黒夜行

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ディスコ探偵水曜日(舞城王太郎)

内容に入ろうと思います。
先に書いておくと、この物語はもうちょっととんでもなさすぎるので、僕にはまったく理解できていません!内容紹介も、上巻の最初の方をチラッと、っていう感じになります。
迷子専門のアメリカ人探偵ディスコ・ウェンズデイは、子供を探す出すプロだ。もちろんアメリカ生まれでアメリカで育ったのだけど、とにかく色々あって今は東京都調布市で6歳の山岸梢と一緒に暮らしている。娘、というわけではない。山岸夫妻の依頼で探しだした娘だったのだが、事情があって引き取りを拒否、とりあえずという形でディスコが預かったまま、一緒に暮らし続けているのだ。
ディスコは梢を愛している。可愛い。何を言っているのかわけのわからない支離滅裂さだけど、でも可愛い。
でもそんな梢にある時とんでもない異変が起こる。
瞬間的に、梢が大人の身体になるのだ。
初めは幻覚か見間違えだと思った。しかし次第に大人の梢の滞在時間が長くなる。
その《梢》は、未来からやってきたという。そして、この出来事は、これからディスコと《梢》の間で交わされることになる手紙で全部わかってて、《梢》は未来でその手紙を全部読んだというのだ。
わけがわからない。しかし、とにかく梢の意識はどこかに言ってしまっているみたいだし、《梢》が未来から来たことも確かなように思えてくる。
さてどうする…、なんて考えているところで、梢にさらなる異変が訪れるのだが…。
というような話です。
とはいっても、ここで書いたのは、本書の内容の100分の1ぐらいでしょうか。そして、本書の世界観の100万分の1ぐらいかな、という感じがします。まあとにかく、僕には捉え切れない壮大な物語でした。
はっきり言ってハチャメチャで、意味不明です。でも、さすが舞城王太郎!っていう感じの作品でした。
本書は、文庫で上中下に分かれた作品なんだけど、上巻はそれなりについて行けました。子供の梢の身体に時々やってくる《梢》とのやりとりとか、パンダラヴァーの事件とか、なかなか面白く進んでいきます。子供の梢の身体に起こるとんでもない変化に、どんな風に決着がつくんだろうなぁ、みたいな興味を持ちながら、スピーディに展開する物語を読んでいけました。
途中で登場する水星Cっていうキャラも、まあ面白いんです。登場した時は、まさかこれほどまでに重要な人物になるとは思わなかったけど、この水星Cの破天荒っぷりも面白いんです。
あと、梢が結構可愛いですね。正直、この可愛い梢とのやりとりだけでも、なんらかの作品に仕立て上げられそうな感じはあります(まあ舞城王太郎の作風とはかけ離れるでしょうけど)。っていうか本書はそんな風に思わせる部分が多いんですね。ここの話だけでも長編として成立しうるんじゃないか、と思わせるようなネタがガンガン登場するんで、そういう意味でも凄く贅沢な感じはします。
上巻の途中から「パインハウス事件」と呼ばれる物語に突入することになります。この「パインハウス事件」もまあとんでもないです。
福井県西暁町(舞城王太郎の小説ではよく出てきますね)の山奥にある、小説家・暗病院終了の邸宅は、「パインハウス」と呼ばれている。それは、輪切りのパインのような形をしているからで、そのパインハウスで矢に貫かれて暗病院終了が密室の中で死んでいるのが見つかった。そこに、日本を代表する名探偵たちが集結し推理合戦を繰り広げるのだけど、間違った推理をした名探偵が次々に密室状態で目に箸を刺した状態で死んでいるのが見つかる…。
というような話で、まずそもそも、それまでの梢の話から唐突に(まあ一応ストーリー的に繋がりはあるんだけど)このパインハウス事件に飛ぶところが凄い。んで、まさに舞城王太郎の舞城王太郎らしい部分だなぁと思わせるのがこのパインハウス事件である。
このパインハウス事件は、中巻の終わりでようやく大体の解決を見るのだけど、そこまでの展開がまあしつこい(笑)。一応褒めてるんですけどね、これ。
名探偵たちによる推理が10個以上も登場するんだけど、そのどれもがまあぶっ飛んでる。よくもまあ、色んなガジェットを組み込みながら、これだけ色んな推理を展開させられるものだな、と思います。それぞれの推理は、どれもこれもまあぶっ飛んでる。正直、何でもアリっていう感じで、普通の探偵小説だと思って読むと拍子抜けするでしょう。まあ、舞城王太郎の作品に触れたことがある人なら、舞城王太郎らしいなぁ、って思えるでしょうけどね。しかし、そのハチャメチャな推理なのに、それぞれの推理の内部では論理は一貫している(ように見える。正確には僕には判断できない)。推理の度に新しい要素を追加しているわけではなくて、一度出てきた要素を別の形で使い直したりと、もうあの手この手でパインハウスでの事件にピリオドを打とうとする流れは、本当に圧巻です。
で、何よりも凄いのが、パインハウス事件の最後の最後の解決。これはマジでビビったなぁ。いや、はっきり言ってありえない解決なんだけど、この作品の中では成立する。っていうか、このパインハウス事件のラストの解決があるからこそ、下巻の展開が成立する、とも言えるかもしれない。とにかくそれぐらい斬新で、正直斬新すぎて僕の頭の中ではちゃんとは理解できなかったけど(笑)、でも最初の発想の凄さは分かるし、いやホント、よくもまあそんなメチャクチャなこと考えたもんだよなぁ、という感じでした。
一応、この中巻の最後ぐらいまでは、なんとなく物語についていけていた気がします。中巻までは、知識的に僕には理解の及ばないものは多々あったのだけど(『カバラの叡智』だの『ヘブライ文字』だの『ホロスコープ』だのと言った知識がわんさか出てくる)、そういう知識的に難ありという部分以外はある程度物語についていけたと思います。
でも下巻からは、もうそういうレベルではなくなってきます。下巻からは、概念的にもうさっぱり理解できなくなっていきます。
下巻以降の物語では、時間と空間の概念がもうグチャグチャになっていきます。著者の中ではたぶん辻褄が合ってるんだろうなー、とは思うんだけど、もう僕にはさっぱり。ディスコが、一体『いつ』『どこで』『何を』しているのかさっぱり理解できなくなってきます。
大枠では、『ディスコが世界を救う』という話。というか、もっと狭めれば、『迷子専門の探偵であるディスコが子供たちを救う』っていう展開です。ディスコは、梢がスタート地点となるとある技術によって、未来世界がとんでもないことになっていることを知る。その世界は、その世界の住人にとってはとても幸せなのだけど、ディスコには許容することは出来ない。だからこそディスコは、巨大企業を相手に個人として歯向かう決意をし、そのために何が出来るかを模索する…。
という展開なんだけど、もはや何がなんだか。こういう物語をちゃんと理解できる人って羨ましいなぁ、という感じがします。
というわけで、本作をきちんと理解できていない僕には、本作の凄さを伝えることはなかなか難しいですが、とりあえず凄いです!もう、凄いとしか言いようがないです!でも、僕にはちゃんとは理解できませんでした!っていうか、この物語、ちゃんと理解できる人ってどれぐらいいるんだろうなぁ。まあとにかく、年明け一発目から、ちょっととんでもない物語を読んでみました。いずれ、僕が暇で暇でどうしようもないようなことがあれば、また読み返したいなぁって思います。

舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日」






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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)
  翻译: