自転車ときどき世界1周

2014年02月

 地域によってはヘビーローテーションでシュラフを使用する可能性を考えると、シュラフの汚れや匂いをどうにかしたいところである。

 綺麗好きで歩くと石けんの香りがすると評された私だが、誰からそういわれたかは忘れてしまった。もしかしたら隣に座っていた同僚かもしれないがそれは些細なことだ。そんな私であっても日中自転車に乗り走っていれば汗をかく。世の中にはそうした汗の香りが好きという奇特な人物もいるらしいが、私は汗臭いのは勘弁してほしい。特に汗臭くて汚れたシュラフに体を入れるのは相当な葛藤がある。

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 毎日風呂に入れよと思うかもしれないが、シャワーはおろか洗面器1杯の水すらない地域だってある。ここは風呂なし生活を覚悟してその対処法を考えるべきである。苦渋の決断である。そんな訳でインナーシルクシーツだ。

 シュラフを洗濯すると水抜きにだいたい3日程度を要するって説明書に書いてある。3日も干すんかい!時間はあるがシュラフ1つ洗うために毎回そこまで滞在出来ない。しかしインナーシーツの洗濯ならば数時間で乾燥するし、最悪自転車に括り付けて走ることも可能である。

 シュラフの中に潜り込ませるだけの簡単な仕事でストレスを取り除く。長い旅には体力よりも精神の消耗が響くと言われており、日々の生活で重要な食事と睡眠に私の情熱は最も多く注がれているといっても過言ではない。自転車?あーはいはい、売れ筋を押さえてほしいのん。

 暑い時期はインナーシーツのみを上にかけて布団代わりに使うことも可能である。私は夏でも1枚体に掛けていないと熟睡出来ないデリケートで面倒くさいタイプなのだ。生地がシルク地なのも良い、化学繊維は私の柔肌に合わないがシルクの柔らかい生地には私も大層満足しておる。

 キャンプの真髄とは普段と異なる自然の環境に身を置いて、かつ快適に過ごすことと見つけたり。と昔の戦国武将も名言を残しており、私としてもその言葉に逆らうつもりはない。

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ナンガと比べるとよくわかる大きさ比較の図



 <日本1周後感想>
 その肌触りの良さが、ここまでありがたいことだとは思っていなかった。気持ちよく眠れるという側面に対し、シルクシーツという生地は非常に高い親和性を誇る。やっぱり私みたいなタイプにはシルクだよね?

 薄手の生地だけあり、洗濯をしてもあっという間に乾くので、折りをみては洗うことができたのも嬉しい。結局自転車に引っ掛けて干すことはできなかったので、丸1日休息日とした日などによく洗濯していた。

 夏季においてはこのインナーシーツを被って寝ているのが普通であり、日本1周の全行程でもシュラフを使用したのは2ケ月程度であったが、インナーシーツに関しては最初から最後までずっと使用し続ける結果となった。

 収納袋がコンパクト故、入れ込むまでに若干手間だったりするのだが、さして大きな問題ではない。むしろ収納袋が小さすぎて、寝ぼけ眼にテント内で袋を探しまわるという光景が何度も見られている。

  無くてもどうにかなる物かもしれないが、インナーシーツがある利点は様々な点で感じる買って損の無い品である。


 <世界半周終了時感想>
 ある時期からテンションかかると破けるようになってしまい、恐らくは使いすぎて記事自体が薄くなってしまったことが原因だと考えている。やっぱり長期の自転車旅行に必要なのは、とにかくまず強度だよなということを認識させられたアイテムだな。アメリカで新しいインナーゲットと同時にゴミ箱へ。 
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 世界の屋根と呼ばれるヒマラヤ山脈の峰々。8000mを越える山の全14座が全てこの地域に存在していることからも、いかにこの地が特別な厳しい環境であるかが分かるというものだ。

 そうした8000mの1つに、ナンガ・パルパットと呼ばれる山がある。世界最大の標高差を誇る壁を有し、K2と並んで最も登頂が難しいとされるベリーハードモードの山だ。コンティニューは何回までOKかな。

 こうした厳しい環境において快適に使用できる寝袋ことシュラフを作ろうという男気のあるメーカーが日本には存在する。その名も「NANNGA」もちろんナンガ・パルパットからあてた名だ。

 こうした名前を社名にするのは非常に覚悟が必要であると思う。何しろ難しいことで有名な山、私だって登るには相応の覚悟と準備が必要で、それでも登れるかどうかは分からない。そんな山の名を冠した会社の製品が半端な完成度ではユーザーが猛烈な叩きをしてくることは必死といえる。社名からしてベリーハードモードの会社の製品はしかし、その難易度を攻略するために作られた流石の製品なのである。

 こうした長い前置きは気分を盛り上げるためにある。今回持っていくシュラフ「オーロラ750DX」の凄さがこれで3割増くらいで伝われば私としても感無量である。別に私はナンガのまわし者ではない、あしからず。
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 さて、シュラフには気持ちよく眠れる目安の「快適睡眠温度」と眠れる限界を示す「使用可能限界温度」というものがある。何だか漢字が羅列されていて中二心を刺激されたりもするというものだ。この使用可能限界温度とは本当にシュラフを使って死なずに1晩過ごせる温度で、悟空が界王拳4倍時の体の負担を想像してもらえばだいたい合ってると思う。しらんがな

 こんな数字は当てに出来ないので快適睡眠温度を参考にするとオーロラ750DXの数字はー16℃とされる。突然私事で恐縮だが、私は寝るときに出来るだけラフな格好を信条としている。寝るのに楽な格好をしないとか、それ何て罰ゲーム状態である。さて、快適睡眠温度だっけ?そんなもの当てにしない私はメーカー公称の+10℃を自身の快適な睡眠温度と考える。

 つまりー6℃がこのシュラフの限界ライン。基本的に夏季を追いかけるように走行を考えてはいるものの、アンデス山脈等の3〜4000mでの高地キャンプを考えるとここら辺の性能が必要なのではないかと思うのだ。

 そしてこのオーロラ、特筆すべきはシュラフ自体が防水であること。中に羽毛を入れるダウンシュラフは保温性に優れる反面どうしても水分に弱い。気温が下がる早朝とかテント内は結露した水滴の対応に苦労したりするのだが、長期間となる今回の旅に防水性のシュラフのアドバンテージは目を見張るものがある。凄いぞオーロラ。オペレーションオーロラとして一人二組でラジオ番組やってただけのことはあるぞ。

