコンファレンスボードによる11月の消費者信頼感指数。28日に、10月の新築住宅販売。29日に、7-9月期のGDP改定値が発表される。またEUが30日に、10月の雇用統計と消費者物価指数を発表する予定。


    ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ

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ついに 貿易赤字が定着した 
2012-11-27-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 昨年同期より1.7兆円も悪化 = 財務省が発表した10月の貿易統計によると、輸出は5兆1500億円で前年比6.5%の減少。輸入は5兆6990億円で1.6%の減少だった。この結果、貿易赤字額は5490億円と10月としては過去最大に。これで4か月連続の赤字を記録した。日本は貿易赤字国に変質しつつある。

輸出を地域別にみると、アメリカ向けが前年比3.1%増加したほかは不振。EU向けが20.1%、中国向けも11.6%減少した。一方、輸入もやや減少したが、これは10月からの石油・石炭税引き上げで9月に燃料の輸入が増大したことの反動減。鉱物性燃料の輸入は前年比10.9%減っている。

貿易赤字の総額は、7-10月の4か月間で2兆3971億円にのぼった。昨年同期の赤字額は7020億円だったから、ことしは1兆7000億円も悪化した計算になる。EUや中国向けの輸出が、短期間のうちに回復するとは考えられない。また冬に向かって電力需要が増えるから、燃料の輸入はむしろ増大するだろう。したがって当分の間、貿易赤字が解消する見込みはない。

このところ円相場の下落傾向が目立ってきた。安倍自民党総裁の異常な金融緩和論がそのきっかけになったことは確かだが、基本的な背景には貿易赤字の定着がある。超円高の是正は大いに歓迎されるが、円安が行き過ぎると日本は新しい問題に直面するだろう。輸出額よりも輸入額の方が大きい経済では、為替レートの下落はメリットよりデメリットの方が大きくなるからだ。


    ≪26日の日経平均 = 上げ +22.14円≫

    ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ

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米中欧の景況感が好転 (上)
2012-11-28-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 株価上昇の要因に = 最近、経済界や市場の注目を集めている経済指標に、PMIという統計がある。Purchaging Managers' Index の略で、購買担当者景気指数と訳されている。11月はアメリカ、中国、ユーロ圏で、この製造業PMIがそろって好転した。先週はこれらの地域と日本の株価が一斉に上昇したが、その大きな要因になっている。

企業の購買担当者で作る協会が、各国に存在する。この協会を通じて購買担当者の景況感を聞き、指数化したものがPMI。民間の調査機関や政府が集計して、毎月発表している。新規受注や生産、在庫など、現場に最も近い担当者から聞いて速報するのが特徴だ。最近になって、マクロ経済の動きを正確に先取りするという評価が高まっている。

この指数の見方は簡単だ。50を上回れば景気は上昇中。下回れば下降中と判断する。指数は製造業、非製造業、サービス業に分かれているが、いちばん注目度が高いのは製造業PMI。たとえば8月の製造業PMIは、アメリカ、中国、ユーロ圏がそろって50を割り込んでいた。各国の株価も、あまり冴えなかった。

それが11月は、いずれも好転した。アメリカでは製造業ISM景況感指数と呼ばれているが、11月は52.4に。前月より1.4ポイント上昇して、5か月ぶりの高い水準を回復した。住宅関連の市況が上向いてきたこと、クリスマス商戦の見通しが明るいことに加えて、このPMI指数が上昇したことで、ウォール街は活況を取り戻した。


                                      (続きは明日)
    
    ≪27日の日経平均 = 上げ +34.36円≫

    ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ

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米中欧の景況感が好転 (下)
2012-11-29-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日本だけ速報なし = 中国では、2種類のPMIが作成されている。イギリス系調査機関HSBCは中小企業を中心に400社を対象にした調査。また政府も大企業を中心に800社を対象にした調査を発表している。11月の調査で、HSBCの指数は50.4となり、1年10か月ぶりに50を超えた。これで中国の成長率低下も底入れしたのではないか、という推測が強まっている。

調査会社マークイットが発表した、11月のユーロ圏の製造業PMIは46.2だった。まだ50は超えていないが、前月より0.8ポイント上昇して3月の水準に戻っている。EUのギリシャに対する支援が最終的に決まるのではないかという観測に加えて、こうした結果が出たためヨーロッパ各市場の株価は一斉に上昇した。

また為替市場では、ユーロが大きく買い戻された。円の対ユーロ相場も、先週は106円台にまで下落している。このようにアメリカ、中国、ユーロ圏のPMIが同時に上向いたことは、世界の製造業に活気が戻ってきたことを意味する。株式市場や為替市場は、この点を評価したわけだ。

残念なことに、日本のPMIは注目されていない。日本でも資材管理協会がデータを収集し、英系のマーケット・エコノミクス社が統計を作成している。しかし確報だけを発表し、速報は出していない。その理由は不明。だがPMIの長所は、その速報性にある。このため、ほとんど重視されていないのが現状だ。


    ≪28日の日経平均 = 下げ -114.95円≫

    ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ

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世論調査の ふしぎ
2012-11-30-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 朝日と読売で大違い = 今週26日の朝、新聞各紙を見ていて驚いた。朝日と読売が衆院選を前に世論調査を実施し、その結果をともに1面トップで大々的に報じている。ところが比例区の投票先を聞いた結果は、朝日が「自民23%、民主13%、維新9%」だったのに対して、読売は「自民25%、維新14%、民主10%」だった。読売の調査では「維新」が「民主」を上回って2位になっている。

自民党や民主党の数字は両紙で2-3%違っているが、こんなことは珍しくない。しかし維新の会についての大幅な相違は、過去にも例がなかったように思う。両紙とも同じ時期に調査を実施した。コンピュータで無作為に抽出した番号に、電話をかけて聞いている点も同じだ。どうしてこんなに差が生じたのか、いろいろ考えたが判らなかった。

すると27日の読売新聞が、この疑問に答える形の解説記事を載せた。それによると、読売は14の政党名と「その他の政党」という15の選択肢を読み上げて1つを選択してもらった。一方、朝日新聞は政党名を読み上げずに答えを求めたのだという。このため新たに結成された政党の名前は思い付きにくく、「維新」の数値が低く出たのではないかと説明している。

この説明が正しいとすると、あの「維新」でさえもまだ有権者に覚えられていないことになる。なるほど、知名度は重要だ。テレビのCMでも、いかに視聴者の頭に商品名を刷り込むかで苦労している。だから投票日前になると、街宣車も候補者の名前を連呼するだけになってしまうのか。と妙なところで納得した。


    ≪29日の日経平均 = 上げ +92.53円≫

    ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ

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