下町ロケット(池井戸潤)
こんな仕事がしたい!!
もうほんっとうに、こんな仕事がしたいぞ!!
とりあえず内容に入ります。
佃航平はかつて、宇宙科学開発機構の研究者として、ロケットの要であるエンジンの製作に携わっていた。
セイレーンと名付けられたそのロケットは、しかし打ち上げに失敗した。
膨大な額の国費を投入しての失敗に、最終的に佃は責任をとって辞めざるを得なくなった。打ち上げ失敗の原因は、エンジンシステムの根幹を成すバルブシステムにあったからだ。
そうして佃は、元々継ぐつもりのなかった、父が創業した町工場の社長に収まることになった。
大田区にあり、資本金三千万円、売上百億円足らずの、まさに中小企業だ。小型エンジンを主力としてはいるが、研究開発に無尽蔵のお金を注ぎ込み、すぐにお金に変わるわけではない技術研究にも余念がない。というか、主力であるはずの小型エンジンの研究費を削ってでもチャレンジングな研究を続ける方針に、苛立っている若手もいる。そんな状況だ。
しかし、いずれにせよ、佃製作所の技術力はトップレベルだ。
なのに、佃製作所は様々なとんでもない事態に見舞われる。
ライバル会社であるナカシマ工業が、佃製作所を特許侵害で訴えてきた。
ナカシマ工業は、流行りものがあればそれに乗っかって類似の技術を提示するやり口で成長してきた。一部上場企業であるが、その横暴さに泣かされた中小企業は多い。ナカシマ工業の法定戦略はもはや熟練の域に達しており、今回の訴訟も、どちらかと言えばナカシマ工業の方が佃製作所の特許を侵害しているとさえいえる状況なのに、佃製作所の特許の不備を突き、訴訟を長引かせて佃製作所の経営が行き詰るのを待つ、といういつものナカシマ工業のやり口だ。
最大手の取引先である京浜マシナリーが、エンジンの内製化に踏み切ったことで取引を取りやめると言ってきたのも痛い。銀行からの融資もなかなか引き出せず、そんな中でのこの訴訟である。一部上場企業であるナカシマ工業が訴訟に踏み切ったのだからそこには相応の何かがあるのだろうと、銀行もこれまでの取引先も佃製作所から離れつつあった。
一方、帝国重工の宇宙航空部宇宙開発グループは、ある事実に驚愕していた。
同グループは、政府から民間委託された大型ロケットの製造開発をイッテに引き受け、宇宙航空関係の国内最大のメーカーである。
その帝国重工は、社長の肝入りの「スターダスト計画」という壮大なプロジェクトを立ち上げ、すべての技術を内製化し、宇宙航空開発で世界のトップに立とうというプランを推し進めていた。
しかしその計画は早くも躓いた。ロケットエンジンのキーテクノロジーであるバブルシステムを帝国重工でも開発したのだが、その特許がタッチの差で別の会社が申請していたというのだ。
それが、佃製作所だ。
担当の財前は、佃製作所からその特許を買い取るために交渉に赴くが…。
というような話です。
いやはやいやはや!!もう素晴らしいのなんの!!もうかんっぺきに最高で素晴らしい物語でした!!僕の中で、今年読んだ本の中でダントツのトップはもう決まってたんですけど、ちょっと考えなおさないといけないかも。これも、今年読んだ本のトップだと言いたくなる作品だなぁ。小説読んで泣いたのなんか、ホント久しぶりですよ。
もう、初めにも書いたけど、とにかく読んでてずっと思ったのは、「こんな会社で仕事をしたい!!」ってことです。
大人になって、お金を儲けることの大事さは、そこかしこで耳にするし、昔よりも理解は出来ているはずだと思う。お金がなければ何も出来ないし、前に進めないというのはもちろん当然の事実である。
でも、じゃあお金を稼げればそれでいいのだろうか?と思う。「お金を稼ぐこと」それだけが仕事の目的になってしまうのが、果たして正しいのだろうか?
僕には、やはりそうは思えない。
多くの人が本書を読んで、ナカシマ工業に腹が立つだろう。彼らはまさに、法律の範囲内であれば、「どんな手段であろうとお金を儲けられるならそれでいい」という哲学の持ち主だ。
確かに、それは否定出来ない部分はあるかもしれない。本書で描かれているだけでは、それは判断出来ないだろうと思う。例えばナカシマ工業が、儲けて儲けて儲けまくったお金を、何か素晴らしいことに使っているなら、まあそれでもナカシマ工業のやり口は認めたくないけど、でも少しは考えを変えるかもしれない。だから、本書で描かれているだけの情報から判断するべきではないのだろう。
でもさ、それでもさ、ナカシマ工業ムカつく!!!