 ただし大きさだけはいかんともしがたい。どんな製品もコンパクトの一途をたどる日本製品でこの大きさはどうしたものかと私は思うのだ。
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収納状態でこの大きさである



 <日本1周後感想>
 とにかく保温性に関しては文句の付け様がないレベル。私は基本的に眠る時にラフな服装でありたいタイプなのだが、Tシャツ短パンに秋口の北海道程度の寒気では全く寒さを感じることはなかった。

 体感的にもテントとインナーシュラフを併用すれば氷点下での睡眠も、暖かくして質のいい睡眠が取れること請け合いだといえる。反面、夏季においては全く使用することがないまま何ケ月も放置され続けたのだが。

 結構タイトに袋に入れ込まなければならないため、起床後シュラフを収納するために一度、膨らんだ状態を畳んで空気を抜き、その後改めて畳み直すという手間が必要になるあたりが欠点なのだが、そもそも山で使用する日本メーカーのシュラフは、どれもこれも小さく畳まないと収納できない製品ばかりのイメージでありオーロラが悪いというワケではない。

 使い続けても生地が破れたりすることもなく、本気で寒い時には頭までスッポリ被ってしまうことも可能だ。今後も私のベッドとして活躍し続けてくれるだろうと思っている。 


 <世界半周終了時感想>
 750DXにしといて本当に良かった。アコンカグアの6000mキャンプがー25度とかまで気温落ちたけど、割とぐっすり眠れるほどには保温力がある。
 
 その他寒さの厳しかった地域でニュージランド・カナダ・アメリカの標高高い場所・パタゴニアなんかでは本当に頼もしい存在として君臨する一方で、暑い地域では圧縮袋に詰め込んでもまだ大きいその容積にほとほと困り果てていたりもする。
 
 地味に防水シュラフというのも重要で、テント内が結露した際に端っこの方が壁面に触れてしまって濡れるというパターンや、単純に大雨で水没しかかる時にシュラフの濡れをそこまで気にしなくても良い。狭い居室空間でシュラフの濡れを気にしていると他のことに手がつかなくなるため有難い。 
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 私はキャンプが好きである。自然のフィールドという家とは異なる環境に身を置き様々な刺激を受けることは、人の原始的なところにある快感のツボをキュンキュンさせていると思う。

 自転車にキャンプ用品を積載するということは、常にそうした自然からのエネルギーでキュンキュンしたいからに他ならない。決して宿泊費の節約などという低俗な理由ではない。キャンプの意識はそうしたところとは対極に位置している。

 聞いた話だが、旅人の金銭仕様用途は移動代・食事料金・宿泊費で総額の9割以上を占めているとされる。この3点は旅行期間が長くなればなるほど3:3:3の割合に近づいていくとのことだが、個人的にこの説には疑問が残る。いくら安宿でも宿泊費がそこまで安くなるとは思えないが。いやいや違うって、宿泊費云々は関係ない。私は納得出来ないことに対してなあなあで済ますことが出来ない一本気な男なのである。

 私は宿がどんなに汚くてもボロくても多分泊まることが出来るし、飲み会の帰り道、奥多摩駅に終電で降りてしまった時でも、道路の脇で熟睡するほど場所を選ばず眠れるタイプである。とはいえ私は悪列な環境で寝食を過ごしたいのではない。そこで移動式簡易型住居ことテントの出番、なのである。

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 ドマドームライト2、今回使用するテントの名前である。テントの世界は奥が深く、そのジャンルに合わせて様々な種類のテントが販売されているが、本製品は間違いなくNo1である項目がある。何が?名前が圧倒的にダサいことが、だ。

 このドマドーム、前室と呼ばれるテントの玄関口が1〜2人用テントとしては驚くほど大きく設計されていて、このスペースを日本家屋の土間に例えて「土間ドーム」転じて「ドマドーム」という名称となったそうだ。由来を聞いてダサさが増々際立った気もする。

 山岳用テントなどは性質上、極力軽く小さく設計されているのだがツーリング用テントの場合、強度と快適さを併せ持ったものが多いと感じる。私の場合、強い強度の他に「前室で調理が出来る」「暑さ対策にメッシュ通風口がある」「183cmの自分が足を伸ばして眠れる」ことが選択の決め手となった。テントの重量が重めとかいう輩は自分の重量を減らせばよい。

 実は金銭的な重さの方で遥かに負担が大きかったりする。何と5万超ということで、今回持っていく荷物の中で自転車、PCに次いで堂々第3位の高額商品となった。扱うときには礼を逸しない態度が必要であろう。たかだかテント相手に卑屈である。まてまて、仮に壊れるまでに500泊したとすれば、1泊あたりの宿泊費用は何と100円だ。そんな宿泊施設にビビるような私ではない、胸を張って相対してやろうではないか。

 しつこいようだが私がテントを用いるのはキャンプでキュンキュンしたいからであり、金銭的なことは一切関係ない。大事なことなので2回言っておく。



 <日本1周後感想>
 選ぶのが面倒くさくなるくらい様々な製品を見て決めたドマドーム。これでイマイチな使用感だったら泣くに泣けないなぁ、とか思っていたのだが素晴らしい快適な移動式ホテルとして私を助けてくれた。

 雨が降った日に屋根のない場所でテントを張る機会は少なかったので、思いのほか前室が活躍する機会は少なかったといえなくもないが、あれだけゴテゴテ付けているバッグを全てテント内に収納して、尚私が眠るスペースを確保できるというのは非常に助かった。

 夏場の暑い時にはフライシートなんぞ付けてられん!と使用していなかったのだが、通風口と入口を両方ともメッシュのみで全開にすれば、何とか夏場でも眠ることができた。

 雨が降った時などに床面が良い感じに湿ってしまうのはテントでのお約束だと思うのだが、そうはいっても干すのに時間がかかるため、グランドシートを買い足しても良いかと思わせることがままあった。

 ポールを3本使用するため、山岳用テント等に比べて手間がかかるのは事実だが、100回以上も組み立てを繰り返した身としてはテントの作成に5分と必要なくなっており、 別段問題を感じない。

