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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
ごまかしの 政策修正 : 日銀
2018-08-01-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 長期金利は上昇する = 日銀は政策決定会合を終えた31日、金融政策の新しい運営方針を発表した。だが、その内容は矛盾に満ちていて解りにくい。市場もその読み解きに戸惑ったようだ。会見した黒田総裁はまず基本的な方針として「きわめて低い長期金利の水準を維持する」と強調した。これなら従来の超金融緩和政策と変わりはないため、市場には安心感も広がった。

しかし今回の政策決定会合では、金融緩和の副作用も大きな問題として取り上げられた。この点について黒田総裁は「国債の買い入れは年80兆円をメドとしつつ、弾力的に実施する」と述べている。国債市場や金融機関の経営に与えている副作用を軽減するためには、この“弾力的な買い入れ”が実行されなくては意味がない。実行されれば国債価格は下がり、長期金利は上がる。日銀の意図はむしろ、こちらにあると考える方が妥当だろう。

また日銀はETF(上場投資信託)の買い入れ対象を、日経平均関連だけでなくTOPIX関連にも広げた。対象銘柄が増えることで、買いが特定の銘柄に集中するのを防ぐことができる。さらに金融機関の経営を支援する目的で、日銀への預け金のうちマイナス金利の適用分を減らすことも決めた。しかし、これらの措置は小手先の変化でしかない。

要するに、長期国債の買い入れを弾力的にする。つまり縮小する。この措置が、今回の政策変更の眼目だろう。その結果、長期金利が上がれば、円相場は上昇圧力に曝される。市場は「超低金利の継続」に安心し、これと矛盾する「弾力的な国債の買い入れ」に戸惑ったが、しばらくすれば日銀の“目くらまし”に気付くことになるだろう。

       ≪31日の日経平均 = 上げ +8.88円≫

       ≪1日の日経平均は? 予想 = 上げ


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トランプ流交渉術の 解析 (上)
2018-08-02-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 譲歩に見せかける手口は老獪 = まず高く吹っかける。文句を言われても「絶対にマケない」と、突っぱねる。ときには、いっそうの難題さえ上乗せする。しばらくして相手が困惑したころを見計らって「交渉に応じてもいい」と誘いをかける――これがトランプ大統領の交渉術だ。不思議なことに、こうすると相手側はなんだか得をしたようになり、トランプ大統領に感謝する気持ちにさえなる。トランプ大統領は相手に恩を売った形で、実利を得ることが出来る。

トランプ大統領は先週、ホワイトハウスでEUのユンカー委員長と会談。アメリカとEUが新たな貿易協議を始めることで合意した。具体的には①自動車を除く工業製品について、関税・非関税障壁・補助金の撤廃を目指す②EUはアメリカ産大豆とLNG(液化天然ガス)の輸入を増やす③アメリカの鉄鋼とアルミに対する輸入関税と、これに対するEUの報復関税について解決を目指す――などが決まったという。

アメリカは3月に、輸入する鉄鋼とアルミに高い関税をかけた。最初はEUを除外していたが、6月には急に適用。EUも報復関税を実施し、米欧間の貿易戦争が始まった。その直前、トランプ大統領は「自動車・部品にも20%の関税をかけることを検討中」と発表している。そうなればドイツ、フランス、イギリス、イタリアなどEU各国は大きな痛手を受ける。

今回の合意では「協議中は新たな関税措置を保留する」と決めた。これで自動車関税の問題は当面なくなり、EU内部では喜びの声も上がっている。しかし、よく考えてみると、決まったのはEUがアメリカの大豆とLNG輸入を増やす点だけ。アメリカ側は自動車関税という切り札は温存したまま。しかも新たな関税措置は「一方が協議を打ち切らない限り、保留する」と、解釈のしようによっては新たな“脅し”まで追加されてしまった。そうして来週には、日米間の貿易協議が始まる。

                               (続きは明日)

       ≪1日の日経平均 = 上げ +192.98円≫

       ≪2日の日経平均は? 予想 = 下げ


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トランプ流交渉術の 解析 (下)
2018-08-03-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日本は入念な準備を = 日本とアメリカの貿易交渉は、来週9日に始まる見込みだ。カナダやEUに比べると遅いスタートになったが、これは窓口となるUSTR(通商代表部)の準備に時間がかかったため。それだけに戦術の構築は、万全だとみておいた方がいい。もちろんトランプ流で、最初は大きく吹っかけてくるだろう。

アメリカ側が求めるものは、牛肉や小麦など農畜産物と自動車の輸入増加。だが最初から自動車に対する輸入関税、駐留米軍の分担費、イージス艦など兵器類の購入増加、さらには円安を生む日銀の金融緩和政策など。あらゆる問題を、一気に持ち出してくる可能性もないではない。その場合、日本側としては、一つ一つにきちんと反論できるかどうか。

農畜産物の輸入については、TPP(環太平洋経済連携協定)の線で押し返せるのかどうか。自動車については「アメ車が売れない理由」を、合同で調査しようと逆提案ぐらいしたらいい。防衛関係費についても、日本の考え方で説得できるのか。案外むずかいいのは、円安の問題かもしれない。

アメリカ側の貿易統計によると、17年のモノ貿易では対中国が3752億ドル、対メキシコが711億ドルの赤字。日本は688億ドルで、3番目の赤字国となっている。アメリカ側はこの赤字を半減したいと考えているようだから、交渉は難航するに違いない。それでも日本側は最初の大風呂敷に驚かず、それを引っ込めても譲歩だと喜ばずに、粘り腰をみせてもらいたい。

       ≪2日の日経平均 = 下げ -234.17円≫

       ≪3日の日経平均は? 予想 = 上げ


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みんなで監視しよう : 参院の経費削減
2018-08-04-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 歳費まで切り込めるか = 自民・公明両党は31日、参議院の経費削減を検討する作業チームを立ち上げた。先の通常国会で公職選挙法を改正し、参院の議員定数を242から248に増やしたが、国民の評判はかなり悪い。そこで参院の経費を減らし、批判を和らげることが狙い。年内には具体策をまとめ、来年度予算に反映させたいと考えている。

来年の参院選では、議員が3人増加する。そのための年間経費増は約2億円。文書の電子化や業務の外部委託を拡大することで、その程度の経費削減を目指す考えだ。だが18年度の参院予算は総額458億8200万円。そこから2億円を節約するのは、むずかしいことではない。また文書の電子化などは、この問題がなくても推進すべき改革だ。

このため公明党の内部からは「議員歳費のカットにも手を着けるべきだ」という声が上がっている。議員歳費は総額52億7000万円。1議員当たりで2177万円。これに加えて、交通・通信費も支給される。新たに増える2億円の経費を全員が負担しても、1人当たり平均では83万円が減額されるだけである。

