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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
日銀の儲けは 14兆4600億円
2018-12-01-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 国債とETFの買い入れで = 日銀が発表した中間決算によると、9月末時点での国債保有額は462兆1300億円。前年より6.0%増加した。またETF(上場投資信託)の保有額は21兆6500億円で、前年より36.7%増加している。日銀は大規模な金融緩和の一環として、13年から大量の国債とETFを市場から購入。その累積額がこの巨大な数字になった。言い換えると、これだけの現金を放出したことになる。

この金融操作で、日銀はどれだけ儲けたのだろうか。発表によると、9月末時点での時価総額は国債が469兆4000億円。ETFは28兆9000億円だった。購入価格との差、つまり含み益は国債が7兆2600億円、ETFが7兆2000億円。合計14兆4600億円ということになる。特にETFの利益が大きかったのは、この1年間で日経平均株価が約3000円値上がりしたためだ。

日銀は特殊認可法人だから、この儲けを配当や職員の賃上げに使うことはできない。逆に大量購入したことの副作用が、ますます大きくなって行く。すでに国債市場は値動きがほとんどなくなっており、金融機関などは売買しても利益が出なくなってしまった。また株式市場でも、たとえばファーストリテイリングなどは流通する株式が希薄になるといった弊害を生んでいる。

そんな弊害があるにもかかわらず、まだ国債やETFを買い続ける必要があるのかどうか。疑問の声も高まりつつあるのが現状だ。また、いずれにしても日銀は永久に買い続けるわけにはいかないだろう。すると、どこかで購入を止めたり、市場に売り戻すことになる。だが、そのための設計図は全く描くことができない。国債やETFの保有高が増え、儲けが増大する一方で、日銀の苦悩も果てしなく膨張しつつある。

       ≪30日の日経平均 = 上げ +88.46円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】   


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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】
2018-12-02-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第7章 終 局

≪61≫ 世界 = けさのテレビ・ニュースは、中東で起きたテロと報復爆撃の様子を生々しく伝えていた。地球の異常な寒冷化で人類の存続が危ぶまれたとき、世界各国は一致して対応策の構築に努力した。だが脅威が去ると、状況は元へ後戻り。宗教的な色彩の強い地域的な戦争が、しばしば勃発。米中ロの3大強国は残り少なくなった資源の取り合いに狂奔。みな自国第一主義に走って、リーダーの風格を有する国は全く姿を消した。

――ねえ、マーヤ。地球人はほんとに進歩しないね。こんなテレビ画面をみていると、ぼくはダーストン国が羨ましくなるよ。たしかウラノス博士がUFOの秘密を話してくれたとき「地球人はまだ野蛮で、戦争をしている」と言ったね。だからダーストン星にバリアを張って、暗くて冷たい星に見せていると説明してくれたときだ。
マーヤは無言だった。地球人の悪口は言いたくないのだろう。

ぼくに言わせれば、いまの地球は経済の面でも悪い方向に進んでいる。もう何十年も前から、日本を含む先進諸国は景気を維持するために、膨大なおカネを放出し続けている。その結果、株式や商品あるいは為替や仮想通貨などに大量の投機マネーが集中。いわゆるマネー経済が、急速に拡大した。

このマネー経済分野で儲けるのは、ほんの一握りの人たちだ。大多数の国民は汗水流して働いても、なかなか生活がよくならない。このため貧富の差は拡大するばかり。その不満は政治に向けられる。ところが選挙になれば、これら庶民の票がなければ勝てない。そこで政府・与党は、景気対策とか福祉対策でまたカネをばらまく。

すると投機資金がさらに増えて、働かない人たちがまた儲かる。庶民の不満がさらに嵩じると、政治家はポピュリズムに走る。こんな悪循環が止まらなくなっていると思う。

月日の流れは、宇宙船のように速い。気が付いてみると、22世紀も間もなくだ。ぼくが地球を飛び立ってから、もう50年近くも経ってしまった。こんな調子で、200年後の地球はどんな星になっているのか。思わずため息が出る。

そんなぼくの気持ちを察知したマーヤが、上を向いて言った。
「ダーストン国も200年前は、大した技術を持っていませんでした。地球人も頑張るでしょう。きっと、よくなりますよ。私たちも前を向いて、物事を明るく見ましょうよ」

                          (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2018-12-03-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 利いたFRB議長の口先介入 = 株価が急反発した。ダウ平均は先週1253ドルの値上がり。特に28日は600ドル以上も急伸した。パウエルFRB議長が講演会で「金利は中立的な水準をわずかに下回るところまで来ている」と発言したためだ。市場はこれを「金利引き上げの打ち止めは近い」と解釈、買い注文が殺到した。また1日に予定される米中首脳会談に対する期待も、株価を押し上げる一因となっている。

ニューヨーク株価の急上昇につられて、日経平均も先週は705円の値上がり。FRBの金利引き上げが打ち止めになれば、日米の金利差が縮小して円高要因になる。東京市場ではその警戒感も出たが、実際の円相場は逆にやや下落した。また安倍内閣が消費増税対策を次々と打ち出したことも、市場では好材料になった。

ダウ平均は、10月初めから先々週末までに2542ドル下落した。先週の上げで、そのほぼ半分を取り戻している。一方、日経平均は10月から2624円の下落。先週の上げでは、その3分の1も取り戻していない。FRBの金融政策がニューヨークの方に大きく影響するのは確かだが、それにしても東京の反発力は弱い。今週は米中首脳会談で中国に対する追加関税の猶予が決まったから、市場は歓迎して始まるだろう。その上げ幅が、市場の好感度を示すことになる。

今週は3日に、7-9月期の法人企業統計、11月の新車販売。7日に、10月の家計調査、毎月勤労統計、景気動向指数。アメリカでは3日に、11月のISM製造業景況指数と新車販売。5日に、11月のISM非製造業景況指数。6日に、10月の貿易統計。7日に、11月の雇用統計と12月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が8日に、11月の貿易統計。9日に、11月の消費者物価と生産者物価を発表する。

       ≪3日の日経平均は? 予想 = 上げ


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米中首脳会談の 疑問点2つ (上)
2018-12-04-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 中国は対米黒字を縮小できるのか = トランプ大統領と習近平国家主席は1日、ブエノスアイレスで貿易問題について会談。アメリカ政府が来年1月から予定していた中国に対する追加関税の実施を、90日間猶予することで合意した。この間に両国はアメリカの対中赤字を縮小する方策を検討するが、芳しい結果が得られなければ、トランプ大統領は輸入する中国製品2000億ドル分について25%の制裁関税をかける方針だ。