たぶん現実の世界でも、こういうことは起こりうるのだろうと思う。よくテレビなんかにも出てくる、日本一の町工場経営者(名前は忘れてしまった)は、自社で開発した技術の特許は取っていない、というようなことを前に言っていたように思う。それは、どうせ誰も真似できないからだ、という(うろ覚えだから正確ではないかもしれない)。もちろん、そこまでとんでもない技術力を持っていればそんな風にも言えるのだろうけど、多くはそうじゃない。
それを、ただ企業規模が大きいからというだけの理由で食い物にする権利が、一体誰にあるというんだろう。本当に、ナカシマ工業のような会社では働きたくない。結局本書で描かれている範囲では、ナカシマ工業の人間でまともな人間は一人も出て来なかった。あー、ホント早くナカシマ工業なんか潰れて欲しいわ!!
銀行にも腹が立つ。
自分たちに都合のいい時は擦り寄り、都合が悪くなるとさっさと退散する。それは、銀行が描かれる色んな小説(まあ主に池井戸潤の作品だったはずだけど)を読んで知ってたけど、相変わらずムカつくなと思う。
状況が逆転してからの佃航平の啖呵には、スカッとしました。「やはりビジネスはお互いの信用ですから」という言葉を口に出してしまう佃は経営者としては未熟者なのかもしれないけど、でも本当にそう思うし、それを毅然と言い放てる佃は素晴らしいと思う。
そして殿村ですよね。殿村、好きです、ホント!
殿村は、佃製作所の主力銀行であり、京浜マシナリーが契約を打ち切ってきたタイミングで佃製作所への融資を渋った白水銀行から佃製作所に出向扱いで来ている社員だ。どこかよそよそしく、口調も堅い。銀行屋のような言い分に、佃も何度もイライラさせられてしまう。
でも次第に、殿村はただ不器用なだけなんだ、と分かってくる。
この殿村が、ホントいいキャラなんだよなぁ。要所要所で見せつけてくれる。特に、緊迫したとある場面で、「何か勘違いされていませんか」と斬りこんでいった殿村のかっこ良さと言ったら!!ホントもう、感動的ですよ。
帝国重工にも、もう腹が立つ腹が立つ。帝国重工は、ナカシマ工業なんかとも比べ物にならないぐらいの、国内最大メーカーであって、随所に尊大さが見え隠れする。
あー、マジでムカつく!!
そんな帝国重工に、佃製作所は悩みながらも闘う道を選ぶ。それは、帝国重工との闘いではない。自らとの闘いの道だ。
佃は、「なんのために働くのか?」という問いかけを、社員にも、そして自らにもする。
佃が、不満を持った若手社員に話す「2階建ての家」の話はまさにその通りだなと思う。会社の基盤がガタガタの時に、佃は敢えて挑戦の道を進む。それを快く思わない社員も多い。しかし、佃の決断は、「なんのために働くのか?」という問いと正面から向きあったその結果だ。結果的にこの物語では、彼らの挑戦は成功する(ぐらいのことは書いても大丈夫ですよね?)。しかし、もし彼らの挑戦が失敗に終わったとしても、佃の決断は正しいと僕は思う。いや、佃のような立場の人間になったことはないから、佃のような決断を正しいと思える人間になりたい、と表現しておこうかな。
佃製作所は冒頭から、様々な形で内部の不満や争いを抱えている。決して、常に一枚岩だったわけではない。佃も、経営者としては不器用だ。決してうまく立ち回れる人間ではない。
しかし彼らが、徐々に一つにまとまっていく。「佃個人の夢」と揶揄されたプロジェクトが、「佃製作所全体の夢」に変化していく。その過程が本当に素晴らしい!!何度も書くけど、ホントこんな会社で働きたいよなぁ。最後の最後まで、社員に恵まれてるしなぁ。
夢は、それを叶えられるだけのサイズを獲得しなくては実現できない。そんな風に思うかもしれない。本書の例でいれば、ロケット開発を請け負う帝国重工の研究者でなければ、ロケットに携われないと思ってしまうかもしれない。
でも、帝国重工からすれば吹けば飛ぶような中小企業でも、その夢を叶えることが出来る。彼らは、ロケット全体というサイズに見合う大きさを持っていない。しかし、ロケット全体の中で最重要、それなしではロケットを発射させられないという部品について、日本一ではなく世界一の技術力を有していた。
誰にでも夢はあるだろう。そしてその夢は、大きすぎてなかなか叶えられないと思えてしまうかもしれない。でも、案外そうではないのかもしれない。全体から見ればほんの一部に関わることが、その夢全体を担うことになる可能性だってある。そんなことを本書は示してくれているように思う。だからこそ、こんなに爽快な物語なのだ。
