クラシック・マイナー曲推進委員会

マイナーな作品を中心にクラシックのCDを聴きまくる私の備忘録的感想文です。
さんざん聴いてるのに忘れちゃうもので。もし読んでくれる同好の方がおりましたら参考になれば嬉しいです。
このブログは全く個人の感想ですので、一般の評価などとは異なることが多いかと思いますが、あしからず。
また、ほぼ耳で聴いただけでの作文ですので、間違ったこと書いてあったらごめんなさい。もしお気付きの誤りがありましたらご指摘ください。

カテゴリ:作曲家A > Alfvén

scd1013アルヴェーン:
①「グスタフ2世アドルフ」組曲Op.49
②交響曲第5番(第1楽章)Op.55
スティグ・ヴェステルベリ指揮スウェーデン放送交響楽団
録音:①1967年3月29日&4月2日、②1967年5月6日
(SWEDISH SOCIETY SCD1013)
中古屋さんでヴェステルベリのアルヴェーン:交響曲第5番を発見。ウェステルベリ5番入れてたんだあ、あと2番があれば全曲揃うな、など考えながら買ってきたのですが、5番は1楽章だけ。そうかヤルヴィ盤が出るまでは第1楽章しか演奏されてなかったんだ。更に「グスタフ2世アドルフ」は第1交響曲のカップリングで既に持ってました。まあ18分40秒も持っていなかったのでいいか。
①1曲目は夜明けのような美しい音楽から壮大な音楽になります。ミニ・ワーグナー風に物語に始まり始まりー、という感じ。2曲目は間奏曲。激しいフーガがカッコ良いです。3曲目は「皇帝フェルディナンドの礼拝堂」。威厳があるけど綺麗な曲。チェロの長い独奏がある。4~6曲目は弦楽によるサラバンド、木管によるブーレ、管弦楽によるメヌエットと古典的舞曲が続きます。グリーグのホルベルク組曲に出てきそうな性格の異なる格調高い3曲です。7曲目のエレジーはヤルヴィが単独で取り上げていますが、切なくはかない名旋律ですね。最後は「ブライテンフェルドの戦い」。11分の長い曲。ゆったり静かな聖歌風に始まります。繋ぎの部分の不安な感じは耳を引きます。盛り上がるとトランペットに始まるヒロイックな場面に。その後聖歌風、ヒロイックと交代して最後は勝利の大団円です。
②改めて聴いたら本当に素晴らしい曲ですね。陰気で不安な序奏は冒頭動機が曲全体を支配します。第1主題は早口だけど切れ切れ。諦めと憧れが入り混じったような第2主題。ウェステルベリはゆったりしたところではテンポを遅く取って、時間が止まったかのように感じさせます。コーダの英雄的な新しい主題はテンポあげたほうがカッコいいな、などと考えているとヤルヴィ盤しか聴いたことがない人には衝撃のフィニッシュ!こんな明るく軽く終わっていいの?
★★★★☆(両作品とも名曲・名演。5番の終わりはホントに驚いた)
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scd1101アルヴェーン:
①交響曲第1番Op.7
②「グスタフ2世アドルフ」組曲Op.49
スティグ・ヴェステルベリ指揮スウェーデン放送交響楽団
録音:①1972年8月15-17日、②1967年3月29日&4月2日
(SWEDISH SOCIETY SCD1101)
という訳で「グスタフ2世アドルフ」のカップリング違いで交響曲第1番も聴きました。
交響曲第1番第1楽章はチェロ独奏に始まる長い序奏があります。主部に入ると単調だけど躍動感ある第1主題、長調で流れるようだけどどこかもの悲しい第2主題で展開します。初期ロマン派かドヴォルザークかという活気ある楽章。第2楽章は暗く初期ロマン派らしい緩徐楽章。第3楽章スカッと若々しく突き抜けた爽快なスケルツォ。この演奏、弦の刻みが粒だっています。第4楽章3拍子ののどかな民族舞曲風に始まります。これがしばらく展開して暗く激しくなったあと、ちょっと速めのテンポでちょっとおどけた第2主題が出てきます。その後はロンドかソナタかと思いきやどちらとも言えず新しい主題が出てきたりして、なんだかよくわかりませんでした。でも盛り上がって楽しい曲です。
ヴェステルベリの演奏は輪郭がくっきりっしていて、鳴りも良くて安心して未知の作品にひたらせてくれます。
★★★★☆(アルヴェーンの交響曲は第1から最後の第5まで非常にレベルが高い)