東日本大震災の直後、多くの国会議員は「報酬をカットする」と宣言した。だが時とともに、その実現はウヤムヤになってしまった。今回の参院定員増は、与党が自己保身のために強行した悪業。事務費の節減ぐらいで体裁を繕おうとすれば、国民の批判はさらに高まるだろう。身を切る対策を講じてほしい。また4年後にはさらに定員が3増えるが、その経費をどうするかについても決めておくべきだろう。

       ≪3日の日経平均 = 上げ +12.65円 ≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   

             
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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】
2018-08-05-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第5章 ニッポン : 2060年代

≪44≫ 結婚 = 朝からそわそわしているが、気持ちはきょうの秋空のように澄み切っている。いま、ぼくは薄黄色のローブ、隣のマーヤは薄桃色のローブに身を包み、例の完全自動車に乗っている。でも高速道路で遠くに行くわけではない。街なかを時速10キロぐらいで、ゆっくりと走っている。

道路の両側には多くの人とロボットが集まり、何か叫びながら手を振っている。この街には約1万人の人間とほぼ同数のロボットが暮らしているが、その半分以上が沿道を埋めている感じ。マーヤも興奮して言い返しているが、その意味は解らない。そう、まるで優勝したスポーツ選手の凱旋パレードのようだ。

あれから物事が、どんどん進捗した。賢人会のウラノス議長から、次々とマーヤに連絡が入る。まず地球に帰る宇宙船は11月11日に発射される。賢人会は近く「人間とロボットの結婚を正式に認める」ことになった。君たちさえよければ、その第1号として結婚しないか。9月になったらすべてを公表するから、その直後に披露のパレードをやってほしい・・・・。

この国には、宗教と呼べるものがない。昔はあったのだそうだが、いまは消滅してしまった。だから教会や寺のようなものもない。たしかに神仏の前で「健康でありますように」とか「合格しますように」と祈る必要もない社会だ。したがって結婚式もなく、新郎新婦はただ町内を巡ってお披露目するだけ。考えてみれば、親族や親しい友人だけで行う結婚式よりも、ずっとオープンで効率的かもしれない。

1時間ほどでパレードが終わると、マーヤが解説してくれた。
「みんなが喜んで興奮していました。まるで私たちが、人間とロボットの結婚に道を拓いたように受け取られたようですね。みんなが『おめでとう』『ありがとう』と祝福してくれたので、とても感激しています」

ぼくも嬉しかった。でも同時に、結婚とはなんだろうと考え込んでもいた。男性と男性、女性と女性、そして人間とロボットの結婚。大昔の人類は、子孫を残すために結婚した。だが、いまは違っている。子どもを産んでも産まなくても、結婚は結婚だ。人間の男女が結婚しても、セックスレスが少なくないという。結局、結婚は単なる一つの絆に過ぎないのだろうか。

                                (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2018-08-06-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 方向感を見失った市場 = 株価を動かす大きな材料が、次々と出現した。日銀による金融緩和政策の修正、米中貿易戦争の激化、FRBが9月に再利上げする可能性の増大・・・。いずれも影響力は複雑で、一筋縄では解釈できない。このため市場には迷いが生じ、方向感を失ったようにみえる。ダウ平均は先週12ドルの値上がり。日経平均は188円の下落となった。

たとえば日銀の政策修正。超金融緩和を維持するための方策とみるのか、それとも引き締めに向けた政策転換の第1歩とみるのか。際限なく広がる米中間の関税引き上げ競争。どこまで行くのか、その影響の大きさは。予測は困難だ。FRBは利上げの意志を鮮明にしたが、トランプ大統領は「引き締め反対」を表明している。

いずれも大問題だが、その見通しは不鮮明だ。しかし一方では、日米ともに企業の業績はいぜん絶好調。これで株価は下支えされているものの、心配のタネも大きいから動きがとれない。この状態は、まだしばらく続きそうだ。そんななかで早めに動き出すのは、円相場である可能性が高い。円安よりも円高に動く方が、確率として大きいかもしれない。

今週は7日に、6月の家計調査、毎月勤労統計、景気動向指数。8日に、7月の景気ウォッチャー調査。9日に、6月の機械受注。10日に、4-6月期のGDP速報、7月の企業物価、6月の第3次産業活動指数。アメリカでは9日に、7月の生産者物価。10日に、7月の消費者物価。また中国が8日に、7月の貿易統計。9日に、7月の消費者物価と生産者物価を発表する。

       ≪6日の日経平均は? 予想 = 上げ


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矛盾に満ちた 金融政策修正 : 日銀
2018-08-07-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 2つの約束は両立しない = 日銀は先週31日、金融政策の修正を発表した。その骨子は「超低金利政策は維持する」が、その一方で「ある程度の金利上昇は容認する」というもの。市場は最初「超低金利の維持」方針を重視。円相場は下落し、株価は上昇した。「ある程度の金利上昇」は、超低金利を持続するためにはやむをえない措置。日銀はそこまで覚悟して、超低金利を守る意志を表明したのだと受け取った。

ところが時間の経過とともに、市場のこの解釈は揺らぎ始めた。実際に長期金利が上昇して、たとえば2日の東京市場では一時0.145%まで上昇したからである。それまで日銀は、10年もの国債の利回りを0.1%以下に抑えてきたから、これは明らかに金利水準の底上げ。市場では円高、株安の傾向が強まった。

日銀は超低金利の定義を、これまでの「0-0.1%」から「0-0.2%程度」に広げただけと主張するかもしれない。しかし、よく考えてみると「超低金利の維持」と「ある程度の金利上昇」とは両立しない。現に日銀のこの措置は海外市場にも影響し、先進国だけでなく新興国の金利にも上昇圧力を与えた。国内でも、住宅ローン金利の引き上げを招いている。

このように日本の長期金利が、わずかでも上昇したことは事実。本来ならば日米間の金利差が縮小して、円高が進んでもおかしくはない。ただ当面は、アメリカの金利がさらに引き上げられる予想なので、それほどは動かないかもしれない。しかし円相場を引き下げる要因も見当たらないから、どちらかというと円高に進む公算が大きい。

       ≪6日の日経平均 = 下げ -17.86円≫

       ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ


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出始めた 貿易戦争の実害 (上)
2018-08-08-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ まだ始まったばかりだが = 3つ殴られたから、3つ殴り返す。それなら次は5つ殴るぞ――いまどきは子どもでもやらないような喧嘩を、世界第1と第2の経済大国が繰り広げている。きっかけは、トランプ大統領が3月に発動した鉄鋼とアルミに対する輸入関税の引き上げ。カナダやEUと足並みを揃えて、中国も報復関税を導入した。7月になると、トランプ大統領は中国製品に的を絞り、輸入340億ドル分に25%の追加関税。中国も同等の報復関税を実施している。

さらにアメリカは今月23日に中国製品160億ドル分に追加関税、中国も同規模の報復関税。そのうえアメリカは9月以降、2000億ドル分に25%の関税を上乗せ。中国もアメリカ製品600億ドル分に25%の報復関税をかけると予告している。仮にこれらの措置が実行に移されると、アメリカ側の中国製品に対する制裁関税は総計2500億ドル分、中国の対米輸出額を上回ることになる。