 ポールが若干曲がった状態のクセがつき始めており、どの時点で駄目になってしまうのかが重要なポイントであると考えているが、あと数百回程度の使用に耐えうる雰囲気を持っており、現在のところ特に心配はしていない。

 今のところ僅かに布が破れ始めている部分もあるが、今回の休憩に合わせて修繕作業も実施している。これで暫くは良いパフォーマンスを発揮し続けてくれると思われる。知らんけど。 


<アジア走行後> 
 旅行終わりまで使い続ける予定だったのに、インドネシアで失くしてしまったドマドームライト2。とりあえず応急処置的に安い中華テントを購入して急場を凌いでいたのだが、まぁ安いテントは機能もそれなり。10回程度の使用で既に布の一部分が破れるわ、ファスナーは取れてしまうわしている。

 恐らく野宿が爆発的に増加すると思われるオーストラリア以降の先進国に備え、新たに注文したテントを家族がバリ島に来るのに合わせて持ってきてもらい、中華テントと交換した。料金6000円強だったので、1泊辺りの値段は約600円か。東南アジアでは高いとも安いとも言い難い微妙なところですな。

 あくまで中華テントはつなぎでの活用だったので、このテントは2代目とは表記していない。まぁ言わなきゃ誰も気付かんだろうけど。 
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 自転車のパーツだと思った?残念、バッグの説明でした〜。

 実は旅自転車のスタイルには2つの主流があり、自転車に直接バッグを括り付ける「フレーム一体型」と自転車にリアカーを引かせる「トレーラー型」に分けることができる。日本では前者が主流であるが、海外では存外トレーラー型の勢力が強いという話を聞いている。

 普段は隠しているが、私は常に弱い者に味方するフェミニストな熱血正義感の紳士であり、こうした場合は当然少数派のフレーム型を選ぶこととしている。なお、普段隠しているので周囲の誰からもそう見られたことはない。
 
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 そこでフレームに取り付けるバッグだが、これは迷わず完全防水バッグがウリのORTLIEB社製フロントローラークラシック&バックローラークラシックの2セットである。タイヤのSCHWALBE、キャリアのtubus、バッグのORTLIEB、この3点のド定番商品が全てドイツのメーカーであることから、長距離自転車界の三銃士と呼ばれていたらいいなぁ。なお三銃士はフランスとイギリスの話である。

 ハッキリ言ってベッタベタな選択。実はラスボスが主人公の血縁者だったのだ!ってくらいのベタさだ。しかし隊長……オッケーです。ベタな選択とは即ち王道。主流となるにはそれ相応の理由があるのだ。

 オルトリーブ製品が覇権を取った理由、それが先に触れた完全防水という機能にある。後にも先にも防水、長距離自転車のバッグを探す旅は、防水性能によって一つの終焉を迎えるとかなんとか。

 PCを始めとする精密機械からキャンプ用品に各種のウェアまで、一切合財をバッグに詰め込んで走る旅自転車のバッグは雨や水たまりから中身を守ってやる義務がある。いつでも雨宿りできると思うな、世界は時に厳しく牙を向けるのだ。

 その構造も防水に特化していて、バッグの口は多くの人が想像するようなジッパーを使わず、ロールクロージャーという折り曲げて閉じる方式を採用している。一部、某H氏から「これは手抜きではないのか?」といった声が上がったりしているが、大旨好評のようである。

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ロールクロージャーなのでチャックが存在しない

 容量はフロントバッグ2つで25ℓ、リアバッグ2つで40ℓとなっており、リアバッグの方が大きいから重たい荷物はリアに入れようとなりそうなものだが、ここに高度な罠が仕掛けられている。自転車は構造上人間の荷重が後方に加わるので、リアバッグを重くするとバランスが悪くなる上、負荷が後輪に集中しすぎてしまいよろしくないのだ。ちなみに当方は身長183㎝・体重82kgであり、既にリアタイヤには多大なる負荷を与えている自覚がある。

 こうした観点から小さくて重たい荷物をフロントに、大きくて軽い荷物をリアに収納するのが4サイドバッグの基本パッキング術となる。
 余談だが私は物が整理整頓されていないと気持ち悪いタイプであり、他人の部屋に入ったときにまず着目するのが本棚である。この本やマンガがどのように陳列されているのか、で私は部屋の善し悪しを判断するといったことを友人に話したところ「なに言ってるのかよく分からん」という、一般人には理解出来ないほどの高尚な感覚の持ち主だと評されてまったく光栄の至りである。


 <日本1周後感想>
 出発前にはその防水性能にばかり意識がいっていたが、オルトリーブバッグが支持されている要素としてもう1つ、「非常に丈夫である」という点があり旅に出てみて有難さを実感することとなった。

 特にフロントローラーバッグは前輪に取り付ける関係もあり、 壁等に擦らしてしまうことも多々あったのだが、最終的に傷だらけになりながらも問題なく使用し続けられたことは賞賛すべきことだと思う。

 バックローラーに関してはリアバッグの落下防止に肩掛けベルトを活用しており、これがまた計ったようにサイズが合っていて便利に使わせてもらった。

 アタッチメントが別売りで販売されているように、プラスチックの部分に関しては耐久性に疑問が残るのであろうが、とりあえず日本1周程度では支障を来すことはなかったことからも、そのタフネスっぷりには感嘆する。

 ちなみに防水機能に関しても文句はないのであるが、完璧な故の落とし穴として若干でも湿っている衣類をバッグの中に入れてしまうと、水分が外に抜けないためにバッグ内が水分で蒸れ蒸れになるというアクシデントに見舞われるので注意されたし。

 ロールクロージャー式のバッグは別段出し入れに苦労することはなかったのだが、何しろロックがワンタッチ式であるため、盗難に対しての防犯面では大いに不安が残ることになる。 これに対しての対処方なんぞあるなら私が教えてほしいわ!