bis0585アルヴェーン:
①「山の王」組曲
②交響曲第5番イ短調(完全版)
③「グスタフ2世アドルフ」~エレジー
ネーメ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・ストックホルム・フィル
録音:1992年12月17、18日
(BIS KKCC2130・BISCD585)
早速ヤルヴィの「山の王」をチェック。このCDも相当久しぶりにかけてみました。例によって持っていたことしか覚えていませんでした。このCDには日本語解説がついてまして、パラパラと読んでみました。なんと交響曲第5番は「山の王」から素材が取られている、ということでした。交響曲第5番は長年1楽章しか知られておらず、更に作曲者が3、4楽章は演奏を禁止していたそうです。それをBISお得意の遺族の説得に成功して、この全曲版が録音できたそうです。
①組曲版は作曲者セレクトの4つの楽章から出来ています。
全曲でも印象的だった第2幕終曲「呪文」で始まります。不穏なムードたっぷりに盛り上がります。2曲目は「魔女の踊り」。タイトルの割に優しい曲ですが結構盛り上がる。第3曲「夏の雨」は幻想的なイントロにソプラノ・サックスが歌う。第4曲はヴァイオリンの速弾きが印象的。スヴェトラーノフ全曲盤よりは落ち着いたテンポです。中間部は美しいです。これは結構いけてる組曲です。コンサートで取り上げても受けると思うんだけどなあ。確かに全曲版で聴き覚えのあるような音楽がセレクトされています。
②交響詩的な第4交響曲とは打って変わってこの第5はスケールが大きい古典的交響曲。重暗い第1楽章に始まり、祝祭的なフィナーレで終わります。ロシア風のようでもあり、マーラー風のようでもあるけど、独特です。
第1楽章。冒頭でひっそりと陰湿なモチーフが提示され軽く爆発してアレグロに入る。提示部の繰り返しあり。最後になって新しくヒロイックな主題が高らかに出てきますが冒頭の主題に戻った上、やや尻切れトンボに終わります。
第2楽章は夜明け前といった雰囲気に始まる緩徐楽章。しみじみとした表情が続きます。
第3楽章はまた緩徐楽章?というような無気味に始まるスケルツォ。テンポがコロコロかわる。木琴の嘘っぽい素朴なメロディ、ミュート付きトランペットの1オクターブ下降のグリッサンド、つむじ風のような木管、と怪しさ満点。短いトリオもあります。マーラー7番のスケルツォに通じる不気味さです。
第4楽章は4度の下降音型による祝祭的なファンファーレに始まります。程よく民族的で盛り上がるとジーンとくる楽しい音楽。4度下降の音型がしつこくでてきますが盛り上がって終わります。
3・4楽章は作曲家が演奏禁止にしたなんて、もったいない面白い作品でした。
③しんみりとくる、弦楽主体の作品。シベリウスやグリーグなど北欧の作曲家はこういういい作品書きますね。
★★★★☆(北欧音楽が好きな方にはすすめのアルバム)

mscd614アルヴェーン:バレエ・パントマイム「山の王」全曲
エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮
スウェーデン放送交響楽団
録音:1990年8月、9月
(MUSICA SVECIAE MSCD614)
スヴェトラーノフはよくスウェーデン放送響によく客演しており、恐らくその影響でアルヴェーンをよく取り上げていたようです。この「山の王」も珍しい全曲版を録音するにあたってスウェーデンのレーベルがスヴェトラーノフに録音を任せるということで、スウェーデンのオーケストラやレーベルからも信頼を得ていたんですね。

第1幕冒頭は印象深い暗くしんみりした感じはシベリウス風。またワーグナー風でもあります。曲が進むと「ペール・ギュント」のヴィオラ・ソロのような音楽が出てきたり、盛り上がるとR.シュトラウスのようになったりと、ロマン派~近代の管弦楽法の見本市のようで面白い。いかにも劇音楽らしく場面がどんどん代わっていきます。第2幕の最後なんかカッコいいです。第3幕は民族的な雰囲気や穏やかな雰囲気の曲が多いです。ヴァイオリンの速い舞曲とか面白いです。しかし、最後は静かな曲で「アレッこれで終わり?」というような終わり方です。
全体的にそれぞれのナンバーはよく出来ており聴き応えあるのですが、やはりストーリーも分からず聴き通すには長いです。これは組曲で親しんでから挑むべき全曲版という気がしました。「ペール・ギュント」も「くるみ割り人形」もそうやって馴染んだもんです。というわけで今度ヤルヴィがやった組曲を聴いてみます。これは期待度が高いんではないでしょうか?
スヴェトラーノフとスウェーデン放送響はいつもレベルが高いですね。
★★☆☆☆

rdcd00693①アルヴェーン:交響曲第4番「海辺の岩礁から」
②ドビュッシー:海
スヴェトラーノフ指揮ロシア国立交響楽団
ガリーナ・シムキナ(ソプラノ)
アンドレイ・アルニコフ(テノール)
録音:①1989年2月、②1993年2月,どちらもモスクワ音楽院大ホール、ライヴ
(RUSSIAN DISC RDCD00693)
ヴェステルベリのアルヴェーン4番を聴いたらかなり濃厚だったので、もっと濃厚な印象だったスヴェトラーノフ盤はどうだったか気になり聴いてみました。カップリングはスヴェトラーノフ得意のドビュッシー:海。

