返済猶予(リスケ)によって資金繰りができて、時間的な猶予を確保することができました。

これで経営改善に本気で取り組むことができる様になりましたが、全社挙げて取り組んでも、簡単に計画が進むものではありません。

大幅に時間がかかりそうで、経営が改善するまで、債権者である金融機関は、返済猶予を続けてくれるのでしょうか?

最近、こんな状況下での、返済猶予の更新に関するお問い合わせが増えています。



返済猶予をされている事業者の中には、どんなに経営改善の努力をしても、約定通りに元本の返済ができるようになるのは、難しいとお考えの方も珍しくないのかもしれません。

返済猶予がなければ、資金繰りは確保できないという状況から抜け出せない訳であり、返済猶予が中小零細事業者の命綱といえる状況ですから、その継続に不安を抱く事業者は少なくないでしょう。


現実的に、戦後の高度成長期の右肩上がり経済とは違い、今は停滞経済であり、債務者の借入金に対しての許容量は極端に収縮しています。

こんな経済環境ですから、よほど収益性の高い事業への投資用借入でない限り、金融機関からの借入は事業の足かせにしかならないとさえ表現できます。

特に、資金繰りが厳しいからという理由での借入などは、自転車操業の始まりとさえ言えるのではないでしょうか。

中小零細事業者にとっては、借りたら負けという、経済環境になっているのです。

しかし、財務体力に劣る中小零細事業者は、金融機関からの借入を必要としています。

資金繰りを確保するために借入をされるのですが、本業の黒字さえ確保できない経営状況において、元本を返済する余力などなかなか確保出来るものではありません。

無理して、借入返済を優先しようとされても、いずれは元本の返済は難しくなり、返済猶予(リスケ)に取組まなければならない可能性は低くないのです。

返済猶予により、資金繰りの確保は可能になり、事業者は精神的にも時間的にも余裕を持つことができるようになり、これで本腰を入れて、再生に向けて経営改善に取り組むことができるでしょう。

ところが、そんなに経営改善は簡単なものではありません。

経営の改善については、既に、様々な対策に取り組んでこられたでしょうし、生半可な対策で直ぐに効果を挙げられるような経済環境ではないのです。

当初は、1年もしくは2年ほどで返済猶予を終わらせて、正常弁済に戻すつもりだったかもしれませんが、とてもそんな状況ではないでしょう。

資金繰りを確保するには、返済猶予が大前提という状況に陥ってしまっています。

したがって、返済猶予が事業の命綱であり、いつまで続けられのかが生死を分ける
事になってしまっているのです。



返済猶予は、昔の様に、ほぼ無条件で更新をされるものではなくなりました。

以前は、護送船団方式にのっとり、形だけの審査で返済猶予の更新は進められていましたが、平成26年の金融庁の方針転換により、この流れは変わりました。


中小事業者の新陳代謝を図るという大きなテーマの下で、いつまでも経営改善が進まない事業者は市場から退場をさせるということになったのです。

これは、金融機関が、今まで続けてきた返済猶予を含む支援を打ち切るということになります。

それ以降、返済猶予の更新が極端に難しくなったわけではありませんが、たしかに、返済猶予の更新を断られる事例は増えてきたようであり、それらの事業者には基本的な共通点があります。

返済猶予を何度か更新してきたが、売上の増加や売上総利益,営業利益などの改善がみられず、今後も経営改善の目途が立たないということです。

返済猶予は、経営を正常化に戻すための支援手続きだといえますから、いつまでも経営改善が進まないのであれば、返済猶予をしないというのは当たり前のことなのかもしれません。

ただ、具体的な経営改善が進んでいなくても、返済猶予の更新が成功している事例も存在します。

全く経営改善が進んでいないという訳ではありませんが、当初の経営改善計画を大きく下回っていても、返済猶予が更新されている事例も少なくないのです。

それらの事例には、いくつかの共通点があります。

  1.経営改善計画の数値達成までは遠いが、僅かでも改善は進んでいる。
  2.経営の状況を、常に誠意を持って金融機関に開示している。
  3.自ら経営改善計画を策定し、前向きな対応姿勢を示している。
  4.事業者は、常に誠意を持って金融機関と対応している。

以上の共通点になりますが、ある意味、金融機関のツボを押さえた対応だといえるのではないでしょうか。

債権者である金融機関に対して、根拠と安心を与える対応になりますから、経営改善の達成率が低くても、金融機関は前向きに対応をしてくれるようになります。

翻せば・・・・

  1. 経営状況を悪化させない。
  2. 経営状況をオープンにする。
  3. 前向きに経営改善に取り組む。
  4. 債権者に、誠意を持って対応する。

この4点が、返済猶予に絡む金融機関対応のポイントだということになるのでしょう。



最近。中小零細事業者を取り巻く金融政策は、随分と変化をしてきています。

政府は、経済政策に自信を持っているのか、選択・淘汰を中心に据えた強気な政策にも躊躇しなくなってきたようです。

そんな経営環境で、いつまで経営改善のできない企業は、返済猶予に頼ろうとするのではなく、事業を維持するために、新たな方向に舵を切る必要があるのかもしれません。

知らぬ間に、市場から退場を迫られるかもしれないのですから・・・。



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