森博嗣
森博嗣の紹介をしようと思います。
森博嗣といえば、「すべてがFになる」でメフィスト賞を受賞し衝撃的に作家デビューしたことで有名だけど、知っているでしょうか?森博嗣をデビューさせるためにメフィスト賞が誕生したぐらいなもので、以降メフィスト賞でさまざまな作家がデビューしたのも彼の存在があってといえるでしょう。
名古屋大学工学部の助教授(未だにそう公表はしていないけど)でありながら作家でもある森博嗣は、もういろんな話があったりすします。例えば、森博嗣は講談社が作品を募集していることを知り、まあ書いてみようと思い、大学の夏休み一週間で書き上げたのが、発表順では二作目の「冷たい密室と博士たち」。その後立て続けに「笑わない数学者」「詩的私的ジャック」を投稿し、投稿順では四作目になる「すべてがFになる」をデビュー作にすることを講談社は決め、どうせ出版するなら賞をつけよう、ということでメフィスト賞という名前をつけて出すことにした、みたいな経緯があったりする。とにかく、森博嗣というのは筆が早く、今まで一度も締め切りを過ぎたことがないそうです。というか、締め切りを守れそうにない仕事は引き受けない、ということですが。
今でも大学助教授の職は続けており、その授業も変わっています。試験はなし。講義を受けている人に質問を提出させ、その質問によって評価する、というものです。その質問を集めた「臨機応答 変問自在」という本を出版していたりします。
森博嗣の代表作といえば、デビュー作から10作続く「S&Mシリーズ」でしょう。N大学助教授の犀川創平と金持ちのお嬢様西之園萌絵が、密室殺人(とにかく森博嗣は密室ばかりを描きます)を解決する、というものです。まあ説明すればそれだけですが、それだけでは説明しきれない魅力があります。犀川と西之園の会話や思考が、普通からはかけ離れたもので、こんな会話やこんな思考をしたい、といつも読んでいて思います。同時に、森博嗣ってのは天才なんだな、といつも思います。
活動の幅も広く、ミステリはもちろん、HPに連載していた日記や同じくHP上で企画しているものの書籍化、詩集、絵本、エッセイなど、もはやなんでもありです。助教授の仕事と平行しているとは思えない仕事ぶりで、年に作品を10~15ぐらいは出していると思います。
さらにすごいことに、趣味に割く時間が半端ないです。模型が趣味で、当初は模型を買うお金を副業で稼ごうと思い始めた小説書きだそうです。睡眠時間を削り、食事も一日一食だそうで、コンクリートの研究にも没頭しているようなのに、どこに趣味の時間と作家の時間があるのかさっぱりわかりません。
さらに多才なことに絵も書けたりします。昔は関西の方のコミケ(ってあってるかな?)でかなり有名な存在だったようです。
ささきすばるという、作家だか漫画家だかは忘れたけど、その人と結婚してたりします。
森博嗣になりたくて作家になった西尾維新(NISIOISIN)という作家がいて、その人も森博嗣チックで結構いい作家ですよ。
作品自体はかなり読みやすいし、密室とかでミステリ嫌いな人はあんまり嫌かもしれないけど、重要な点はミステリ的なところではなくて、それ以外の部分にあるので、抵抗を持つことなく読んでみてください。
森博嗣の浮遊工作室
森博嗣の浮遊研究室
PRAMM(森博嗣ファンクラブ)
森博嗣の浮遊工作室 付属会議室の遺跡
森博嗣といえば、「すべてがFになる」でメフィスト賞を受賞し衝撃的に作家デビューしたことで有名だけど、知っているでしょうか?森博嗣をデビューさせるためにメフィスト賞が誕生したぐらいなもので、以降メフィスト賞でさまざまな作家がデビューしたのも彼の存在があってといえるでしょう。
名古屋大学工学部の助教授(未だにそう公表はしていないけど)でありながら作家でもある森博嗣は、もういろんな話があったりすします。例えば、森博嗣は講談社が作品を募集していることを知り、まあ書いてみようと思い、大学の夏休み一週間で書き上げたのが、発表順では二作目の「冷たい密室と博士たち」。その後立て続けに「笑わない数学者」「詩的私的ジャック」を投稿し、投稿順では四作目になる「すべてがFになる」をデビュー作にすることを講談社は決め、どうせ出版するなら賞をつけよう、ということでメフィスト賞という名前をつけて出すことにした、みたいな経緯があったりする。とにかく、森博嗣というのは筆が早く、今まで一度も締め切りを過ぎたことがないそうです。というか、締め切りを守れそうにない仕事は引き受けない、ということですが。
今でも大学助教授の職は続けており、その授業も変わっています。試験はなし。講義を受けている人に質問を提出させ、その質問によって評価する、というものです。その質問を集めた「臨機応答 変問自在」という本を出版していたりします。
