海外に出たこともない私が、こうした記事を書くのはどうかという思いもあるのだが、せっかく調べた情報を取りまとめておかないと、何より私が忘れてしまうのである。そんなわけで病気に関する情報について。


 海外旅行を行うと、最も多く報告される体調の変化が「下痢になった」ということである。自転車旅行者においても同様の事案が多数あるように、異なる土地で走り、食べ、生活することで罹患しやすくなる病気はある。まぁそれは仕方ない。

 ただ勘違いしてほしくないのは、病気の巣窟へと突入するということでは、断じてないということだ。現地の人達が生活している環境の中を走行する旅なのであり、そんな無茶苦茶に怯える必要はない。大抵の恐怖は無知から来るということを私は大いに理解しており、もう何も怖くない。・・・・なんてことはないけども。

 そもそも病気ってのは普通に生活していても掛かってしまう物なのだ。体の弱い私のようなタイプならば、なおのこと。

 病気にならないように努力も対策もするが、罹患した時に正しい対処をすることが重要なのである。そんなワケで、旅行者が掛かりやすい病気についてのまとめである。


◎マラリア

 アフリカという地域が「恐ろしい」と思わせる原因の一翼を担っているであろうマラリア。主にハマダラ属の蚊によって媒介されるマラリア原虫が原因で発症する。

 マラリアにも3日熱・4日熱・卵形・熱帯性といった種類があるのだが、症状的には「熱が出る」のであり、熱帯性マラリアはマジヤバ・・・・くらいに思っておけば良い。

 蚊に刺されることで発症する病気なので、最も基本的な対策は蚊に刺されないように、防虫スプレーや蚊取り線香で蚊を追い払うことである。装備品はキンチョールで!

 まぁそうした予防策が現実的でないため、もっともポピュラーな対抗策が「抗マラリア剤」と呼ばれる予防薬を服用することである。

主に 1、クロロキン
   2、プログアニール
   3、メフロキン
   4、ドキシサイクリン

 といった種類の薬が使用されているのだが、いずれも胃腸や肝臓に副作用が発生するうえ、この手の薬に耐性のあるマラリアがあるために、服用していれば大丈夫!・・・ということではない。

 とりあえずマラリアになってしまった場合は、病院で処方された薬を飲んで、おとなしく寝ることになり、風邪の時と対応自体はかわんねーですの。


◎肝炎

 A型・B型・C型肝炎の他にも幾つもの種類がある肝炎だが、公衆衛生の整っていない国で罹患した場合は、9割方A型肝炎であるとみて良い。分かりやすくいえば、汚い環境での肝炎はだいたいA型!

 ウイルス等の原因で肝臓に炎症が起こり、肝臓が本来の働きをしなくなる症状が肝炎であり、ウイルスがどのような経路で肝臓に辿り着くかでその種類が決まる。

 そんな中でA型肝炎のパターンとは、糞便等から介したウイルスが経口感染することを示す。その原因のほとんどは水である。

 要するに、へっぽこ途上国の生水を飲むのは危険だよ。ということであり、ミネラルウォーターを飲むか水を煮沸させればまず問題ない。

 でもさー、炎天下の中を走り続けてカラカラに乾いた状態で、わざわざ水を煮沸させるとは思えん。それってお湯だし。

 仮に罹患してしまった場合、肝臓がダメージを受けている関係で、安静にすることと肝臓に負担をかけないことが推奨されるため、禁酒を余儀なくされる

つまり絶対に肝炎になるわけにはいかないのだ。

 しかし肝炎には予防接種がある。事前に複数回の予防接種をすることで、数年間に渡ってその効果が持続するとされている。接種の際に先生に確認してみたところ、「予防接種をしっかりと実施していけば、A型肝炎に関しては99%罹患することはない」という話であった。



◎赤痢

 日本国内で赤痢になると、「三類感染症」に分類されてしまい仰々しい待遇を受けることになる。しかし、海外ではこれまたポピュラーな病気の1つだともいえる。

 原因に関しては肝炎と同じように、赤痢に感染した人の便中にいる赤痢アメーバによって汚染された水や生野菜、果物を食べることで感染する。加熱処理することで回避できる点も同じ。

