クラシック・マイナー曲推進委員会

マイナーな作品を中心にクラシックのCDを聴きまくる私の備忘録的感想文です。
さんざん聴いてるのに忘れちゃうもので。もし読んでくれる同好の方がおりましたら参考になれば嬉しいです。
このブログは全く個人の感想ですので、一般の評価などとは異なることが多いかと思いますが、あしからず。
また、ほぼ耳で聴いただけでの作文ですので、間違ったこと書いてあったらごめんなさい。もしお気付きの誤りがありましたらご指摘ください。

カテゴリ:作曲家H > Halvorsen

chan10710「ハルヴォルセン:管弦楽作品集第4集」
ハルヴォルセン:
①ノルウェー狂詩曲第1番
②ノルウェー狂詩曲第2番
③グリーグのノルウェー結婚行進曲
④ヘンデルのパッサカリア
⑤「女王タマーラ」より踊りの情景
⑥「王」より交響的間奏曲
⑦ノルウェー祝典序曲
⑧―⑫ノルウェーのおとぎ話の情景
ネーメ・ヤルヴィ指揮ベルゲン・フィル
録音:⑤2010年9月、⑤以外2011年8月
(CHANDOS CHAN10710)
ヤルヴィ先生、最近またもの凄い勢いで録音始めましたね。ついていくのが大変になってきました。
これはハルヴォルセンの管弦楽作品集の完結編。第3集までは交響曲と小品の組み合わせでしたが、最終回は交響曲は無しです。2曲のノルウェー狂詩曲→2曲の編曲作品→2曲の劇音楽からの作品→2曲のノルウェー関連の作品と2曲づつの組でプログラミングされています。
①明るいパリッとした民族舞踊で始まります。3分半くらいからチェロ独奏の叙情的なメロディーが始まります。もの悲しく始まり、やがて悲劇的に盛り上がります。7分半位からおどけた感じの民族的な舞曲になります。
②元気な序奏のあとはちょっと落ち着いた舞曲。盛り上がってくるとちょっとベルリオーズぽいです。3分前くらいからオーボエ独奏でゆったりとした悲しげな中間部が始まります。7分位からまた元気になります。フィドル風ヴァイオリンが楽しい。第1番より落ち着いた印象。
③ハルヴォルセンの奥さんの伯父グリーグの「農民の暮らしと情景Op.19」の第2曲のオーケストレーション。こう言ってはなんですがハルヴォルセンよりキャラが立ってます。
④何故かヴァイオリンとヴィオラの二重奏が収録されてます。ヘンデルのチェンバロ組曲HWV.432の一曲の編曲だそうです。ベルゲン・フィルのコンミスと首席ヴィオラ奏者の二人の女性奏者による演奏です。
⑤くるみ割り人形の「アラビアの踊り」かと思う始まりかた。しかし、この作品はテンポ・アップして盛り上がります。
⑥ほの暗く静かに始まり、やがて悲劇的に盛り上がります。終わる前に一瞬長調になるけど最後はチェロ独奏が息絶えるように終わります。
⑦前の曲から一転して祝典です。祝典的な賑やかさと民族的な音楽が上手く合わさった楽しい作品。
⑧この作品は劇音楽「ペイクと巨大なトロル」からの組曲だそうです。タイトルからして「ペール・ギュント」系を期待してしまいますね。交響曲の代わりにこれでシメです。
1曲目「ペイク、王女と巨大なトロル」は明るく楽しい。時々脅かすようなグリッサンドはトロル?2曲目「トロルの娘の踊り」はちょっと不気味といいますか幻想的。といってもロマンティックなワルツです。3曲目「王女、熊にのって現る」は幻想的で美しいちょっと悲しいモデラート。4曲目「青い山にトロル登場」はまた不気味系。おどけた妖怪かな。最後はトロル駆け出します。アタッカで5曲目「小さなトロルの踊り」に入り踊り狂います。穏やかな民族舞踊風の中間部がありますが、結局どんどんテンポ・アップしてジャンジャン!楽しいです。
★★★☆☆
第2集の感想でも書いたけど、どの作品も大傑作というほどでもないけど、十分楽しめる水準の作品です。