この合意によって、米中貿易戦争は当面の“和平”が成立した。このため各方面からは歓迎の声が聞かれ、株価も上昇した。だが、これで本当に貿易戦争は終結に向かうのだろうか。大きな疑問点が2つある。その1つは、はたして中国の巨額な対米黒字が減るのかという疑問だ。

アメリカ側の統計によると、17年の対中赤字額はモノの貿易だけで3752億ドル(約42兆円)にのぼった。この赤字額は、アメリカの対日赤字額の5倍を上回る。トランプ大統領は、中国に対して「この赤字を半分ぐらいに減らすよう」強く要求しているようだ。ところが今回の首脳会談では、すでに実施済みの制裁・報復関税を撤廃する話は出なかった。

米中両国は現在、たがいに制裁関税と報復関税をかけ合っている。アメリカは中国製品2500億ドル分、中国はアメリカ製品1600億ドル分が対象だ。この中国の規制には鉄鋼や航空機、自動車、LNG(液化天然ガス)、それに大豆や牛肉などの農畜産物が含まれている。トランプ大統領によると、このうち中国は自動車の関税は撤廃するという。だが中国が対米黒字を減らすには輸入の拡大が不可欠。その他の高関税を放置したままで、アメリカ製品の輸入を大幅に増やすことが可能なのだろうか。

                           (続きは明日)

       ≪3日の日経平均 = 上げ +223.70円≫

       ≪4日の日経平均は? 予想 = 上げ


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米中首脳会談の 疑問点2つ (下)
2018-12-05-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ なぜ「中国製造2025」は消えたのか = もう1つの疑問点は、最大の対立点だった「中国製造2025」の問題が姿を消したことである。今後の90日間にわたる米中両国の交渉では①米企業への技術移転の強要②知的財産権の保護③非関税障壁④サイバー攻撃⑤サービス・農業の市場開放――の5項目が議題になると発表された。しかし最大の問題と目されてきた「中国製造2025」は、どこにも見当たらない。

「中国製造2025」というのは、中国政府が15年3月の全国人民代表大会で公表した経済成長の基本計画。半導体やITからロボット、宇宙産業に至るまで10分野の産業を、先端技術で発展させる計画だ。建国100周年の2045年を最終目標とし、その第1段階を2025年までとしている。財政からの補助は、最初の10年間で5兆2000億元(82兆円)を予定した。

この計画は、中国の産業を「先進国に追いつき、追い越す」ための国家計画だと言える。計画が順調に達成されて行くと、その成果は軍事面や宇宙開発の面にも反映されるだろう。したがって、アメリカとしても座視はできない。民間企業に巨額の補助金を出すこの計画はフェアーでないと、前々からいちゃもんを付けていた。

だが習政権としては、絶対に譲れない。共産党が最も重視する政策だし、この問題でアメリカに譲歩すれば弱腰だと叩かれる。また社会主義国家では、国が民間企業にカネを出したり口を出すのは当たり前。資本主義国から文句を言われても、修正するわけにはいかない。しかし最大の対立点であることは事実。この問題を回避して、貿易戦争の終結はありえないのでは。

       ≪4日の日経平均 = 下げ -538.71円≫

       ≪5日の日経平均は? 予想 = 下げ


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FRBは 利上げを止めるのか?
2018-12-06-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 議長発言を巡り憶測しきり = 「現在の金利水準は、景気を刺激も抑制もしない中立的な水準をやや下回っている」ー-パウエルFRB議長のこの発言が、先週の株価を大きく押し上げた。通常ならどうってことのない内容だが、市場は1か月前の同議長の発言をよく覚えていた。それは「金利が中立的な水準に達するのは長い道のりになる」という発言。比べてみれば『金利引き上げの余地は小さくなった』という意味であることが一目瞭然。そこでダウ平均は1日で600ドル以上も急騰した。

だが、この発言はあとから数々の憶測を生んでいる。パウエル議長は同じ講演で「景気や物価の状況は、さらなる利上げが適切であることを示している」とも解説した。この発言から判断すると、12月の利上げはありそうだ。すると、どこで政策金利の引き上げを打ち止めにするのか。今月が最後で、来年の利上げは見送るのか。

FRBは15年末に金融政策を引き締めの方向に転換。これまで8回の利上げを実施、政策金利をゼロから2.25%にまで引き上げてきた。したがって今月9回目の利上げを行えば、金利は2.50%になる。これまでの状況から判断すると、FRBは来年3回、再来年1回の利上げを計画していたようだ。それを来年は利上げなし、あるいは1-2回に減らすのか。市場の見方はさまざまだ。

パウエル議長がなぜ発言を修正したのかについても、いろいろ言われている。前回の発言が株価を急落させたことを反省、市場に借りを返した。トランプ大統領が「問題は中国よりもFRBだ」と非難したことで、姿勢を軟化させた。本当は何も変えておらず、口先だけのサービスに過ぎない・・・。なかにはパウエル議長が「アメリカの景気動向を心配し始めた」という聞き捨てならない見方も出ている。

       ≪5日の日経平均 = 下げ -116.72円≫

       ≪6日の日経平均は? 予想 = 上げ


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大揺れの ヨーロッパ
2018-12-07-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ EUの4大国が火種かかえる = 12月7日、ドイツ――与党であるCDU(キリスト教民主同盟)の党首選挙が行われる。重要な地方選挙で立て続けに大敗したため、メルケル党首が立候補を断念。党内のメルケル派1人と、反メルケル派2人の争いとなった。メルケル派が勝てば政策に大きな変更はないが、国民の政府批判は収まらない。反メルケル派なら、難民政策も変わるだろう。EUの執行部との間に、ミゾを生じる可能性が大きい。

12月8日、フランス――マクロン大統領に反対する大規模デモが、再び予定されている。1日のデモでは4人の死者を出した。もともとは燃料税の引き上げに反対する抗議運動だったが、放火や略奪騒ぎも。それがマクロン退陣を要求する全国的な流れに発展している。政府は増税を20年に延期し、非常事態宣言まで検討しているが、終息までには時間がかかりそう。ドイツに続いて、フランスも“自国ファースト”で手いっぱいだ。

12月10日、イタリア――ヨーロッパ委員会がEUの財務相理事会に、イタリアを財政規律違反で制裁するよう勧告する。イタリアのコンテ内閣が作成した来年度予算案を、EUが承認しなかった。減税などばらまき的な内容を修正して出し直すよう求めたが、イタリア政府はこれを拒否。制裁が実現すると、罰金や補助金が停止される。問題はイタリア国民の多くがコンテ首相の“反抗”を支持していること。下手をすると、EU離脱問題にも発展しかねない。