本書は、冒頭から訴訟問題というクリティカルな問題から始まるのだけど、そんなことが大した問題とは思えなくなるほど、帝国重工とのやり取りはスリリングだ。元々は、ビジネスの話だった。佃製作所が持つ特許を、帝国重工がいくらで買うか、という話だった。しかし次第にそれは、ビジネスと呼ぶには熱くなりすぎていく。どちらが何を売り、どちらが何を買うかという話ではなくなっていく。プライドなんていうちっぽけなものも、時間と共にゆっくりと剥がれ落ちていく。
残ったものはなんだろう。ちょっと書くのは恥ずかしいけど、「魂」かなぁ、なんて思う。「魂」は人だけに宿るのではない。会社にも宿るのだ。そしてそれは、巨像をも跳ね飛ばすほどの力を持つ。素晴らしいではないか!!
色々書きたいんだけど、これぐらにしとこうかな。本当に素晴らしすぎる物語でした。今更読んだのかよ、って感じですけど(笑)、本当にこの作品に出会えてよかったなと思います。最後にまた書きます。こんな仕事がしたい!!
池井戸潤「下町ロケット」
もうほんっとうに、こんな仕事がしたいぞ!!
とりあえず内容に入ります。
佃航平はかつて、宇宙科学開発機構の研究者として、ロケットの要であるエンジンの製作に携わっていた。
セイレーンと名付けられたそのロケットは、しかし打ち上げに失敗した。
膨大な額の国費を投入しての失敗に、最終的に佃は責任をとって辞めざるを得なくなった。打ち上げ失敗の原因は、エンジンシステムの根幹を成すバルブシステムにあったからだ。
そうして佃は、元々継ぐつもりのなかった、父が創業した町工場の社長に収まることになった。
大田区にあり、資本金三千万円、売上百億円足らずの、まさに中小企業だ。小型エンジンを主力としてはいるが、研究開発に無尽蔵のお金を注ぎ込み、すぐにお金に変わるわけではない技術研究にも余念がない。というか、主力であるはずの小型エンジンの研究費を削ってでもチャレンジングな研究を続ける方針に、苛立っている若手もいる。そんな状況だ。
しかし、いずれにせよ、佃製作所の技術力はトップレベルだ。
なのに、佃製作所は様々なとんでもない事態に見舞われる。
ライバル会社であるナカシマ工業が、佃製作所を特許侵害で訴えてきた。
ナカシマ工業は、流行りものがあればそれに乗っかって類似の技術を提示するやり口で成長してきた。一部上場企業であるが、その横暴さに泣かされた中小企業は多い。ナカシマ工業の法定戦略はもはや熟練の域に達しており、今回の訴訟も、どちらかと言えばナカシマ工業の方が佃製作所の特許を侵害しているとさえいえる状況なのに、佃製作所の特許の不備を突き、訴訟を長引かせて佃製作所の経営が行き詰るのを待つ、といういつものナカシマ工業のやり口だ。
最大手の取引先である京浜マシナリーが、エンジンの内製化に踏み切ったことで取引を取りやめると言ってきたのも痛い。銀行からの融資もなかなか引き出せず、そんな中でのこの訴訟である。一部上場企業であるナカシマ工業が訴訟に踏み切ったのだからそこには相応の何かがあるのだろうと、銀行もこれまでの取引先も佃製作所から離れつつあった。
一方、帝国重工の宇宙航空部宇宙開発グループは、ある事実に驚愕していた。
同グループは、政府から民間委託された大型ロケットの製造開発をイッテに引き受け、宇宙航空関係の国内最大のメーカーである。
その帝国重工は、社長の肝入りの「スターダスト計画」という壮大なプロジェクトを立ち上げ、すべての技術を内製化し、宇宙航空開発で世界のトップに立とうというプランを推し進めていた。
しかしその計画は早くも躓いた。ロケットエンジンのキーテクノロジーであるバブルシステムを帝国重工でも開発したのだが、その特許がタッチの差で別の会社が申請していたというのだ。
それが、佃製作所だ。
担当の財前は、佃製作所からその特許を買い取るために交渉に赴くが…。
というような話です。
いやはやいやはや!!もう素晴らしいのなんの!!もうかんっぺきに最高で素晴らしい物語でした!!僕の中で、今年読んだ本の中でダントツのトップはもう決まってたんですけど、ちょっと考えなおさないといけないかも。これも、今年読んだ本のトップだと言いたくなる作品だなぁ。小説読んで泣いたのなんか、ホント久しぶりですよ。
もう、初めにも書いたけど、とにかく読んでてずっと思ったのは、「こんな会社で仕事をしたい!!」ってことです。
大人になって、お金を儲けることの大事さは、そこかしこで耳にするし、昔よりも理解は出来ているはずだと思う。お金がなければ何も出来ないし、前に進めないというのはもちろん当然の事実である。
でも、じゃあお金を稼げればそれでいいのだろうか?と思う。「お金を稼ぐこと」それだけが仕事の目的になってしまうのが、果たして正しいのだろうか?