chan10584「ハルヴォルセン:管弦楽作品集第1集」
ハルヴォルセン:
①ロシア領主たちの入場/②アンダンテ・レリジオーソ/
③「仮面舞踏会」組曲/④メランコリー/
⑤交響曲第1番ハ短調
ネーメ・ヤルヴィ指揮ベルゲン・フィル
録音:2009年8月-9月(CHANDOS CHAN10584)
ヤルヴィのスヴェンセンで思い出したけど、そういえばヤルヴィのハルヴォルセン第1集はブログ始める前に聴いてたので聴き直してみました。
①一瞬コミカルなのかと思ったらカッコいい行進曲です。確かにロシア風。中間部はグリーグの何かに似ている(十字軍のシグール?)。
②行進曲から一転メランコリックなイントロは耳を引きます。ヴァイオリン独奏がはかなく美しい。ちょっと悲劇的な間奏の後は希望が湧いてきますが、結局元のはかない曲に戻ります。
③「仮面舞踏会」はあのホルベア(ホルベルク)による喜劇につけた劇音楽だそうです。この組曲は序曲と舞曲からなります。
一曲目は「ホルベルク序曲」。メンデルスゾーン風で明るく朗らか。二曲目は「コティヨン」。舞踏会の舞曲です。三曲目は「メヌエット」でちょっと休憩。四曲目「ハネダンセン」は跳ねダンス?という感じの躍動感溢れる踊り。五曲目は穏やかな「ガヴォット」。中間部のソット・ヴォーチェはじんわり良い感じ。六曲目「モリナスク」は元気。七曲目「ケーラウス」は更に元気に疾走。八曲目「アリエッタ」は美しく叙情的。九曲目「パセピード」も静かですが多少動的になります。で長かった割にあっさり終わります。
④2分半の弦楽による綺麗な曲。
⑤第1楽章は古典的なソナタ形式。第1主題は短調ながら清々しい。北欧らしくてかっこいい。オーボエで始まる切なく綺麗な第2主題はブラームス風でもあります。提示部の終わりには一瞬輝かしくなります。展開部は第1主題中心ですが、第2主題をピツィカートでブツブツに切って弾いてみたり、面白い工夫があります。展開部自体は短くワーっと盛り上がって再現部に突入します。作曲者はメロディ・メイカーだけど展開とかは苦手な雰囲気です。第2楽章は初期ロマン派な香りプンプンの美しくまた人懐っこい感じの緩徐楽章。中間部は結構盛り上がります。第3楽章はゆったりした田舎風スケルツォ。第4楽章はいかにも北欧ロマン派、といった感じのロンドです。主要主題はヒロイックだけど、音が下がっていくユニークな覚えやすい旋律。かっこよく盛り上がるけどスピード感と軽やかさがあります。よくできた交響曲で、ハルヴォルセンの交響曲で一番聴き応えがありました。
①⑤★★★★☆(ハルヴォルセン聴くならこのあたりからが良いかと)
②③④★★★☆☆(結構いいですよ)
ヤルヴィのハルヴォルセン全3集のうちアルバムとしてもこの第1集が一番聴きごたえがありました。

chan10664「ハルヴォルセン:管弦楽作品集第3集」
ハルヴォルセン:
①交響曲第3番
②黒鳥
③結婚行進曲
④ワタリカラスの結婚
⑤劇的組曲「フォッセグリム」
⑥ベルゲンの古い旋律によるロココ風変奏曲「ベルゲンシアーナ」
ネーメ・ヤルヴィ指揮ベルゲン・フィル
録音:2009-2010年(CHANDOS CHAN10664)
ヤルヴィのハルヴォルセン・シリーズ。交響曲1曲と管弦楽曲の組み合わせで第3集まできました。まだ続くのかな?
①3楽章構成。ナントカさん校訂がポイントとか書いてあるけど、校訂してない版知らないので、そう言われてもねえ。ハ長調という脳天気なイメージの調性です。
1楽章は古典的なソナタ形式。超短い序奏のティンパニに誘導され躍動感ある第1主題。あっという間に短調になり第2主題。軽やか・爽やかな初期ロマン派的。第2楽章は一瞬夢見心地かと思いきや、悲しげな緩徐楽章です。葬送行進曲風ですが、軽やかさは失わない。トリオは明るく爽やか。第3楽章は暗く激しい雰囲気から始まります。やがて長調と短調が闘争して長調が勝つという典型的勧善懲悪タイプです。しかし全体にさっぱり、終り方もあっさり。全体に初期ロマン派交響曲+ペール・ギュント÷2といった印象。でもこの分かりやすさ、爽やかな楽天性などナカナカ捨てがたい素敵な作品です。
②~④は4・5分の小品です。
②シベリウス的というかドビュッシー的というようなモヤモヤしてるけどきれいな作品。ピアノが印象的に使われています。
③ヴァイオリンをフィーチャーした田舎風結婚行進曲。民族的雰囲気豊か。
④シベリウスの弦楽作品のようなしんみり侘しい作品。
⑤「フォッセグリム」組曲は5曲にオマケの「ダンス・ヴィジョネアー」が3と4の間に入ります。どういう理由でオマケなのかは英語の解説を読む気力がないので、わかりません。フィドルをフィーチャーした民族舞曲集といった感じです。やっぱり爽やかです。
1曲目はフィドルが活躍する早めのテンポの舞曲。2曲目はちょっとエキゾチックなゆったりした曲。3曲目は再びフィドル登場してのアレグレットの行進曲。「ダンス・ヴィジョネアー」はトラックが代わり、ハープに導かれた2曲目同様ゆったりしたエキゾチックな舞曲。4曲目はちょっと劇的な短い交響詩風。5曲目フィドル再登場しての輪舞風です。
⑥はちょっとコミカルな主題による優雅な変奏曲。変奏ではマンドリンや鉄琴まで登場する楽しい作品。