12月11日、イギリス――議会でEU離脱協定の採決が行われる。メイ首相がEUとの間で取り決めた離脱協定案には、イギリス国内で反対論が強い。激変を緩和するため20年末までを移行期間とし、この間は現状と変わらない状態にする。これでは完全離脱にならないというのが、反対論の根拠だ。議会での採決では、否決の可能性が高い。もし否決されれば、ヨーロッパは大混乱に陥る。

       ≪6日の日経平均 = 下げ -417.71円≫

       ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ≫ 


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役員報酬は 賃金と連動させたら
2018-12-08-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 役員は社員の10倍というように = カルロス・ゴーン前日産会長の逮捕劇では、不透明な役員報酬の算出方法が批判の的になった。そこで金融庁は上場企業に対して、報酬の決め方を開示することを義務づける。金融商品取引法に基づく省令を改正し、来年3月期から適用する方針。なんだか大慌ての泥縄式にも思えるが、方向としては間違っていないだろう。

役員報酬は、基本報酬と業績連動報酬、それにあらかじめ決めた価格で自社の株式を購入できるストックオプションなどで構成される。現行の規定では、役員報酬の総額と1億円以上の報酬を得る役員の名前だけを公表すればよい。今回の改正では、業績連動報酬の総額も開示することが義務付けられる。

だが「報酬の決め方を開示せよ」と言われても、実際にはなかなか難しい。たとえば「前年度より利益が5%増えたから、報酬も5%引き上げた」と公表しても、その金額が適正かどうかは一概に判断できないだろう。金融庁はいったい、なにを根拠に判定するのか。議論が混乱するか、現状と何も変わらない結果に終わる可能性が強い。

役員の平均報酬額を、社員の平均賃金をベースに決めたらどうだろう。平均賃金が年400万円、平均報酬を仮にその10倍と決めれば、報酬総額は4000万円×役員数となって解りやすい。業績が上がって賃上げも進めば、自動的に役員報酬も増える仕組みである。これなら同業他社との比較も簡単に出来るし、社員や世間の理解も受けやすい。

       ≪7日の日経平均 = 上げ +177.06円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】


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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】
2018-12-09-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第7章 終 局

≪62≫ 日本 = 2090年ごろになると、日本経済は完全に再生した。輸出が増加し、国内の消費も順調に伸び続けている。企業の利益は拡大し、株価は上昇した。なによりも街を歩く人が元気を取り戻し、世の中がひところより格段に明るくなっている。

ぼくが地球を飛び出したのは、ちょうど50年前。あのころが、いちばんひどかった。異常な寒冷化が収まったあとも日本は回復が遅く、世界でも二流国に没落してしまう。エネルギー価格の暴騰と人手不足のために、経済が成長力を失ってしまったからだ。

その救世主となったのが、わがダーストニウム発電路床である。この普及で電力自給率は70%を超え、原油の輸入量は5分の1に激減した。電力料金も値下がりしたため企業のコストが大幅に下がり、輸出競争力は急速に回復した。家庭も電力やガス料金が値下がりし、コメやパンなどの主食はタダ同然の価格で入手できるようになった。人々はおカネを他の消費に振り向けられるようになっている。

ガードマン型ロボットと農水産用のロボットを大量生産した結果、その分野での人手がほとんど不要になった。その人たちを建設や介護の仕事に誘導したので、全体としての人手不足はかなり解消した。こうして日本経済は、再び成長力を取り戻した。

日本に対する世界の信頼も、驚くほど向上した。なにしろ“神の粉”を、安価で供給してくれる。中東の産油国でさえも、太陽光発電を基盤として国家の発展計画を作成するようになった。国連の場などでも、日本の発言力は見違えるほど強くなった。

そんな状況を眺めながら、ぼくは山梨の工場敷地内に閉じ籠っている。外へ出て人に会うと、なんだかウソ発見器にかけられているようで苦しくなってしまうからだ。ガードマン型ロボットと番犬に守られて、ここには戦車であろうがドローンであろうが入ってはこられない。

マーヤの方はときどき出かけるが、マスコミに聞かれると「私は専業主婦。主人のやっていることは全く知りません」で切り抜けているらしい。彼女はどこから見ても、おおらかで楽しそうな中年の主婦に見える。

ひまなので、最近は過去の出来事をパソコンに入れ始めた。もちろん公表は出来ないが、こうしておけば200年後の子孫がみて参考になるかもしれないと考えたからである。

                          (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2018-12-10-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 天井を打った世界の株価 = 世界の株価はとうとう天井を打ち、下降局面に突入した。ダウ平均は先週1150ドルの大幅な値下がり。日経平均も672円の下落となった。ヨーロッパやアジアの株価も、一斉に値を下げている。トランプ大統領の「オレは関税マンだ」というツイッターや、中国IT企業ファーウェイ副会長の逮捕も悪材料になったことは確か。だが市場はアメリカの長短金利が逆転しつつある現象に、もっと大きく反応した。

というのも過去の経験からみて、アメリカでは長短金利が逆転すると必ず景気後退が起きているからだ。景気の先行きに対する不安が増大すると、長期金利が低下して短期金利に接近。あるいは短期金利を下回るのが、この現象だ。先週のニューヨーク債券市場では、5年もの国債と2年もの国債の利回りが逆転。10年債と2年債の金利も、逆転寸前にまで差が縮まっている。

ニューヨーク株式の大幅安で、世界の株価も値下がりした。特に東京市場の場合は、アメリカの金利低下で円高が進んだ。ただアメリカの実体経済は、好調な雇用情勢が示すようにまだ堅調を持続している。このため市場には、楽観論も少なくない。今週はそれがどの程度の反発力となって現われるか。ある程度の反発は予想できるとしても、長期的にみれば株価が下降局面入りしたことは認定せざるをえないだろう。

今週は10日に、7-9月期のGDP改定値、11月の景気ウオッチャー調査、10月の国際収支。11日に、10-12月期の法人企業景気予測調査。12日に、11月の企業物価、10月の機械受注と第3次産業活動指数。14日に、12月の日銀短観。アメリカでは11日に、11月の生産者物価。12日に、11月の消費者物価。14日に、11月の小売り売上高と工業生産。また中国が14日に、11月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。なお11日はイギリス議会がEU離脱協定を採決の予定。

       ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ



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現在ヨシ・将来ダメ ⇒ 長短金利の逆転
2018-12-11-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 景気後退の前触れ現象 = アメリカの金利動向に、いま経済関係者の注目が集まっている。注目の焦点は、長期金利が低下して短期金利を下回る現象。長短金利の逆転と呼ばれるこの現象のあとには、景気後退がやってくる確率がきわめて高いからだ。先週のニューヨーク株式市場はこの現象が現われたことを嫌気し、大幅に下げた。つれてヨーロッパやアジアの株価も、一斉に下落している。

