半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力(山田ズーニー)
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内容に入ろうと思います。
本書は、まさにタイトル通りの本、いやそれだと語弊がありますね、タイトル以上の本でして、働く上で必要な「コミュニケーション力」全般について書かれてる作品です。基本的には、新入社員を想定して書かれている作品ですが、著者も言っているように、新入社員でなくとも、組織の中でうまくいっていないと感じるすべての人に向けられている作品です。
いやホント、この作品はちょっと素晴らしいと思います!僕は、サラリーマンになるってのが中学生の頃から嫌で嫌で仕方なくて(別にサラリーマンのなんたるかを知っていたわけでもないんですけど)、まあ色々あって結局就活とかしなかったんですけど、もしも、もしも万が一この作品を大学時代に読んでいたら、僕、就活していたかもしれません!サラリーマンになろうとしたかもしれません!なんて風に思わせてくれるほど、「仕事」や「サラリーマン」というものへの見方が一変した作品です。今まで勝手にイメージだけで「サラリーマン」とか「組織」っていうものを嫌ってたのだけど、「組織の中で働くこと」をこんな風に捉えたらいいのか!と目を開かされた思いで、これはメチャメチャいい作品に出会ったな、という感じです。
「おとなの進路教室。」が、僕が初めて読んだ山田ズーニー作品ですけど、「おとなの進路教室」が「モヤモヤとした、漠然としたものをどうにか文章に変換することで、「働き方」というものを読者に考えさせる」という作品だったのに対して、本書は、もっと具体的ですぐに実践できそうな内容に溢れています。そういう意味でかなり対称的な作品ではありますが、どちらの作品にも恐ろしく感銘を受けました。山田ズーニー、凄いなぁ。
僕はあまり自己啓発的な本を読むことはないからあくまでも勝手なイメージなんだけど、世の中にある自己啓発的な本ってどうしても、「なんとなく上の方にいる人が」「上にいる人の目線から」「こうやったらほらここまで登ってこれるぜ」というようなことが書かれている印象があります。でも、山田ズーニーの作品への印象は全然違って、「下にいる人、弱い人と同じ土俵に立って」「寄り添うようにしてアドバイスをしてくれる」という感じで、こういう上から引っ張るんじゃなくて、お尻を押してくれるような本もあるんだなぁ、と感心するわけなのであります。
本書は、「会社」という謎めいた不自然な捉えどころのない「大海」を、「どんな風に泳いでいけばいいのか」を示唆してくれる作品です。それは、これから「大海」に飛び込む人にもそうだけど、すでに「大海」の中にいて、でも自分の立ち位置を見失っていたり、進むべき方向性が見通せなかったり、浮かび続けていることにさえ億劫になって沈んでしまいたいと思っているにも非常に助けになる作品だと思います。
僕はさっき、本書を読んで新しい視点に気付かされた、と書いたけど、本書に書かれている「具体的なテクニック」については、割と頭の中では理解できていることが多いな、と思いました。日常的にやっている(はず)のことも書かれていたし、日常的にはやってないけど、それをやらなければならない状況になったらきっと出来るだろうな、と思うことも書かれていました。そういう意味で本書は、人によっては当たり前だろ、と思えるようなことが書かれていると思うし、僕自身も、そういう「具体的なテクニック」そのものに感動したわけではなかったりします(もちろん、なるほどそういうやり方があるかぁ!と思わされることもあるのですけど)。
僕が本書を凄いなと思う点は、
①そのテクニックを著者が、他者に説明できている、という事実
②何故そのテクニックを使うのか?という点に重心が置かれている点
だと思います。
①については、本当に感心させられました。僕は、本書に書かれているようなことは、やっていたり、やろうと思えば出来るだろうと思っているんです。でも、それを人に説明しろと言われたら、結構困りますね。感覚的にやっている部分が結構あるので、どうやっているのかを教えてくれと言われることがあっても、たぶん説明できないだろうと思います。