 まぁ総じて素晴らしいバッグであるといえる。たとえ何らかの出来事でバッグが駄目になっても、再びこのバッグを購入したいと思っていますよ。 


 <世界半周終了時感想>
 完全防水性を売りにしているオルトリーブだが、これだけ使い続けると所々に穴が空いてしまうのは避けられず、ちょっと深めの川を渡ったりすると中まで浸水してしまうため、わざわざ取り外して運ぶことが何度かあった。なお普通の雨程度ではそれほど気にする必要はない。
 
 なおフロントに位置している方が様々な場所に擦り付ける機会が多く消耗も早い。私のフロントサイドバッグはすでに底の部分に幾つもの穴が空いてしまい、ガムテープ等で補強しながら使っている状態であるが、どうせなら日本で強力な防水テープで最初から完全コーティングしておいたほうが良かったと今となっては思う。そんな便利テープは海外で滅多に見かけないし。
 
 あと未舗装路を走り続けてると時折ボルトが緩んで外れてしまったりすることもある。運が悪いとこのボルトがそのまま落下して地面に落ちてしまうこともあり、規格の合うボルトやナットは幾つか予備を持っておいて損はない。
 
 それより問題となるのはロールクロージャーによるバックルで、いくらバッグ自体が強くてもバックルの素材がプラスチックであるため強烈な寒さに弱い模様。私のバッグはすでに8つのバックル(1つのバッグに2箇所)のうち4つのバックルの爪部分が破損して使い物にならなくなっており、これらが壊れたのがそれぞれカナダ北部や宝石の道といった寒い上に寒暖差の激しい土地だったことは、何かしらの因果関係を感じさせる。
 
 ちなみにこのバックルだが、先進国でもないとバックル単品での販売を見つけるのは非常に難しい。チリのアウトドアショップで運よく売ってるのを発見したが2つで1000円以上した。なので日本を出る前にホームセンターで幾つか予備のバックルを調達しておく方が吉。 
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 また道具の紹介かよと思われるかもしれないが、現在はまだ3〜4合目である。世のオタクというものは概して、道具を愛するあまり周囲が見えなくなる傾向にあると思うのだが、自制するつもりは全くない。そういえば友人の高崎は自分のことをオタクではなくマニアと呼べといっていたが、その提案は却下とする。

 さて、人がスポーツ用自転車に乗った時の感想は「走りが軽い」とか「動きが滑らか」といったモノではなく、8割方「尻が痛い」となる。これには乗車姿勢とか抜重のテクニックとか色々な理由があるのだが、それについては残念ながら省略する。いずれ、本にでもして出版しようと思うので、首を長くして待っていてほしい。

 これは経験者であっても程度の差こそあれ、同じように尻の痛みを抱えている。私もロードで100kmを超えて走り続けると、徐々に尻から鈍痛が迫ってくるのを感じてテンション上がってきたものだ。
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 そんな訳でサドルは重要である。テンション上がるあまり、尻の皮が剥けたりする悲劇が起きることのない「良いサドル」とはなにか?これは自転車乗りの中でフェルマーの最終定理の如く、活発に議論され続けている大きな問題だ。

 人の数だけ尻の数があり、同じものは1つとしてない。何かの歌のようだが、この事実こそが探求者たちを苦しめる原因となっているのである。サドルを柔らかくしてしまうと自転車との一体感がなくなる、しかし固すぎると痛みが増す。相反する性質に様々なアプローチを試みるも、未だ絶対解は見つかっていない。

 こうした閉塞的な状況の中で、なんと長距離自転車界にはこの不毛な争いごとが一切起きていないのだ。何故か、たった一つだけのこった道標が存在しているからである。それこそが「革サドル」というジャンルだ。主なメーカーはブルックス社、犬マークのソースは関係ない。

 この革サドルが画期的なのは、サドルを尻の形に変形させてしまえばいいんじゃね?という逆転の発想を持ち出した点にある。人は色々、尻も色々、革サドルはいつも1つである。どこかの名探偵ではない。


 実際に使ってみるとよくわかる。「固く」て「痛く」て「手入れが面倒」で「雨に弱く」て「尻が滑る」とにかく最悪のサドルであることが。
 ところが500km程度走ってきたあたりから様子が変わってくる。サドルにお尻がフィッティングし、レーパンなしで100km走っても全然痛くない。なんだコレ、最初の頃とは別人じゃないか。私が手塩にかけて育てただけのことはあるな、がっはっは、なのである。
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 お尻に合わせて形が形成されている途中のサドルの図

 乗れば乗るほど自分だけのサドルとして革の形が変形していくため、これからも増々乗り心地のよいサドルへと進化していく革サドル。私のお尻もたいそう喜んでいる。旅が終わる頃には心地よすぎてサドルがお尻と一体化してないだろうか、今から心配である。 



 <日本1周後感想>
 とりあえず1日走り終えてもお尻が痛くなくなったのは沖縄県に入った頃だったと記憶している。距離にして2000km以上は乗り続けてやらねば、このじゃじゃ馬サドルはご主人様に合わせてくれはしない。

 お上品な話で恐縮なのだが、始めの頃は竿の裏側に大きなマメができて走行に支障を来すくらい痛みが激しく泣きそうになった日もある。 無理してお尻をズラしたりカバーが擦れるのが悪いのかとパンツのインナーパッドを外したり、そんな涙なくして聞けないような地道な努力を続けてきた。

  日本1周の後半に関しては、走行中サドルに対して意識を払ったことがほとんど記憶にない。つまり走行において不満を一切感じないレベルでフィッティングしていたという証明であり、革サドルサイコーという結論に至るまでの尊い犠牲は無駄ではなかったのである。

 雨に濡れてはいけないとか聞くのだが、結構ほったらかしても問題を感じることはなかったかな。雨が降った日にはビニール袋をサドルに被せて、万事OK!というお気楽な対応であった。世界1周の前にレインサドルカバーを購入すべきか悩んでいる。

 道中で2度ワックスを塗っているのだが、初期にきちんと整備していれば、そんなに気にしなくても素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれるので本気でオススメのサドルですよ。


 <世界半周終了時感想>
 流石に9万km以上も乗り続けると目に見えての変化はなくなった。特に股擦れとかの痛みも出てこずに、1日中乗り続けてても全く問題ないレベルに完成されてると言える。
 
 むしろ気になるのはサドルを止めてるボルトの方で、これが長期間の使用のためか専用工具でないとダメなのか、突起部分のボルトが緩んできてしまいサドル全体がガタガタしてしまう。とりあえず外れたナットを差し込んでやれば安定はするのだが、「留め」であるボルト自体が緩んでしまっているので時間の経過とともに同様の症状が出てきてしまう。
 
 あとオイルは3ヶ月に1度くらいのペースで定期的に貼付しております。これを付けることに意味があるのか微妙だとは思うけど、ぶっ壊れてまた1から育てるのは流石に勘弁願いたいところだし。
 