ニューヨーク債券市場では先週、10年もの国債の利回りが2.97%まで低下。2年もの国債の利回り2.82%に急接近した。また5年もの国債の利回りは、2年ものの利回りを下回っている。たとえば、この長短金利の逆転現象は89年、00年、06年にも起こったが、アメリカの景気はそのあと不況に陥った。

経済や社会の状況は、遠い将来ほど見極めにくい。したがって、一般に長期金利は短期金利よりも高くなるのが道理である。ところが経済の現状は良好だが将来の見通しが悪化すると、この理屈は通用しなくなってしまう。将来の景気が悪化すれば、金利は下がる。それを見越して長期金利は下がるわけだ。

現在のアメリカ経済をみると、雇用情勢や企業の業績など、まだ好調な局面が続いている。しかし来年以降は、トランプ大減税の効果が薄れる。ねじれ議会になったために、追加の景気刺激策は実現しにくい。さらに米中貿易戦争のマイナス効果が、本格的に表れる。いまの金利動向は、こうしたアメリカ経済を如実に示しているとも言えるわけだ。

       ≪10日の日経平均 = 下げ -459.18円≫

       ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ


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ことしは マイナス成長か?
2018-12-12-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 7-9月期のGDPが予想外の減少 = 内閣府が10日発表した7-9月期のGDP改定値で、実質成長率は年率2.5%の大幅な減少となった。速報値のマイナス1.2%が大きく下方修正されたのは、個人消費や企業の設備投資が予想以上に悪かったため。内閣府は「景気回復の基調に変化はない」と説明しているが、10-12月期の成長率が1.0%を上回らないと、ことしはゼロ成長かマイナス成長になる。

項目別にみると、年率で個人消費は0.8%の減少。設備投資は10.6%の減少だった。いずれも猛暑や地震・台風など自然災害の影響が大きい。これらは一過性の原因であり、内閣府が基調判断を変えなかった理由ともなっている。しかし中国経済の不調や米中貿易戦争の影響を受けたことも確かだろう。

ことしの四半期ごとの成長率は、1-3月期がマイナス1.3%、4-6月期がプラス2.8%だった。そして7-9月期がマイナス2.5%に落ち込んだため、通算では1.0%のマイナス成長になった計算。つまり10-12月期がプラス1.0%で、ほぼゼロ成長。プラス1.0%に達しないと、マイナス成長になってしまう。

中国経済の動向や貿易戦争の推移など、あるいは株価の下落などから判断すると、10-12月期の成長率が1.0%を超えるのはかなり難しそうだ。しかも来年の状況はもっと悪化しそう。政府は景気の下降を阻止しようと、財政支出の増大をいろいろ画策している。だが、それで景気の下降を防げるのかどうか。そんな状況のなかで、安倍首相は消費増税を決断しなければならなくなる。

       ≪11日の日経平均 = 下げ -71.48円≫

       ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ


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再び国民投票か? / イギリス
2018-12-13-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ メイ首相が議会での採決を延期 = イギリスのメイ首相は10日、11日に予定されていた下院でのEU離脱協定案の採決を延期すると発表した。直前の票読みで、承認は困難だと判断したため。延期の期間については触れていない。その結果、イギリスのEU離脱問題は、ますます混迷の度を深めてきた。そうした状況のなかで、再び国民投票を実施する公算が大きくなってきている。

メイ首相は13-14日に開かれるEU首脳会議で、離脱協定案の修正を要求することになりそうだ。しかしEU側がこれに応じる可能性は、ほとんどない。また仮に修正のための協議に応じたとしても、来年3月29日の離脱には間に合いそうにない。その場合は、自動的に“秩序なき離脱”に追い込まれてしまう。

国内では、解散・総選挙に打って出る手もないではない。しかし準備期間が必要だから、EU側が離脱日を延期してくれない限り、これも期日に間に合わない。残るもう1つの手段は、国民投票の再実施。折からヨーロッパ司法裁判所が「イギリスは加盟国の同意なしに、EU離脱を撤回できる」という見解を公表した。

つまり国民投票で「残留」と決まれば、ただちに「離脱」を撤回したことになる。これならEU側も、離脱予定日を延長して見守らざるをえない。メイ首相が選ぶ最後の道は、これしかないだろう。ただ国民投票で残留が決まれば、イギリスの国内は2分される。離脱が決まれば、問題は逆戻りするだけとなる。

      ≪12日の日経平均 = 上げ +454.73円≫

      ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ


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30兆円に達した ETF保有額 : 日銀
2018-12-14-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 買い入れ方にも問題あり = 日銀のETF(上場投資信託)保有残高が、時価総額でついに30兆円を突破した。10月以降の株安で最近は購入額が増えており、ことしの購入累計額は12月11日時点で6兆円を超えている。日銀は年間6兆円の購入を目標としているが、ことしはその目標を上回ることは確実。ETFの購入は10年から始まったが、累計の保有額は10日時点で22兆9000億円に。これを時価総額でみると、30兆円を上回った。

この結果、日銀は多数の上場企業の大株主となっている。配当は受け取るが、株主の権利を行使したことはない。企業にとっては文句を言われず、株式を売られることもない、まことに結構な大株主だ。しかし株式市場での価格形成が、歪められてしまうことは否定できない。このため外国の中央銀行が、市場から株式を買い取る事例は皆無である。

では日銀だけが、株式を買い続けているのはなぜか。株価が下がって景気が悪くなれば、アベノミックスに落第点が付く。来年の消費増税も困難になるかもしれない。それを何としても防ぎたい。日銀の頭のなかには、これしかない。だが、それにしてはETFの買い方が、きわめて下手である。

午前中の株価が値幅で0.3%を超えて下げると、午後に買い出動する。日銀はこんな単純な法則を作って、ETFを買ってきた。だから、ことし1-9月間は大勢として株価は上昇したのに、5兆円近くも買ってしまった。ところが10月以降、株価は下降局面に入る。本来なら9月までは買わないで、10月からどっと買うべきではなかったか。年間で6兆円買えばいいという話ではない。

       ≪13日の日経平均 = 上げ +213.44円≫

       ≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ


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狐と狸の・・・ : 参院議員の歳費削減
2018-12-15-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 公約はまだ果たされていない = 自民・公明両党は「来年の参院選後、参院議員の歳費を削減する」と公約した。ことし春の通常国会では、比例区に特定ワクを設けることを議決。参議院の定数が6議席増えることになった。この定員増で発生する経費の増加分を、議員全員の歳費を削ることで生み出すと約束したわけである。ところが、こんどの臨時国会ではその提案を見送ってしまった。