いま実際に発効しているのは、アメリカ側の鉄鋼・アルミ関税と、中国製品340億ドル分にかけられた25%の制裁関税。それと同等の中国による報復関税だけ。したがって米中貿易戦争は、まだ始まったばかりと言うことができる。だが、それにもかかわらず、その影響は経済の各分野に出始めた。たとえば国際商品市場では、鉄鋼やアルミ、銅などが大きく値下がり。大豆の価格も急落した。

ただアメリカ国内では、鉄鋼とアルミの値段が急騰。自動車や機械類、住宅などのコストが急上昇している。そうしたなかでUSスチールなど鉄鋼メーカーの売り上げは大幅に増えた。中国製の自動車に高関税がかけられたため、中国で生産しアメリカに輸出している日本やヨーロッパの自動車メーカーも、苦戦を強いられている。

                           (続きは明日)

       ≪7日の日経平均 = 上げ +155.42円≫

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 下げ


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出始めた 貿易戦争の実害 (中)
2018-08-09-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 中国経済は非常事態に = 中国共産党は先週31日の政治局会議で「外部環境に新たな変化が起きている」と指摘。景気を維持するために、財政・金融面から刺激策をとる方針を確認した。これまで中国政府はリーマン・ショック後に生じた地方政府と国有企業の過剰債務を縮小するため、財政政策を抑制的に運用してきた。それを一転して積極財政に転換するわけで、それだけ貿易戦争の悪影響を重視し始めたことを意味している。

その背景には、中国経済の鈍化傾向がある。ことし4-6月期のGDP成長率は6.7%で、前期よりも0.1ポイント減速した。インフラや不動産に対する固定資産投資は政府の抑制方針で鈍化、個人消費も伸び悩んでいる。景気を下支えしたのは輸出だったが、アメリカの輸入制限でその輸出が減退しそう。そこで過剰債務には目をつぶり、内需の拡大に方針転換せざるをえなくなった。一種の非常事態宣言である。

すでに関税引き上げの影響で、アメリカ国内での6月の中国車販売は前年比20%も減少した。人民元の対ドル・レートは前年比5%の低落、上海市場の株価も2年4か月ぶりの安値に落ち込んでいる。こうしたダメージは今後も拡大して行くが、それを景気対策で補えるのかどうか。見通しは必ずしも明るいとは言えないだろう。

アメリカの輸入制限で、日本など海外メーカーが中国で生産している製品は、アメリカへ輸出しにくくなる。また中国がアメリカに輸出している電子機器や医療機器などは、その部品の多くを日本などアジア諸国から輸入している。したがって対米輸出が減れば、部品の輸入も減るだろう。さらに中国経済の成長鈍化が進行すれば、各国の中国向け輸出が阻害される。こうして米中貿易戦争によって惹き起こされる中国発の不況が、世界に波及する心配が現実のものとなりつつある。

                                   (続きは明日)

       ≪8日の日経平均 = 下げ -18.43円≫

       ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ


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出始めた 貿易戦争の実害 (下)
2018-08-10-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 限界の見えないことが不安を増幅 = トランプ大統領には、早い段階から“奥の手”をちらつかせる性癖があるようだ。今回も5月の時点で、破壊的な影響力を持つ自動車の輸入関税引き上げを検討すると公表している。もともとはEUに対する脅しだったが、いま始まったばかりの日本との貿易交渉でも、陰に陽に利用されることは間違いない。ただ、この措置は悪影響が大きいだけに、アメリカ国内でも反対の意見が圧倒的に強い。

アメリカ国内では17年に、1730万台の乗用車が販売された。そのうちの44%が輸入車である。日本の輸出も173万台、金額で398億ドル(4兆4000億円)にのぼった。日本のメーカーはカナダやメキシコで生産した車もアメリカへ輸出している。仮に20-25%の輸入関税をかけられたら、日本経済が被る損失は計り知れない。

GMやフォードなどアメリカのメーカーは、部品の多くを海外に依存している。このためアメ車の販売価格も1台平均で2000ドル上昇。消費者は年間450億ドル(5兆円)の負担増になると試算されている。商務省が開いた公聴会でも、自動車工業会をはじめ多くの参考人が反対意見を述べた。強く賛成したのはUAW(自動車労組)ぐらいのものである。

こうした状況から、トランプ大統領も自動車関税は外国との交渉に脅しとして使うだけだという見方も強まっている。しかし中間選挙を控えて民主党の牙城であるUAWを取り込むために、実際に発動する可能性もないではない。こうして貿易戦争の限界は、いまのところ見極められない。その被害についても、測定は不可能だ。その不透明さが、金融市場では不安感を増幅して行く。

       ≪10日の日経平均 = 下げ -300.31円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】  


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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】
2018-08-12-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第5章 ニッポン : 2060年代

≪45≫ 帰国へ = ぼくとマーヤを乗せた宇宙船は11月11日の早朝、この島の北端にある発射場から打ち上げられた。船内は日本製の宇宙船よりやや広く、ベッドと椅子が固定されている。ダーストン星は瞬く間に見えなくなった。もう、この星に来ることはないだろう。ちょっと悲しかった。

それにしても、いい人たちだった。みんな異星人のぼくを気持ちよく受け入れ、歓迎してくれた。マーヤに淋しくないかと聞いてみると「少しは悲しい。でも私には親兄弟がいません。それより貴方と地球に行けることの方が嬉しい」という答えが返って来た。

すぐに無重力状態になったが、立ち上がったマーヤは浮き上がらずに歩いている。不思議に思っていると、マーヤがすぐ説明した。「靴底が磁石になっているんです」

ぼくもサンダルを履いて歩いてみた。少しベタつく感じで歩きにくいが、何かにつかまらなくても移動できる。サンダルを脱ぐと体が浮き上がるので、マーヤに抱き付く。来たときとは大違いで、楽しく賑やかな宇宙旅行になった。

まるで新婚旅行のよう。あっという間に1週間が過ぎた。するとマーヤが悲しそうな顔で言った。
「そろそろ貴方には、薬を飲んで眠ってもらわなければなりません」

そう、別れの挨拶に出向いたとき、病院長のブルトン博士にこう言われたのだった。
「君がこの星に来たときは、宇宙船のなかで4年間も冷凍されていた。だが冷凍だと筋肉が固まってしまうから、地上に降りたとき重力に慣れるまでが大変だ。わが国では、薬で眠る方法を採用している。動物の冬眠と同じで、これだと睡眠中も筋肉は動いていて固まらないんだ。薬は私が調合するから、安心してもらいたい。

それから胸のプレートは、下着や服には映らないようにしておいた。服の上から見えたのでは、地球に戻ってから困るだろうからね。ああ、マーヤのプレートも同じだ。だから裸にならない限り、誰にも見られないよ」
そのとき、ぼくのプレートは≪61≫に、マーヤのは≪66≫になっていた。