いずれの作品も北欧的爽快さが漂います。如何にもグリーグの後継者。ペール・ギュントのヴィオラ独奏の曲が好きな人はすんなり入れるでしょう。でもやはりメロディの人らしく交響曲の構成などは苦手なのか、妙にあっさりしています。
★★★☆☆(気持ち良い一枚)

chan10614「ハルヴォルセン:管弦楽作品集第2集」
①古風な組曲
②3つのノルウェー舞曲
③ノルウェーの旋律
④ヴェスレモイの歌
⑤交響曲第2番「宿命」
ネーメ・ヤルヴィ指揮ベルゲン・フィル
録音:2009年
(CHANDOS CHAN10614)
最近のCHANDOSはまた面白くなってます。再びパパ・ヤルヴィが精力的に珍曲を録音するようになって嬉しいです。このハルヴォルセン・シリーズも80~90年代のヤルヴィを彷彿させる嬉しい企画。作曲家やオケはどっちかというとBISっぽいですが。
ハルヴォルセン(1864-1935)はグリーグの次に有名なノルウェーの作曲家。奥さんはグリーグの姪だそうです。同世代にはマーラー(1860-1911)を始め、ドビュッシー、R.シュトラウス、グラズノフ、シベリウス、ニールセン等がおり、まさに黄金世代です。
①はタイトル通りの「古風な組曲」。「ホルベルクを偲んで」的な副題があり、正にハルヴォルセン版ホルベルク組曲です(管楽器は入ってるけど)。1楽章はイントラータ、2楽章は変奏付きのアリア、3楽章はジーグ、4楽章はサラバンド、5楽章はブーレと期待を外さない佳作。
②~④はヴァイオリンと管弦楽のための作品。ハルヴォルセンはベルゲン・フィルのコンマスも務めたヴァイオリンの名手だったそうです。②は軽やかな舞曲集。ハンガリー舞曲やスラヴ舞曲のようなドスコイ系ではありません。③は前半がゆったり後半がややテンポアップする、よくあるパターンですが、サラサーテやサン=サーンスのような興奮のるつぼというほどではありません。④ひたすらしんみり歌います。いずれもサッパリしているけどなかなかよく出来ています。
⑤メインの交響曲第2番「宿命」です。同世代の作曲家から連想されるような後期ロマン派や民族楽派とは異なり初期ロマン派風作品です。また「宿命」という副題から想像されるようなベートーヴェンやチャイコフスキーのような激烈さはなく、メンデルスゾーンの短調の曲に近い気がします。第1楽章はソナタ形式。冒頭の第1主題の動機(宿命の動機?)が重要で全楽章に出てきます。展開部ではちょっとしたフーガなんかも登場。第2楽章はやはり初期ロマン派風緩徐楽章。結構聴かせますが、悲しみもどん底ではありません。宿命の動機は最後にチョコッとだけ。第3楽章はスケルツォ。チャーミングな民族舞曲風で興に乗ってます。チェレスタやハープ、トライアングルなども入り幻想的でもあります。第4楽章は英雄的フィナーレ。
というわけで、副題や作曲家の生年など気にしなければ結構楽しめます。また、ある程度ボリューム上げないとホントにショボく聞こえますのご注意ください。

★★★☆☆(どの作品も大傑作というほどでもないけど、十分楽しめる水準の作品です)

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