歳費の削減は、参議院の定員を増加したことに対する国民の批判を和らげるための公約だった。具体的には月額129万4000円の議員歳費を、3年間にわたって月7万7000円ずつ減らすという内容。しかし自民・公明両党は「野党の協力が得られない」という理由で、臨時国会への削減法案提出を見送った。

たしかに立憲民主党は「参院の定数増そのものに反対しているから、歳費の削減にも応じられない」と主張している。また維新の会は、独自に「月26万円の歳費削減」を提案している。自民・公明両党は「来年の通常国会に、削減案を提出する」と言っているが、年が明けても状況に変わりはないだろう。

なぜ自民・公明両党は、得意の強行採決をやらないのだろう。野党もなぜ反対し続けるのだろう。ヒガ目かもしれないが、どうも与野党ともに熱心ではないように感じられる。狐と狸の化かし合いみたいな芝居を演じて、国民の目をごまかそうとしているのではないか。でも騙されないぞ。とにかく公約はまだ果たされていないのだから。

       ≪14日の日経平均 = 下げ -441.36円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】   


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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】
2018-12-16-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第7章 終 局

≪63≫ 記録 = 近ごろは朝のうち、パソコンの前に座っていることが多くなった。ダーストン国では数多くの人に会い、いろいろな施設を見学した。その都度メモをしたが、そのノートは帰りの宇宙船に持ち込ませてくれなかった。地球人にダーストン星のことを知られたくなかったからだろう。

だが、あの5年間の経験は強烈だっただけに、ぼくはメモがなくても全部覚えている。ただ歳をとれば、記憶が薄れるかもしれない。そこでパソコンに記録しておこうと思い立った次第。もちろんウラノス博士との約束があるから、いまは公開できない。200年後の子孫が読んで参考にしてくれたらいいと考えてのことだ。

200年後の地球人が、ダーストン並みの医療技術を手に入れているかどうか。ぼくの最大の関心事は、この一点にある。ぼくはやや懐疑的だが、マーヤはとても楽観的だ。

「ダーストン人だって、200年前には完璧な技術を持っていませんでした。逆にいまから200年前の地球は、どうでしたか。200年という歳月は、世の中を想像できないほど変えるに違いありません」

いまは2094年だから、200年前は1894年。日本は明治27年、日清戦争が勃発した年だ。すでに鉄道や自動車は実用化されていたが、その当時の人で現在の宇宙船やリニア・モーターカー、それにロボットやiPSによる難病の治療、インターネット空間などを想像した人は、誰もいなかったに相違ない。

こう考えてくると、マーヤの言い分が当たっているような気もする。しかし真実は200年後の子孫にしか判らない。このパソコンを開いた子孫たちがどう感じるのか。

仮に200年後の地球人がダーストン級の医療技術を手に入れているとすれば、人間並みの能力を持ったロボットが人間の代わりに働いているだろう。その結果、地球からもおカネが姿を消し、経済のない世界が実現する可能性は大きい。

だが、ぼくが見てきた経済のないダーストン国は、なんとも活気のない世界だった。たしかに貧富の差はないし、働きたくない人は働かずに済む。犯罪もなく、病気の心配もない。しかし競争も刺激もない社会だ。うっかりしていると足を掬われる、金儲けにうつつを抜かす、事故や病気をいつも心配している。この現実社会とあのユートピアと、どちらが優れているのだろう。これも200年後の人類に、聞いてみたい点である。

                              (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2018-12-17-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ ショック性ではない株価の下げ = ダウ平均は先週288ドルの値下がり。12月に入ってからは2週連続の下げとなり、この間の下落幅は1438ドルに達した。日経平均も先週は304円の値下がり。こちらも2週連続の下げで、下落幅は976円となっている。株価が大局的にみて下降局面に入ったことは明らかで、市場の内部でも先行きに慎重な見方が広がっている。

ただ株価の下げは一方的ではなく、大きく反発する場面もあった。これは実体経済の将来に不透明感が出ているものの、景気が底割れするような心配はないからだろう。したがって、リーマン・ショック時のように“売りが売りを呼ぶ”といった光景は見られない。上下動を繰り返しながら長期的には下がる、というのが今回の特徴だ。

日経平均の場合は、円安状態の持続、株価の割安感、それに消費増税対策としての財政支出という環境が加わる。これらの要因は、すべて株価の下落を緩やかにする効力を持っている。だとすると、次のテーマは「株安はいつまで続くか。底入れはいつごろか」ということになる。年末年始には、そうした議論が展開されることになりそうだ。

今週は19日に、11月の貿易統計、訪日外国人客数。20日に、10月の全産業活動指数。21日に、11月の消費者物価。アメリカでは17日に、12月のNAHB住宅市場指数。18日に、11月の住宅着工戸数。19日に、11月の中古住宅販売。20日に、11月のカンファレンス・ボード景気先行指数。21日に、7-9月期のGDP確定値。また19日にはFRBが経済見通しを発表する。

       ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ


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あとが怖い 消費増税対策 (上)
2018-12-18-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 税収増を上回る財政支出? = 来年10月、消費税が10%に引き上げられる。前回の引き上げ時には個人消費が減退し、長らく景気を低迷させた。安倍内閣はこれに懲りて今回は政策を総動員し、増税前後の消費を平準化するための対策を練り上げた。その内容は多岐にわたり、多額の財政支出を伴っている。計算方法にもよるが、必要な財政支出は消費増税による税収増加分5兆6000億円を上回るという試算もあるほどだ。

消費増税でいちばん影響を受けるのは、やはり金額が高い住宅と自動車の購入。そこで住宅については、ローン減税の適用期間を現行の10年から13年に延長した。また自動車については、保有にかかわる自動車税を恒久的に減税する。特に小型車ほど減税の恩恵が大きくなるよう設計した。この住宅と自動車で、年1670億円の減税となる見込み。

次は消費増税そのものの負担を軽減する措置。飲食料品に軽減税率を適用して、税率を8%のまま据え置く。またプレミアム付きの商品券やキャッシュレス決済時のポイント還元など。財政負担は軽減税率だけで1兆円。その他の施策を含めると、およそ2兆円になると計測されている。

さらに政府は、18年度の第2次補正予算を編成することになった。防災や減災に向けた国土強靭化と、TPP(環太平洋経済連携協定)を睨んだ中小企業対策が中核。しかし景気対策にもなり、消費増税による経済の落ち込み防止も狙ったことは明らかだ。予算規模は3兆円に達するとみられている。

                           (続きは明日)

