『大言海』の場合
- 2015/05/27
- 19:15
ブログ記事〈「譲らぬ葉」は存在しない〉の「前置き」にも書いたことですが、『言海』と『大言海』の著者・大槻文彦は、日本語研究者の間では、著作に根も葉もない民衆語源を鏤(ちりば)めていることで有名です。F爺は、子供の頃、父の本棚にあった両著に目を通しましたが、和語(やまとことば)の語源説のうちで信憑性のあるものは、数えるほどもありません。子供心に「こんな馬鹿な話があるか !」と斬って捨てました。学校教育で古...
富士と藤
- 2015/03/30
- 21:43
「粉雪」さんからのコメントの一節にこうありました。>ある本で富士山の形が下がり藤の形に似ているから「ふじ」というのだという説明を見かけましたが、これは明らかな誤りでしょう。おっしゃる通り、火を見るよりも明らかな誤りです。こんな愚かな似非語源説は、放っておけませんので、ここですぐに一刀のもとに断罪してしまいます。「富士」は、歴史的仮名遣いでも「ふじ」です。「藤」は、歴史的仮名遣いでは「ふぢ」と書きま...
草生津川(続)
- 2014/07/06
- 01:48
前置き2014年4月5日付けの記事「草生津川」(カテゴリー: 日本語・民衆語源)に、7月4日付でKTさん(*)からの非公開コメントが届きました。KTさんの教えてくださったことと別途集めた新情報を綜合してこの続篇を書くことにしました。元の記事から削除した末尾部分をこちらに転載し、訂正・補足しました。(*) F爺が勝手に作った記号です。非公開コメントをくださった方がこう名乗っていらっしゃるのではありません。本文 情報元の記事...
卑弥呼
- 2014/04/12
- 07:02
EHさんをはじめとする読者の方々からの「卑弥呼の読み方は ?」というご質問にお答えします。いや、正確に言うと「答え」ではありません。「確実な答えは無い」のです。どうしてそうなのか、事情を説明します。一つ、漢字は表意文字ですから、「mountain」も「やま」も「山」と書けます。どんな言語でも発音を無視して表記できるのです。漢字で書いた文献が残っていても、すぐにはどんな言語を話す人が書いたのかも、どんな発音をし...
葱
- 2014/04/06
- 01:34
前置き長い間「匿名の烏合の衆記事だから主義として読まない」ことにしていた「ウィキペディア」の記事に時々は監視のために目を通さざるを得ない立場になって(*)二週間経ちました。(*) このブログの「ウィキペディア」と題した記事をご覧ください。気付いたこと一つ : 日本語版ウィキペディアの植物に関する記事は、似非(えせ)語源の宝庫です。ストラスブール大学附属の植物園から届いた資料の中に「日本の植物の一つNeji」という...
草生津川
- 2014/04/05
- 04:30
秋田市内を流れる小さな川の一つに「草生津川」があります。読み方は、F爺が近くに住んでいた時代には「くそづがわ」でした。昨年、気が付いてみると河川名表示に「くそうづがわ」と仮名が振ってありました。そんな発音を聞いた記憶は、F爺にはありません。河川名の語源は「不明」が当たり前なのですが、同音性に目を付けたこじつけを語源と取り違える人が後を絶ちません。語源説という名目のこじつけごっこF爺が高校生の時の人文...
北欧神話のロキ
- 2014/03/20
- 00:20
語源ごっこに興ずる人は、母言語や自分が良く知っている言語の語彙について想像・夢想・妄想を巡らすだけでは満足できずに、病(やまい)が昂じて片言ほどにも知らない異言語の語彙を弄(もてあそ)ぼうとすることもあります。ストラスブール人のある老婦人は、日本語のニの字も知らないのに、ここ40年以上、「日本語の『老獪』という言葉は、北欧神話のロキが日本語に入ったものだ」という説を唱え続けています。箸にも棒にもかからな...