ある若い経営者に、会社経営の継続を諦めるようにお勧めしたことがあります。

3代目の社長で、ひた向きに頑張られる真面目で優秀な青年経営者だったからこそ、少し強引気味に、事業譲渡をした後に整理することをお勧めしたのです。

お父さんである先代社長も、バブル崩壊やリーマンショックを乗り切った優秀な経営者だったようですが、その不況時に膨らみ続けた過剰債務を引き継ぎ、3代目社長は四苦八苦しながら頑張っていますが状況は悪化を続けています。

会社の今後の展開と、この有為な青年の将来を考えると、出来るだけ早いタイミングでシャッフルしてやり直した方が、有意義な良い結果になるのは間違いなく、撤退する勇気が不可欠な状況だといえます。




『私なら、まだまだ会社の経営を維持できた・・・。』と、ご高齢の会長は残念そうに呟かれたそうです。

その息子である社長も、会社を、事業を、何とか継続しようと頑張って取り組んでこられました。

しかし、経営環境の悪化に伴う業績の低下と、永年の過剰債務の負担による資金繰り悪化により、経営者の責任として勇気をもって決断するしか選択肢はなかったのです。

まだ収支の合う将来性のある事業は第2会社に譲渡し、最低限の事業資産は守りました。

従業員は当然のこと、仕入先などの取引先にも迷惑を掛けない様に、最大限の配慮をしたうえで、先代から引き継いだ会社を任意整理されました。

これ以上はないというほどに、十分な配慮と準備を施したうえでの会社整理だといえるでしょう。

それでも、先代の社長にとっては、子供のように育てた大事な会社でしたから、引き裂かれるような気持ちになったのはしかたありません。

たしかに、先代の言われるように、しばらくの間、会社を維持するのは可能だったと思います。

しかし、この状況で、継続を続ける意味はどこにあったのでしょうか。

全力を挙げて経営改善に着手しましたが、再生は実現できませんでした。

再生どころか、ここ数年は、赤字が続いているのです。

金融機関には、何年も前からリスケジュールをしてもらい、元本は100%棚上げして利払いだけにしてもらっていますが、それでも資金繰りについては年中苦労しています。

ここ最近は、従業員の賞与や定時昇給もなく、給与の遅配も珍しくなっていました。

仕入先などの取引先への支払も無理を言うのが日常茶飯事となり、信用が喪失しかけていたといえるでしょう。

この様な状況に陥っているのに、未だ、無理をして、会社の経営を継続する必要があったのでしょうか。

会長は、未だ経営は維持出来たといわれますが、たしかに、方法は未だ有ったと思います。

従業員や取引先への支払を、もっと無理をお願いして待ってもらうのも方法だったのでしょう。

得意先に無理をお願いして、前受金を頂戴するとか、繰り上げ支払をしてもらうという方法もありました。

ノンバンクや街金等から高利の借入をするなどして、当座の資金繰りを確保するのも可能だったのかもしれません。

それで、しばらくは経営が維持できたのでしょう。

しかし、そんなに無理をして経営を維持することに、いったい、どんな意味があるというのでしょうか。

体面上の、雇用や商取引は守れたのかもしれません・・・。

今でと変わらぬ状況を確保し、地域などへの悪影響は防げたのでしょう・・・。

経営者の意味のないプライドは守れるのでしょう・・・。

しょせん、全て、その場限りの一時的なものでしかありません。

その結果、従業員は子供の教育費などが払えなくなったりして、生活を破綻させてしまうかもしれません。

経営者を信用し続けて、無茶な要求を聞き入れてきた取引先は、先に資金繰りを破綻させる可能性があります。

高利の借入は、短期の一時的なものでない限り、経営破綻に直結してしまいます。

ここまでの状況になって、経営を維持するための方法というのは、誰かに取り返しのつかない迷惑をかけることにより成り立つものばかりだといえます。

その結果、状況さらに難しく、そして厳しくなってしまうでしょう。


経営者たるもの、その責任において、頑張って会社経営を維持しなければなりません。

しかし、状況が厳しくなっているのに、ただ、いつまでも維持することだけを考えて、無謀な取り組みをするというのは無責任だとしかいえません。

経営を維持するだけなら、難しいことではないかもしれません。

しかし、維持する先に何があるのか、そして、最後はどうなるのかについて、経営者は見極めなければならないのです。

そして、経営者の責任において状況を見極めたうえで、最善選択に向けて勇気を持って決断をすべきなのだと思います。

悔しいことだとは思いますが、経営や事業を諦めることで、現状よりも良い結果になることは珍しくありません。

その先に、開ける道も見えてくる可能性もあるでしょう

経営危機という環境では、ベストよりもベターを目指すべきなのかもしれません。

最高よりも、最善を目指すことで、納得できる良い結果を得られるのではないでしょうか。

経営は厳しくても、諦めずに頑張ることは大事・・・

しかし、状況に合わせ、諦めることも必要なのです。

その時、どの様に諦めるのかが、何よりも大事なのだと思います。



 ◆ 会社再生・経営危機打開・事業承継のためのオンラインセミナー
          ↓
   YouTubeチャンネル


 ◆ 詳しい内容は、ホームページをご覧ください,
          ↓
   トップ経営研究所 ホームページ


↓ランキングです クリックして応援してください


ランキング人気ブログランキングへ


ランキングです クリックして応援してください
          ↓
      にほんブログ村 経営ブログへ