 A群赤痢菌の場合は40℃近い高熱に加え、血便が出る等、重い症状となるため甘く見てはいけない病気。とはいえそれ以外の種類の場合は、症状も軽く、薬局で薬を貰って解決することも多い。基本的に下痢の症状が強いため、点滴の効果が抜群なのだそうだ。


◎狂犬病

 発症した場合の死亡率がほぼ100%という恐怖の病気、狂犬病。日本国内では1970年以降の発症例がないため、忘れられた存在になっているが、世界的には年間で5万人もの命を奪っている現役バリバリの病気である。

 発症したら死亡確実なため、その症状については置いといて、狂犬病ウイルスが感染して発症する病気であるため、ほ乳類全てが感染する病気でもある。実際、少数だが犬以外からの感染報告もある。

 対処法としては、もうとにかく犬に噛まれないこと。この1点に尽きる。・・・・でも小型犬とかならまだしも、シェパードみたいな大型犬が追いかけてきたら、武器があっても対処しきれる自信ないんだけど。

 救いなのは、病気の潜伏期間が長い(1〜3ケ月が平均)ため、噛まれた場合はすぐに傷口を洗浄して、医療機関でワクチン接種を実施することで対処できる。これは予防接種をしていても同様の対応をする方がいいらしい。


◎デング熱

 アフリカで蚊から罹患するマラリアに対して、アジア地域で蚊から罹患するのがデング熱。こちらは主にネッタイシマカからデングウイルスが媒介して、潜伏期間4〜7日後に38〜40℃の急激な発熱が続く。

 何が恐ろしいって、マラリアと違って有効な予防薬が存在しないために、対処方法が「蚊に刺されないよう頑張る」ことしかない点にある。

 今年、都内でデング熱が発症したことで大騒ぎとなったのは記憶に新しいが、アジアの熱帯地域には冬が存在しないため、蚊が年中活動し続けるのであり、終息宣言も何もあったもんじゃない。

 場合によっては死亡する可能性もあるほど重症になる人だっているのであり、ああ恐ろしい恐ろしい。


◎日本脳炎

 世界で最も人類を殺している生物こと蚊。その蚊が媒介する病気3部作の最終章を飾るのが日本脳炎である。

 これは主にコガタアカエイカによって日本脳炎ウイルスが媒介されて、潜伏期間6〜16日後に発症し発熱、痙攣、意識障害等が起こる。

 発症した場合の死亡率は、何と脅威の20%となっており無茶苦茶ヤバい病気だったりする。もちろん有効な抗生物質は存在しないらしい。

 じゃあ何でもっと世界中で騒がれていないのか?といえば、そのほとんどが不顕性感染のため、感染者においても発症するのは0.1〜1%程度だからである。とはいえ年間で万単位の死亡者数が報告されている恐ろしい病気であることに変わりはない。

 名前とは裏腹に、日本では過去にワクチン接種を行った結果、国内での発症例はほとんど見られなくなっている。なお、現在ではワクチン接種は行われていないため、私は自費で予防接種を受けたりしている。くそぅ


<以下、症状の軽い病気について>

◎下痢・腹痛

 海外旅行の定番である下痢。実は劣悪なトイレ環境から便秘になるパターンも多く、下痢止めとは別に整腸剤も重要であったりする。

 多くの原因が、その土地の水が合わずに下痢となるパターン。ただし、非細菌性の腹痛の場合、ほとんどの場合は数日で体調が改善する。

 基本的には安静にして水分と栄養を取ることが重要なのだが、胃潰瘍や盲腸、膀胱炎といった病気の初期症状として腹痛が起こる可能性もあるため、長期間に渡って症状が改善しない場合にあっては、検査をする方が精神衛上よろしいかと。

 ちなみにワイルドな自転車乗りに「1回その土地で腹壊せば、胃袋がコンバートされて平気になる」という気合いの入った意見もあった。


◎嘔吐

 もはや病気というジャンルで良いのか疑問だが、不衛生な物を食べただとか、極度の疲労で体が消化能力を失っている場合に嘔気を覚えることは多い。

 自転車旅という性質上、体力勝負である一面があることは否定できないのであり、胃腸が弱った=燃料を入れることができない状態で走り続けることは難しい。

 別の言い方をすると、体力がない状態でも如何にして栄養を補給するかという問題でもあり、長距離自転車レースの世界などでは、こうして負荷をかけた胃腸で如何にして栄養補給をするべきかという議論は盛んに行われている。