ぼくはいま、来たときと同じような航空自衛隊の制服を着ている。マーヤは茶色の地味なワンピース姿だ。このまま2人で手を組んで銀座通りを歩いても、誰も何とも思わないだろう。外見だけではなく、マーヤはどこから見ても中年の日本女性に変貌した。もう日本語の読み書きも万全らしい。大化改新、徳川家康、東京オリンピックも、よく理解したという。素晴らしい。

                                (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2018-08-13-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ しだいに濃くなる貿易戦争の影 = トムソン・ロイター社の主要500社を対象にした調査によると、4-6月期の純利益は前年比24%の増加だった。非農業雇用者の増加数は7月も15万7000人で、景気は相変わらず好調である。本来ならば、株式市場は明るさと活況に満ち溢れているはずだ。ところが貿易戦争の影が時とともに濃くなって、市場の明るさを消している。ダウ平均は先週149ドルの値下がりだった。

日本企業の利益水準も、いぜん高い。4-6月期の純利益は20%を超す増益となった模様だ。4-6月期の実質成長率も1.9%と、プラス成長を回復した。だが日経平均は先週227円の値下がり。アメリカと中国が、互いに160億ドル相当の輸入品に25%の関税をかけ合う追加措置を発表。これが大きな重しになった。

特に日本の場合は、中国経済の動向が心配になる。景気が減速しているところへ貿易戦争が重なって、すでに上海市場の株価は大幅に下落した。7月の新車販売が、前年比4.0%減少したことも気がかりである。今週の東京市場では、企業業績のよさが見直されるのか、それとも貿易戦争の影の覆われるのか。円相場が上昇気味なのも要注意だ。

今週は15日に、7月の訪日外国人客数。16日に、7月の貿易統計。アメリカでは15日に、7月の小売り売上高と工業生産。16日に、7月の住宅着工戸数。17日に、7月のカンファレンス・ボード景気先行指数と8月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が14日に、7月の小売り売上高、鉱工業生産、固定資産投資額を発表する。

       ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ


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こんどは トルコ です : 通貨不安
2018-08-14-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ リラ暴落が東京市場にも波及 = 日経平均は先週末の300円に続いて、きのうも440円の大幅安を演じた。その大きな要因がトルコの通貨リラの暴落だった。トルコ・リラの対ドル・レートは、10日だけで20%もの下落。年初に比べると4割も下がって、過去最低値に落ち込んでいる。アメリカの高金利で資金が引き揚げられていたところへ、トランプ大統領がトルコの鉄鋼製品に50%の追加関税をかけたことが原因。

トルコ政府は、クーデターに関与した疑いでアメリカ人牧師を拘束している。トランプ大統領が鉄鋼製品に高関税をかけたのは、これに対する抗議で、特にリラを下落させるほどの経済的な影響はない。しかしアメリカとの関係がますます悪化したことが、資金の流出を加速させることになった。

トルコ経済は最近まで順調に推移、外貨準備も1000億ドル保有している。このためアルゼンチンのように、いますぐIMF(国際通貨基金)に駆け込む状況ではない。だが政治的には、エルドアン大統領の独裁状態。たとえば中央銀行がリラ防衛のために金利を上げようとしても認めない。このため将来への不安が、必要以上に増大している。

トルコにはスペイン、イタリア、フランスなど南ヨーロッパの銀行が多額の投融資をしている。これらの銀行経営に支障が出ないかどうか。またロシア、南アフリカ、インドネシアなどからの資金流出を加速させないかどうか。このような心配が強まった結果、先進各国の株式市場でも警戒感が強まった。今週も目は離せない。

       ≪13日の日経平均 = 下げ -440.65円≫

       ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ


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日米貿易協議の 真相は?
2018-08-15-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 双方の政治日程がカギ = 閣僚級による日米貿易協議は先週10-11日、ワシントンで開かれた。終了後の記者会見で、茂木財政経済相は「個別の問題で何か決定したものはない」と述べ、次回は9月に開催することを明らかにしている。ライトハイザーUSTR(通商代表部)代表は2国間の貿易協定を求め、日本側はアメリカのTPP(環太平洋経済連携協定)への復帰を要請。アメリカの輸入自動車に対する追加関税も、日本が反対意見を述べただけで、アメリカ側は反論もしなかったという。

この会議が、なぜ予想に反して平穏無事だったのだろう。これまで中国やEU、あるいはカナダなどに見せつけた厳しいアメリカの姿勢はどこへ行ったのだろう。そのナゾを解くカギは、次の会合を9月に設定した点にある。いま両国が夏休みをとる理由は、全くない。にもかかわらず次回の会合を9月にしたのは、自民党の総裁選挙を考慮したためではないだろうか。

つまり日本政府は、牛肉や小麦などの農畜産物、LNG(液化天然ガス)の輸入増加。それに防衛装備品の調達増加を、すでにアメリカ側に伝えてある。だが総裁選挙の前に発表すると、地方票が反安倍に回る危険もないではない。トランプ大統領としても、言うことを聞いてくれる安倍首相の続投が望ましい。だから発表は総裁選後の9月になった。

一方、アメリカの中間選挙は11月。その直前に日本の輸入増加が発表されれば、農業・エネルギー・防衛産業の票が確保できる。これなら、双方めでたしめでたし。もちろん、こういう推論が確認されたわけではない。だが第1回の閣僚協議が実にあっさりと終わったことから、いろいろ想像力を働かせてみたしだい。

       ≪14日の日経平均 = 上げ +498.65円≫

       ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ


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曲がり角に来た 中国経済 (上)
2018-08-16-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 投資と消費がともに勢い失う = 拡大を続けてきた中国経済が、曲がり角にさしかかっている。統計局が発表した1-7月の固定資産投資額は前年比5.5%の増加。1-6月の6.0%増から大きく鈍化した。この統計を発表し始めた1995年以来で、最低の伸び率となっている。また小売り売上高も7月は前年比8.8%の増加にとどまった。6月の9.0%増加を下回り、小売り大手50社では、前年比3.9%の減少となっている。こうした発表を受けて15日の上海市場では株価が大幅安に。この影響で日経平均も150円下げた。

固定資産投資のうち、道路や空港などのインフラ投資は1-7月で5.7%増、1-6月の7.3%増から目立って鈍化した。これは習政権が地方政府や国営企業の過剰債務を抑制するため、政策的にブレーキをかけた結果だ。また小売り部門では、携帯電話の販売台数が15か月連続で前年割れ。新車の販売台数も、7月から減税されたにもかかわらず前年比4.0%減少した。

中国政府はリーマン・ショック後の不況を乗り切るため、4兆元(57兆円)という巨額のインフラ投資を断行。おかげで不況は回避された。しかし地方政府の債務は膨張、国営企業の過大投資という副作用を招いている。習政権はこのひずみを是正するために、財政・金融政策を引き締め気味に運営した。ことし4-6月期の実質成長率が6.7%に鈍化したのも、その結果だとみられている。