 意外と多少の雨程度なら水を弾いて問題なかったりする。とはいえ革製品なので極力濡らすことは避けるよう注意しているが。屋根のない場所で野営する場合はネットと看板を使ってサドルの上に雨除けとしてセッティングしたり、雨の日の走行ではサドルカバーとビニール袋で包んで保護したり程度には気を使っている。 
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 どんなに大切にしている物であっても、使い続けている限りは劣化し、いつかは壊れてしまう。そこに程度の差はあれど、悠久の時間からしてみれば、その差は僅かかもしれない。しかしそんな説法はスカしてともえ投げである。

 ちょっとした違いに一喜一憂し、わずかな差に本気で悔しがる器の小ささを全快にしつつ、タイヤことホイールの話である。
 
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 耐久性と耐パンク性、タイヤに欲しい性能は数あれど、長距離を走るにあたって外せないものはこの2点に集約されるといえる。「軽さ」とかのたまっている輩には、背後から延髄蹴りをブチカマして一言「痩せろ」と教育的指導だ。

 舗装されていないような道を走るタイヤは、簡単な衝撃で破れてしまうようでは役に立たない。極太のゴムでしっかりと包み込み、ダメージを残さない頑強さが必要である。薄ければ薄いほど良いゴムなんてのは財布の中にでも仕舞っとけ。

 そうしたタフネスを誇る自転車タイヤ界の走る鉄人、これこそがドイツ SCHWALBE社のマラソンシリーズだ。一般的な自転車のタイヤ寿命が3000〜5000kmとされるのに対して、マラソンは約15000kmと圧倒的なスペックを誇っている。ホンマかいな。

 想像してみてほしい。日も暮れかかった山奥、1日走っても自動車とすれ違ったのは数える程。真っ暗になる前に急いで街に移動し食材を補給すべく、最後の一踏ん張りしようとした瞬間にタイヤがバーストした時の気分といったら。世界から戦争がなくならない原因は、そこかしこに隠れている。

 私は世界平和のためにも、そうした悲しい事故が起こらないよう最強の耐久性能をもつマラソンを準備した。次のノーベル平和賞に呼び声が掛かったら受賞するのもまんざらではない。


 さて、タイヤとはホイールを構成する一部品にすぎない。ハブから放射状に伸びるスポークをリムが支え、リムをタイヤが覆うことでホイールとなる。何いってんだか分からんと思われるが、要するに戦隊ヒーローの巨大ロボの如く各パーツが合体して悪を倒すのである。黄色のポジションがお笑い担当となっているのは今でも許せない。

 悪を倒すためにもそうした各パーツは、できる限り強度の高い一品を選択している。参考までに

  リム:SUNRINGLE社の  rhyno lite
スポーク:星社の      2.0㎜ステンレス
  ハブ:シマノ社の    Deore LX      といった装備品だ。

 勇者よ、武具は装備しないと意味がないぞ。



<日本1周後感想>
  パンクの回数は累計3回。5000kmに1度のパンクであれば、こんなに優秀なタイヤはない!と表彰されるレベルであるといえよう。まぁ日本の道はとにかく路面状況が素晴らしいので、耐久力の強いタイヤを履いていればそこまでの数パンクはしないだろうと思っていたのだが。まさかこれほどとは・・・

  タイヤ自体の交換が7000km地点と11000km地点で後輪を2回交換している。なお、前輪は1本で15000kmを走りきったタフネスっぷり。

 最初の交換では持ち合わせていた予備のタイヤを使用したのだが、この予備タイヤ、畳んだ状態でバッグの底の方に収納していたのが悪かったのか、負荷のかかった部分からどんどん摩耗してゆき4000km走った時点でスリップサインが出てくる結果となってしまった。新たに予備タイヤを持つ時はこうした点を考慮して、畳まずに持ち運ぶ形を取りたいと考えている。

 また、マラソンはゴムが厚いタイヤであるためタイヤレバーがプラスチック製では破損することがある。というか1本壊して鉄製のタイヤレバーに買い換えた。交換する際には要注意だ。

 なお、非常に好成績を残したマラソンタイヤであるが、世界1周の際には更に上位種であるマラソンプラスという「より強くて」「よりゴムが固い」 タイヤを使用することにした。タイヤの取り外しに苦労するらしいので国内では扱わなかった品であるが、いよいよ足回りに置いても全力で対応して行く方がよろしいという神ならぬ私の声にしたがった結果である。

 あとスポークは20本ほど予備を持っていく。何処に行っても同じ型式のスポークを店で持っているとは思えないので。 

 <世界半周終了時感想>
  耐久力に定評のあるマラソンプラスだが、実は同じマラプラでも物によっての当たり外れがある。これはこのタイヤを5本も6本も使いまくった私の経験上、ほぼ間違いない事実だと思う。
 なお最も短い寿命の物で7000kmほど、長く使えた物では20000km近く走り続けることができた。もちろん前輪側の方が荷重による負荷が少ない関係上、単純な数字のみでの比較に意味は薄いのだけれどそれにしたってさぁ。
 
 半分くらいのタイヤはトレッド部分ではなくサイドカットによって破断し使えなくなっている。サイドカット自体はテープやパッチ、他に縫い合わせたりして無理矢理修理したこともあったけど、基本的に1度破けてしまうとそこの強度自体が下がってしまい遠からずその周囲に別の裂け目が入ることが多い。なので破けたら修理自体は延命処置だと割り切って使っていた。
 
 他の点では初期状態だとビートが無茶苦茶硬く、下手すると鉄製のタイヤレバーが負荷に負けてひん曲がってしまったということがある。これもパンク修理などで何度も開いたり閉じたりしてるうちにゴムが伸びて柔らかくなってくるわけだが、つまりこれはビート部分が劣化してきてるということで、やはり裂ける原因になってしまう。
 
 ある程度仕方のないことかもしれないが、とりあえずなるたけ同じ箇所から開いたり閉じたりすることがないよう気を使っていた。
 
 ちなみに中南米でマラソンプラスを入手することは、ほぼ不可能に近いレベルで難しいです。日本から送ってもらう予定のない人は、マラプラに拘っていくならアメリカの南端あたりで前後輪の新調+後輪用に予備1本くらいは確保しといた方が良いと考える。アメリカのサンディエゴ北部郊外には各種類&サイズを取り揃えたショップがあるので、ここで取り揃えることが可能。
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 旅自転車という乗り物を日常で見かけたことがあるだろうか。ランドナーとかスポルティーフとかその種類は色々あるのだが、総じて「なんか荷物をめっちゃ付けてる」自転車のことと考えてもらいたい。