森博嗣の代表作といえば、デビュー作から10作続く「S&Mシリーズ」でしょう。N大学助教授の犀川創平と金持ちのお嬢様西之園萌絵が、密室殺人(とにかく森博嗣は密室ばかりを描きます)を解決する、というものです。まあ説明すればそれだけですが、それだけでは説明しきれない魅力があります。犀川と西之園の会話や思考が、普通からはかけ離れたもので、こんな会話やこんな思考をしたい、といつも読んでいて思います。同時に、森博嗣ってのは天才なんだな、といつも思います。
活動の幅も広く、ミステリはもちろん、HPに連載していた日記や同じくHP上で企画しているものの書籍化、詩集、絵本、エッセイなど、もはやなんでもありです。助教授の仕事と平行しているとは思えない仕事ぶりで、年に作品を10~15ぐらいは出していると思います。
さらにすごいことに、趣味に割く時間が半端ないです。模型が趣味で、当初は模型を買うお金を副業で稼ごうと思い始めた小説書きだそうです。睡眠時間を削り、食事も一日一食だそうで、コンクリートの研究にも没頭しているようなのに、どこに趣味の時間と作家の時間があるのかさっぱりわかりません。
さらに多才なことに絵も書けたりします。昔は関西の方のコミケ(ってあってるかな?)でかなり有名な存在だったようです。
ささきすばるという、作家だか漫画家だかは忘れたけど、その人と結婚してたりします。
森博嗣になりたくて作家になった西尾維新(NISIOISIN)という作家がいて、その人も森博嗣チックで結構いい作家ですよ。
作品自体はかなり読みやすいし、密室とかでミステリ嫌いな人はあんまり嫌かもしれないけど、重要な点はミステリ的なところではなくて、それ以外の部分にあるので、抵抗を持つことなく読んでみてください。
森博嗣の浮遊工作室
森博嗣の浮遊研究室
PRAMM(森博嗣ファンクラブ)
森博嗣の浮遊工作室 付属会議室の遺跡
伊坂幸太郎
今回は伊坂幸太郎を紹介したいと思います。
さて、伊坂幸太郎という名前を聞いたことがあるでしょうかね?ミステリ界では急成長の注目株、気鋭の若手作家なんだけど、一般にはそんなでもないかもしれない、と思う。
デビュー作は、新潮ミステリ倶楽部賞という新人賞を受賞した「オーデュボンの祈り」である。あらすじだけでも結構読みたい、と思ってしまうのではないかと思うぐらい、ストーリー自体面白い。
仙台在住だった男は、知らぬ間にいつのまにかある島で目が覚めた。その島は、そこに住んでいる人に言わせれば、「日本」という国からは鎖国状態なのだという。その島にはさまざま不思議な人間が揃い踏みで、嘘しか言わない画家、殺人を許された男、食べ過ぎて動くことの出来なくなった八百屋のおばさん、など。
その中にいて、最も不思議な存在は、人の言葉を喋り、未来を見通すことのできる「カカシ」だ。優午というそのカカシはしかし、ある日バラバラにされて頭を持ち去られているのが発見される。さて、未来を知ることの出来るカカシは、一体何故自分の死を知ることが出来なかったのか・・・
どうでしょうか?誰がこんな不思議でシュールな設定の話を考えることができるでしょう。ある意味ファンタジーでありながら、間違いなくミステリーでもあり、どのページを読んでもワクワクし、すぐにでもページを捲りたくなる。
それ以上に、彼が紡ぎだす文章というのが独特で、とにかく魅力的だ。どことなくふんわりふわふわしているのに、掴みところがないということもなく、ふとした思考の転換や発想の奇妙さが、どこにもかしこにもちりばめられている。
特に会話が果てしなく魅力的で、どの会話を切り取っても、自分の自分の人生にはありえなかったしこれからもありえないだろう会話だし、あーそんな会話してみたいなと思わせてくれる。自分の人生に貼り付けてみたらどうにも違和感の残る会話であるのだが、その会話が不自然ではない世界を作り上げてしまう。
そういう魅力的な作品である。
デビュー時そこまで騒がれなかったような気もするが、その後出した「重力ピエロ」「ラッシュライフ」が出世作となった。
その内、「ラッシュライフ」の方はまだ読んでいないのだが、「重力ピエロ」は読んだ。作家紹介なわけで、作品紹介ではないから少し控えるけど、放火と兄弟の優しい物語だ。会話や世界はまさに伊坂テイストであり、しかもミステリーとしても飛躍し、それ以後「このミステリーがすごい!」というエンターテイメント系のランキングで毎年の常連なったし、「重力ピエロ」では直木賞候補になった。
その後、「陽気なギャングが地球を回す」「チルドレン」「グラスホッパー」「アヒルと鴨のコインロッカー」と立て続けに作品を発表し、今年発表した三作全て「このミス」のランキング20位以内に入った。「チルドレン」「グラスホッパー」は直木賞候補になり、「アヒルと鴨のコインロッカー」では吉川英字文学新人賞を受賞。短編でも日本推理作家協会賞を受賞し、今最ものっている作家である。
仙台在住で、作品のほとんどが仙台を舞台にしている。1971年の生まれでかなり若い。「重力ピエロ」で直木賞候補になった時は、70年代生まれで初めての直木賞候補だった。
俺は、本当にどれでもいいから伊坂の作品に触れて欲しいと思います。といっても古本屋ではなかなか見付かりません。最近、半額でもいいから買おう、とおもっているけど、全然見つけられません。未だに「オーデュボンの祈り」「重力ピエロ」「陽気なギャングが地球を回す」の三作しか読んでいません。
というわけで、お金に余裕がある方は是非新刊で買ってください。そしてそれを古本屋に流してください。それを俺が買いますので。お願いします。
伊坂幸太郎私設ファンサイト
Books and Cafe
DOG IN YARD!
さて、伊坂幸太郎という名前を聞いたことがあるでしょうかね?ミステリ界では急成長の注目株、気鋭の若手作家なんだけど、一般にはそんなでもないかもしれない、と思う。
デビュー作は、新潮ミステリ倶楽部賞という新人賞を受賞した「オーデュボンの祈り」である。あらすじだけでも結構読みたい、と思ってしまうのではないかと思うぐらい、ストーリー自体面白い。
仙台在住だった男は、知らぬ間にいつのまにかある島で目が覚めた。その島は、そこに住んでいる人に言わせれば、「日本」という国からは鎖国状態なのだという。その島にはさまざま不思議な人間が揃い踏みで、嘘しか言わない画家、殺人を許された男、食べ過ぎて動くことの出来なくなった八百屋のおばさん、など。
その中にいて、最も不思議な存在は、人の言葉を喋り、未来を見通すことのできる「カカシ」だ。優午というそのカカシはしかし、ある日バラバラにされて頭を持ち去られているのが発見される。さて、未来を知ることの出来るカカシは、一体何故自分の死を知ることが出来なかったのか・・・
どうでしょうか?誰がこんな不思議でシュールな設定の話を考えることができるでしょう。ある意味ファンタジーでありながら、間違いなくミステリーでもあり、どのページを読んでもワクワクし、すぐにでもページを捲りたくなる。
それ以上に、彼が紡ぎだす文章というのが独特で、とにかく魅力的だ。どことなくふんわりふわふわしているのに、掴みところがないということもなく、ふとした思考の転換や発想の奇妙さが、どこにもかしこにもちりばめられている。
特に会話が果てしなく魅力的で、どの会話を切り取っても、自分の自分の人生にはありえなかったしこれからもありえないだろう会話だし、あーそんな会話してみたいなと思わせてくれる。自分の人生に貼り付けてみたらどうにも違和感の残る会話であるのだが、その会話が不自然ではない世界を作り上げてしまう。
そういう魅力的な作品である。
デビュー時そこまで騒がれなかったような気もするが、その後出した「重力ピエロ」「ラッシュライフ」が出世作となった。
その内、「ラッシュライフ」の方はまだ読んでいないのだが、「重力ピエロ」は読んだ。作家紹介なわけで、作品紹介ではないから少し控えるけど、放火と兄弟の優しい物語だ。会話や世界はまさに伊坂テイストであり、しかもミステリーとしても飛躍し、それ以後「このミステリーがすごい!」というエンターテイメント系のランキングで毎年の常連なったし、「重力ピエロ」では直木賞候補になった。
その後、「陽気なギャングが地球を回す」「チルドレン」「グラスホッパー」「アヒルと鴨のコインロッカー」と立て続けに作品を発表し、今年発表した三作全て「このミス」のランキング20位以内に入った。「チルドレン」「グラスホッパー」は直木賞候補になり、「アヒルと鴨のコインロッカー」では吉川英字文学新人賞を受賞。短編でも日本推理作家協会賞を受賞し、今最ものっている作家である。
仙台在住で、作品のほとんどが仙台を舞台にしている。1971年の生まれでかなり若い。「重力ピエロ」で直木賞候補になった時は、70年代生まれで初めての直木賞候補だった。
俺は、本当にどれでもいいから伊坂の作品に触れて欲しいと思います。といっても古本屋ではなかなか見付かりません。最近、半額でもいいから買おう、とおもっているけど、全然見つけられません。未だに「オーデュボンの祈り」「重力ピエロ」「陽気なギャングが地球を回す」の三作しか読んでいません。
というわけで、お金に余裕がある方は是非新刊で買ってください。そしてそれを古本屋に流してください。それを俺が買いますので。お願いします。
伊坂幸太郎私設ファンサイト
Books and Cafe
DOG IN YARD!
福井晴敏
自分の好きな作家を紹介するカテゴリーを作りました。不定期に更新しようと思います。
というわけで今回は福井晴敏です。
今まで500冊以上の本を読んできました。そのジャンルは多岐に渡り、ミステリーだけでなく、ホラーもサスペンスも冒険も、さらに文学っぽいものや児童文学賞を受賞しているものも読んだりしています。まあ最近はジャンルボーダレスで、ジャンルに分類するなんていう行為は無意味になんですが。
その中で一番よかった作品は、といわれれば、迷わず「終戦のローレライ」を選択します。「よかった作品」の定義は難しいですが、読んだ後どれだけ読んでよかったと思えたか、ぐらいの意味だと思ってください。
かなり長い作品で、読むのに躊躇う人が多い作品かもしれませんが、是非挑戦して欲しいと思います。今月文庫が発売されて、全四巻なんだけど、1・2巻が今月、3・4巻が来月でます。そして三月には映画「ローレライ」が公開されます。
さてそんな福井晴敏ですが、デビューは江戸川乱歩賞です。この賞を受賞してデビューした作家には、西村京太郎・東野圭吾・森村誠一・栗本薫・野沢尚・桐野夏生・真保裕一など大御所が揃う、ミステリー系の新人賞の中でも最も権威のある賞だと言っていいでしょう。
その江戸川乱歩賞を「Twelve Y.O.」で受賞します。ちなみに前年にも「川の深さは」で江戸川乱歩賞に応募しましたが、野沢尚の「破線のマリス」に破れます。このとき、福井の作品を受賞作にすべきかどうかは今でも語り草になっているそうです。ちなみにその応募作は、手を加えて出版されています。
江戸川乱歩賞受賞の翌年、「亡国のイージス」を発表します。この作品で一躍進化したと言ってもいいでしょう。乱歩賞受賞作は「このミス」でも文章的に難があるという評価をされていたし、俺もそんなに面白いとは思わなかったのだけど、この「亡国のイージス」は傑作です。俺の中でのランキングでも5位以内の作品です。
「亡国のイージス」で大藪春彦賞・日本冒険小説協会賞・日本推理作家賞をトリプル受賞し、直木賞候補にもなるという快挙を成し遂げたあと、数年間沈黙します。そして、その沈黙は「終戦のローレライ」で破られます。
「終戦のローレライ」は他を完全に圧倒させ沈黙してしまうほどの傑作です。最高です。これには裏話があって、何とかという監督が「亡国のイージス」を読んで感動し、映画化することを前提として作品を書いてくれ、と打診して福井が書いたのが「終戦のローレライ」だという話があります。
「終戦のローレライ」でも、日本冒険小説協会賞と吉川英字文学新人賞を受賞し、直木賞候補になりました。すごいものです。
異色作は「∀ガンダム」という作品です。無類のガンダム好きだという著者は、ガンダムシリーズの中の「∀ガンダム」の設定を借り、まるで別の作品(というのはどこかに書いてあったことで、俺はガンダムシリーズの方の「∀ガンダム」を知りません)を書き上げました。これも読みましたが、ガンダムを一切まったく知らない俺でも、かなり感動できました。すごいです。筆力が圧倒的で、登場人物が魅力的です。ガンダムが好きな人は(そうでない人も)読んでみてください。
ちなみに俺が持っているのは新書版ですが、文庫はタイトルが違います。幻冬社文庫で「月に繭 地には果実」です。
さて、今年は福井年です。既刊の「終戦のローレライ」「亡国にイージス」は映画化され、さらに「戦国自衛隊」という、かなり昔に映画になった作品を、福井が新たに手を加え脚本を書き上げたものが映画化されます。期待大です。
最新作は「6ステイン」という著者初の短編集で、何故か帯が縦についているという変り種です。この作品も直木賞候補になっていますが、受賞には至りませんでした。
次どんな作品を書くのか、とても気になる作家です。
福井晴敏オフィシャルサイト
jidori
福井晴敏情報局
甘栗屋
椿星
というわけで今回は福井晴敏です。
今まで500冊以上の本を読んできました。そのジャンルは多岐に渡り、ミステリーだけでなく、ホラーもサスペンスも冒険も、さらに文学っぽいものや児童文学賞を受賞しているものも読んだりしています。まあ最近はジャンルボーダレスで、ジャンルに分類するなんていう行為は無意味になんですが。
その中で一番よかった作品は、といわれれば、迷わず「終戦のローレライ」を選択します。「よかった作品」の定義は難しいですが、読んだ後どれだけ読んでよかったと思えたか、ぐらいの意味だと思ってください。
かなり長い作品で、読むのに躊躇う人が多い作品かもしれませんが、是非挑戦して欲しいと思います。今月文庫が発売されて、全四巻なんだけど、1・2巻が今月、3・4巻が来月でます。そして三月には映画「ローレライ」が公開されます。
さてそんな福井晴敏ですが、デビューは江戸川乱歩賞です。この賞を受賞してデビューした作家には、西村京太郎・東野圭吾・森村誠一・栗本薫・野沢尚・桐野夏生・真保裕一など大御所が揃う、ミステリー系の新人賞の中でも最も権威のある賞だと言っていいでしょう。
その江戸川乱歩賞を「Twelve Y.O.」で受賞します。ちなみに前年にも「川の深さは」で江戸川乱歩賞に応募しましたが、野沢尚の「破線のマリス」に破れます。このとき、福井の作品を受賞作にすべきかどうかは今でも語り草になっているそうです。ちなみにその応募作は、手を加えて出版されています。
江戸川乱歩賞受賞の翌年、「亡国のイージス」を発表します。この作品で一躍進化したと言ってもいいでしょう。乱歩賞受賞作は「このミス」でも文章的に難があるという評価をされていたし、俺もそんなに面白いとは思わなかったのだけど、この「亡国のイージス」は傑作です。俺の中でのランキングでも5位以内の作品です。
「亡国のイージス」で大藪春彦賞・日本冒険小説協会賞・日本推理作家賞をトリプル受賞し、直木賞候補にもなるという快挙を成し遂げたあと、数年間沈黙します。そして、その沈黙は「終戦のローレライ」で破られます。
「終戦のローレライ」は他を完全に圧倒させ沈黙してしまうほどの傑作です。最高です。これには裏話があって、何とかという監督が「亡国のイージス」を読んで感動し、映画化することを前提として作品を書いてくれ、と打診して福井が書いたのが「終戦のローレライ」だという話があります。
「終戦のローレライ」でも、日本冒険小説協会賞と吉川英字文学新人賞を受賞し、直木賞候補になりました。すごいものです。
異色作は「∀ガンダム」という作品です。無類のガンダム好きだという著者は、ガンダムシリーズの中の「∀ガンダム」の設定を借り、まるで別の作品(というのはどこかに書いてあったことで、俺はガンダムシリーズの方の「∀ガンダム」を知りません)を書き上げました。これも読みましたが、ガンダムを一切まったく知らない俺でも、かなり感動できました。すごいです。筆力が圧倒的で、登場人物が魅力的です。ガンダムが好きな人は(そうでない人も)読んでみてください。
ちなみに俺が持っているのは新書版ですが、文庫はタイトルが違います。幻冬社文庫で「月に繭 地には果実」です。
さて、今年は福井年です。既刊の「終戦のローレライ」「亡国にイージス」は映画化され、さらに「戦国自衛隊」という、かなり昔に映画になった作品を、福井が新たに手を加え脚本を書き上げたものが映画化されます。期待大です。
最新作は「6ステイン」という著者初の短編集で、何故か帯が縦についているという変り種です。この作品も直木賞候補になっていますが、受賞には至りませんでした。
次どんな作品を書くのか、とても気になる作家です。
福井晴敏オフィシャルサイト
jidori
福井晴敏情報局
甘栗屋
椿星