本書では著者はそれを、言葉にしてきちんと伝えている。そこは、僕には出来ないなぁ、と思うのでした。
②については、凄く重要なポイントだと思っていて、僕はどちらかと言えば「具体的なテクニック」そのものではなく、「何故そのテクニックを使うのか」という部分に感心させられたのだろうなと感じています。
その、何故そのテクニックを使うのかを説明する過程で、会社とはどういう組織なのか、上司とはどういう存在なのか、新人というのか会社というチームの中でどんな風に見られているのか、などの説明が入り、それらを読むことで僕は、「サラリーマン」や「会社」というものへの新しい視点を獲得することが出来たのでした。凄いなぁ、と思います、山田ズーニー。
さて、これから書くことを全部POPにするかは別として、この本につけるPOPのフレーズはこんな感じになる予定。
正論を言ってるのに通じない!→P15
「人の話を聞かないよね?」って言われる…→P24
上司に自分の意見が通らない!→P38・P114
説明や報告が苦手…→P51・P125・P189
自分はそんな人間じゃないのに、誤解されてる…→P64
職場の人間関係とかめんどくさい…→P74・P200
自己紹介って苦手…→P83
文章の書き方がわかりません…→P92
文章を「ちゃんと読んでる」つもりなんだけど…→P101・P105
お詫びってどうしたらいいの?→P134・P218
企画書って書くの苦手…→P149
電話するの苦手だからメールでいいよね→P155
上司とうまくやっていけない…→P186
自己アピールって苦手…→P200
というわけで、気になったものだけざっくりと、どんなことが書かれているのか抜き出してみようと思います。
【正論が通らない】
『入社半年、新人の正論はなぜ通じないのか?言っていることが問題ではない。言い方が問題でもない。
「何を言うかより、だれが言うか」が問題なのだ。』
→だからこそ、自分のメディア力を高めなくてはいけない
【信頼されるための人の話の聞き方】
『あなたの聞き方は相手に不安を与えている。「ちゃんと聞いてるか」とよく確認される人、「人の話をちゃんと聞け」と注意される人も同じだ。
相手に、聞いていることを証明しながら聞く。
これが、まだ信頼関係を築く途上の人には、とくに求められる聞き方なのだ』
→だからこそ、「要約力」を身につけよう!
【上司に意見が通らない】
『「おべっか」も、「策略」もやめとこう。それらは結局「ウソ」だ。カンのいい上司にはわかる。それに、偽りで操作して意のままになる上司なんて今後、尊敬する気になるだろうか?
結論からいうと、新人にとっての「人を説得する力」とは、人を変える力ではない。「人を認める力だ。
新人よ、上司を説得するな!
上司を認めろ!」』
【誤解されてしまったら…】
『誤解を受けたときは、
1.相手の最大の関心は何か?
2.それに対し理解をしっかり注ぐ
3.相手と通じ合うことでメディア力を回復する』
→「違い」ではなく「共感ポイント」を探そう!
【自己紹介が苦手…】
『「連続性」が信頼を得るポイントだ。連続性がまったく感じられないと、人は、その人物に不安を感じるし、逆に、なにか連続性が感じられると、「この人は一貫しているな」と安心する。
つまり、「過去、現在、未来のつながりをもって自己を語る」。これができれば、初対面でも信頼される可能性大だ。』
【企画書を書くのが苦手…】
『主語を発見する。
それは、「関係性の中での自己」を発見することであり、「自分を取り巻く事実関係」を明確にすることでもある。
「いまこれを書いている主語はいったいだれなのか?」』
【電話は苦手だからメールで済ませてしまおう】
『メールは、書き手がニュアンスを込められない分、読み手がどうとでもニュアンスを込めて読んでしまう。そのため、ある言葉の意味が「増幅」して受け取られるという避けられない性質がある。
それゆえ、メールには、
1.どうニュアンスを込めて読もうとブレない言葉
2.10倍、100倍にして受け取られても支障がない言葉
しか、実は書いてはいけないのだ』
【自己アピールが苦手…】
『アピール不足だといわれるとき、必要なのは、アピールではない。必要なのは、「コミュニケーション」なのだ。実力以下に見られる人のほとんどが、上司や同僚と「コミュニケーション不足」なのだ』
→だから、必要な時以外もきちんとコミュニケーションを取ろう!