僕には、やはりそうは思えない。
多くの人が本書を読んで、ナカシマ工業に腹が立つだろう。彼らはまさに、法律の範囲内であれば、「どんな手段であろうとお金を儲けられるならそれでいい」という哲学の持ち主だ。
確かに、それは否定出来ない部分はあるかもしれない。本書で描かれているだけでは、それは判断出来ないだろうと思う。例えばナカシマ工業が、儲けて儲けて儲けまくったお金を、何か素晴らしいことに使っているなら、まあそれでもナカシマ工業のやり口は認めたくないけど、でも少しは考えを変えるかもしれない。だから、本書で描かれているだけの情報から判断するべきではないのだろう。
でもさ、それでもさ、ナカシマ工業ムカつく!!!
たぶん現実の世界でも、こういうことは起こりうるのだろうと思う。よくテレビなんかにも出てくる、日本一の町工場経営者(名前は忘れてしまった)は、自社で開発した技術の特許は取っていない、というようなことを前に言っていたように思う。それは、どうせ誰も真似できないからだ、という(うろ覚えだから正確ではないかもしれない)。もちろん、そこまでとんでもない技術力を持っていればそんな風にも言えるのだろうけど、多くはそうじゃない。
それを、ただ企業規模が大きいからというだけの理由で食い物にする権利が、一体誰にあるというんだろう。本当に、ナカシマ工業のような会社では働きたくない。結局本書で描かれている範囲では、ナカシマ工業の人間でまともな人間は一人も出て来なかった。あー、ホント早くナカシマ工業なんか潰れて欲しいわ!!
銀行にも腹が立つ。
自分たちに都合のいい時は擦り寄り、都合が悪くなるとさっさと退散する。それは、銀行が描かれる色んな小説(まあ主に池井戸潤の作品だったはずだけど)を読んで知ってたけど、相変わらずムカつくなと思う。
状況が逆転してからの佃航平の啖呵には、スカッとしました。「やはりビジネスはお互いの信用ですから」という言葉を口に出してしまう佃は経営者としては未熟者なのかもしれないけど、でも本当にそう思うし、それを毅然と言い放てる佃は素晴らしいと思う。
そして殿村ですよね。殿村、好きです、ホント!
殿村は、佃製作所の主力銀行であり、京浜マシナリーが契約を打ち切ってきたタイミングで佃製作所への融資を渋った白水銀行から佃製作所に出向扱いで来ている社員だ。どこかよそよそしく、口調も堅い。銀行屋のような言い分に、佃も何度もイライラさせられてしまう。
でも次第に、殿村はただ不器用なだけなんだ、と分かってくる。
この殿村が、ホントいいキャラなんだよなぁ。要所要所で見せつけてくれる。特に、緊迫したとある場面で、「何か勘違いされていませんか」と斬りこんでいった殿村のかっこ良さと言ったら!!ホントもう、感動的ですよ。
帝国重工にも、もう腹が立つ腹が立つ。帝国重工は、ナカシマ工業なんかとも比べ物にならないぐらいの、国内最大メーカーであって、随所に尊大さが見え隠れする。
あー、マジでムカつく!!
