様々な対策を実施して、より良い結果を求めるのは当然のことだと思います。
しかし、専門家にすれば、その先の結果がどうなるかは、ほぼ想定できるといえます。
それは、過去の経験から導き出された範囲にしか、結果という答えが生まれないことが判っているからです。
ところが、金融環境が様変わりする環境において、その想定範囲も大きく狂いだしています。
コロナウイルスは、様々な常識を驚くほどに変化させてきました。
それは、金融や経営に関しても同じで、当たり前だったはずのことが、当たり前でなくなってきているのです。
特に、債権債務処理の最前線では、その傾向が顕著になってきている様に感じます。
通常では考えられない様なパターンの時効が、最近、立て続けに成功をしました。
『時効』は、ある事実状態が一定の期間継続した場合に,権利の 取得・喪失という法律効果を認める制度のことになります。
借金なども、消滅時効により返済義務が消滅する可能性があり、債権債務の最終処理として合法的な極めて有効な手段だといえるのです。
ただ、貸付をしている債権者の金融機関等は、時効の成立により債権回収できなくなれば大変ですから、金融のプロとして時効を簡単に成立などさせてくれません。
一般的にも、時効は制度として存在しているだけで、債権者が当たり前の様に時効を阻止し、実際に活用するのは不可能だと思われているところがあります。
ところが、債務者がご存じないだけで、一定の条件において、時効の期間が完成している債権は、驚くほど多く存在しています。
また、時効の援用が成功して、時効が成立してしまっている債権も、現実的には少なくないのです。
この様に、時効は実際に活用できる債権債務処理手段なのですが、当然に取り組みは簡単ではありません。
ところが、その簡単に成立しないはずの時効が、コロナ終息以降、驚くような状況で成功をしています。
Aさんは、経営する事業の経営が厳しくなり、日本政策金融公庫からの借入も金融事故となりました。
事業も継続ができず放置状況となり、実際に倒産状況の中で公庫に呼ばれました。
状況を確認した公庫の担当者は、返済できる状況にないことを理解し、しばらく様子を見ましょうということになりました。
これが5年以上前で、その後、コロナウイルス感染の異常環境となり、何の連絡もないまま現在に至っています。
Aさんは時効について勉強し、しっかりと管理もして、裁判などの請求も,債務承認書などの承認も,仮差押などについてもチェックをされています。
時効の中断がないまま5年が経過し、時効の期間は完成しました。
普通であれば、ここで時効の援用をされるのでしょうが、Aさん取り組もうとされません。
何故なら、日本政策金融公庫が何もしてこないのに、わざわざ事を荒立てる様な時効の援用に、現状において取組む必要が無いからです。
公庫が、何かしてきたら、時効の援用をしようと考えておられます。
Bさんは、親戚の経営する会社の、信用保証協会の保証付き融資の連帯保証人をされていました。
その親戚が経営する会社の経営が悪化して金融事故となり、信用保証協会に代位弁済をされました。
その後、知り合いから時効が使えるのではと教えられ、Bさんはいろいろと調べられました。
すると、親戚が個人名で少額を弁済していた時期はありますが、主債務者である会社は弁済をしたことがありません。
さらに調べ、請求や承認,仮差押なとがないことも確認し、時効の期間が完成している可能性が高いことが判りました。
このまま放置という選択もあるのですが、Bさんはご高齢で、子供たちヘの相続も視野に入れる必要があります。
何もしなければ、信用保証協会の保証債務を、子供たちに相続させてしまう可能性があるため、大きな決断をされました。
時効の期間は完成していると判断し、信用保証協会に時効の援用をされたのです。
随分と悩み、勇気を持って取り組んだ決断でした。
もしも、どこかで時効が中断されていれば、信用保証協会を刺激することになってしまうからです。
しかし、結果は大成功で、保証債務は無くなりました。
時効の援用が認められ、信用保証協会から『消滅時効完成のお知らせ』が送られてきたのです。
通常、時効の援用が成功しても、その後、請求が止まるだけで、この様な通知は送られてきません。
時効の援用に取組んだ債務者は、結果が判断できず、しばらく悩むことになってしまいます。
しかし、最近の信用保証協会は、この様に『消滅時効完成のお知らせ』をしてくれるようになり、債務者にとっては判りやすくなりました。
債務者として、時効期間が完成しているとすれば、時効の援用をして借金を無くしたいと考えるのは当然なのかもしれません。
しかし、時効期間が経過しただろうということで、簡単に時効の援用はされない方が良いと思います。
何故なら、時効の援用の失敗事例が少なくないからです。
その原因の多くは、時効の中断を把握していなかったことに尽きます。
弁護士に時効の援用を依頼された場合も、間違いなく中断がないのか何度も確認をされますが、債務者が把握をされていないのです。
覚えていないところで債務承認書にサインをしていたとか、担保不動産処分で返済をしていたとかにより、時効の中断されていた事例は少なくありません。
しっかり時効の管理をしていたと思っていても、どこかで抜けていたということですから、あえて時効の援用に取組む必要はないのかもしれません。
債権者が何もしてこなければ放置し、債権者が何かしてくれば時効の援用をする、この様に捉えるべきだと思います。
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