最後に。本書を読んで、「読書」というものを取り巻く厳しさを再度思い知らされることになった。
ライティングの授業などで大学に出張すると、教授からこういう話を聞くのだという。
『文章を読め、と言われたら、学生は、さほど苦でもなく、すらすら最後まで読む。けれども、では筆者は何を言いたかったのか?と聞くと、説明できない人がいる』
著者はこれに対して、こう分析する。
『これはひと言で行って、「自分の世界から一歩も出ずに読んでいる」からだ』
これは、なんとなく分かる。それが小説であれノンフィクションであれ実用書であれ、本にはそれを書いた人間の「文脈」というものが存在する。それは「登山道」のようなものだろうか。この道を進んでくれたら、筆者が期待したところまでたどり着けるかもしれませんよ、という道のようなものだろう。
しかし、「自分の世界から一歩も出ずに読む人」は、その「登山道」を通らないのだろう。だからもちろん、頂上へたどり着ける可能性もないし、そもそも山を登っているのでもないのかもしれない。タケコプターを使って、気になる花や風景を見かけたらそこに降り立ってみて、それに満足したらまたタケコプターで気になるものが見つかる場所まで飛び去っていく。きっとそういうことなんだろう。
『つまり、読み手は、自分にとって心地よい部分だけを拾って読み、それ以外の情報はスルーしてしまっているのだ。努力しなくてもするっとわかる部分、直接役立つ心地よい部分だけを拾い読みして、その結果、自分にとって心地よい部分と部分をつないだ、都合のいい世界が像を結んでおり、本の全体像すら描けない。
ましてや、「筆者が一冊を通して本当に言いたかったことは何か」など、筆者の世界に行っていないのだから説明のしようがない。というか、この読者にとっては、もともと関心のない、どうでもいいことだったのだ。
情報化社会、ネット社会になって、私たちは、文字量にはたくさん触れるようになった。しかし、それらをザッピングしながら、自分側の都合・必要に引きつけて読むようになった』
僕は、本はどんな風に読んだって構わない、と思っている人間だ。読書感想文とか大嫌いだったし、国語のテストに出てくくる「作者の気持ちがうんたら」というのにはずっとうんざりさせられていた。だから、「筆者の世界に飛び込んで本を読まなければ読書とはいえない」なんて言うつもりはまったくない。それぞれ、自分の好きな様に楽しめばいい。
ただ、会社に入れば、そうは言っていられない。チームで仕事をする以上、同じ文章を違った文脈で勝手に読むことは許されないだろう。統一した意志の元、同じ方向を向いて注力しなければならない。その時に、「自分の世界から一歩も出ない読み方」しか出来なければ、それは大きなハンディキャップとなるだろう。
そういう意味で僕は、「自分の世界から飛び出て、相手の文脈に飛び込んで本を読む」という訓練をしなくてはいけない、と本書を読んで感じました。本読みからすれば、いやそんなん当たり前じゃないか?と思うことだろうけど、文章表現力・コミュニケーション力育成の現場に直接関わる著者の視点では、それが出来ないのが現状なのだそうだ。というわけで、本は読んだ方がいいし、どうにかして周りの人にも読ませた方がいいでしょうなぁ。
とにかく素晴らしい作品です!自分ではきちんとやっているつもりなのに、何故か組織の中でうまくやっていけていないと感じているすべての方に読んで欲しい作品です。
山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力」
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