そんな帝国重工に、佃製作所は悩みながらも闘う道を選ぶ。それは、帝国重工との闘いではない。自らとの闘いの道だ。
佃は、「なんのために働くのか?」という問いかけを、社員にも、そして自らにもする。
佃が、不満を持った若手社員に話す「2階建ての家」の話はまさにその通りだなと思う。会社の基盤がガタガタの時に、佃は敢えて挑戦の道を進む。それを快く思わない社員も多い。しかし、佃の決断は、「なんのために働くのか?」という問いと正面から向きあったその結果だ。結果的にこの物語では、彼らの挑戦は成功する(ぐらいのことは書いても大丈夫ですよね?)。しかし、もし彼らの挑戦が失敗に終わったとしても、佃の決断は正しいと僕は思う。いや、佃のような立場の人間になったことはないから、佃のような決断を正しいと思える人間になりたい、と表現しておこうかな。
佃製作所は冒頭から、様々な形で内部の不満や争いを抱えている。決して、常に一枚岩だったわけではない。佃も、経営者としては不器用だ。決してうまく立ち回れる人間ではない。
しかし彼らが、徐々に一つにまとまっていく。「佃個人の夢」と揶揄されたプロジェクトが、「佃製作所全体の夢」に変化していく。その過程が本当に素晴らしい!!何度も書くけど、ホントこんな会社で働きたいよなぁ。最後の最後まで、社員に恵まれてるしなぁ。
夢は、それを叶えられるだけのサイズを獲得しなくては実現できない。そんな風に思うかもしれない。本書の例でいれば、ロケット開発を請け負う帝国重工の研究者でなければ、ロケットに携われないと思ってしまうかもしれない。
でも、帝国重工からすれば吹けば飛ぶような中小企業でも、その夢を叶えることが出来る。彼らは、ロケット全体というサイズに見合う大きさを持っていない。しかし、ロケット全体の中で最重要、それなしではロケットを発射させられないという部品について、日本一ではなく世界一の技術力を有していた。
誰にでも夢はあるだろう。そしてその夢は、大きすぎてなかなか叶えられないと思えてしまうかもしれない。でも、案外そうではないのかもしれない。全体から見ればほんの一部に関わることが、その夢全体を担うことになる可能性だってある。そんなことを本書は示してくれているように思う。だからこそ、こんなに爽快な物語なのだ。
本書は、冒頭から訴訟問題というクリティカルな問題から始まるのだけど、そんなことが大した問題とは思えなくなるほど、帝国重工とのやり取りはスリリングだ。元々は、ビジネスの話だった。佃製作所が持つ特許を、帝国重工がいくらで買うか、という話だった。しかし次第にそれは、ビジネスと呼ぶには熱くなりすぎていく。どちらが何を売り、どちらが何を買うかという話ではなくなっていく。プライドなんていうちっぽけなものも、時間と共にゆっくりと剥がれ落ちていく。
残ったものはなんだろう。ちょっと書くのは恥ずかしいけど、「魂」かなぁ、なんて思う。「魂」は人だけに宿るのではない。会社にも宿るのだ。そしてそれは、巨像をも跳ね飛ばすほどの力を持つ。素晴らしいではないか!!
色々書きたいんだけど、これぐらにしとこうかな。本当に素晴らしすぎる物語でした。今更読んだのかよ、って感じですけど(笑)、本当にこの作品に出会えてよかったなと思います。最後にまた書きます。こんな仕事がしたい!!
池井戸潤「下町ロケット」
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Comment
[4281]
[4282]
こんばんはです。
なんか涼しくなって来たなぁ、なんて余裕ぶってる俺は、ちょっとおかしいかな?(笑)
全体的に今年は涼しかった気がするんですよね(まあ、去年の暑さなんて覚えちゃいませんけどね 笑)
池井戸さんの作品を、結構連続で読みましたけど(ちょっと前に「ルーズベルト・ゲーム」を読みました)、どれもしっかりとした作品だし、ちゃんとエンタメとして読ませるし、巧いですよね。元銀行マンということを差し引いても、色んなことに詳し過ぎますね。「下町ロケット」では、実験に失敗した後、その原因を究明しようとするシーンなんか、凄いなと思いました。そんな描写も出来るんだなぁ、って。
ホント、なかなかこんなやりがいのある仕事って出来ませんよね。でも、好きかどうかじゃなくて、好きになるかどうか、って感じもします。佃製作所の人たちは、どういう経緯でそこで働き始めたにせよ、みんな会社を好きになっていったんだなぁって。それが羨ましいですね。
まあ、適度な息抜きということで、自分を許してあげましょう(笑) 昨日あるところで久々に『授業』を受けましたけど、そこである人が、『何かを10年続ければ、一生の資産になる』と言っていました。僕も、このブログは、もう8年ぐらいやってるのかなぁ…(笑)
芥川賞作品は、なかなか手を出せないのですよね。やっぱり、僕には合わないというか、ちょっと高尚な感じがしちゃってダメです。円城塔のやつは読みたいですけど。「極貧!セブンティーン」は、知らないなぁ、って思って調べてみたら、表紙は見たことありました(笑) 黒野さんは、まあ、大体ほどほどの作品が多い気がしますからね(笑)
まだ夏なのにこんな心配しても仕方ないですけど、
夏が終わるんだなぁって思うと、冬が来るんだなぁって思います。
お互い体には気をつけましょう!!