そんなときにアメリカとの間で、貿易戦争が勃発した。これに対する不安が、個人消費の縮小につながっている。このままにしておけば、経済成長率は低下の速度を速める危険性が出てきた。このため中国共産党は緊急の政治局会議を開催。財政・金融政策を再び景気刺激の方向に転換する方針を決めた。その副作用が出ても仕方がない。指導者たちが「中国経済は曲がり角に来た」と判断したからに他ならない。

                                (続きは明日)

       ≪15日の日経平均 = 下げ -151.86円≫

       ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 


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曲がり角に来た 中国経済 (下)
2018-08-17-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 1兆円を鉄道建設に上乗せ = 成長率が鈍化してきたところへ、アメリカの関税引き上げ攻勢。固定資産投資と個人消費に続いて輸出まで伸び悩めば、習政権が公約している6.5%の経済成長も難しくなる。そこで中国政府は景気政策を大転換、抑制気味だった財政を拡大することになった。具体的には7320億元(12兆円)の鉄道建設予算を8000億元に増額。たとえば四川省-チベット自治区間の高速鉄道、地方都市の地下鉄建設を促進する。

この結果、新たに必要となる鋼材は約200万トン。アメリカ向けの鉄鋼輸出118万トンを十分に補える計算だ。しかし大きな問題も発生する。全国の鉄道を管理運営する鉄路総公司は、すでに5兆元の負債を抱えているが、新線は概して赤字路線。借金は膨れるばかりだ。また鉄鋼メーカーも息は吹き返すが、生産性が低い工場の廃棄はますます遅れてしまう。

したがって、今後の注目点は2つ。まずは今回のてこ入れで、中国経済の成長鈍化が止まるのかどうか。ことし後半の固定資産投資、小売り売上高、そして輸出の動向。最終的には下期の成長率が6.5%を維持できるか。仮に維持できないとすると、アジアを中心に世界経済には寒風が吹きこむ。むろん、日本も例外ではない。

もう1つは、地方政府や国有企業の赤字が増えること。金融機関の不良債権が増大し、これが金融不安に発展すると大変だ。いわば中国版のリーマン・ショックが、起きる危険性もないではない。もし起きれば、世界経済には深刻な影響が伝播する。こちらの動きにも、気を付けておかねばならないだろう。

       ≪16日の日経平均 = 下げ -12.18円≫

       ≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ
 

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貯蓄に走る サラリーマン
2018-08-18-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 賃上げしても増えない消費 = 厚生労働省が発表した6月の毎月勤労統計によると、勤労者1人平均の現金給与総額は44万8919円で前年を3.6%上回った。この伸び率は21年5か月ぶりの大きさ。人手不足で賃上げが中小企業にまで浸透した結果だ、と分析されている。ところが総務省が発表した6月の家計調査をみると、家庭の消費支出は5か月連続で減少した。

この2つの調査がたまたま同じ日に発表されたため、新聞やテレビは「賃金は伸びたが、消費は減った」と報道したところが多い。だが、どうして消費が伸びないのかについての解説は、あまり見られなかった。そこで家計調査をもう少し掘り下げてみると、サラリーマン世帯の貯蓄率が異常に高くなっていることが判る。

たとえば4-6月期のサラリーマン世帯の実収入は、平均で51万0423円だった。そこから税金や健康・年金保険料などを差し引いた可処分所得は40万5559円。ところが消費支出は26万7127円しかない。その差14万円ほどは、借金の返済や貯蓄に充てられたと考えられる。消費支出は可処分所得の66%だが、この比率は4年前には74%だった。

安倍首相は「賃上げが進んで消費が伸びれば、経済の好循環が始まる」と期待している。しかし働く人が貯蓄に走れば、この好循環は起こりにくい。なぜ人々が貯蓄を増やすのか。その答えが「年金や介護の将来に不安を感じるから」だとすれば、政府の政策自体が“経済の好循環”を阻んでいることになる。

       ≪17日の日経平均 = 上げ +78.34円≫

       【今週の日経平均予想 = 5勝0敗≫   


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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】
2018-08-19-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第5章 ニッポン : 2060年代

≪46≫ 2061年12月 = まだ学生だったころ、真夏の日本アルプスを縦走したことがある。家に帰ると疲れ果てて、まる1日眠りこけた。そのときと同じ感覚で熟睡し、パッと目覚めたら可愛いマーヤの顔があった。ぼくの手首を握りながら「お早うございます。血圧も正常です」と言い、にっこり笑う。

「もう起きてください。あと1時間で地球の大気圏に突入します。すべて予定通りですから、何も心配はありません」

――えっ、もう4年も経ったということか。君はずっと起きていたの?
「あなたの寝顔を見たり、地球でやることを復習したり。バッテリーを節約するために、横になったりしていました。いろいろ話したいこともありますが、もう時間がありません。これから大事なことを申し上げますから、しっかり聞いてくださいね」

――ああ、完全に記憶は取り戻した。気分も上々だから、何でも言ってくれ。
「まず、この宇宙船は日本時間の2061年12月20日の夜明け前に、神奈川県の鵠沼海岸に着陸します。私は今後の準備やダーストン国との連絡をするため、貴方を海岸に降ろしたら、そのままUFOに向かわなければなりません」

――えっ、まさか帰っちゃうんじゃないだろうね。
「大丈夫、帰りませんよ。ただ準備に2か月ほどかかります。ですから2か月後には、貴方がどこに住んでいようと必ず見つけて伺います。その間、気を付けて元気でいてくださいね」

――淋しいけど、判ったよ。でも、どうして2061年なんだろう。行きと帰りで8年半ぐらい宇宙船に乗ったはず。ダーストン国には5年ほどいたから、いまは2063年じゃあないのかい。
「ダーストン星の公転周期は168日ですから、1年が地球の半分もないんです。だから地球の時間で言うと、貴方がダーストン国に滞在した時間は約2年半。お間違いないように。これから私たちは、地球の時間で暮らすことになるのですから。

海岸に座っていれば、すぐに救急車がやってきて、貴方を病院に運ぶはずです。病院で健康が確認されれば、貴方は自由になる。11年前に宇宙船で飛び立った航空自衛隊の隊員だということも明らかになり、マスコミが騒ぎ立てるに違いありません。ただ貴方には11年間の記憶がない。ダーストンのことは決して喋らない。これだけは肝に銘じてください」

いつの間にか、マーヤに命令されるようになっている。こちらがロボットになったような気分だ。

                            (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2018-08-20-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 企業業績と貿易戦争の狭間で = 企業の好業績が持続する一方で、貿易戦争の悪影響も広がり始めた。株価はその狭間で、苦し気な動きを繰り返している。トランプ大統領による貿易制限政策はトルコにまで波及、通貨リラの急落を招いた。しかし先週までにほぼ終了した4-6月期の決算発表では、日米ともに増益率が20%台をキープ。これが株価を下支えする形になっている。ダウ平均は先週356ドルの値上がり。日経平均は28円の下落だった。

投資家の側からみると、企業の好決算は現状の明るさを映している。だが貿易戦争は、将来に不安があることを示している。だから長期的な視点からの買いは難しく、短期的な売買になりやすい。そのうえアメリカの中国に対する第2弾の関税引き上げが23日から実施されることで、電子製品の貿易が抑制される。このため市場でも、ハイテク関連株が敬遠され始めた。

貿易戦争に関しては、米中両国が事態の打開に向けて、次官級の協議を開始することになった。ニューヨーク市場ではこれが上げ材料になったが、成功する見込みはあまりない。したがって今週以降も、貿易戦争の影は市場を覆い続ける。その一方でことし後半の企業業績見通しが悪化すると、貿易戦争とのバランスが崩れてしまう。

今週は22日に、6月の全産業活動指数。24日に、7月の消費者物価と企業向けサービス価格。アメリカでは22日に、7月の中古住宅販売。23日に、7月の新築住宅販売が発表される。

       ≪20日の日経平均は? 予想 = 上げ


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史上最高益の 使われ方 (上)
2018-08-21-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 企業業績は日米ともに絶好調 = トムソン・ロイター社が主要500社の決算を集計したところによると、4-6月期の純利益は前年比で24%の増益となった。1-3月期の27%増益をやや下回ったものの、2四半期連続で20%を超えている。利益の水準は、もちろん過去最高。トランプ大統領による大型減税とインフラ投資で、個人消費と設備投資が増大した結果だと分析されている。

日本の企業も負けてはいない。日経新聞が決算発表を終えた1588社を集計したところ、4-6月期の純利益は総額8兆9000億円。前年比28%の増益となった。4社に1社が過去最高益を出しており、電気・建設・石油・商社など幅広い部門に好況感が広がっている。ただ4-6月期には東芝が主力事業を売却した特殊事由もあるため、これを除くと増益率は14%に下がる。また19年3月期は03%の減益になる見通し。ここがアメリカとは違う点だ。

増益が持続した理由は、主として海外経済が堅調に推移したこと。またオリンピック景気や資源高も、利益の拡大に貢献した。さらに円相場が企業の想定レートより円安だったことも、増益に寄与している。その一方、18年度を通期でみると減益になるのは、貿易戦争の影響が現われてくること。また円高傾向に進むという予想が、主な理由となっている。

株価が変わらず利益が増えれば、その株式のPER(株価収益率)は下がる。このため日経平均を構成する225銘柄で計算すると、最近のPERは13倍近くにまで低下した。アメリカの18倍弱、ドイツの14倍に比べても低い。その割安感が、貿易戦争の進行で売られやすい東京市場の株価を支える形となっている。

                           (続きは明日)

       ≪20日の日経平均 = 下げ -71.38円≫

       ≪21日の日経平均は = 下げ


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史上最高益の 使われ方 (下)
2018-08-22-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 株主を最重要視する経営者 = 「企業の最高益が続いている割に、賃上げが進まないのはなぜか」--こんな疑問がよく聞こえてくる。日本だけではなく、アメリカでも同じ問題が提起されているようだ。いろいろ理由はあるが、最大の理由は“経営者が株主を最重要視している”こと。高度成長期の経営者は、労働組合との対話を重視せざるを得なかった。しかし現在の経営者は”株主第一”の姿勢に変わっている。

企業が株主を大切にする方策は、いくつかある。たとえば配当を増やす。自社株を買う。M&A(合併・買収)を試みるなど。17年度の配当総額は12兆4000億円、自社株買いは4兆4000億円にのぼっている。自社株買いというのは、企業が自分の発行した株式を買い入れること。1株あたりの価値が上昇するから、株主は喜ぶ。アメリカではずっとスケールが大きく、主要500社が18年に予定する配当支払いと自社株買いの合計は、1兆2000億ドル(130兆円)に達する模様だ。

最近の株主総会では、株主がよく発言する。特にファンドなどの大株主は、減益になると経営者を追及することが多い。経営陣の交代を要求することも少なくない。このため経営者は増益に固執し、株主の支持を得ようとする。賃上げをし過ぎれば、利益は減ってしまう。それよりは利益を確保したうえで、株主に報いる方策をとりたいと考える経営者が増えている。

トランプ大統領は先週「四半期決算制度の見直し」を命じている。これは経営者が目先の利益ばかりを追い求める風潮に、疑問を持ったからに違いない。と同時に「賃金はコストで増えれば利益を減少させるが、配当や自社株買いは減少させない」という会計制度が、高収益と賃金の関係を分断していることは間違いない。

       ≪21日の日経平均 = 上げ +20.73円≫

       ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ


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米中次官会議に 異なる見方
2018-08-23-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 首脳会談にまで繫げられるのか = アメリカはきょう23日、中国に対する貿易戦争の第2弾を発動する。中国も同等の報復関税を実行に移す構えだ。そんなときワシントンでは、急きょ訪米した王受文商務次官とマルパス財務次官がいま会談中。ウォールストリート・ジャーナル紙によると「両国は貿易摩擦の解消に向けた行程表を作成中」で、11月に米中首脳会談が開かれる可能性があるという。だが、その成否に関しては見方が真っ二つに分かれている。

米中次官会議の開催が発表された16日、中国市場では元安と株安がストップした。ニューヨーク市場でもダウ平均が上昇、6か月ぶりの高値を回復している。これは市場が、膠着した局面の打開に期待をかけたためだろう。だが今回の次官会議は、中国側の申し入れによるもの。中国政府の目的は、単に為替や株式の下落を食い止めるだけだったという見方も根強く流れている。

首脳会談は11月にパプアニューギニアで開くAPEC(アジア太平洋経済協力会議)か、アルゼンチンでのG20(20か国首脳会議)を利用する公算が大きい。しかしトランプ大統領の要求は、中国が経済政策の根幹に据えている「中国製造2025」の撤回だ。そんな大問題を、11月までに解決できるはずがない。これが悲観論の根拠となっている。

だが11月には、アメリカの中間選挙が終わっている。そうなれば、トランプ大統領の気持ちにも余裕が生まれるだろう。中国側が「努力する」とさえ言えば、貿易戦争の休戦もありうるのではないか。過去の北朝鮮やEUへの対応からみても、そうなる公算は小さくない。これが楽観論の根拠である。どちらが正しいか判らないから、市場は迷う。

       ≪22日の日経平均 = 上げ +142.82円≫

       ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ


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耐久力競争の 新興国経済
2018-08-24-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ トルコ ⇒スペイン が要警戒 = 新興国の多くが、自国通貨の防衛に必死となっている。アメリカの金利上昇に加えて、広がりをみせ始めた貿易戦争。資金の流出を防ぐために、各国は競って政策金利を引き上げている。なかにはアルゼンチンのように、政策金利が45%になったところも。通貨が下落し金利が上がれば、インフレが進行し景気は悪化する。そうしたなかで多くの新興国が耐え抜いているのは、この10年間に経済が発展し、それだけ抵抗力を増したためだろう。