 この荷物、当然ながらロープで括り付けているのでもなければ、ロープで結んでいる訳でもない。もちろん、ロープで結わえていることもない、あしからず。

 ではロープでなければなんなのか。というか私はどんだけロープが好きなのか、消防士としての経験がロープをたぐり寄せるのか、というか今はそんな話をしているのではない。

 現在の自転車バッグの主流は、アタッチメントかマジックテープを使ってキャリアに取り付ける方式なのだ。そう、キャリアである。今回の本題はキャリアに関することだった。
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 キャリアとは荷物を掛けるための荷台である。何故キャリアと呼ぶのかといえば、言い方がカッコいいからである。

 さて、このキャリアには問題点が一つ。荷物を掛ける道具のくせにキャリアが「折れる」のである。

 耐荷重とかそんな問題かよ、折れてんじゃねぇ、もっと根性出せよ、そんな志でどうすんだよ。
 悲しい事実だが、現在の自転車用キャリアにおいて世界1周に最後まで確実に耐えられる程の信頼性をもった商品は存在しない。どうやらメーカーも50kg近い荷物を載せ続け、そのまま世界1周するような輩の存在はなかったことにしたらしい。

 とはいえ折れにくい強い強度を持つキャリアはちゃんと存在する。例えるなら、一見地味に見えるがスタイル抜群で可愛い系の隠れ美女みたいなものだ。もちろんロリ巨乳であるって何言わせんだ。

 できる限り強度が高く、かつ前後に台座を設定するためにフロントキャリアをNitto社のキャンピー、リアキャリアをtubus社のLogoとした。特筆したいのはリアキャリアのLogoのスペックである。何と耐荷重40kgときたもんだ。

 もちろんこうした数字に一喜一憂するのは素人であり、私も何度騙されたことか分かったものではないが、とはいえ自転車のキャリアで40kg。どこの誰がそんなに荷物を載せるのだもと思うが、私が載せるぞ限界への挑戦である。
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 なお、キャンピーの色はシルバーなのだが私の自転車はフレーム周りを黒、取り付けるバッグ類を黄色でカラーリングしているため、黒色に着色している。このカラーリングには聞けば誰でも納得するようなが深い理由があるのだが、それはまた別の機会に語ることにする。

 <日本1周後感想>
 折れなかった!もはやキャリアの存在意義は9割がその結果で語られると思うのだが、とにかく他の多くの日本1周をしていた自転車乗り達が、軒並みキャリアの破損という局面に四苦八苦していた中で、涼しい顔していられたのもこのキャリアが丈夫であったからこそである。

 キャンピーにしていた黒の塗装は、度重なるバッグの取り付け外しですっかり剥げてしまったのだが、折れなきゃ何でも良いんだよ。日本1周で私の心が折れなかったのもキャリアが折れなかったおかげ。もはやキャリアと私は一心同体といっても過言ではない絆が形成されており、これからも頼もしい旅行の友としてやっていく所存である。

 なお、新たに塗装はしない方針。どうせ剥げてしまうと分かった今、面倒くさい作業を繰り返す気持ちになれないのであり、大丈夫キャリアの方も分かってくれるよ。私の絆と面倒くさいという思いを汲んでさ。 


 <世界半周終了時感想>
 キャンピーは割とよく折れる。特に中央の3方向に広がるボルト上のポイントに荷重がかかるらしく、ここだけで左右合わせて3回折れた。まぁどこの国でも溶接工場は存在しており、これの溶接にかかる時間は1分とかそんなもの。もう現在では割り切って「折れたら直せばいい」という意識の元に使い続けている。
 
 対してリアキャリアのロゴは耐久力に評判のあるチューブス社製品であり、大丈夫だと思っていたのだがチリからアルゼンチンへ向かう途中のシコ峠で折れた。なおこのキャリアが折れた事例というのは海外サイクリストを含めても非常に珍しいらしく、なかなか貴重な一撃だったのだと考える。どちらにしても溶接工場で修理したことで今日も元気に使われている。
 
 むしろ問題となっているのがハブ側のネジ穴が若干バカになっていることで、数日に1度くらいのペースで定期的にネジを増し締めしてやらないとすぐボルトが折れてしまう。最初は原因が分からず酷い時で2日に1本くらいのペースでボルト折られまくっていたが、上部側のネジのワッシャーを太いものに交換したら症状が軽減したという経緯を経て現在に至る。
 
 一応ネジ穴の広がりも修理方法が幾つかあるようだが、現状どうにか安定しているのでこのまま様子を見る方向で推移している。ダメなら販売国であるドイツ行った時にでも新しい物買おうかな。 
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 自転車を購入するとき、私くらいの玄人になるとその
購入方法にも気品というかエレガントさが出てくるようになる。

 具体的にいうと部品毎にこだわりの1品を選び、それらを自分で組み上げることで、より理想に近い最適な自転車を選択するようになるのである。

 この域に達するには長く辛い修行と深遠な知識が必要となってくるため、素人が迂闊に私のマネをしてはいけない。早まると怪我をするぜ、なのである。
 私の場合は幸いにしてどちらにも十分な技量が備わっているため、自転車屋の親父に注文つけて全て組み立てさせた。安心しろ、金は出す。
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 そうしたパーツでフレーム以外のブレーキ・チェーン・ディレイラー・スプロケット等の基本部品を総称してコンポーネントという。無知な読者に分かりやすく説明すると、自転車の銀色の部分は80%の確率でコンポーネントの一部である。

 このコンポーネント、略してコンポにはグレードが存在し、ご想像の通り上位グレードのものほど性能と値段が比例している。となれば、私のような人間は当然最上級グレードの「XRT」が似合うところなのだが、夢枕に立ったじいちゃんが「コンポはディオーレにしなさい」と囁くので先人の意向を受け止めディオーレのセットを準備した次第である。