アルヴェーンは意外なことにヴェステルベリよりスヴェトラーノフのほうがトータル・タイムが早いです。手元にあったヤルヴィ盤も含めトータル・タイムを調べました。
ヴェステルベリ・・・46:09
スヴェトラーノフ・・・42:00
ヤルヴィ・・・47:21
従来のイメージと違ってスヴェトラーノフがヤルヴィよりも5分も長い!

いきなり結論ですが、スヴェトラーノフも濃厚ですが、曲が濃厚だったんですね。確かに第3部はスヴェトラのほうがこってりしてますが他の部分では意外やテンポよく進行します。金管やティンパニはロシア国立響の音がして嬉しくなります。と言いながらも何故かヴェステルベリ盤に比べぐっとこないです。録音のせいかもしれませんが、何か満足がいかなくてボリュームを上げるとやかましく感じます。
こうなるとサッパリしていた印象だった(でも実は演奏時間が一番長かった)ヤルヴィ盤も気になってきました。

僕はラヴェル派ではなくてドビュッシー派です。意外と両方好き、という人は少ないような気がしますがどうでしょう?
ドビュッシーの海は何故かスヴェトラーノフが得意にしており、私も手元に3種類もあります(フランス国立管とフィルハーモニア管、もっと出てるみたいですが)。この演奏も輪郭がハッキリした重心の低いドスコイ系。フランスがなんだ!印象派がなんだ!という態度がいいです。ライヴならではのピンチもありますが(最初のオーボエには焦りました)、概ねキチっとしてます。演奏はいいんだけど、録音がイマイチですね、1993年なのに。いつものことなんですがこういう曲はいい音で聴きたいです。

アルヴェーン
★★★☆☆(意外とスピーディ)
ドビュッシー
★★☆☆☆(うーん…、何かがおかしい)

abcd001アルヴェーン:交響曲第4番「海辺の岩礁から」

ヴェステルベリ(指揮)ストックホルム・フィル
エリザベト・ゼーダーシュトレーム(S)
イェスタ・ヴィンベリ(T)
録音:1979年2月
(BLUEBELL ABCD001)
スウェーデン音楽の紹介者として有名なヴェステルベリですが残念ながらアルヴェーンの交響曲は全部は録音してないようです。

交響曲第4番は1楽章構成で4つの部分に別れています。(ちなみにこのCDトラックが別れておりません。)古典的なフォルムの第2番とは対照的にリヒャルト・シュトラウス的後期ロマン派風です。海ネタなせいかツェムリンスキーの「人魚姫」を想起させるところも。また男女の情愛が表現されていてシンフォニア・エロチカなんて言われたりもしたようです。確かに男女の独唱がヴォカリーズで切ない旋律を歌い官能的ですが、エロティック(ポルノチック?)というよりプラトニックのように感じました。初演当時はエロく感じられたんでしょうね。いずれにせよ海と男女がテーマのロマンティックで濃厚な音楽です。

第1部ハープやピアノが波をあらわしているようです。波のようなヒラヒラとした音型も多用。5分過ぎには早くもテノールが登場。その後大河ドラマのテーマ曲風に展開します。第2部は9分半くらいでイントロのハープが戻ったあとスケルツォの雰囲気に。やはり木管がヒラヒラと波うっています。そしてトリオに相当する部分にソプラノが登場。第1部のテノールに似た旋律を歌います。15分くらいでテンポが落ちて第3部へ。緩徐楽章的になります。ここでソプラノとテノールがようやく二重唱、遂に結ばれます。ヴェルディのレクイエムの甘~い雰囲気の部分やリヒャルト・シュトラウス風でもあります。盛り上がっていたものの30分過ぎには沈んできて、最後に二重唱で下降音型を歌うのですがいつの間にかソプラノがいなくなって破局を暗示しているようです。33分頃から不穏な雰囲気になり第4部が始まります。英雄的に盛り上がったりもしますが、悲劇的結末に向かいます。39分過ぎのコールアングレのメロディの寂しいこと。やはり映画音楽風かシュトラウス風に盛り上がったりしますが、力が尽きていきます。最後に何も無かったようにハープやピアノによる海の描写に戻ります。第4部では独唱も出ず悲劇的です。

演奏は文句ないでしょう。名ソプラノのゼーダーシュトレームが花を添えています。
★★★★☆

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