       ≪17日の日経平均 = 上げ +132.05円≫

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ


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あとが怖い 消費増税対策 (下)
2018-12-19-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ オリンピックでダブル・ショック = 消費増税による税収増加は5兆6000億円。政府が総額5兆円前後の対策を講じれば、増税の景気押し下げ効果はほぼ解消されるだろう。このため来年も景気の拡大は続き、株価も上昇するという楽観論が聞こえてくる。しかしアメリカや中国の経済は下降気味。増税対策だけで日本経済は安泰、というわけにはいかないだろう。

もっと大きな問題は、消費税対策のほとんどが時限立法であること。軽減税率の1兆円と自動車税の530億円は恒久的な減税となったが、そのほかは1年程度で効力を失う。ちょうどオリンピックが閉幕したころ、増税対策も終了することになる。その2つの反動が重なり合って、経済はダブル・パンチを食らうことになってしまう。

そのときには、10兆円単位の大掛かりな景気対策が必要になるだろう。日銀はまだ超緩和政策から抜け出せず、対策は財政に頼らざるをえない。今回の増税対策で、財政事情はまた悪化する。そのうえに重なる財政支出に、日本経済は耐えられるのかどうか。大量の国債を日銀に買わせる手法が、いぜんとして通用するのだろうか。

消費増税は、なんとしても実現したい。それによる景気の下降は防ぎたい。その心情は判らないでもないが、「あとのことは知ったことではない」の姿勢では困る。そう考えると、今回の増税対策はやりすぎではないかという気がする。増税によるある程度の景気下降は甘受する方が、長期的にみれば正しかったのではないか。

       ≪18日の日経平均 = 下げ -391.43円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ


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出国税の使途は 誰が決める?
2018-12-20-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 外国人客は3000万人を突破 = 政府は18日「ことし日本を訪れた外国人観光客が3000万人に達した」と発表した。外国人客が1000万人を超えたのは13年だったから、5年間で3倍に増えたことになる。それでも年間の客数が8000万人台のフランスやスペインに比べると、まだまだ少ない。政府は20年に4000万人、30年に6000万人誘致の目標を掲げている。

訪日客を地域別にみると、やはり近隣諸国からの観光が多い。たとえば中国、韓国、台湾、香港だけで、全体の7割を占めた。ただ1人当たりの消費額は15-16万円で、この数年はほとんど増えていない。これは中国人による“爆買い”が姿を消したこと、全体としてモノの消費よりコトの消費に関心が移ったためとみられている。

観光客をさらに増やすためには、何が必要なのか。空港の発着陸能力や宿泊施設が足りない。ガイドや表示板などが不十分。イベントの量と質。さらには外国人向けの医療や地震対策などなど。その充実には、大きなカネがかかる。この点で強力な助っ人になるのが、来年1月7日から実施される出国税だ。

航空機や船で日本を出国する人から、1人当たり1000円の税金を徴収する。19年度だけで、その税収総額は500億円になると推計されている。使途は環境整備、体験型観光の充実、情報発信の強化に限られた目的税だ。国土交通省や環境庁が管理するが、有効に使われるかどうかが心配だ。外郭団体などの設立などに使われないか。早くも懸念する声が上がっている。

       ≪19日の日経平均 = 下げ -127.53円≫

       ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 


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形勢逆転した イタリア vs. EU
2018-12-21-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 国民投票までちらつかす = つい1か月前までは、出来の悪い生徒とその生徒を叱咤する厳格な教師の関係だった。イタリアのコンテ首相はEUに提出した19年予算案を差し戻され、さらに修正した予算案も認可されず。EU側はイタリアの財政赤字がGDPの130%に膨らんでいる点を指摘、もっと予算規模を縮小しないと制裁を科すると脅していた。

その関係が一気に逆転した。原因は、フランスで起きたマクロン反対のデモ騒ぎである。燃料税引き上げに反対するデモは、マクロン大統領の辞任を求める全国運動に拡大。政府はこれを鎮めるために、燃料税引き上げは事実上の停止。さらに最低賃金の月額100ユーロ(約1万2800円)引き上げや、残業収入の無税化などの施策を打ち出す羽目に陥った。

この結果、フランスの19年予算はGDP比で3.2%の赤字に。EUが決めた3%以内の原則を超えてしまった。なにしろフランスは、ドイツとともにEUを支える大黒柱。EUとしては、そのフランスに制裁を科すわけにはいかない。するとフランスには目をつぶって、イタリアだけを怒るのもどうか。やむなくイタリアの予算案を承認することになった。

これでイタリアは、政府も国民も元気を取り戻した。閣僚のなかには「フランスと同等に扱え」と公言するものも出る始末。国民の間では「EUと戦うコンテ内閣」を支持する空気が強まった。マスコミのなかには「いま国民投票を実施すれば、EU離脱派が確実に勝つ」という論評まで現われた。いま下を向いているのは、厳しかった教師の方である。

       ≪20日の日経平均 = 下げ -595.34円≫

       ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ


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政府経済見通しを 採点する
2018-12-22-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 来年度は1.3%成長を見込む = 政府は18日の閣議で、19年度の経済見通しを了承した。それによると、実質GDP成長率は1.3%。名目GDPは566兆1000億円に達し、成長率は2.4%と予想している。また消費者物価は1.1%上昇すると想定した。個別の項目では個人消費が1.2%の増加、住宅投資は1.3%増加などとなっている。消費増税対策や防災のためのインフラ投資などが、景気を下支えすると判断した。

政府の経済見通しは、往々にして大きめに出がちだといわれる。というのも税収は名目成長率に比例するから、予算を組みやすくするため成長率を大きめに設定する傾向が強い。じっさい民間の調査機関は、来年の実質成長率を1%未満と予測しているところが多い。たとえば一例として、ちょうど1年前に政府が設定した18年度の経済見通しを採点してみよう。

18年度の実質成長率は1.8%、名目成長率は2.5%。物価は1.4%上昇というのが、政府の見通しだった。ところが現時点で政府が見込んでいる数値は、成長率が実質も名目も0.9%に過ぎない。物価も1.0%の上昇にとどまると推定されている。もちろん米中貿易戦争など不測の事態が発生したから仕方がないが、数値だけからみれば合格点は付けにくい。

政府が自ら作成した経済見通しの実現に失敗したことは、政府・与党の“失点”だとも言えないことはない。にもかかわらず、最近の政府は「なぜ失敗したか」の検証もしていない。もし「あまりにも激動する世界情勢のなかで、正確な見通しを立てることは困難だ」と言うのなら、そもそも経済見通しなど作る意味がない。

       ≪21日の日経平均 = 下げ -226.39円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】   


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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】
2018-12-23-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第7章 終 局