なんか涼しくなって来たなぁ、なんて余裕ぶってる俺は、ちょっとおかしいかな?(笑)
全体的に今年は涼しかった気がするんですよね(まあ、去年の暑さなんて覚えちゃいませんけどね 笑)
池井戸さんの作品を、結構連続で読みましたけど(ちょっと前に「ルーズベルト・ゲーム」を読みました)、どれもしっかりとした作品だし、ちゃんとエンタメとして読ませるし、巧いですよね。元銀行マンということを差し引いても、色んなことに詳し過ぎますね。「下町ロケット」では、実験に失敗した後、その原因を究明しようとするシーンなんか、凄いなと思いました。そんな描写も出来るんだなぁ、って。
ホント、なかなかこんなやりがいのある仕事って出来ませんよね。でも、好きかどうかじゃなくて、好きになるかどうか、って感じもします。佃製作所の人たちは、どういう経緯でそこで働き始めたにせよ、みんな会社を好きになっていったんだなぁって。それが羨ましいですね。
まあ、適度な息抜きということで、自分を許してあげましょう(笑) 昨日あるところで久々に『授業』を受けましたけど、そこである人が、『何かを10年続ければ、一生の資産になる』と言っていました。僕も、このブログは、もう8年ぐらいやってるのかなぁ…(笑)
芥川賞作品は、なかなか手を出せないのですよね。やっぱり、僕には合わないというか、ちょっと高尚な感じがしちゃってダメです。円城塔のやつは読みたいですけど。「極貧!セブンティーン」は、知らないなぁ、って思って調べてみたら、表紙は見たことありました(笑) 黒野さんは、まあ、大体ほどほどの作品が多い気がしますからね(笑)
まだ夏なのにこんな心配しても仕方ないですけど、
夏が終わるんだなぁって思うと、冬が来るんだなぁって思います。
お互い体には気をつけましょう!!
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相変わらずの残暑ですね。
毎年毎年記録更新とか…、天気の変化が激しすぎです(泣)。
早く秋らしいしっとりした天気になって欲しいです。
私もこの本を読みましたよ。池井戸さんは作品の構成がしっかりして、読み応え充分ですよね。しかも、感動物語ですし…。「空飛ぶタイヤ」の時も思いましたが、かなりの博識家ですし、金融関係や特許関連の知識は半端じゃありません。
今放映中のNHKの朝ドラ「梅ちゃん先生」の舞台も大田区蒲田の下町工場ですが、職人さんたちの技術のレベルは相当な物でしょう。日本が世界に胸を張って誇れることです。日本全体が低迷していますが、技術立国といきたいですね。
通りすがりさんがお書きのように、好きなことが仕事に繋がるというのが理想でしょうが、なかなかこれが…(泣)。私の場合、長いこと働いてきて、ヤッター!と誇れることは稀ですが皆無ではなかったのが多少の救いです(笑)。気象の勉強も仕事の一部と思っていますが、職場ではいい迷惑でしょうね(爆)。最近、気が抜けてしまって、1月の試験はどうなることやら…?天気図(主に高層天気図です)をルーペ片手に眺めています(泣)。
そういえば、芥川賞の「冥土めぐり」を読んでみました。こんな気位だけ高い家族とは縁を切りたいな、と思いつつ読み終えました。微妙な感じでした(笑)。それから「極貧!セブンティーン」も別のブログで話題になっていたので読みました。ちょっと劇画っぽく、面白いことは面白いですが、こんなに巧くいくのは不自然かも?とオバサンとしては思いました。でも、若い方を応援したい気持ちは充分ありますので、こういう成功譚も良いでしょう。
では、暑さに負けずにお互いに頑張りましょう。
いよいよ読書の秋到来といきたいですね。