このままでは、会社は駄目になってしまうと判ってはいても、どうしようもありません。

経営が危機だといっても、何をしていいのか解らないのです。

置かれている状況が判り、対応すべき方向が見いだせたとしても、前向きに取り組むのも難しいのかもしれません。

経営危機での対策というものは、どうしても先送りになってしまい、手遅れとなって良い結果が得られないことが多いのです。



前回のブログで、経営状況を把握する基準となる指標をご紹介いたしました。

この指標を活用すれば、凡そではありますが、経営危機における正しい経営状況を把握することができると思います。

状況の把握ができて、今後の対策を実施すれば、具体的な取り組みができて、最善の展開が望めることになるはずです。

ところが、その展開は、そんな簡単なものではありません。

把握した経営状況が軽症であり、再生が十分に可能なような状況であれば、何かとかなるのかもしれません。

しかし、想定していた以上の厳しい経営状況であったときが問題です。

特に、今後の取り組むべき方向性が、厳しい難しいものであったときが問題なのです。

例えば、重度の経営状況と判断され、現形態のままでの継続は難しく、速やかな整理が望ましい状況になっていたとしましょう。

そんな時に、経営者は、冷静に最善の選択として、撤退をするという厳しい選択と向かい合うことができるのでしょうか。

これが、なかなか難しいのです。

経営者は、取り組むべき方向は理解し、その必要性も重々判っていても、具体的に取り組むことができません。

まだ、何とかなるのでないかと、甘い考えを持たれるからかもしれません。

今後に、不安や恐怖を覚え、現実から目を背けようとされているのかもしれません。

いずれにせよ、問題の先送りや、現実からの逃避ということになり、破産や夜逃げといった、もっと悪い悲惨な結果に繋がることになってしまうでしょう。

多くの経営者は、この事実が判っていても、この分厚い壁を越えられずに、現実と向き合うことが難しいのです。

今ならば、まだ、経営者の意志で、その責任を果たせるのに、もったいない話です。



先日、初めてご相談をさせていただいた、関東の経営者も、目に見えない分厚い壁を越えられずに、悩んでおられました。

請負業の代表取締役として、その初老の経営者は、20年以上に亘り事業の最前線で頑張ってこられました。

その間、谷も山ありましたが、持ち前の知恵とバイタリティーで乗り越え、事業を維持し着実に成長もさせてこられたのです。

ところが、東北大震災以降、メインの得意先の発注が激減し、業績が極端に悪化をしてしまいます。

確実に減少していく売り上げや利益を、何とか回復させようと、経営の最前線で踏ん張りましたが、資金繰りの確保も難しくなり、返済猶予にも取り組みました。

全社挙げての経営改善も実施しましたが、それでも資金繰りは解決せず、専門家に相談し、勧められるままに金融機関の借入について期限の利益の喪失をさせて、金融事故にされてしまいます。

期限の利益の喪失をすることで、当座は、元本や利息の支払いを止めることができて、資金繰りは楽になるはずでした。

しかし、期限の利益の喪失後のシミュレーションがなされてなく、ただ、この今の時点の、一時的な資金繰りを楽にするためだったのです。


しかも、それで資金繰りが解決できたわけでもなく、手元資金は減り続けますし、これから債権者金融機関は土俵を変えて厳しい請求を始めるでしょう。

信用保証協会やサービサーなども、債権者として債権回収の追及をしてくることになりますから、その対応にも追われ、資金繰りもさらに厳しくなることが予想をされます。

そんなタイミングで、初めてのご相談をさせていただきました。

経営者は、ご自身のご年齢から、今後4〜5年は事業を継続したいのだが、対応が判らないということです。

本業は赤字だが、減価償却費をプラスするとキャッシュベースで黒字になり、経営者としての報酬も僅かであるが取れているとのことでした。

資金繰りは、ここ4か月ほどは大丈夫だが、その先は読めず、将来的にはますます経営環境は悪化していくだろと考えておられます。

対応方法は判らないものの、経営者は、まだまだ前向きな姿勢を維持されているのです。



本来は、『このまま、経営者として、前向きに頑張って、事業を継続してください・・・』と、お話をしたいのですが、そんな悠長な状況ではないでしょう。

既に、期限の利益の喪失をして金融事故とされたわけですから、『債権回収』を前提に、債権者金融機関は様々な対応をしてきます、

ある程度の、準備はされていたものの、事業や売上金を保全するのは簡単ではありません。

しかも経営環境は、ますます悪化していくことが予想されるのですから、業績や資金繰りも更に厳しくなっていくでしょう。

そして、何よりも、資金面の答えが、これからの事業の継続を否定しているのです。



役員の報酬を得ることかでき、純利益と減価償却費をプラスすると、キャッシュベースで黒字なのですから、立派なものなのかもしれません。

しかし、金融機関への元本返済を含めれば、大幅な赤字となってしまうのです。

しかも、その赤字額は、現時点において、役員報酬額よりも多く、以下のような数式になってしまいます。

  純利益 + 減価償却費 + 役員報酬 − 借入元本返済額  < ゼロ

元本返済を含めれば、マイナスになり、役員報酬はもらっているが、毎月、持ち出しをしているという計算になります。

これでは、事業をしない方が得だということになり、何のために事業を継続しているのか分からないということになります。

しかも、期限の利益の喪失をして、これからは債権回収として、債権者から厳しい追及を受けることになるのです。

たしかに、ある程度の弁済をすれば、債権者も目をつぶって協力をしてくれるかもしれませんが、厳しい金額を要求されるでしょう。

上手く交渉して、当初は、安価な弁済で許してくれても、すぐに高額の弁済を要求されることになります。

その要求を受け入れなければ、継続している事業の売掛金などの資産に対して、債権回収を仕掛けてくる可能性がありますから、最終的には要求を呑むしかありません。

そうなると、期限の利益の喪失前よりも、弁済額は多くなり、資金繰りも厳しなってしまい、事業継続は難しいということになってしまうのです。

結果、期限の利益の喪失など、しなかった方が良かったということになります。



この事例の場合、無理して、事業を継続させても、良い結果には繋がらないでしょう。

既に、資金繰りが厳しい状況において、今後の業績は期待できず、ますます状況は悪化すると予測できる状況です。

経営者はご高齢で、後継者もおられません。

そして、事業を継続しようとすれば、毎月、持ち出しも必要になります。

こんな状況において、事業を継続させる意味はありません。

今ならば、まだ余裕がありますが、すぐに、残された余裕も喪失してしまうでしょう。

この、余裕のあるうちに、取り組むことが必要なのです。

今ならば、取引業者などへ、完全に清算ができます。

従業員に、退職金も支払えて、綺麗な整理ができるでしょう。

金融機関などの債務は残りますが、業界や地域での信用は毀損しないと思います。

しかし、このまま無理して継続をすれば、全てが悪い方向に向くことになります。

金融機関への債務は残り、従業員に退職金は支払えず、取引業者へも支払をできず、個人としての信用も喪失することになるでしょう。

今、判断するしかないのです。



これは、事業の継続よりも、整理を選択すべき、典型的な事例になります。

無理して継続することが善ではなく、冷静に状況を認識して処理することが善なのです。

現実を理解し、早い判断をして、前向きに取り組むことができれば、最善の結果を得ることができるとご理解ください。



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