通貨の下落率を年初比でみると、トルコ・リラが50%で最も大きい。すでに債務不履行を回避するためIMF(国際通貨基金)から融資を受けることになったアルゼンチンは、36%の下落。ブラジル・レアルが15%、インドネシア・ルピアが7%などとなっている。自国通貨が下落すると、輸入品の価格が上昇するだけでなく、対外債務の実質的な負担が増大してしまう。

このため新興国は必死で防衛しているわけだが、実は先進国にとってもこの点が最大の関心事になる。というのも新興国が債務を返済できなくなると、損失を被るのは先進国の金融機関だからだ。そこから世界的な金融不安が惹き起こされることは、これまでに何度も経験している。

この観点からみると、対外債務が外貨準備の何倍あるかが、重要な指標になるだろう。現状ではアルゼンチンが4.4倍。次いで南アフリカが4.3倍、トルコが3.6倍となっている。特にトルコの場合は、アメリカとの間で貿易戦争が始まった。エルドアン大統領が金利の引き上げを認めないという状態。この国に800億ドルを貸し付けているスペインの金融機関に、どんな影響が及ぶのか。現時点での最大の注目点になってくる。

       ≪23日の日経平均 = 上げ +48.27円≫

       ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ


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想定外の国 : ベネズエラ
2018-08-25-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 10万分の1のデノミを断行 = 朝起きたら、10万円がたったの1円になっていた。こんなことが中米ベネズエラで実際に起こっている。猛烈なインフレを抑えようと、マドゥロ政権がなんと10万分の1のデノミネーションを強行したのだ。デノミというのは、通貨の単位を切り下げること。ベネズエラでは20日を境に、それまで通用していた10万ボリバル・フェルテが、新しいおカネの1ボリバル・ソベラノに切り替えられた。

なにしろインフレがひどい。ことしの物価上昇率は100万%にのぼるだろうと、IMF(国際通貨基金)が予想している。国家財政は14年の原油価格暴落以来、火の車。それなのに政府は国民の支持を得るためにばらまき政策を継続、中央銀行が紙幣を増刷してインフレが加速した。世界有数の産油国であるにもかかわらず、ガソリンは1日で2倍に値上がりしているという。

21日以降、銀行のATMでは新しいおカネが10ボリバル(約18円)しか引き出せない。買い占めでモノ不足のうえ、おカネも自由にならない。だから首都カラカスの商店街は、多くが閉じたまま。多くの人たちが、隣国のブラジルやコロンビアに逃げ出す始末。デノミはインフレを終息させるどころか、かえって混乱を増す結果となったようだ。

こんな混乱が生じると、新興国ではよく軍隊によるクーデターが起こる。ところが現在のマドゥロ大統領は、軍隊をしっかり掌握しているという。社会主義を標榜し反米を唱えてきたから、アメリカに援助を求めるわけにもいかない。この国が今後どうなるのかは、全く想像もつかない状況だ。

       ≪24日の日経平均 = 上げ +190.95円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】 


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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】
2018-08-26-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第5章 ニッポン : 2060年代

≪47≫ 奇跡の生還 = 気が付いたとき、目に入ったのは真っ白な天井だった。どうやら眠っていたらしい。4年間も眠り続けたのに、どうしてまた眠ってしまったんだろう。宇宙船が大気圏に突入する前、マーヤが差し出した黒い丸薬。地上の重力に早く慣れるための薬だと言っていたが、睡眠薬も含まれていたに違いない。

ここは病院だ。その証拠に、女性の看護師が歩いてきた。でも残念ながら、マーヤではない。小太りのおばさん風だ。
「あら、目が覚めましたか。もう大丈夫ですよ。貴方はけさ早くに、鵠沼海岸で倒れていたんです。救急車でこの病院に運ばれてきたんですが、いろいろ検査をした結果は特に悪いところもないそうです。いま先生を呼んできますから」

それから3日間、病室には警察や航空自衛隊の幹部が次々と現われた。航空自衛隊の制服を着ていたことから、ぼくが11年前に宇宙船で飛び立った隊員だったことがすぐ判明したらしい。DNA調査も一致したという。そこで、みなさんが聞いてくることはただ一つ。
「11年もの間、どこにいたんだ。どうしていたんだ」

――判りません。全く記憶がないんです。気が付いたら、この病院にいたんです。
ウソをつくのは心許ないが、ウラノス博士との約束だから仕方がない。警察署長も自衛隊の大隊長も、首を振りながら帰るしかなかった。

それでもマスコミが嗅ぎ付けたらしい。新聞には「奇跡の生還。11年間の記憶なし」という大見出しが。テレビでは専門家と称する人が「宇宙人に捕まっていたとしか考えられません。彼らが地球に送還するとき、記憶を喪失させたのでしょう」と声高に解説していた。

1週間ほどで退院。東京の郊外にある目立たぬマンションに部屋を借りた。そこへ1通の手紙が。開けてみると活字のようにきれいな字で『もらった退職金の半分を使って、宝くじを買ってください。それから山梨県のリニア新幹線に近い場所で、大きな工場を建てられる土地を探しておいてください。こちらの準備は順調です。もうじきお会い出来ます。元気でね。摩耶』と書いてあった。
 
                      (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2018-08-27-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ NY株の上昇期間が過去最長に = 主要企業で構成するSP500の上昇期間が先週22日、過去最長の3453日を記録した。ニューヨーク市場では、株価が20%を超えて下落しない限りは“強気相場”が継続していると認定される。これまでの記録は、1990年から2000年にかけての3452日だった。この9年半に及ぶ株価上昇で、ダウ平均は4倍に。アップルの時価総額は1兆ドルを超えた。

長期にわたって株価が上昇した原因は、まずFRBの緩和政策で巨額の資金が供給されたこと。さらにトランプ大統領による大型減税とインフラ投資。IT企業の急速な成長。また最近では、アメリカへの資金還流などが挙げられている。しかし、その根底にあるのはアメリカ経済の持続的な拡大だろう。アメリカ経済の拡大は、この8月で110か月に及んでいる。

減税の効果はまだ持続するから、経済の拡大は少なくとも18年中は続くとみられている。だとすれば、株価の上昇記録もさらに伸びるかもしれない。ただ唯一の不安要素は、米中貿易戦争の影響で個人消費が変調するかもしれないこと。今後の自動車や住宅、それに小売り売上高には注目する必要がある。ダウ平均は先週121ドルの値上がり。日経平均は331円の上昇だった。

今週は29日に、8月の消費動向調査。30日に、7月の商業動態統計。31日に、7月の労働力調査と鉱工業生産。アメリカでは28日に、8月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。29日に、4-6月期のGDP改定値と7月の中古住宅販売。また中国が31日に、8月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ


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日銀は“対話”を しないのか
2018-08-28-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ ETFの買い入れを激減した真意は? = 日銀がETF(上場投資信託)の買い入れを大幅に減らしている。これまでは株価が午前中に0.4%を超えて値下がりすれば、午後には必ず700億円の買いを入れていた。ところが8月になると、日銀はこの“法則”を放棄。その結果、たとえば6月は7030億円、7月は2115億円あった買い入れ額が、8月は先週までで1400億円にとどまっている。

日銀のETFの買い入れは、黒田総裁による”異次元緩和”の一環として始められた。市場からETFを購入することで株価を下支えし、同時に市中に資金を供給することが目的。年間6兆円の購入を目指していた。ところが購入の累積額が時価で25兆円にもなると、その副作用も拡大。「市場の自由な価格形成を阻害している」という批判が強まってきた。

そこで日銀は7月末の政策決定会合で「市場の状況に応じて、ETFの購入額を上下に変動しうる」と決定した。8月からの購入額減少は、この決定に従ったものと考えられる。しかし市場は、こんなに急減するとは予想していなかった。このため「日銀は近くETFの買い入れそのものを止めるのでは」といった憶測が広がっている。

「中央銀行は市場と対話することが大事だ」とよく言われる。だが日銀は対話の気配さえみせずに、ETFの購入を激減させた。このため市場に余計な混乱と不安を招いている。日銀は独りよがりで、対話が下手なのか。それともETFの購入に関する政策に計画性がないのか。そのどちらかだろう。

       ≪27日の日経平均 = 上げ+197.87円≫

       ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ


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明暗くっきり : NY株 vs 上海株 
2018-08-29-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 経済動向 + 貿易戦争の影響 = 先週のニューヨーク株式市場は、活況に沸いた。主要銘柄で構成するSP500とハイテク銘柄中心のナスダック指数が、そろって史上最高値を更新。ダウ平均も最高値まであと200ドルの水準にまで上昇した。個別の銘柄でもアップルの時価総額が1兆ドルを超えるなど、明るい話題が次々と飛び出している。この活況はまだまだ続くと、市場の空気は強い。

対照的だったのが、上海株式市場。総合株価指数は先週、2年7か月ぶりの安値にまで落ち込んだ。年初と比べても18%を超える下げとなっている。個別の銘柄をみても、鉄鋼最大手の宝山鋼鉄が2月の高値から20%の値下がり。EV大手の比亜迪は30%の値下がりなど。市場では公的資金で運営される国家隊が出動したとの見方も流れたが、確認はされていない。今後についても、市場の見通しは暗い。

両者の差は、基本的には米中両国の経済動向を反映している。アメリカのGDP成長率は最近4%を超える勢い。一方の中国は、成長率が鈍化の傾向にある。そのうえに重なったのが、米中両国による関税引き上げ競争。ニューヨーク市場でも、中国との関係が深いキャタピラーなどは売り込まれた。中国側では、鉄鋼や電子関連の銘柄が特に大きく値下がりしている。

しかし景気の状態がいいアメリカでは、内需関連株の上昇が中国関連株の下落をはるかに上回った。一方の中国では景気が下降気味で、内需株も伸びない。つまりアメリカは貿易戦争の影を経済全体の明るさで消しているが、中国はそれが出来ない。こうした状況は、少なくとも年内は続きそうだ。トランプ大統領が、ほくそ笑むはずである。

       ≪28日の日経平均 = 上げ +13.83円≫

       ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 


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氷河期に突入した 地方銀行 (上)
2018-08-30-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ ゼロ金利政策が命取り = このところ、地方銀行に関する新聞記事が異常に多くなった。公正取引委員会が、ふくおかFGと十八銀行の経営統合を承認。3月決算では、地銀106行のうち40行が本業で赤字。スルガ銀行が融資の審査資料を改ざん。金融庁が福島銀行に業務改善命令・・・。まだまだあるが悪い話ばかりで、いいニュースはない。

ふくおかFGと十八銀行の経営統合も、このままでは経営が破たんしかねないと、公取委が判断した結果に他ならない。統合したあとの展望も決して明るくはないとみられている。スルガ銀行にしても福島銀行にしても、銀行自体の経営が緩んでいたことは確かだが、その根底に経営環境の悪化があったことも間違いないだろう。

ことし3月期の決算をみると、全106行のうち40行が本業で赤字を記録した。最大の原因は、日銀のゼロ金利政策がもたらした貸出金利の低下である。地銀の平均貸出金利は1%を割り込み、最近では0.5%前後にまで落ち込んでいる。カネ余りで競争が激化したことも、大きく影響した。これでは預金金利がゼロ近くに下がっても、利益は出しにくい。

預金を貸し出しに回して、利ザヤを稼ぐ。この本業で利益を出せなくなった地銀は、有価証券投資に活路を見出そうとした。ところが金利上昇で、アメリカの国債や社債は値下がり。痛手を蒙った地銀も少なくない。もちろん日本の国債も日銀が買い取ってしまい、商売にならない。苦し紛れに融資先を見付ければ、不良債権を抱え込んでしまう危険がある。

                                (続きは明日)

       ≪29日の日経平均 = 上げ +34.75円≫

       ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ


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氷河期に突入した 地方銀行 (下)
2018-08-31-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 地方銀行の数は半減する = 高度成長期には賃金が上がり、預金も増加した。世の中はカネ不足だったから、資金需要も旺盛だった。金融機関が本業で、十分な利益をあげられた時代である。その後の低成長期には金融機関の淘汰が進み、金融機関の数も減った。だが巨大銀行と中小金融機関の間に挟まれた、地方銀行の立ち位置は変わっていない。

経済の低成長に加えて、日本の人口は減少中。当然ながら金融機関同士の競争は、どんどん激しくなった。こうしたなかで地銀の多くは、メガバンクには太刀打ちできない。信用金庫や信用組合は狭い地域にがっちり根付いており、その地盤も食い荒らせない。上を向いても下を向いても、戦線を広げにくい。この宿命が、ゼロ金利によって際立つようになった。

経営不振を打開する1つの手段は、統合・合併である。近隣の銀行同士が合併すれば、競合が回避される。また重複店舗を廃止してコストを下げられる。ここ数年をみても、足利+常陽=めぶきFG、東京都民+八千代+新銀行東京=東京きらぼしFG、肥後+鹿児島=九州FGなど。だが、まだその動きは鈍い。

高度成長期に、全国を基盤とする都市銀行は15行あった。それが現在では、3つのメガバンクに集約されている。しかし当時130を数えた地銀は、いまなお106もある。氷河期に突入し、地銀を巡る統合・合併の流れは加速するだろう。そのなかで最終的にいくつの銀行に集約されるのか。少なくとも半減はするに違いない。

       ≪30日の日経平均 = 上げ +21.28円≫

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 下げ


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