 とりあえず胃腸に負荷をかけないゼリータイプの補給食は基本。


◎日焼け

 一部の地域では余りにも直射日光が強すぎて、皮膚に水ぶくれができたり火傷をしてしまうといったことがある。それでも無視した挙げ句に肌がケロイド状になってしまったという話もあったりしていて、侮れない日差しの強さといえよう。

 とにかくUVカット性能の高い日焼け止めと、直接地肌で日差しを受け止めないための服装をすることが重要となってくる。日本1周の際には使わなかった、アーム&レッグカバーが大活躍してくれることを望んでいるのだが、果たして。

 とりあえず現地人の服装を真似るというのは、そもそもの肌の強さが違うことから大失敗することも多いらしいので、十分な注意を要する。


◎熱射病・日射病

 暑い地域であればあるほど、現地の人の服装はラフになるかと思いきや、そうでもない。これは、先の日焼け対策と伝染病を媒介する虫さされの予防という側面が強い。

 しかし、そういった服であるということは、当然ながら熱の放出効率が悪くなるため、熱射病の危険が高まることを意味している。オマケに自転車での運動という行為が重なることで、熱で参ってしまう可能性は少なくない。

 割としつこく水について語ることが多いのは、こうした症状を抑えるために人間が持っている対処法が発汗機能であり、これを活発に行うために必要なのが水分だからである。

 砂漠地帯を1日走るためには10ℓを超える量の水を積載するべき!・・・そんな報告もあったりするのであり、悩ましい問題である。


◎虫歯

 地味に恐ろしい虫歯。症状が悪化するとズキズキして夜も眠れないわ、力を込めることすらツラい・・・といったことになりかねない。

 オマケに「海外の歯医者は歯を引っこ抜くことがもの凄く多い」という(本当か知らんが)噂を何度か聞いたことがあり、気軽に治療しようものなら、どうなることか分かったもんじゃない。

 とりあえず出発前に歯医者に行って、虫歯のないことは確認している。仮に虫歯になっていたならば、国内で治療をしておくべきなのだろうと思う。


◎高山病

 私の走行ルートでは南米アンデス山脈とチベット地域のカラコルムハイウェイを通る可能性があり、こうした場所では標高が5000mを越えることがある。

 高い標高から空気が薄くなり、体が酸欠状態になることで出てくる一連の症状を指す。人によって症状が出る高度は異なるが、私は富士山の9合目あたりで軽い頭痛を感じたりした。(食事したら治った)

 根本的な原因が高地にいることによる酸素欠乏なので、下山する(高度を下げる)と症状は改善する。

 しかし、山登りならまだしも、道を進んでいく自転車旅行者の場合、そうも言ってられない現実がある。高所の山に登る人達が、高所順応するために幾つかの方法を取っており、そうした対策が重要となってくる。

1、ゆっくり登る
 速い速度で高度を稼ぐと、その分一気に空気が薄くなってしまい体が変化に追いつけなくなる。どうせ自転車での上り坂なんて、嫌でもゆっくりとなるのだけども。

2、水分を多めに取る
 高所では脱水が起こりやすく、乾きの感覚も鈍くなる傾向がある。通常の場合、人間は1日で約2ℓ程度の水分を必要とされるのだが、高所にあっては倍の約4ℓ程の水分が必要となる。しかも少量ずつ回数を増やして飲むことが良いとされていて、こまめな水分補給が必要となる。

3、睡眠を十分取る
 よく知らんけど体調に大きく左右されるのが高山病。雪村あおいちゃんもコレが大本の原因で富士山を断念したふうに描かれていた。

4、アルコールを接種しない
 勘弁して下さい。

5、高山病予防薬を飲む
 ダイアモックスという薬が有名。登り始める直前から服用を開始し、数日間に渡って飲み続けることで高山病の症状を抑えることができる。高山病を防ぐ薬ではないところがミソ。なるときゃなる。



 ・・・・以上、様々な病気が予測されたりもするが、元気に旅を続けていきたい茶壺である。

 まぁ、なんだ。とりあえずその数と質は大きく違うとはいえ、医者がいない国は存在しない。