 これは単なる愚痴なのだが、ディオーレとXRTではその値段に約5倍もの開きがあるのは如何なものかと思うぞ。いくら性能がよろしくてもコンポだけで10万以上の金額を出せると思うてるんかい。
 いくらコンポ業界最大手だからって殿様商売してるんなら、俺はカンパニョーロ製品でも全然構わんのだぞこらシマノ。と、思ってカンパ社の製品調べたら倍近い値段がしたでござる。シマノさん、よろしくお願いします。

 …というような常人にはなかなか理解してもらえない深い逡巡のすえに、泣く泣くディオーレセットを選択したH氏という人を私は知っている。彼もまた、大いなる被害者といえよう。

 賢明なる私は、消耗品であるコンポの値段と性能を天秤にかけて、ベストなバランスを選択した末のディオーレなのだが前述のようなH氏の例もあるので、ここでの言及はこれ以上控えたい。
 

 分かる人だけ分かるネタ。リムにおいてはLXを使用中。過重による負荷が大きいと予想される部分かつ、ディオーレシリーズと互換性を残しておきたかったので。


 <日本1周後感想> 
 整備の大切さを嫌というほど実感する部位である。私は2ケ月に1度くらいのペースで自転車整備を実施していたつもりなのだが、整備直後の走行の快適さを思うと、それまでの自分がなんと酷い環境で自転車を走らせていたのだと憐憫を感じさせる。

 特に駆動系とチェーンに関しては、潤滑油を塗ることによって 走行中のストレスが全く変わってくるので気にしていた。

 基本的に速度を上げて走るものではないのでコンポの性能に関しては気にかけたことがない。とりあえず壊れずにいてくれて、ギアの変速に関しても気になるレベルで狂うことがなかったので満足である。フロントギアに関してはフリーギアだったし。

 唯一ハンドル左側のブレーキが使い過ぎなのか遊びが大きくなりすぎてしまい、若干気になったことがある程度だろうか。基本的にコンポは異常を感じると永遠と違和感が続いて気になるので、早い段階で対処していたのが良かったのかもしれない。


 <世界半周終了時感想>
 変速関係に関してはとにかく低グレードで統一しておくことが大切だと感じることが多かった。要するにぶっ壊れた時の費用的な観点からそう思っているのだが、MTBコンポでいうと途上国であってもどのグレードでも入手するのはそこまで難しくない。ハイレベルなのはプロショップ、ローグレードなら町の自転車屋で住み分けもできている。ただそういう国におけるスポーツ自転車の類というのは「一部のお金持ちの趣味」という位置付けであり、凄まじく料金高いワケでして。
 
 他にチェーンリンクとスプロケットはどうしても使い続けてると歯飛びを引き起こすようになるのだが、スプロケはともかくチェーンリンクを単品で販売しているショップというのは本当に少ない。かといってクランクセット丸々購入するのも馬鹿らしいのであり、これは割と悩みの種である。
 
 ちなみにリアスプロケットはとにかく歯数大きい方が自転車旅行には向いてると思う。個人的にはローギアで34枚というのが欲しいライン。フロントはインナーで22くらいかな。
 
 その他ハブ軸とかに使われる部品は9万km走っても特に問題は出てこない感じで、こういった駆動系でない独立したコンポはちょっと上級グレード使っても構わないとは思っている。 
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 今回の旅で相棒となる自転車、SURLY社のツーリングフレームで「Long Haul Trucker」ちゃんです。

 アメリカ生まれで余計な装飾とか一切ない。自転車の世界ではアメリカ=面白みがない完全実用品ばかり作る国みたいな話を聞いたりするのだが、いとおかし。

 この黒光りするクロモリフレーム、長い車長による直進安定性、拡張性の高いダボ穴の数々、世界で最も流通している26インチホイールを装備可能な器用さ。ロゴマークのダサさも含めて、自転車長距離業界において圧倒的シェアを占めているかもしれない1品である。これは非常に微妙な称号といえる。


 突然ではあるが、自転車とはメカニカルマシンなのである。現代の高度な技術で精製された自転車は、へっぽこな途上国の力でカーボンだとかアルミといった素材を修理することは極めて難しいのが現状だ。
 そこで、クロモリフレームの登場である。クロモリことクロームモリブデン鋼とは一言でいってしまえば「鉄」である。二言なら「アイアンマン」である。マン?  鉄ならばどんな国にも溶接工場があるじゃないか。これならば私も安心してフレーム修理を任せられるというものだよキミぃ、なのである。
 長距離自転車界のもう一つの巨匠こと「グレートジャーニー」がイマイチ世界1周に使われないのは、このフレーム素材がアルミだからであるとアンダーグラウンドで密やかに囁かれている。

 自転車屋の親父に相談したとき、「どうせドコか壊れるから」という台詞が印象深い。それなら壊れないように自転車制作しろよと言いたかったのだが、さもありなん、みたいな顔をされてしまい私のツッコミはどこへいく。


 自転車のパーツにも規格があって、これが世界中で流通しているMTB(マウンテンバイク)規格でないと問題である。ロードとかいう自転車は舗装路しか走ることができない軟弱なマシンであるため、ロードがスポーツ自転車の主流になっているのは一部の先進国だけだ。全く関係ない話だが、私のメインバイクはSCOOTのCR1である。

 現実的にはロードで世界1周することも不可能ではないと言えるが、私は男の中の男として自転車に乗るため、厳しい悪路や難しい道を極力避けていくものの、どうしても回避できないことを考えて男らしくMTB規格のフレームを選択した。

 ホイールが26インチサイズであることも非常に重要な点であるのだが、これも要するに男らしい決断の結果でロングホールトラッカーとなった。

 この他に予備スポークが取り付けられたり、ボトル台座がダウンチューブの下にも付いてたりと細かいところに気を配れる仕様だ。このフレームの設計者には私から座布団1枚出しても良い。


 さて、この自転車の名前だが「ロシナンテ」と命名する。かの世界で最も売れた小説「ドン・キホーテ」の愛馬の名前から。自分を騎士だと思い込み、妄想の世界で冒険を繰り広げたキホーテは、何だか憎めないというか思うところもありますのん。

 
 <日本1周後感想>
  15000km強を走行したわけだが、BB(ボトムブラケット)が1度駄目になった程度でさしたるトラブルもなし。日本国内の道路の状況が良いという側面もあるだろうが、まぁ要因の大半は私の走り方の上手さにあると思われるのでこの限りではない。