≪64≫ 2100年 = 地球は22世紀を迎えた。早いもので、ぼくが地球に帰還してから、もう39年の歳月が流れたことになる。マーヤのおかげもあって元気に暮らしているが、御年なんと80歳だ。それに気になることがある。

それは左胸のプレート。地球では着衣に隠れて見えないようになったが、裸になれば緑色の≪14≫という数字がくっきり。マーヤの黄色の数字は≪19≫だ。どうやらダーストン国の滞在期間と帰りの宇宙船に乗っていた年月が、ダーストン星の時間で計測されたらしい。ダーストンの1年は168日だから、通算すると6年ほど長くなってしまうわけだ。

このプレートの意味するところが地球上でも効力を発揮するとすれば、ぼくの寿命はあと14年ということになる。ダーストン星を訪れ、ロボットを妻に迎えるという数奇な運命を味わってきただけに、もう思い残すことはほとんどない。しかし“終活”については、そろそろ考えておかねばなるまい。

日本経済は見事に立ち直ったが、政治の世界は相変わらずドロドロしたままだ。カネ余りの恩恵を受けて一握りの大金持ちが誕生する一方で、大多数の国民は苦しい生活を強いられている。この貧富の差が、政治への不満となって現われる傾向は世界共通。だから誰が政権の座についても、長持ちはしない。

そんなとき、肝を冷やす事件が起こった。女性だけで結成した「女の党」が野党第1党に躍り出ると、余勢を駆って政権を獲るため新しい党首を探している。その有力候補に、なんと『二階堂摩耶』の名が挙がっていると、週刊誌が大々的に報じたのだ。

続いて「神の粉を発明して、日本経済を立て直した救世主」とか「摩耶さんが出馬すれば、衆院の過半数は間違いない」とか。さらには「次は摩耶総理。男性の期待も大きい」などという記事も飛び出した。

これは困ったことになった。そんなことになれば、マーヤの生い立ちや学歴、家族関係などが徹底的に洗われるだろう。いったい、どう対処したらいいんだろう。さすがのマーヤも、最近は外出を控えるようになってしまった。

2人で考えあぐねていたとき、ぼくの心のなかには別の心配事が芽生えてきた。ぼくがあと14年後に死んだら、マーヤはひとりで生きて行かねばならない。この地球で、彼女はロボットであることをひた隠しに隠して生きて行かねばならないのだ。そのことも考えてやらねば、ぼくは安心して死ねない。

そして突然のひらめき。決断したら、早く実行しなければならない。

                          (続きは来週日曜日)
            

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今週のポイント
2018-12-25-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 本降りになった株式市場 = 株価の下降局面入りが鮮明になった。ダウ平均は先週1655ドルの値下がり。日経平均も1209円の下落だった。日米ともに、12月は3週連続の下げである。年初と比較してみると、ダウ平均は2274ドル、日経平均は2599円の値下がり。日経平均は過去6年にわたって上昇してきたが、どうやらことしはその記録が途切れそうだ。

FRBは先週19日、予定通り政策金利を引き上げた。ニューヨーク市場では、この利上げが株安のきっかけになったと報じられている。だが12月の利上げは、広く市場に浸透していた。それよりも市場は、FRBが来年から引き締めのテンポを落とすことに強く反応したのではないか。つまり景気の先行きに対する警戒感を深めたために、株を売ったのだろう。

東京市場でも、海外投資家の売りが激しくなってきている。しかも、ここへきて円相場が上昇に動き始めた。市場では、円の動向にきわめて神経質になっている。同時に下値の抵抗線を探る動きが活発に。だが初めに出た「2万1000円」はすぐに吹っ飛び、いまは「1万9000円」という声さえ聞かれるようになっている。

今週は25日に、11月の企業向けサービス価格。27日に、11月の住宅着工戸数。28日に、11月の労働力調査、鉱工業生産、商業動態統計。アメリカでは27日に、10月のFHFA住宅価格、11月の新築住宅販売、12月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。28日に、11月の中古住宅販売が発表される。なお30日に、アメリカを除く11か国のTPP(環太平洋経済連携協定)が発効する。

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ


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世界同時株安の イミ
2018-12-26-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 過去の経験則が通用しない不安 = 世界中の株価が急落している。日経平均は先週1200円を超す大幅な下げ。連休明けの25日も下げ止まらず、ついに2万円の大台を割り込んでしまった。ダウ平均も先週は1600ドルを超す大幅な下げ。12月に入ってからの下げ幅は3000ドルを超えた。どこで下げ止まるかの予想も、まだバラバラの状態。説得力のある見通しは聞こえてこない。

株安は世界に広がっている。ドイツのDAX指数は、1月につけた高値から22%の下落。イタリアのFTSEは5月の高値から24%の値下がり。中国や韓国の株価も年初来の下げ幅は2割を超えた。一般に「株価が2割を超えて下落すると、弱気相場が定着」といわれるが、今回は世界中の主な市場で株価の下落が2割を超えた。

米中貿易戦争、FRBの政策金利引き上げ、イギリスのEU離脱問題・・・。株安の原因は、いくつも挙げられている。もちろん、これらの事件が投資家の不安心理を呼び起こし、株式市場から資金を引き揚げさせたことは確かだ。しかし、よく考えてみると、これらの事件はいずれも世界経済に冷水を浴びせる可能性が高い。つまり投資家は理由がなんであれ、結局は景気の先行きを心配していることになる。

ところが、こうした事件はどれをとっても将来予測が全く困難だ。リーマン破綻時のようなショック性は乏しいが、逆に世界経済が被る損害を推計することができない。過去に経験したことがないから、類推が成り立たないわけだ。この漠然とした不気味さが、投資家を必要以上にリスクから遠ざけている。この金縛り、緩むまでには意外に時間がかかるかもしれない。

       ≪25日の日経平均 = 下げ -1010.45円≫

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ


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101兆円予算の とらえ方
2018-12-27-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 補正を含めて比べてみると = 来年度予算案が出来上がった。一般会計の総額は101兆4564億円で、前年度比3.8%の増加となっている。当初予算としては初めて100兆円を超えたために、新聞紙面では「100兆円超」という見出しが大きく踊った。だが庶民にとっては、どうもピンとこない金額である。ちなみに国民1人当たりにしたら100万円弱。そう考えると、とんでもなく膨大なおカネであることが判るだろう。

最も大きな歳出項目は、やはり社会福祉関連で34兆1000億円。次いで国債費が23兆5000億円。この2項目だけで、予算の半分以上を占めている。また公共事業費は6兆9000億円、防衛費は5兆2000億円など。それに消費増税による景気の落ち込みを防ぐ対策として、約2兆円がこの予算案に組み込まれた。

当初予算が100兆円を超えたのは初めてだが、実は補正予算を含めると18年度も予算総額は100兆円を超えている。18年度の当初予算は97兆7000億円だった。ところが年度中に2度の補正予算を編成。1次補正は9300億円、2次補正は2兆7000億円だったので、これらを合計すると18年度の予算総額は101兆円を超えている。だから来年度の予算規模が100兆円を超えたことに、あまり大きな意味はない。

一般に前年度に比べた予算規模の増加率が大きければ大きいほど、景気の浮揚効果は増大する。その観点からみると、来年度予算が101兆円になっても、前年度と規模は同じだから景気浮揚効果はほとんどない。政府が「消費増税対策に万全を期している」と強調しても、過大な期待は禁物だろう。19年度も補正予算が組まれる公算は大きい。
 
       ≪26日の日経平均 = 上げ +171.32円≫

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ


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ガソリンが安い お正月
2018-12-28-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 原油の国際価格が急落して = お正月を前に、ガソリンの小売価格が急降下している。資源エネルギー庁の調査によると、12月25日時点のレギュラー・ガソリンの全国平均価格は1リットル=146円60銭。9週連続で下落しており、160円の高値をつけた10月下旬に比べると8%ほど安くなった。これから年末年始の需要期に入るが、価格はまだ下がる見込み。長距離を運転する人たちにとっては朗報だ。

日本国内のガソリン店頭価格は、原油の国際価格とほぼ比例する。その国際価格をニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物価格でみると、最近は1バレル=42ドル台にまで低落した。10月の高値76ドルから急落している。これが日本の輸入価格、さらには精製後のガソリン価格に反映されるまでには1か月近くかかる。したがってガソリンの小売価格は、まだ下がる途中だと考えられるわけだ。

いま原油の国際市場では、価格の上げ要因と下げ要因がぶつかり合っている。上げ要因はOPEC(石油輸出国機構)やロシアなどが、来年からの減産を決めたこと。下げ要因はアメリカのシェール生産量が、過去最大の水準に達したこと。この両者はほぼ釣り合っていたが、10月以降は世界経済の減速で原油の需要が伸び悩むという見方が急速に広まった。

言うまでもなく、ガソリンの店頭価格は地域によって異なる。今回の調査で最も高かったのは、長崎県の160円50銭。安かったのは、石川県の140円80銭だった。また人々は安い店を探して給油するから、店頭価格と実際に購入した価格とは違ってくる。民間団体の調査によると、17日時点の平均購入額は135円40銭だった。念のため。

       ≪27日の日経平均 = 上げ +750.56円≫

       ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ


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大発見 !? 水曜日には 株が下がる
2018-12-29-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 不思議な現象を発見 = 大納会も終わったのでことしの株価を検証していたところ、まことに不思議な現象を発見した。ことし1年間の営業日は、ぜんぶで247日。そのうち日経平均が上昇した日を勝ち、下落した日を負けとすると、通算成績は129勝118敗だった。日経平均は年間で下げたが、上昇した日数は下落した日数をわずかに上回ったことになる。

この勝ち負けを、曜日別に並べてみたら驚いた。月火木金の4曜日は、いずれも勝ちの日が負けの日を上回っている。ところが水曜日だけは、負けが勝ちを超えている。その成績は22勝30敗。水曜日だけが突出して、負けているのだ。これは一大発見と言ってもいいのではないか。証券会社も気づいていないだろう。

どうしてだろう。決して偶然とは思えない。毎週月曜日は、ニューヨークの市況なしに売買が始まる。だから様子をみながら、慎重な商いとなることが多い。火曜日にはニューヨークの市況が参考になるが、ことしは上げることが多かった。だから引きずられて、東京も上げることが多い。そして水曜日は、その反動で下がりやすいのでは。

しかし本当のところは判らない。また来年も「水曜日は下げ」なのかどうか判らない。ニューヨークの株価が上昇基調をたどれば、この発見が有効なのかもしれない。えっ、もちろん勝ちが多かった曜日も判っていますよ。それは追い追いとこのブログで明らかにして行きますが、いまはヒミツ。

       ≪28日の日経平均 = 下げ -62.85円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝1敗】   


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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】
2018-12-30-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第7章 終 局

≪65≫ かぐや姫 = その年の秋。夜半の満月を見上げた人は、びっくり仰天した。明るい月面から地上に一条の光が射し込み、その光に沿って和服姿の女性がゆっくりと登って行く。奇妙なことに女性は大きな黒い荷物を両手で抱えており、3-4分もすると見えなくなってしまった。

この天体ショーはSNSですぐに拡散。あくる日の新聞、テレビでも大きく報道された。見出しは「天に昇る美女」「かぐや姫の現代版」・・・。だが少なからぬ人がカメラやスマホで写真を撮ったのに、再生してみると女性の姿は消えて一条の光だけが映っていた。

ぼくが死んだあと、マーヤを地球で暮らさせるわけにはいかない。だから2人でダーストン国へ戻ることを、すぐに決断した。こうして、ぼくたちはいま、UFOのなかで宇宙船の出発準備をしている。

――マーヤ、ぼくはまた宇宙船のなかで4年以上も眠らなければならない。起きたとき、ダーストン国はどんなになっているのだろうか。
「私は起きていますから、安心して眠ってください。ダーストン国は何も変わっていないと思いますよ。でもブルトン院長もメンデール教授もショッピー館長も、知っている人たちは、もうみんな亡くなってしまいました」

――そう、ぼくたちは地球に40年もいたんだ。ダーストン星の時間で言えば80年になるはずだ。あの当時20歳以上の人は、もういない。でも彼らは100歳の命を全うしたと考えて、満足して死んだに違いない。寿命なんて、その人の考え方しだいで長くも短くもなるんだね。

宇宙船が発進し、ぼくが眠りについたころ、地上ではJRリニアの関係者と警察が、山梨県のロボット生産工場を捜索しようとしていた。近所の住民から「工場は操業を止め、誰もいなくなったようだ」という通報があったためである。

警察官らが工場に入ってみると、機械などは跡形もなくなり、広い床の真ん中に小さな机がポツンと置かれていた。机の上には緑色と黄色のパソコンが2台。

まず黄色いパソコンの蓋を開けると、画面にメッセージが。
ダーストニウムの製造方法が詳しく書いてあります。海底から原料を取り出すまで5年はかかるでしょう。でも、その後は“神の粉”を自給できるようになるでしょう。頑張ってください。二階堂摩耶≫

次に緑色のパソコンを開けると。
≪ぼくの“私の履歴書”です。ただし2300年1月1日までは絶対に開けません。開いたときに「経済のない世界」が実現しているか、興味津々です。二階堂純一≫   

                                    = 完 =


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