今、中小零細企業の、債権債務処理に関する環境が激変しようとしています。

リーマンショック以降の不況に対応し、無条件の延命を前提とした護送船団方式による施策を、政府はアベノミクスを根拠に全面的に見直しました。

再生の可能性をキーワードに企業を選別し、再生の見込みが無いと判断した企業については、切り捨て淘汰をするという方向になってしまったのです。



『経営者保証に関するガイドライン』については、既にご存知の経営者も多いことだろうと思います。

この2月1日から運用され、最近はメディアを賑わせてもいますから、経営者にとっては興味の高いテーマになっているようです。

『もう、経営者が連帯保証人になる必要がなくなった・・・』

この経営者による連帯保証問題が、経営者保証に関するガイドラインにとってのメインテーマであり、長年に亘り問題視されてきた日本固有の保証制度が、大きく改善されようと言う制度なのです。

これで、今後は、金融機関から融資を受けるとしても、経営者が無条件で連帯保証人になる必要は無くなり、会社の万が一の事態にも、経営者が全ての資産を失ってしまうということも無くなるのかもしれません。

当然に、様々な諸条件を前提とした対応となりますので、無条件でというわけではありませんが、劇的な転換であることは間違いありません。

他にも、注目すべき内容の多い制度ですので、中小零細企業の経営者は、大いに興味を持っていただきたいと思います。



また、これはあまり知られていませんが、『特定調停スキーム』というものも、この2月1日から運用を開始されました。

経営者保証に関するガイドラインでは、経営者の個人保証については改善をされる方向が示されましたが、債務者本人である会社の処理についての問題が残されており、これを画期的に解決しようという制度になります。

ある意味、経営者保証に関するガイドラインとセットになり、債務者本人である会社について担当し、今後、時代に合わせて迅速に処理できるようにしようというのが、この『特定調停スキーム』になります。

詳細については後日のブログでご説明をすることとし、今は、簡単に仕組みをご説明しますと、昔からある特定調停という制度を活用し、会社を再生するスキームについて弁護士会が中心となって最高裁判所や中小企業庁も関わり、『運用マニュアル』を作成して、今後の中小零細企業の再生についてのプラットホームにしようというものです。

概ねで年商20億円以下,負債10億円以下の中小零細企業が対象になり、最低でも、約定金利等以上を払える収益力を確保する等、様々な条件も要求をされます。

手続きとしては、特定調停を申し立てる前に、弁護士が中心となって、デューデリジェンス等を実施し経営改善計画書なども作成し、事前に債権者と協議を実施して、一定の調停見込みの確保を図ります。

そして、この事前協議が成立すれば、簡易裁判所に特定調停を申し立てるという流れになりますが、裁判所は関与するだけで、現実は私的整理のような形態になるようです。

この特定調停スキームの最大のメリットは、経営改善計画の内容により、既存債務の全部もしくは一部の免除が可能になるということですが、その中でも、信用保証協会の求償債権の放棄が可能になった事は特筆すべきことだと思います。

今までも、中小企業再生支援協議会の経営改善計画の内容により、信用保証協会の債権放棄の可能性は示されていましたが、それは建前だけで現実的にはほとんど実施されていなかったといえます。

信用保証協会の求償債権は、現実には債権放棄も債権譲渡もされないという債権で、いつまでも債務者は当然の事、保証人である経営者までも追い詰めるという厄介な代物で、経営者の人間的再生を阻害してきたという事実は否定できません。

まだ、運用が開始されたばかりで、本当に求償債権の放棄が可能になるかは断定できませんが、これは期待せずにはおられません。

他にも、特定の債権者だけとの交渉も可能になり信用不安が起こりにくいとか、債務免除益への課税が優遇される等が有り、再生を目指す中小零細企業にとって、今後は有望な選択肢の一つになってくるだろうと思われます。



ここ数カ月で、中小零細企業の債務処理関する考え方が激変し、この2月から、『経営者保証に関するガイドライン』と『特定調停スキーム』という制度が運用されるようになった事実を、我々は真剣に考えなければなりません。

冒頭に申しましたように、この様な制度が、何故に運用されるのかという背景を、十分に認識しておく必要があるのです。

そして、再生の可能性があると判断された会社については、今まで以上に強力な支援を取付けて、再生を図る努力を続けられ目標を達成させてください。

万が一に、再生の可能性がないと判断された場合でも、状況を認識しなおして、どの様に対応するのかを諦めずに検討をしておく必要があるということです。

会社の再生は、周りが判断することではなく、経営者が自ら決めることなのです。

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