債権者に迷惑はかけられないと、今まで頑張ってきましたが、遂に契約通りに弁済できなくなってしまいました。
結果として金融事故になってしまいましたが、それでも、完済を目指して返済を続けておられます。
生活も厳しいために、大きな金額ではありませんが、確実に返済を続けられました。
お金を借りた以上、無理してでも返済するのは当然のことなのでしょうが、頑張って返済を続けたとしても、多くの場合は、債務である借金は増え続けることになってしまうでしょう。
実際、この様に理屈の合わない事例は珍しくないのですが、その原因は遅延損害金ということになります。
遅延損害金とは聞きなれない言葉ですが、金融事故後の事業者にとって、この遅延損害金についての理解は不可欠だといえるのかもしれません。
遅延損害金は、借入れなどの金銭債務について、債権者と約束した支払期日までに、債務者が返済できず履行が遅滞したときに発生します。
返済を遅滞させた損害を賠償するために、返済できていない元本分に対して一定の割合で発生する損害賠償金が遅延損害金ということになるのです。
金融機関等から借入をすると、返済期日が設定され、約束通りに返済されているときは利子を支払うことになります。
ところが、約束の返済期日に返済できなくなって延滞が発生すると、そのペナルティーとして遅延損害金が発生することになってしまうのです。
この時に、今まで請求されていた利子は請求されなくなりますが、その代わりに遅延損害金が発生するということになり、この遅延損害金が驚くほどに高利なのです。
なんと、日本政策金融公庫の場合は9%弱、信用保証協会にいたっては14%〜14.6%という高利になります。
利子ではなく損害金ですから、高利という表現はおかしいのかもしれませんが、それほどの高利が、利息制限法という法律で認められているのです。
そして、信用保証協会の14%という高利で計算すると、約7年で、債務は倍に膨らんでしまう計算になります。
現実論として、10%を超えるような高利は、通常の事業者が運転資金において弁済できる限度を遥かに超えているのではないでしょうか。
これでは、遅延損害金というペナルティーというよりも、事業者に対しての『死刑』といった方が適切なのかもしれません。
それでも、多くの事業者は、完済を目指して弁済しようとされます。
コツコツと、生活を切り詰めながらも、出来る限りの精一杯の返済をされるのです。
真面目に、ただひたすらに、返済を続けて、ふと債務残高を確認して、膨れ上がっている債務額に驚かれることになるでしょう。
そして、この様な事例は、珍しくもないのです。
Aさんは、事業のために信用保証協会の保証付きで1億円の借り入れをされました。
当初は、事業も堅調で、予定通りに返済をされていましたが、得意先の事情で受注が大きく落ち込み、資金繰りが悪化をしてきました。
色々と頑張って資金繰りを確保しようとされましたが、とうとう利払いも出来なくなって期限の利益の喪失をしてしまったのです。
金融事故になり、Aさんの8000万円ほどの債務は、信用保証協会が代位弁済をして求償権を持って債権者となりました。
何とか事業を維持し継続しようとされるAさんは、信用保証協会と返済について前向きに話し合い、毎月10万円を返済することで合意をされました。
年間120万円の返済になり、簡単な金額ではありませんが、一生懸命に事業を頑張って返済を続けられたのです。
信用保証協会への返済が始まってから暫く経ち、順調に返済を続けることができていたので、随分と債務も減っただろうと、信用保証協会から送られてきた資料を見てAさんは驚愕されました。
減少しているはずの債務残高は、逆に増加しており、増加額も生半可な金額ではないのです。
毎月10万円で、年に120万円の返済をしているのに、遅延損害金が年に14.6%も発生しています。
8000万円の残高に14.6%ですから、年に1160万円ほどの遅延損害金が新たに増加したことになります。
したがって、毎月10万円という金額を返済しても、 1160万円 – 120万円 = 1040万円 で、1年で1000万円以上も債務は増加するということになっているのです。
これは現実の事例ですから、この事実を、金融事故になっても完済を目指そうとされる事業者は、頭に入れて対応されるべきだと思います。
よく、『最終的に、遅延損害金は免除してくれる・・・』と、言われる方もおられます。
しかし、債権者はそんなに甘いものではなく、何もしなければ遅延損害金も全て回収されると考えるべきでしょう。
信用保証協会の事例として、元本分は完済したのに、その後に遅延損害金分の返済を請求された事例もあるほどなのです。
金融事故後も、誠意をもって、完済を目指そうとされる事業者は、遅延損害金について理解され、返済の意義についてよく考えたうえで対応されることをお勧めします。
現実的に、遅延損害金分についてまで支払うことなど、ほぼ不可能だといえるでしょう。
そうであるならば、元本返済を始めるタイミングで、遅延損害金について債権者側と話し合っておくべきなのです。
できれば、元本完済後の遅延損害金については、免除する約束を取り付けて文書に残したいものです。
しかし、債権者側は、簡単に遅延損害金の免除について言及せず、明確に約束などしてくれませんし、ましてや文書になどしてくれないでしょう。
それでも、債権者側も遅延損害金の免除について否定的ではありませんから、この段階で、交渉しておくことは大事だと思います。
そして、もう少しで、元本が完済できるような状況において(50万円前後の残高となるのでしょうか・・・)、再度、遅延損害金の免除について交渉されては如何でしょうか。
その時の条件は、遅延損害金を免除してくれるなら、元本残高は一括して弁済するということになります。
ここまで誠意をもって、頑張って返済を続けてきたのですから、上手くいく可能性は低くはないと思います。
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