 とにかく直進安定性が非常に高い自転車であり、信号等で停止した後の走り出しのスムーズさが際立つ印象を受ける。

 ダブルレバーによるギアチェンジに関しては、慣れてしまえば別段気になる要素ではなかった。むしろ毎日何時間も自転車に乗り続ける身としては、強制的に上半身のストレッチとなりうるダブルレバーのシフトチェンジは良いことなのではないか!と無理矢理にでも利点を探す程には愛着を持っている。

 ロードと比べてポジションが非常に快適なのだが、速度を求めず日々の疲れを最小限に抑えることが必要な旅自転車としては、上体が起こし過ぎだろうと思われるくらいで具合が良いようである。まぁこれは自転車というよりセッティングの話なのだが。

 総じて満足度の高い自転車であり、これからの海外走行に向けて頼もしい相棒と呼べる存在である。 


 <世界半周終了時感想>
 フレーム自体は「丈夫でよく使える」という評価になってしまうのが致し方ないところ。ある程度旅行したことで感じる利点としては、海外途上国において販売されている微妙な量販パーツでも許容できる懐の広いフレームであるという点か。
 
 自転車において駄目になる部品というのはある程度決まっており、そのほとんどが足回り系ことタイヤや駆動輪系の部品に収束されていく。そうした部品を買い換える時によくわかんねぇ謎のパーツであっても組めてしまう拡張性の高さは自転車旅行フレームとして優秀であることを実感させる。自転車ってのはそもそもどんなパーツでも組み合わせることができるのかもしれないけどさ。
 
 何度も立ちゴケしたりでフレーム傷だらけなのかと思いきや、サイドバッグが衝撃緩衝材となっってくれるため案外ストレス感じることなく走行できる。なおフレームに傷がないとは言ってない。というかすり傷みたいなのは全体に付きまくりでロシナンテ号が人だったらゴルゴ13みたいな体になっているかと思われる。
 色々なツーリングバイクに乗って比較した経験があるわけじゃないし、乗り味とかそういうのを語ることができるわけじゃないが、フルパッキンでも走りやすいと感じる自転車だ。
 
 ちなみにフレーム仕様の関係でブレーキにディスクブレーキが使用できないのだが、中南米とかの途上国でも割とディスクブレーキパッドの入手は難しくなくなった現代において、Vブレーキというのは過去の遺物になるのかとも思っていたが。
 
 ディスクはディスクで調整が難しく、輪行や悪路の走行で歪んだりとかした場合のリカバリが難航するという欠点があった。制動能力が優れているというのは油圧式の話で、機械式だと大差ないし。でも長期旅行に油圧式ブレーキはリスクが高いし。とは言ってもVブレーキは長期の使用でリムが削られてしまうので何処かのタイミングでリムそれ自体を交換する必要に迫られるしなぁ。未舗装路&雨でのブレーキ能力が極端に落ちるのは間違いない事実なのであり、まぁブレーキのパッド・ディスク方式に関しては一長一短だと思ってる。 
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~キチンと帰ってくるまでが自転車旅です~

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 ワンピースでいうと、グランドライン後半のルート予定

 
 
 5、ヨーロッパ編
 そういえば自分も四分の一程度はヨーロッパ人の血が流れているような気もする。そういう意味では地元への凱旋である。
 さて自転車乗りというのは、大概の輩が大陸の先端に思いを馳せる生き物であり、別に行ったからといって特別な意味もなく、無駄な行動と言わざるをえない「はじっこ」へ強く執着する傾向がある。自分のように理性的で計画的な行動をとる自転車乗りは、どちらかというと少数派と思われますの。
 そんな私がとるルートはヨーロッパ最北端であるノルウェーのノールカップ岬を目指して北上してゆき、その後バルト三国を経由しつつ進路を西に取る。道中の小国を周遊しながら今度はユーラシア大陸最西端のロカ岬へと歩を進めるルートを計画中である。私は理性に溢れた自転車乗りであり、計画通りだ。


 6、アフリカ編
 ジブラタル海峡を越えてモロッコから南端の喜望峰を目指す。その後、Uターンして東アフリカを北上していくルートを目標としている。ただし、アフリカ大陸には政情不安の国や紛争地域が散見されるため特に中央アフリカ周辺を予定通りに進むことは難しいと思われる。
 こう書くといかにもアフリカは危険な地域であるように感じるかもしれないが、幼い頃に「黒人」とあだ名をつけられた自分にとって、アフリカの人々は決して対立するような存在ではない。危険とされている場所に近づかないよう走行すれば、多くの場所で素晴らしい景色を見せてくれる。あとあだ名付けた小学生のS木、今度会ったら泣かす。


 7、中東編
 世界の火薬庫と言われたりもする中東地域。現状ではシリアやアフガニスタンといった冗談でなく人命に関わる国があるため、こうした国は避けて進むことになる。ルートとしては、イスラエルから海上を渡ってトルコへと進み、カザフスタン方面から北回りで東進し、インドを目指すことになる。
 もっとも、この地域の情勢の変化は激しく、去年は渡航に問題なしとされた地域が、今日は渡航自粛地域として外務省が真っ赤に色を染め上げていることもある。何が安全なのか、分かったものではない。
 まったく、ゲームでは隠しコマンドを入力すると無敵になったものだが、現代の自転車乗りは隠しタバコを渡して通行許可を貰うのが精一杯とかなんとか。自転車乗りは無力である。


 8、帰ってきたアジア編
 インドからネパールへと北上してゆき、中国チベット領から東に一路進路を取り、走り続けることになる。やがて日本海が見えてきた辺りでエンディングとなり、中島みゆきの歌が流れ始める予定である。しかしそうすると仕事の退職のタイミングで「地上の星」が始まってしまい大変遺憾である。NHKには抗議の電話をかけておく。
 同じようなことを何度も書いているが、中国内の自治区においても、政情次第でこの地域を走行することができない可能性が存在する。これらは現地での情報収集をしながら対応していくしかない、って母方のひいばあちゃんが語ってた。


 という感じでの走行予定である。日本1周を含めて、走り終えたら実走行したルートを地域ごとに上げてみるつもり。全然ルートを書いてない気もするが、それはワザとである。きちんと考えていないというのではなく、読者には未知の驚きを与えたい、全てのルートを知ってては面白さに欠ける、とエンターテイナーは考えるのだ。これはそういう人間の業みたいなものであり仕方ないこと。

 もちろん私はエンターテイナーなどではない。
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